部署別 / 水道局
水道局から転職しやすい業界と職種
水道局から民間に移るとき、行き先は1つではありません。
むしろ、この経歴は、制度の側に行き先が用意されているという、めずらしい経歴です。現場の運転と保全を回してきたのか、計画と経営の数字を見てきたのか、どちらを長くやってきたかで、通る求人が変わります。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。資格と検索語も最後に付けます。
言い換えは水道局の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
技術上の業務は、委託できることになっています
行き先の話に入る前に、この分野の構造を条文で押さえます。水道法第24条の3です。
> 水道事業者は、政令で定めるところにより、水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を他の水道事業者若しくは水道用水供給事業者又は当該業務を適正かつ確実に実施することができる者として政令で定める要件に該当するものに委託することができる。
そして、同条第3項以下には、受託した者は「受託水道業務技術管理者」を置くこと、委託された業務の範囲内では、受託者を水道事業者とみなして水道法の規定を適用することが定められています。
ここが、行き先を分ける線です。
水道の管理の業務は、民間に委託できます。しかも、委託された範囲では、受託した会社が水道事業者と同じ立場で扱われる。
つまり、この分野では、「発注の側」と「受託の側」が、同じ法律の中でつながっています。
- 発注の側——事業を持ち、計画し、委託の条件を決める
- 受託の側——委託を受けて、現場を運転し、保全する
自分がどちらの層を長くやってきたかで、通りやすい方向が変わります。両方を経験しているなら、それは強みです。
向いている5つの方向
1. 水道の管理を受託する会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 浄水場の運転、水質の管理、委託の仕様、モニタリングの視点 |
| 求められる形 | 自治体からの受託、現場の運転と保全、提案書の作成 |
| 入りやすさ | 高い。発注者が何を見るかを知っている |
書くときの注意。委託の仕様を作る側だったことを書いてください。受託の会社がいちばん欲しいのは、「この事業体は何を求めるか」を読める人です。モニタリングで何を見ていたかを、そのまま書けます。
この方向に固有の制約もあります。受託の側は、委託の期間が終われば、次の公募があります。発注する側にいたときは手続きでしたが、受注の側では、負ければその現場が無くなります。しかも、水道の受託は、住民の生活に直結する業務なので、引き継ぎの失敗が事故につながる。そこを理解したうえで、提案と引き継ぎの設計に関われる人が求められています。
2. 管路の工事・建設会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 発注の仕様、施工の時期の制約、断水の調整、検査の視点 |
| 求められる形 | 自治体からの受注、施工の管理、緊急の復旧 |
| 入りやすさ | 高い。人が足りていない分野 |
書くときの注意。「断水を伴う工事の段取り」を書いてください。いつ、どの範囲を、何時間止めるか。この判断を経験している人は、受注の側でも工程を立てられます。
この方向に固有の制約もあります。管路の工事は、掘ってみないと分からない部分が残ります。他の埋設物の位置、土の状態、古い管の状況。発注の側にいたときは、設計の変更として処理していた場面が、受注の側では、その日の工程の判断になります。しかも、道路を掘っている間は、沿道の生活に影響が出続けます。止められる時間の限界を知っていることは、この方向でいちばん早く役に立つ知識です。
3. プラント・設備のメーカー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 浄水の設備、ポンプ、計装、薬品注入の設備の運転と更新 |
| 求められる形 | 設備の提案、設計の支援、試運転、保守 |
| 入りやすさ | 中〜高。運転してきた側の知識が求められる |
書くときの注意。設備の更新の検討に関わったなら、その経緯を書いてください。どの設備を、どういう理由で、いくらで更新したか。メーカーの側は、「更新の意思決定がどう進むか」を知りたいからです。
この方向に固有の制約もあります。メーカーの側に回ると、自社の製品の範囲で解を出すことになります。在職中は、どの方式が自分の事業体に合うかを、白紙から選べました。移った後は、自社が扱う方式の中で、いちばん合う形を提案する。この違いに、最初は窮屈さを感じる方もいます。一方で、1つの方式を深く知ることになるので、数年で、その分野の中では他に代えがたい人になります。
4. 建設コンサルタント・インフラの計画の支援
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 更新の計画、耐震化、経営の戦略、料金の試算、広域化の検討 |
| 求められる形 | 受託、調査、計画の策定支援、資産の管理の支援 |
| 入りやすさ | 中〜高。計画と数字の両方を見てきた人は多くない |
書くときの注意。計画の名前を書いてください。アセットマネジメントの計画、経営の戦略、耐震化の計画。改定に関わっただけでも書けます。
この方向に固有の制約もあります。受託の側から計画を作ると、成果物は報告書です。実際に更新が進むかどうかは、その後の予算と料金の判断に委ねられます。在職中は、計画を作った後に自分で動かす立場でしたが、移った後は、作ったところで手が離れる。この切れ方を物足りなく感じる方もいます。一方で、複数の事業体の計画に関わることで、比べる目が付きます。1つの事業体の事情しか知らない状態から出られる、という利点を取る方も多い方向です。
5. 電力・ガスなど他の公益の事業、検針や料金の業務の受託
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 需要家への課金、収納と滞納、供給の停止の判断、24時間の体制 |
| 求められる形 | 料金の業務、需要家の対応、設備の運用、体制の設計 |
| 入りやすさ | 中。求人は限られるが、構造の一致度が高い |
書くときの注意。「止められないものを扱っていた」と書いてください。常時の供給が義務で、それでも料金の不払いには段階を踏んで対応する。この両立の経験は、電気やガスの事業者でも同じ課題です。
この方向に固有の制約もあります。電気やガスの事業は、小売の自由化が進んでいて、需要家を奪い合う場面があります。水道には、その競争がありません。区域の中では、事業者は1つです。だから、「選ばれ続けるための工夫」という発想が、在職中には出てきにくい。ここは、移った後に学ぶ部分です。逆に、供給の安定と、止める判断の運用は、競争があっても変わらない部分なので、そちらを先に出して書くのが順当です。
合いにくい方向
次の5つは、この経歴からは遠い方向です。
| 方向 | 理由 |
|---|---|
| 短い周期で作り替える仕事 | 水道の資産は数十年単位。時間の感覚が合わない |
| 個人向けの商品の販売 | 相手を探して売る仕事。区域の中で供給してきた経験と違う |
| 無形の商材の新規開拓の営業 | 相手を探すところから始まる |
| 在庫と需要の調整が中心の職 | 水道には在庫がない。前提が違う |
| 完全に室内で完結する職 | 現地と設備を見て判断してきた強みが使われない |
「できない」ということではありません。持っている経験が、使われないということです。
役に立つ資格
| 資格 | 効く方向 |
|---|---|
| 給水装置工事主任技術者 | 工事の会社、受託の会社 |
| 技術士(上下水道部門) | コンサルティング、計画の策定支援 |
| 土木施工管理技士・管工事施工管理技士 | 管路の工事、建設会社 |
| 電気主任技術者・エネルギー管理士 | プラント、設備の運転と保全 |
| 公害防止管理者(水質) | 水処理、プラント、工場の排水の管理 |
| 簿記 | 経営の企画、公営企業会計の経験と組み合う |
持っていない資格を、応募のために先に取る必要はありません。ただ、受けようとしている方向に対応する資格があるなら、「取得予定」と書くだけでも効きます。
求人を探すときの検索語
| 検索語 | 出てくる求人 |
|---|---|
| 上水道 施工管理 | 管路の工事、建設会社 |
| 浄水場 運転 管理 | 受託の会社、プラントの運転 |
| 水処理 プラント 設備 | メーカー、工場の用水と排水 |
| アセットマネジメント 上下水道 | コンサルティング、計画の支援 |
| 包括委託 公共 インフラ | 受託の会社、施設の管理 |
| 料金 検針 業務委託 | 料金の業務の受託、公益の事業 |
「水道局」だけで探すと、求人が出てきません。「上水道」「水処理」「プラント」「包括委託」に言い換えて探してください。
つまずきやすい点
1. 「水道の仕事は水道局にしかない」と考える
受託の会社、工事の会社、メーカー、コンサルティング。同じ分野の民間側が、そのまま並んでいます。
2. 発注の側の経験を、低く見積もる
受託の会社に、発注の側を知っている人は多くありません。
3. 公営企業会計の経験を書き落とす
独立採算の事業の数字を見てきた経験です。一般会計だけの経歴とは、明確に違います。
4. 資格がないことを、応募しない理由にする
取得予定と書けます。実務の経験のほうが先に見られます。
5. 方向を1つに絞ってしまう
現場寄りと計画寄りで、書類の順番を変えるだけで、両方に出せます。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 水道法第24条の3は、水道の管理に関する技術上の業務を委託でき、受託者は受託水道業務技術管理者を置くと定めています
- つまり、発注の側と受託の側が、同じ法律の中でつながっています。行き先が制度として用意されている分野です
- 向いているのは、①受託の会社 ②管路の工事 ③プラントのメーカー ④コンサルティング ⑤他の公益の事業と料金の業務の5方向です
- 合いにくいのは、短い周期の仕事、個人向けの販売、新規開拓の営業、在庫の調整、室内で完結する職です
- 資格は、給水装置工事主任技術者、技術士、施工管理技士などが効きます。取得予定でも書けます
- 検索語は、「水道局」ではなく「上水道」「水処理」「包括委託」に言い換えてください
よくある質問
事務職で、技術の判断はしていません
それでも、5つの方向のうち3つは残ります。1番の受託の会社、4番のコンサルティング、5番の料金の業務と公益の事業です。この3つで見られるのは、契約と委託の管理、料金の実務、公営企業会計、経営の戦略で、いずれも技術の判断ではありません。書くなら、「委託の仕様の作成、履行の確認、公営企業会計による決算、経営の戦略の策定を担当。技術上の判断は技術職が実施」と、自分の範囲を明示してください。とくに、公営企業会計と料金の実務は、外部から採りにくい経験です。
水道局の在籍が短く、他の部署が長いのですが
短くても書けます。この分野で効くのは、年数ではなく、扱った内容だからです。1年でも、更新の計画の改定の年に当たっていれば、計画の経験があります。逆に、5年いても、日常の窓口だけであれば、その範囲で書きます。他の部署の経験と組み合わせて、「契約の経験と水道の経験がある」「財政の経験と公営企業会計の経験がある」という形にすると、行き先がむしろ広がります。とくに、財政や契約の経験を併せ持つ方は、受託の会社の管理の部門で読まれやすくなります。
何社くらい受けるものですか
方向を2つに絞って、各3社から5社が、この経歴では動かしやすい形です。理由は、方向ごとに書類の順番を変える必要があるからです。現場寄りの会社には運転と保全を先に、計画寄りの会社には更新の計画と数字を先に置く。2つまでなら、書類を2通用意すれば足ります。3つ以上に広げると、どれも中途半端な順番になりがちです。なお、受ける数より、順番のほうが結果に効きます。書類の書き方は水道局の職務経歴書|書き出しから実績の出し方までに整理しています。