部署別 / 水道局
水道局の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
水道局の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「水道事業の運営に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「役所の水道の担当だった人」という像しか作れません。実際には、施設が基準に適合しているかを検査し、水質を測り、給水装置の構造と材質を確認し、台帳を作り、いざというときは給水を止める判断までしていたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは水道局の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は水道局から転職しやすい業界と職種に書いています。
担当する事務は、法律に列挙されています
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
水道法第19条は、水道技術管理者を1人置くことを求めたうえで、その担当する事務を列挙しています。
> 一 水道施設が第五条の規定による施設基準に適合しているかどうかの検査> 二 第十三条第一項の規定による水質検査及び施設検査> 三 給水装置の構造及び材質が第十六条の政令で定める基準に適合しているかどうかの検査> 七 第二十二条の三第一項の台帳の作成> 八 第二十三条第一項の規定による給水の緊急停止
ここが、書類の芯です。
検査、検査、検査、台帳、そして緊急停止。
つまり、この事業は「基準に適合していることを、検査と記録で証明し続ける」仕事です。しかも、最後の項目に「緊急停止」が入っています。適合していないと判断したら、止める。その判断まで、同じ人の担当として法律に書かれているわけです。
民間で人を採る側から見ると、これは「基準への適合を証明し続け、外れたら止める判断ができる人」です。食品、医薬品、化学、プラント——同じ構造の品質の管理が、いくつもの業界にあります。
職務経歴書には、この検査と判断の範囲が見えるように書いてください。
職務要約
悪い例
> 水道局において、水道事業の運営に関する業務に従事。施設の維持管理、水質管理、料金業務等を担当。
これでは、規模も、判断の範囲も読めません。
良い例(現場と技術が長い方)
> 給水人口約◯万人、給水戸数約◯万戸、管路延長約◯キロメートルの水道事業において、浄水場◯か所の運転管理を担当。水質検査の計画と実施、薬品注入の管理、施設の点検と修繕の発注を実施。管路の漏水調査を年間約◯キロメートル実施し、修繕の優先順位を設定。
良い例(計画と経営が長い方)
> 水道事業の経営の戦略および管路の更新の計画の策定を担当。管路約◯キロメートルについて、布設の年度と材質から更新の優先順位を設定し、年間約◯キロメートル、約◯億円の更新の計画を策定。公営企業会計による決算の調製、料金の改定の試算、広域化の検討にも従事。
太字にしなくても、数字が入っているだけで読み方が変わります。給水人口、給水戸数、管路の延長、施設の数。この4つのうち、分かるものから埋めてください。
担当業務
「水道事業の運営」で丸めず、6つに分けてください。
| 機能 | 書き方の例 |
|---|---|
| 浄水と水質 | 浄水場◯か所の運転管理、水質検査の計画と実施、薬品の管理、衛生上の措置 |
| 管路と施設 | 管路延長約◯キロメートルの点検、漏水の調査、修繕の発注、台帳の整備 |
| 給水装置 | 給水装置工事の審査と検査、指定給水装置工事事業者の指定と監督 |
| 料金 | 約◯万件の検針と調定、収納の管理、滞納への対応、給水の停止の判断 |
| 計画と経営 | 更新の計画、耐震化の計画、経営の戦略、料金の試算、公営企業会計 |
| 危機の対応 | 事故時の断水の対応、応急の給水の体制、災害時の相互の応援 |
この6つのうち、自分がやっていないものは書かなくて構いません。むしろ、やっていない機能を空欄にしたほうが、やった機能の密度が読まれます。
とくに、5番目の「計画と経営」は、一般会計しか知らない行政の経歴とは、明確に違う部分です。損益と資金を見ていたなら、必ず書いてください。
もう1つ、6番目の「危機の対応」も書き落とされやすい部分です。管が破れれば、その区域は、その時間から水が出なくなります。復旧の見込みを伝え、応急の給水の場所を決め、学校や病院への対応を優先する。この段取りは、事前に決めておかないと動きません。書くなら、「事故時の断水への対応について、連絡の経路と応急の給水の体制を整備。年◯回の訓練を実施」という形です。民間でも、供給を止められない事業では、同じ体制を持っています。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、水が出続けていることとして現れるからです。
悪い例
> 安定給水の確保に努め、事故のない運営に貢献した。
これは、姿勢の話であって、実績ではありません。
良い例——3つの型
型1:基準と手順を作った
> 水質の異常が出たときの連絡と対応の手順を、項目ごとの区分で整理し、夜間と休日の連絡の経路を含めて文書化。当番が単独で判断しない形に変更。
型2:損失を減らした
> 漏水の調査について、夜間の最小の流量から区域を絞り込む方法を導入し、年間約◯キロメートルの調査で漏水◯件を特定。有収率の改善につなげた。
型3:更新を動かした
> 管路の布設の年度と材質を台帳で整理し、更新の優先順位の基準を作成。年間約◯キロメートル、約◯億円の更新を計画に位置づけ、資金の残高を踏まえて年次に配分。
3つとも、「維持した」ではなく、「自分が設計した」で書かれています。
このうち、型2はとくに数字にしやすい実績です。漏水の調査は、調査した延長と、見つけた件数が残ります。有収率という指標もあります。民間の設備の保全でも、「損失をどれだけ減らしたか」は、いちばん伝わる形です。ただし、有収率の数値そのものは、公表されている範囲で書いてください。内部の分析の数字を書く必要はありません。「調査の方法を変えて、特定の件数が増えた」という書き方で十分に伝わります。
数字の出し方
| 数えるもの | 書き方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| 事業の規模 | 給水人口約◯万人、給水戸数約◯万戸 | 公表されている数字を使う |
| 管路の延長 | 管路延長約◯キロメートル | 導水・送水・配水の別があれば添える |
| 施設の数 | 浄水場◯か所、配水池◯か所、ポンプ場◯か所 | 能力を添えると強い |
| 料金の件数 | 約◯万件の調定 | 収納率は公表値を使う |
| 給水装置の審査 | 年間約◯件 | 数えていないことが多い部分 |
| 更新の実績 | 年間約◯キロメートル、約◯億円 | 個別の工事名は書かない |
「約」を付けて構いません。正確な数字が出せないことよりも、桁が分かることのほうが大事です。
応募先で並べ替える
| 応募先の方向 | 上に置く機能 |
|---|---|
| 水道の管理を受託する会社 | 浄水と水質/管路と施設/委託の仕様 |
| 管路の工事・建設会社 | 管路と施設/工事の発注と検査/断水の調整 |
| プラント・設備のメーカー | 浄水と水質/設備の更新の検討/運転の実務 |
| コンサルタント・計画の支援 | 計画と経営/台帳/料金の試算 |
| 他の公益の事業・料金の業務 | 料金/危機の対応/需要家への対応 |
同じ経歴でも、順番を変えるだけで読まれ方が変わります。中身を作り直す必要はありません。
書いてはいけないこと
| ✕ 書かない | ○ こう書く |
|---|---|
| 施設の警備や、立入りの管理の詳細 | 施設の数と、担当していた運転の範囲 |
| 水源や設備の弱い部分に関わる記述 | 更新の優先順位を、どういう基準で決めたか |
| 水質の異常の具体的な事案 | 異常時の連絡と対応の手順を整備したこと |
| 需要家の個別の事情や、滞納の経緯 | 滞納への対応の段階と、扱った件数 |
| 入札や契約の予定価格に関わる情報 | 発注の件数と、検査で見ていた項目 |
1行目と2行目は、とくに注意してください。水道は、生活の基盤の設備です。施設の守りに関わる情報は、書類にも面接にも出さない。この線を守ることは、それ自体が評価の対象になります。迷ったら、公表されている資料に載っている範囲にとどめてください。
つまずきやすい点
1. 「水道事業の運営」で丸める
浄水と水質/管路と施設/給水装置/料金/計画と経営/危機の対応の6つに分けてください。
2. 給水装置の審査の件数を書かない
他人が自社の設備につなぐ工事を審査していた量です。差が付く部分です。
3. 公営企業会計を書き落とす
独立採算の事業の数字です。一般会計だけの経歴とは違います。
4. 緊急時の対応を、苦労話にする
基準を決めて、体制を組んで、運用していたと書いてください。
5. 施設の守りに関わることを書いてしまう
公表されている範囲にとどめてください。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 水道法第19条は、施設の検査、水質検査、給水装置の基準への適合の検査、台帳の作成、給水の緊急停止を、水道技術管理者の担当する事務として列挙しています
- つまり、水道局は「基準への適合を証明し続け、外れたら止める」仕事をしています
- 職務要約には、給水人口・給水戸数・管路の延長・施設の数を入れてください
- 実績は、①基準と手順を作った ②損失を減らした ③更新を動かしたの3つの型で書けます
- 書いてはいけないのは、施設の守りに関わる情報、水源の弱い部分、個別の事案です
- 給水装置の審査の件数は、数えていないことが多いので、1か月分だけでも数えてください
よくある質問
事務職で、浄水場に入ったこともありません
それでも書けます。水道局の事務は、料金の調定と収納、給水装置の申請の受付、指定工事事業者の指定、契約と入札、公営企業会計の決算、経営の戦略など、技術以外の部分が広くあります。書くなら、「約◯万件の調定と収納の管理、給水装置工事の申請の受付と事業者の指定、公営企業会計による決算の調製を担当。技術上の検査は技術職が実施」と、自分の範囲を明示してください。とくに、公営企業会計と、数万件規模の料金の実務は、外部から採りにくい経験です。線を引いた応募は、読まれます。
小規模な事業体で、給水人口が少ないのですが
規模の大小は、それほど問題になりません。むしろ、小規模な事業体ほど、一人が見る範囲が広いことがあります。運転も、水質も、料金も、計画も、全部を数人で回している。その場合は、「範囲の広さ」を前に出してください。書くなら、「給水人口約◯千人の水道事業について、浄水場の運転管理、水質検査、料金の調定、更新の計画までを少人数で担当」という形です。「単独で」「少人数で」という一語が、幅の証明になります。とくに受託の会社では、一人で複数の役割を回せる人が求められます。
下水道の担当が中心でした。上水道とは違いますか
違いますが、書き方の骨は同じです。管路を持ち、施設を運転し、水質を測り、使用料を取り、更新の計画を立てる。この構造は共通しています。下水道の場合は、処理場の運転、水質の規制、接続の指導、雨水の排除が中心になります。行き先も重なります。管路の工事の会社、処理場の運転の受託、プラントのメーカー、コンサルティング。書くときは、上水と下水のどちらの経験かを明示してください。曖昧にすると、どちらの求人でも読みにくい書類になります。面接で聞かれることは水道局出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。