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財政課の職務経歴書|書き方と、そのまま使える記述例
財政課の職務経歴書で、いちばん多い1行目はこれです。
「予算査定を担当。年間◯◯億円の予算編成に従事。」
間違いではありません。事実です。ただ、読んだ側には何も残りません。何億円を扱ったかは自治体の規模で決まる数字で、書いた人の判断がどこにも現れていないからです。
この記事では、財政課の仕事を職務経歴書にどう落とすかを、悪い例と良い例を並べて整理します。
庁内の言葉が求人票でどう呼ばれるかは財政課の経験は民間で何と呼ばれるかに、どの方向へ出すかは財政課からの転職先に分けて書いています。この記事は、書類そのものの話です。
査定は、削る仕事ではありません
書き方の前に、一つだけ押さえておきます。ここを取り違えたまま書くと、書類全体の方向がずれます。
地方財政法第1条は、この法律が、地方公共団体の財政の運営、国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め、地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的とすると定めています。
そして第4条第1項です。
「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」
同条第2項は、「地方公共団体の収入は、適実且つ厳正に、これを確保しなければならない。」
ここに書かれているのは「減らせ」ではありません。「目的を達成するための必要且つ最少の限度」です。
目的を達成しない金額まで削れば、それは限度を下回っています。逆に、目的を超えて積めば限度を超えています。どこが限度なのかを決めるのが査定です。
だから職務経歴書に書くべきなのは、削った額ではありません。どこを限度としたか、なぜそこにしたかです。
まず、書類全体の形を決める
職務経歴書の形は、応募先によって変えます。ただし財政課の場合、どの方向でも共通する組み立てがあります。
- 職務要約(5〜8行)
- 担当業務(箇条書き。制度の説明は最小限に)
- 実績(3〜4件。1件あたり5〜8行)
- 活かせる経験・スキル(応募先に合わせて並べ替える)
このうち、読まれるのは職務要約と実績です。担当業務の箇条書きは、確認のために目を通される程度です。だから時間は実績に使ってください。
よくあるのは、担当業務を丁寧に書いて実績が2行で終わっている書類です。これは配分が逆です。
職務要約の書き方
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、税務課を経て財政課に配属。予算編成、決算、地方債の管理等を担当。現在は財政課主査として、年間予算約◯◯億円の編成業務に従事している。
事実だけです。どこにでもある書類になります。
良い例
> 市役所に入庁後、税務課で賦課・徴収を4年、財政課で予算編成を6年担当。財政課では全◯課からの予算要求を査定する立場にあり、年間およそ◯件の事業について、金額ではなく事業の到達点から必要額を組み直す形で査定を行った。要求元との合意形成を前提とするため、削減額そのものより、何を残し何を落とすかの説明に時間を使う仕事が中心。予算編成から決算の議会認定までを通しで6回経験している。
違いは3つです。
1. 何を判断していたかが書いてある(金額ではなく到達点から組み直す)2. 規模が「件数」と「部署数」で書いてある(金額ではなく)3. 通しで何回経験したかが書いてある(年数ではなく)
3つ目は財政課ならではです。編成から決算の認定までを一年のサイクルとして何回通ったかは、年数より正確に経験量を表します。
担当業務の書き方
箇条書きにします。制度の説明は入れません。
悪い例
> ・予算編成業務> 地方自治法第211条に基づき、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経る必要がある。本市においては、8月に編成方針を示達し、10月に各課からの要求を受け付け、11月から1月にかけて査定を行っている。
制度の解説になっています。読み手は制度を知りたいのではありません。
良い例
> ・予算編成(8月:方針の作成と示達/10月:要求の受付/11〜1月:査定とヒアリング/2月:議案の作成と議会対応)> ・査定対象:全◯課、年間およそ◯件、うちヒアリングを行ったのは◯件> ・中長期財政計画の改定(3年ごと、直近では◯年度版を担当)> ・地方債の発行計画と償還管理(年間◯件、残高◯億円規模)> ・決算統計の取りまとめと財政指標の算定
制度は前提として畳み、自分が何をどれだけ扱ったかだけを残します。時期を入れておくと、面接で日程の話がしやすくなります。
実績の書き方――ここに時間を使う
実績は3〜4件に絞ります。多く書いても読まれません。
書く形は決まっています。状況 → 論点 → 自分の判断 → 結果の順です。
悪い例
> 予算査定において、事業の見直しにより前年度比◯%の削減を実現した。
削減率しかありません。言われた分だけ切る人に見えます。
良い例
> 【継続事業の査定基準の組み直し】> 前年度と同額の要求が毎年繰り返される継続事業について、要求額の妥当性を判断する材料が庁内になかった。前年度実績が唯一の根拠になっており、事業が始まった時点の前提が変わっていても金額が動かない状態が続いていた。> そこで、継続事業の要求について「開始時の目的」「現在の対象者数」「単価の推移」の3点を要求書に記載させる様式変更を提案し、財政課内と関係課の合意を取って導入した。3点がそろわない要求はヒアリングの対象とし、◯件についてヒアリングを実施した。> 結果として、対象者数が半分以下になっていた◯件の事業について、事業の廃止ではなく規模の縮小と対象の見直しで合意した。翌年度以降も同じ様式が使われている。
長く見えますが、8行です。ここに書かれているのは削減額ではありません。判断材料がなかったという問題の発見、様式という手段の選択、合意の取り方、そして翌年以降も残ったという結果です。
この形なら、自治体を知らない読み手にも「何ができる人か」が伝わります。
実績に使える題材
財政課なら、次のような題材が使えます。どれも削減額の話ではありません。
- 査定の基準を作った/変えた話(上の例)
- 要求元と対立して、決着させた話(何を材料にしたか)
- 新規事業を通した話(財政課は落とすだけの部署ではありません)
- 財源を組み替えた話(起債、基金、特定財源の充当先を変えた)
- 議会で説明した話(想定問答をどう作ったか)
- 決算の指標が悪化したときに、何をどう分析したか
- 他部署を巻き込んで様式や手順を変えた話
数字の出し方
財政課の書類では、金額より件数です。
| 使える数字 | 使いにくい数字 |
|---|---|
| 査定した事業の件数 | 自治体の予算総額 |
| 要求元の部署数 | 担当した会計の規模 |
| ヒアリングを行った件数 | 削減額・削減率だけ |
| 編成から決算まで通した回数 | 在籍年数だけ |
| 起債の件数と残高規模 | 財政力指数などの指標だけ |
| 議会で答弁した回数 | ― |
予算総額を書いてはいけない、という話ではありません。それを実績の中心に置かないということです。読み手は、自治体の予算規模と個人の裁量が比例しないことを知っています。
求人票の言葉に合わせて並べ替える
「活かせる経験・スキル」の欄は、応募先ごとに並べ替えます。
| 応募先の方向 | 先頭に置くもの |
|---|---|
| 自治体を顧客にする企業 | 予算の決まり方、要求から議決までの流れ、制度の知識 |
| 経営企画・財務企画 | 全体の配分の判断、断る技術、期限が動かない中での進め方 |
| 公共インフラ・PFI | 中長期の財政計画、地方債、債務負担行為 |
| 金融 | 地方債の発行と償還、財政指標の読み方 |
| 会計・監査・コンサルティング | 決算、公会計の財務書類、指標の分析 |
同じ経歴でも、先頭に置くものを変えるだけで読まれ方が変わります。行き先ごとの詳細は財政課からの転職先に整理しています。
つまずきやすい点
1. 在籍した部署を時系列で全部書いてしまう
入庁からの全部署を同じ密度で書くと、財政課の記述が埋もれます。応募先に関係する部署だけを厚く書き、残りは1行にしてください。税務課や会計課は財政課と接続するので残す、市民課は1行、という判断で構いません。
2. 主語が消える
「◯◯を実施した」「◯◯が導入された」と書くと、自分がやったのか課としてやったのかが分かりません。課の成果と自分の関与を分けて書いてください。「課として導入し、自分は様式の設計と関係課への説明を担当した」で十分です。盛る必要はありません。
3. 固有名詞と制度名が多すぎる
「◯◯交付金」「◯◯基金」「◯◯計画」が並ぶと、読み手は意味を追えません。制度名は一般名詞に置き換えられるなら置き換えてください。「国庫補助のある事業」「目的が限定された基金」で通じます。
4. 数字に単位と期間が付いていない
「◯件を査定」だけでは、年間なのか在籍期間の合計なのかが分かりません。必ず期間を添えてください。
5. 応募先によらず同じ書類を出す
いちばん多い失敗です。自治体向け事業の企業と経営企画では、読まれる箇所が違います。「活かせる経験」の欄の順番を変えるだけでも効きます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方財政法第4条第1項は、経費を「目的を達成するための必要且つ最少の限度」に収めることを定めています。査定は削る仕事ではなく、限度を決める仕事です
- 職務経歴書に書くのは削減額ではなく、どこを限度としたか、なぜそこにしたかです
- 時間は職務要約と実績に使います。担当業務の箇条書きは確認用です
- 実績は状況 → 論点 → 自分の判断 → 結果の順に、3〜4件だけ書きます
- 数字は金額ではなく、査定した件数、要求元の部署数、編成から決算まで通した回数を使います
- 落とした案件を1件入れてください。通した話しか書かれていない書類が非常に多く、この経歴のいちばん強い部分が消えています
よくある質問
予算の金額を書かないと、規模が伝わらないのではないですか
規模は伝わりますが、それは自治体の規模であって、あなたの裁量ではありません。読み手もそこは分けて見ています。金額を書くなら、件数と部署数を必ず添えてください。「年間◯億円」だけより、「全◯課からの◯件、うちヒアリング◯件」のほうが、同じ行数で情報量が多くなります。
査定で落とした事業を書くと、印象が悪くなりませんか
なりません。むしろ、落とした判断を説明できることが評価されます。注意点は1つだけで、どの自治体のどの事業かが特定できる書き方をしないことです。「対象者数が実績と合わなくなっていた継続事業」のように、判断の構造が分かる形にしてください。事業名を出す必要はありません。
財政課の前に別の部署が長い場合、どちらを中心に書きますか
応募先で決めてください。自治体を顧客にする企業なら、財政課の期間が短くても財政課を中心に置きます。予算の決まり方を説明できることが直接的に効くためです。一方、経営企画や事業会社の管理部門なら、前の部署で数字を扱っていたならその経験と合わせて組んだほうが厚みが出ます。部署の順番ではなく、応募先が読みたい順に並べ替えるのが原則です。