部署別 / 財政課
財政課の働き方と評価|一年の形と、民間に移ると変わること
財政課の働き方について、いちばん先に言えることがあります。
繁忙の波が、法律で決まっています。
努力や工夫でならせる部分もありますが、山がどこに来るかは制度で決まっていて、動きません。この構造を知っておくと、転職活動の時期を決めるときに迷いが減ります。
この記事では、財政課の一年がなぜその形になるのかを条文から確認し、評価のされ方と、民間に移ったあとに何が変わるかまで扱います。
言い換えは財政課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は財政課からの転職先、書類と面接は職務経歴書と面接に分けて書いています。
一年の形は、2つの条文で決まっています
地方自治法第208条は、会計年度は毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わるとし、第2項で各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって、これに充てなければならないと定めています。会計年度独立の原則です。
第220条は執行のほうです。第2項は、歳出予算の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができないとしています。第3項は、繰越明許費の金額を除くほか、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができないと定め、ただし年度内に支出負担行為をして避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかったものは翌年度に繰り越せる、と続きます。
まとめるとこうなります。
期間が切られている。枠をまたいで動かせない。翌年に持ち越せない。
この3つがあるので、財政課の仕事は期限に向かって一気に集中する形にならざるを得ません。「来月に回す」という選択肢が制度上ないからです。
財政課の一年
自治体によって時期の細部は違いますが、おおむね次の流れになります。
| 時期 | 主な仕事 |
|---|---|
| 4〜6月 | 前年度の出納整理、決算の調製に向けた数値の確定 |
| 6〜8月 | 決算統計、財政指標の算定、翌年度の編成方針の作成 |
| 8〜9月 | 編成方針の示達、要求様式の準備 |
| 10月 | 各課からの要求の受付 |
| 11〜1月 | 査定とヒアリング(最大の山) |
| 1〜2月 | 予算案の確定、議案と説明資料の作成 |
| 2〜3月 | 議会対応(第2の山)、補正予算、年度末の執行管理 |
| 通年 | 起債の手続き、交付税の算定、補正予算、議会答弁 |
山が2回あります。査定期と議会期です。
そして、この2つは動かせません。第211条が予算の議会提出の期限を定めている以上、編成作業は年度開始前に終わっていなければならないからです。
さらに、決算のほうは第233条で出納閉鎖後3か月以内の長への提出が決まっているので、夏にもう一つ締切が来ます。
年に3回、動かせない締切がある部署だと考えてください。
転職活動の時期を、この波から逆算する
面接は平日日中に入ることが多く、しかも1社で複数回あります。査定期にこれを重ねるのは現実的に難しくなります。
比較的まとまった時間を作りやすいのは、決算が議会の認定を通ったあとから、次の編成方針を作るまでの間です。時期でいうと、おおむね秋口までの数か月です。
もう一つ、年度末の3月に活動を始めるのも避けたほうが無難です。補正予算と執行の締めが重なるうえ、次の異動の内示も絡みます。動くつもりなら、異動が決まる前に方向だけ決めておくほうが選択肢が残ります。
現実的な組み立てはこうです。
- 決算が片付いたあたりで書類を作る
- 編成方針を出すまでの間に2社ほど受けて、説明の詰まる場所を直す
- 査定期は活動を止めるか、進んでいる1社だけに絞る
- 議会が終わったあとに再開する
山を無視して始めると、中途半端に止まって最初からやり直しになります。
財政課の評価は、なぜ分かりにくいのか
働き方の話をするとき、避けて通れないのが評価の構造です。
財政課の成果は、「使わせなかったこと」と「破綻させなかったこと」です。どちらも、起きなかったことです。
事業課の成果は目に見えます。施設ができた、利用者が増えた、事業が始まった。財政課の成果は、何も起きなかった状態として現れます。
加えて、査定は要求元と利害が正面から対立します。庁内で感謝される場面は多くありません。嫌われることが仕事の一部に含まれている、めずらしい部署です。
ここで大事なのは、この構造を不満として語らないことです。転職の面接でこれを不満の形で出すと、次の職場でも同じことを言うと思われます。
構造として説明してください。「成果が見えにくい仕事を、見えないまま続ける体制で回していた」と言えれば、それはそのまま管理部門の適性として読まれます。
庁内の言葉と、求人票の言葉
働き方に関わる部分を、求人票の言葉に置き換えると次のようになります。
| 庁内での言い方 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 編成方針の作成と示達 | 全社予算方針の策定、年度計画の立案 |
| 査定・ヒアリング | 予実管理、投資判断、予算レビュー |
| 期限が動かない中での進行管理 | スケジュール管理、プロジェクト推進 |
| 全庁からの要求のとりまとめ | 全社横断の調整、業務改革 |
| 決算・財政指標の算定 | 決算業務、経営指標のモニタリング |
| 議会対応 | ステークホルダー対応、渉外 |
このうち、働き方として直接伝わるのは「期限が動かない中での進行管理」です。事業会社でも、決算や取締役会など動かせない期限は必ずあります。そこを回してきた経験として説明すると、通りやすくなります。
民間に移ると、何が変わるか
変わる点を3つ挙げます。
1. 成果が見える形になる
財政課では起きなかったことが成果でしたが、事業会社の管理部門でも同じ構造は残ります。ただし、改善した数字を示せる場面は増えます。予算の精度、締めの日数、レビューの回数。測れるものが増えるぶん、説明はしやすくなります。
2. 断る相手が変わる
査定では、相手は同じ組織の同僚でした。民間の管理部門でも構造は同じですが、相手が売上を持っているという違いがあります。売上を持つ部署からの要求を断るときの力関係は、庁内とは少し違います。ここは慣れが要る部分です。
3. 期限の性質が変わる
法律で決まった期限から、取引や契約で決まった期限に変わります。動かせないという点は同じですが、交渉で動く場合があるという点が違います。一切動かない期限に慣れていると、最初は戸惑うかもしれません。
4. 予算が年に一度ではなくなる
これがいちばん大きい違いかもしれません。自治体では、予算は年に一度確定させ、途中の変更は補正予算という決まった手続きで行います。事業会社では、期中に配分を組み替えることが日常的にあります。
「一度決めたものを動かす」ことへの心理的な抵抗が、最初は強く出ます。財政課では、流用が地方自治法第220条第2項で原則禁止されているので、動かさないことが正しい姿勢として身についているためです。ここは、制度が違うだけだと理解しておけば切り替えられます。
つまずきやすい点
1. 繁忙期に活動を始めて中断する
いちばん多い形です。査定期に書類を作り始めて、面接の日程が組めずに止まる。半年後に再開するときには、作った書類の内容を忘れています。山の谷間から始めてください。
2. 忙しさを転職理由にしてしまう
「業務量が多かった」を理由にすると、応募先でも同じことを言うと思われます。しかも、管理部門は民間でも繁忙期があります。理由は、やってきたことの延長で組んでください。
3. 評価されにくさを不満の形で出す
上に書いたとおりです。構造として説明すれば強みになり、不満として出すと弱みになります。同じ事実でも、置き方で逆になります。
4. 異動の可能性を検討しないまま動く
財政課は異動先の選択肢が広い部署でもあります。企画、税務、会計、公営企業。庁内で移るという選択肢を一度も検討していないなら、先にそちらを確かめたほうが選択肢は減りません。
5. 退職時期の制度面を確認しないまま決める
退職手当や共済の扱いは在職期間で変わる部分があります。手続きの前に、必ず所属の人事担当課と共済組合で確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
自分の場合にどの時期が動きやすいかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第208条と第220条が、会計年度の区切り・枠をまたいだ流用の禁止・翌年度への持ち越しの禁止を定めています。だから財政課の仕事は期限に集中する形になります
- 山は査定期(おおむね11〜1月)と議会期(2〜3月)の2回。さらに夏に決算の締切があり、年に3回、動かせない締切があります
- 活動しやすいのは、決算が議会の認定を通ったあとから、次の編成方針を作るまでの間です
- 財政課の成果は「使わせなかったこと」「破綻させなかったこと」で、起きなかったことが成果になります。この構造は不満ではなく構造として説明してください
- 民間に移って最初に戸惑うのは、仕事の難しさではなく評価の周期です。月次か四半期かを面接で確認してください
- 「いい時期が来たら」と考えていると動けません。谷間に小さい単位で区切って進めてください
よくある質問
財政課は残業が多いと聞きますが、実際どうですか
自治体ごとの実態は公表されていないので、個別の水準をここで断定することはできません。制度から言えるのは、査定期と議会期に業務が集中する構造になっているということだけです。地方自治法が予算の議会提出の期限を定めており、「来月に回す」という選択肢が制度上ないためです。応募先を検討する段階で自分の状況を説明するときは、時間数ではなく「年に3回、動かせない締切がある部署でした」と構造で伝えるほうが正確に伝わります。
財政課の経験は、異動してから何年たっても使えますか
制度の細部は変わるので、交付税の算定や起債の手続きといった制度の知識は、年数がたつと目減りします。一方、査定の判断の型や、期限が動かない中での進め方は、時間がたっても残ります。財政課を離れて年数がたっているなら、制度の知識より判断の型を前に出してください。行き先の選び方は財政課からの転職先に整理しています。
管理職になってからのほうが転職しやすいですか
一概には言えません。管理職の経験は評価されますが、応募できる職位が絞られるぶん、求人の数は減ります。担当として査定を回してきた経験は、事業会社の予算管理や経営企画の実務担当として直接使えます。どの職位で入るかを先に決めてから、時期を考えてください。役職が上がるのを待つことが、必ずしも有利には働きません。