部署別 / 財政課
財政課の面接|聞かれることと、答え方の型
財政課からの面接で聞かれることは、実のところ多くありません。
質問の数が少ないのではなく、同じ論点が形を変えて繰り返されるという意味です。行き先が自治体向けの企業でも、事業会社の経営企画でも、詰められる場所はほぼ共通しています。
だから準備の仕方もはっきりしています。この記事では、実際に出てくる質問を並べ、それぞれをどう答えるかを整理します。
庁内の言葉の言い換えは財政課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先の選び方は財政課からの転職先、書類の作り方は財政課の職務経歴書に分けて書いています。
財政課の仕事は「数字を出すところから始まる」
答え方の前に、一つ確認しておきます。財政課の仕事の性格が、そのまま答えの組み立て方になるからです。
地方公共団体の財政の健全化に関する法律第1条は、この法律が、地方公共団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設け、当該比率に応じて、財政の早期健全化及び財政の再生並びに公営企業の経営の健全化を図るための計画を策定する制度を定めるとともに、その計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講ずることにより、地方公共団体の財政の健全化に資することを目的とすると定めています。
順番に注目してください。
まず比率を公表する。次に、その比率に応じて計画を作らせる。
判断より先に、数字を出すことが制度として決まっています。財政課はこの順番で仕事をしています。
面接の答え方も同じです。印象や姿勢から入らず、数字と事実から入る。これが、この経歴にいちばん合う型です。
質問1:「なぜ転職しようと思ったのですか」
最初に来ます。そして、ここでつまずく人が多い質問でもあります。
避けたい答え方
「行政の限界を感じた」「もっと成長したい」「民間でスピード感のある仕事がしたい」。
どれも悪くはないのですが、中身がありません。加えて、いまの職場を否定する形に聞こえると、次の職場も同じように言われると思われます。
組み立て方
やってきたことを起点にします。
> 財政課で6年、全庁の予算要求を査定してきました。そのなかで、投じた予算がどう使われたかを追う仕組みが弱いことが気になるようになりました。決算では数字は分かりますが、事業が意図した状態になったかまでは追えません。自分としては、投じたあとの結果まで見届けるところに関わりたいと考えるようになり、それができる場所を探しています。
否定していません。やってきたことの延長線上に、次の希望を置いています。
財政課の場合、この形が作りやすいはずです。査定・計画・決算のどこかに、必ず「もっと先まで見たい」と思った部分があります。
質問2:「利益を意識したことはありますか」
ほぼ必ず出ます。行政経験者に対する定番の質問です。
避けたい答え方
「行政には利益がないので、意識したことはありません」。
正直ですが、質問の意図を外しています。聞かれているのは利益そのものではなく、限られた原資をどう配るかを考えたことがあるかです。
組み立て方
> 利益という形ではありませんが、限られた財源を配る判断は毎年していました。一般財源には上限があり、要求の合計は必ずそれを超えます。超えた分をどこで吸収するかを決めるのが査定です。事業の効果と、必要な財源と、その財源を別の事業に回した場合の比較で判断していました。投資対効果の考え方自体は同じだと考えています。
「同じです」と言い切らず、「形は違うが構造は同じ」と示すのが安全です。
自治体向けの企業であれば、ここに一歩足せます。
> 加えて、行政側は予算がついた時点で支出が決まるため、提案する側にとっては「どの年度のどの費目に載るか」が受注の前提になります。この構造は、社内にいた立場から説明できます。
質問3:「意思決定のスピードに耐えられますか」
これも定番です。稟議の段数を責めているわけではありません。自分の判断で動かした範囲があるかを確認しています。
避けたい答え方
「決裁に時間がかかるのは事実ですが、慣れれば対応できます」。
受け身です。聞かれているのは適応力ではなく、判断の経験です。
組み立て方
> 決裁の段数は多い組織でしたが、査定の判断そのものは担当が持っていました。要求を落とすか残すかは、まず担当が案を作ります。年間◯件のうち、上に相談せずに担当限りで方向を決めたものが大半です。一方で、判断を急ぐ場面では材料が揃わないまま決めることもあり、そのときは「どこまで分かっていて、どこから先は仮定か」を明示して進めていました。
段数の話ではなく、自分が決めた範囲の話に切り替える。これが答え方の要点です。
質問4:「予算査定とは、具体的に何をするのですか」
自治体を知らない面接官から来ます。説明の分かりやすさが見られています。
避けたい答え方
制度の説明を始めてしまうことです。地方自治法、編成方針、款項目節。聞かれているのは制度ではなく、あなたの作業です。
組み立て方
1〜2行で制度を畳み、あとは自分の作業を話します。
> 各部署から出てきた予算要求を、金額が妥当かどうか判断する仕事です。具体的には、事業の目的が何で、達成したい状態がどこで、そこに届くのに必要な金額がいくらかを、要求書と実績の資料から確認します。前年度と同額の要求が出てきたときに、前提が変わっていないかを確かめるのがいちばん手間のかかる部分です。年間で◯件を扱い、うち◯件は要求元と直接詰めました。
「金額を減らす仕事」と説明しないでください。この記事の元にした法律でも、基準は「目的を達成するための必要且つ最少の限度」です。減らすことではなく、限度を決めることです。
質問5:「要求を断った経験を教えてください」
経営企画や管理部門の面接で出ます。この経歴でいちばん強く答えられる質問です。
組み立て方
状況 → 何を材料にしたか → どう決着したかの順で話します。
> 前年度と同額の要求が続いていた継続事業で、対象者数が開始時の半分以下になっていたものがありました。担当課は事業の必要性を主張しており、正面から削減を求めると議論が平行線になると判断しました。そこで、削るかどうかではなく、開始時の目的と現在の対象者数を並べる資料を一緒に作るところから入りました。結果として、事業の廃止ではなく規模の縮小と対象の見直しで合意しました。
相手を論破した話にしないでください。面接で評価されるのは、決裂させずに決着させたことのほうです。
質問6:「うちで何ができますか」
いちばん準備の差が出る質問です。応募先の方向によって、答えを完全に変えます。
| 応募先 | 前に出すこと |
|---|---|
| 自治体を顧客にする企業 | 予算がいつ、どの資料に、どの名目で載るか。提案の時期の判断 |
| 経営企画・財務企画 | 全体の配分の判断、断る技術、期限が動かない中での進め方 |
| 公共インフラ・PFI | 中長期の収支の見立て、地方債、債務負担行為 |
| 金融 | 地方債の実務、自治体の財政状況の読み方 |
| 会計・監査・コンサルティング | 決算、公会計の財務書類、指標の分析 |
同じ経歴でも、出す順番を変えるだけで通り方が変わります。
質問7:希望する条件について
給与や勤務条件の話も出ます。ここで長く話す必要はありません。
「現在の水準を基準に考えています」と伝え、具体的な調整は選考が進んでからにするのが一般的な進め方です。面接の初期段階で細かく詰めようとすると、その話が中心になってしまいます。
なお、退職手当や共済の扱いは在職期間で変わる部分があります。手続きの前に、必ず所属の人事担当課と共済組合で確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになる点も、時期を決めるときの材料になります(公務員に雇用保険がない理由)。
逆質問で聞いておくこと
最後の「何か質問はありますか」は、確認の機会です。財政課からの転職では、次の2つを必ず聞いてください。
1. 配属予定の部門と、担当する顧客の区分
自治体向けの事業を持つ会社でも、部門によっては民間顧客が中心です。「行政向けの事業もあります」という説明と、「あなたが担当するのは行政です」は別の話です。
2. 意思決定の単位
方針が変わる周期を聞いておきます。月次で締める会社と、週単位で動く会社では、働き方がかなり違います。
つまずきやすい点
1. 制度の説明が長くなる
いちばん多い失敗です。交付税や起債の仕組みを丁寧に説明してしまい、自分の話に入る前に時間が過ぎます。制度は1〜2行で畳んでください。面接官が詳しく知りたければ、追加で聞いてきます。
2. 数字を持っていない
「たくさんの事業を査定しました」では答えになりません。年間の件数、要求元の部署数、ヒアリングを行った件数、編成から決算まで通した回数。この4つは暗記しておいてください。正確でなくてよく、概数で構いません。
3. 「調整力」で説明を終える
庁内調整は確かに大変ですが、その言葉だけでは何ができる人か分かりません。誰と誰の何が対立していて、どういう材料を出して、どう決着させたか。そこまで話して初めて、プロジェクトを進められる人として読まれます。
4. 現職を否定して転職理由を作る
「行政の限界」「前例主義」といった言葉で理由を作ると、次の職場でも同じ形で不満を言うと思われます。やってきたことの延長で説明してください。
5. 落とした案件の話を用意していない
質問5は必ずと言っていいほど出ますが、準備していない人が多い質問です。1件は必ず用意しておいてください。
答え方の組み立ては、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 財政健全化法は、比率を公表してから、その比率に応じて計画を作らせる構造です。答え方も同じで、印象ではなく数字と事実から入ります
- 転職理由は、現職を否定せず、やってきたことの延長で組みます
- 「利益を意識したことは」には、「形は違うが、限られた原資を配る判断は毎年していた」と答えます
- 「スピードに耐えられるか」は、稟議の段数ではなく、自分の判断で動かした範囲を話します
- 「査定とは何か」には、制度を1〜2行で畳み、自分の作業を話します。「減らす仕事」と説明しないでください
- 落とした案件の話を1件、必ず用意してください。この経歴でいちばん強く答えられる質問です
- 逆質問では、配属予定の顧客区分と意思決定の単位を確認します
よくある質問
行政経験しかないことを、面接でどう扱えばいいですか
隠すより先に触れたほうが通りやすい、というのが実務的な感覚です。ただし「行政しか知らないので不安です」と言う必要はありません。違いを把握していることを示してください。「売上目標が個人に立つ働き方は経験していないので、そこは入ってから慣れる部分だと考えています」と言えれば、準備してきた証拠として読まれます。分かっていない人と、分かったうえで来ている人では、扱いが変わります。
財政課の仕事は、面接官に理解してもらえますか
自治体を顧客にしている企業なら、ほぼ理解されます。それ以外の企業では、理解してもらう前提で説明を用意しておいてください。有効なのは、社内の似た部署に置き換えることです。「全部署から予算要求が上がってきて、それを配分する部署です。御社でいうと経営企画の予算管理に近いと考えています」と言えば、その先の話が早くなります。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、財政課からの転職では方向が複数あり、方向ごとに求められる説明が変わるため、1方向だけに絞ると選択肢が少なくなります。自治体向け事業と経営企画のように、説明の型が近い2方向を並行して見ておくと、書類の作り直しが少なく済みます。方向ごとの違いは財政課からの転職先に整理しています。