部署別 / 税務課
税務課からの転職先|経験が値になる5つの方向
税務課から動こうとすると、多くの方が「税」で探し始めます。
そこから広がらないまま、求人の数が思ったより少ないと感じて止まる。よくある流れです。
実際には、この部署の経験が値になる方向は5つあります。分かれ道になるのは、自分が持ち出すのが「賦課の判断」なのか「徴収の交渉」なのかという点です。
この記事では5方向を並べ、合いにくい方向も同じだけ書きます。言い換えの一覧は税務課の経験は民間で何と呼ばれるかに整理しているので、そちらと合わせて読んでください。
「待つこと」にも根拠が要ります
先に、税務課の経験の値がどこにあるかをはっきりさせます。
取り立てる話ばかりが注目されますが、税務課は「待つ判断」も法律に基づいて行っています。
地方税法第15条第1項は、地方団体の長は、各号のいずれかに該当する事実がある場合において、その事実に基づき納税者等が徴収金を一時に納付することができないと認められるときは、その金額を限度として、その者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができると定めています。
各号として挙げられているのは、財産について震災・風水害・火災その他の災害を受けたとき、又は盗難にかかったときなどの事実です。
読み取ってほしいのは3つです。
1. 待つには、当てはまる事実が要る2. 申請が要る3. 期間に上限がある(1年以内)
つまり、待つかどうかを気持ちで決めていないということです。相手が困っているから待つ、のではありません。当てはまる事実があるかを確かめ、申請を受け、期限を切って待ちます。
民間の債権管理でも、支払が苦しい相手と条件を組み直すことがあります。ただし、民間ではそれを会社の判断で決められます。税務課は決められません。要件に当てはまるかどうかを判断するという形になります。
だから税務課の方は、「待つ理由を説明できる」という形で経験を積んでいます。これは、回収の現場ではかなり珍しい能力です。
方向1:金融・与信・債権管理
徴収を担当していた方の、いちばん自然な接続先です。
銀行、信用金庫、信販、リース、保証会社、債権回収を扱う会社などで、督促から回収、条件変更、最終的な処理までを一通り扱ってきた経験が直接使えます。
効くのは3点です。
財産調査。預貯金、給与、不動産、保険。どこに資産があるかを調べて、回収の見込みを立てる工程です。
条件変更の交渉。上に書いた徴収猶予や分割納付がこれに当たります。相手の状況を聞き取り、払える形を組む。
やめる判断。滞納処分の停止や不納欠損は、民間でいう貸倒処理です。取りに行く判断だけでなく、手を引く判断をした経験がある人は多くありません。
方向2:事業会社の請求・回収の管理部門
通信、電力、ガス、教育、医療、サブスクリプション型のサービスなど、利用者が多く、毎月の請求と未収の管理が発生する事業を持つ企業です。
ここで効くのは、件数の多さと、優先順位のつけ方です。税務課は対象者が数万から数十万件の規模になります。全件に同じ手をかけることはできないので、金額、経過期間、資力の見込みで手の掛け方を分けているはずです。この振り分けの設計が、そのまま業務設計として読まれます。
もう一つ、督促のタイミングと文面を設計してきた経験も使えます。いつ、どの段階で、どういう文面を送るか。民間でも同じ設計をしています。
方向3:不動産・資産評価
固定資産の評価を担当していた方の接続先です。
土地と家屋を現地で確認し、基準に照らして評価する。決まった基準で大量に評価をこなしてきた経験は、不動産会社、鑑定、アセットマネジメント、金融機関の担保評価といった領域で読まれます。
評価替えの年度に大量の物件を扱った経験があれば、件数を必ず書いてください。それだけで規模が伝わります。
この方向は求人の数が多くありませんが、代わりのいない経験でもあります。方向1と並行して見ておくのが現実的です。
方向4:自治体を顧客にする企業
税務系のシステム、コンビニ収納や電子納付のサービス、滞納整理の支援を行う会社などです。
ここでは、課税と収納の実務を知っていること自体が値になります。
- どの時期に何が発送されるのか
- どの帳票がどう回るのか
- どこで例外処理が発生するのか
- 当初課税と更正でシステムの動きがどう違うのか
外からは見えません。システムの導入で現場が止まる原因の多くは、この理解の欠落から来ます。
方向5:士業事務所・税務系のコンサルティング
税理士事務所、会計事務所、税務系のコンサルティング会社です。
賦課を担当していた方の接続先で、とくに個人住民税や固定資産税の実務を知っていることが効きます。
ただし注意点が2つあります。1つは、求人の多くが資格を前提にすること。税理士や科目合格が要件になっている募集が少なくありません。もう1つは、扱う税目が変わること。事務所が中心に扱うのは法人税、所得税、相続税で、地方税は周辺に位置づけられることが多くなります。
この方向を狙うなら、資格と税目の両方を確認してから応募してください。
合いにくい方向も書いておきます
個人の売上目標が明確に立つ職種
税務課の仕事は、決まった基準に照らして判断し、決まった手続で回収することに価値があります。営業は自分で取ってくることに価値があります。評価される行動が違います。合わないという意味ではなく、切り替えが要ることを自覚しているかが面接で見られます。
与信の段階から関わる仕事
税務課は相手を選べません。課税対象は法律と条例で決まるので、「この相手とは取引しない」という判断が最初から存在しません。民間の与信は、取引するかどうかを決めるところから始まります。ここは経験していない領域なので、入ってから学ぶ前提で応募してください。
手続が未整備で、その場で判断を求められる環境
税務課の強みは要件に照らして判断することです。照らす先が無い環境では力が出にくくなります。逆に言えば、手続を作る側に回る前提なら合います。面接で「回収のルールはどの段階か」を確かめてください。
資格は、方向を決めてから考える
順番を間違えないでください。方向を決めてから、必要かどうかを判断します。
税理士・簿記
方向5(士業)ではほぼ前提になります。方向1(金融)と方向2(請求・回収)では、あると読みやすくなる程度で、実務経験のほうが直接効きます。方向3(不動産評価)では、簿記より不動産系の資格のほうが噛み合います。
不動産系の資格
方向3を狙うなら検討の余地があります。ただし評価の実務経験があるほうが先に読まれます。資格は補強として効きます。
取る前に考えること
税務課の繁忙は、当初課税の時期と、出納整理から決算の時期に重なります。この時期に学習を始めて中断する例が多いので、始めるなら山を越えてからにしてください。そして、資格を取ってから動こうとすると、動くのが1年以上先になります。いま応募できる方向があるなら、先に受けてから必要性を判断するほうが早く終わります。
探すときに使う言葉
| 持ち出すもの | 検索に使う言葉 |
|---|---|
| 督促・催告 | 督促業務、回収、コレクション |
| 財産調査 | 与信調査、信用調査、回収可能性の評価 |
| 差押え・換価 | 債権回収、法的措置、債権管理 |
| 徴収猶予・分割納付の協議 | 条件変更、ワークアウト、顧客対応 |
| 滞納処分の停止・不納欠損 | 貸倒処理、債権放棄、償却 |
| 固定資産の評価 | 不動産評価、資産査定、担保評価 |
| 課税資料の収集と突合 | データ照合、名寄せ、審査業務 |
| 税額の算定・通知書の作成 | 請求管理、料金計算 |
部署ごとの対応は自治体の部署別 仕事ガイドにもまとめています。
つまずきやすい点
1. 「税」だけで検索して止まる
上の表のとおり、同じ経験が複数の職種名で募集されています。検索する語を変えるだけで、見える求人が変わります。
2. 賦課と徴収を分けずに応募する
方向によって読まれる経験が違います。どちらを何年やったかを整理してから方向を選んでください。
3. 方向5(士業)を資格の確認なしに選ぶ
資格が前提の募集が少なくありません。要件を確認してから応募してください。
4. 取り立ての話だけを前に出す
差押えの件数だけを書くと、強く出る人に見えることがあります。待つ判断と、やめる判断もあわせて書いてください。回収の現場では、その3つを使い分けられることが評価されます。
5. 応募先を1方向に絞りすぎる
方向3(不動産評価)と方向5(士業)は求人の数が限られます。方向1か方向2を並行して見ておくと、選択肢が減りません。
自分の経歴がどの方向に向いているかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方税法第15条は、災害や盗難などの事実に基づき、申請により1年以内の期間を限り徴収を猶予できるとしています。待つことにも根拠が要るという構造です
- だから税務課の方は、「待つ理由を説明できる」という珍しい形で経験を積んでいます
- 5方向は、金融・与信・債権管理/事業会社の請求・回収/不動産・資産評価/自治体を顧客にする企業/士業事務所・税務系コンサルです
- 分かれ道は、賦課の判断を持ち出すか、徴収の交渉を持ち出すかです。どちらを何年やったかを先に整理してください
- 合いにくいのは、個人の売上目標が立つ職種、与信の段階から関わる仕事(相手を選ぶ経験がない)、手続が未整備の環境です
- 取り立ての話だけを前に出さないでください。待つ判断とやめる判断を使い分けられることが評価されます
よくある質問
徴収の経験は、きつい仕事だと思われませんか
思われません。むしろ、払わない相手・払えない相手の両方と向き合ってきた人として読まれます。回収の現場は民間でも人が定着しにくい領域なので、続けてきたこと自体が材料になります。書くときは、件数と、判断の使い分け(取る・待つ・やめる)を並べてください。
税務課にいた年数が短いのですが、応募できますか
できます。方向2(事業会社の請求・回収)は、年数より扱った件数と振り分けの設計が問われます。督促と催告だけでも、件数の規模と対応の順序を説明できれば話は組めます。一方、方向1(金融)と方向3(不動産評価)は、差押えまで通したか、評価替えを通したかが効くので、そこが薄いなら方向2を先に見てください。
国税と地方税では、経験の扱いが違いますか
扱う税目と手続に違いはありますが、民間から見たときの読まれ方は近くなります。どちらも「法律に基づいて賦課し、督促し、財産を調査し、差し押さえる」という流れを持っているためです。書類では、自分が担当した税目と、どの工程まで通したかを明示してください。制度の違いより、通した工程のほうが読まれます。