業界研究 / 環境・GX
未経験から環境・GXに入るには|公務員経験の使い方
「環境の専門知識も技術の資格もないので、環境・GXの会社は無理だと思っていました」——財政課の方からよく聞く言葉です。この認識は、施設の設計や環境の測定といった技術の領域については正しく、業界全体については違います。環境・GXには、環境エンジニアリングの会社の公共営業と事業企画、自治体の脱炭素を支援する会社の企画、再エネの事業会社の自治体連携、収集・運搬と施設運営の受託会社の管理部門といった、技術の資格を前提としない領域があり、そのうち自治体と接点を持つ領域では、財政課の経験が「未経験」ではなく「経験者」として扱われます。
この記事では、「未経験」を3つに分けて自分がどれに当たるかを確かめ、財政課の経験が効く入り口の枠を順に整理し、資格の位置づけ、在職中にできる準備、公務員が使えない支援制度、服務の線を書きます。業界の構造と職種ごとの評価は環境・GXは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に、志望動機の組み立ては志望動機をどう組み立てるかに、処遇の決まり方は年収と働き方に書いています。
業界構造の要点——「技術」と「資格がなくても担う領域」の線
都道府県と市町村は地方公共団体実行計画を策定し(地球温暖化対策の推進に関する法律第21条)、市町村は一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条)、計画に従って収集・運搬・処分を行います(第6条の2)。廃棄物処理施設の整備と運営は、DBOやPFI法(第2条)の形で組まれることがあり、複数年の契約は債務負担行為(地方自治法第214条)を伴います。再エネの発電事業は計画の認定を受け(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第9条)、公共施設の管理は指定管理(地方自治法第244条の2)の形もあります。
施設の設計と運転、環境の測定、排出の算定は技術の資格と経験が前提ですが、この線の外側——公共営業と事業企画、脱炭素の支援の企画、再エネの自治体連携、受託会社の管理部門——は、技術の資格のない職員が担います。「未経験」かどうかは、この線のどちら側の業務に、自治体との接点があるかどうかで変わります。
「未経験」を3つに分ける
| 未経験の種類 | 財政課の方の実態 | 会社での重み |
|---|---|---|
| 自治体側未経験(施設整備の財源、DBO・PFIの財政面の論点、脱炭素の事業と補助金の周期、委託の審査を知らない) | 経験者。起債と補助と一般財源を組み、DBOとPFIを比較し、脱炭素の事業を査定し、委託と指定管理を審査する側を実務で回している | 自治体向けの公共営業と企画では最も重い。「外から推し量った」職員が持っていない知識 |
| 民間未経験(会社で働いたことがない) | 未経験。ただし、会社が作った提案と見積を自治体側で読み、審査している | 中程度。入社後の慣れで補える。選考では「判断する側から提案する側へ」の転換と、営業の目標への姿勢で見られる |
| 技術未経験(施設の技術、排出の算定、電力の制度を知らない) | 未経験 | 公共営業と企画では入社後に学ぶことを求められる。技術者との協働の姿勢は面接で必ず見られる |
財政課の方が「未経験」と感じているのは後ろの2つですが、自治体向けの公共営業と企画で最も重いのは1つ目で、そこは経験者です。この認識を直すことが、応募できる枠を見つける最初の一歩です。ただし、会社では2つ目のうち「営業の目標への姿勢」と3つ目のうち「技術者との協働の姿勢」を面接で必ず確かめられます。
入り口になる枠——財政課の経験が効く順
未経験からの入り口は、財政課の経験が効く順に並べると次のようになります。
| 枠 | 主な業務 | 財政課の経験の効き方 | 求人の見つけ方 |
|---|---|---|---|
| 環境エンジニアリングの会社の公共営業・事業企画 | 廃棄物処理施設の提案、DBO・PFIの事業の組み立て、自治体との調整 | 直接効く。施設の財源とDBO・PFIの財政面を内側で見た人は会社にいない | 求人票に「自治体」「公共」「官公庁」「DBO」「PFI」の語があるか。営業の目標への姿勢を①で示す |
| 自治体の脱炭素を支援する会社の企画 | 実行計画の策定支援、公共施設の省エネの提案、補助金を使う事業の組み立て | 直接効く。脱炭素の事業の予算と補助金の周期を査定する側で見ている | 求人票に「脱炭素」「実行計画」「自治体」「補助金」の語があるか |
| 再エネの事業会社の自治体連携 | 地域の再エネの事業の企画、自治体との協定、公共施設への導入 | 出資と貸付の審査の視点が効く。エネルギーに未経験から入るにはとあわせて | 求人票に「自治体連携」「地域」「協定」の語があるか |
| 収集・運搬と施設運営の受託会社の管理部門 | 委託の受注、指定管理、実績報告、経営管理 | 委託と指定管理の審査の視点が効く。現場の運営は未経験として扱われる | 求人票に「受託」「指定管理」「管理部門」の語があるか |
| 技術職・運営の現場 | 施設の設計、運転、環境の測定 | 財政の経験は効きにくい。技術未経験者として扱われる | 資格と経験を前提にする求人が多い |
上の2つは「自治体側の経験者」として応募でき、3つ目と4つ目は「経験者の要素を持つ未経験者」として、5つ目は「未経験者」として応募することになります。同じ会社の中でも、どの枠で入るかで「未経験」の重みが変わるので、応募の前に求人票で業務を特定してください。
資格の位置づけ——取るべきか
資格は「入り口の条件」と「入った後の伸び」を分けて考えます。
入り口の条件としては、技術の資格は不要で、公共営業と企画と管理部門の領域に法律上の資格の要件はありません。環境エンジニアリングの会社の公共営業、脱炭素の支援の企画、再エネの自治体連携は、資格ではなく「自治体の側で何を見ていたか」と「技術者との協働の姿勢」と「営業の目標への姿勢」で見られます。
入った後の伸びとしては、施設の技術と排出の算定と電力の制度を学ぶことが会社の中での位置を変えます。環境や省エネに関わる資格を取る人もいますが、法律上の要件ではなく、会社の考え方によります。公共営業では施設の技術の基礎、脱炭素の企画では算定の方法を入社後に学ぶ前提です。
資格の取得を応募の条件にしないでください。自治体向けの公共営業と企画の枠は求人が少なく、出たときに応募できるかで決まります。技術の学習は在職中に並行して進めつつ、経験者として通る枠は今の経歴で応募する、と分けて考えます。
自分の経歴が「経験者」として通る枠か「未経験者」として入る枠かは、求人票を一緒に見ると判断しやすくなります。どの枠で応募できるかから相談できます。
在職中にできる準備——順序
在職中の準備は、次の順序で進めると、業務と重なる部分が多く、無理がありません。
1. 施設整備の財源の組み方を「型」にする。廃棄物処理施設などの整備で、起債と補助と一般財源をどう組み、償還の見通しと債務負担行為をどう審査したかを、個別の施設ではなく型として整理します。自分の担当でなくても、自治体の施設整備の財源の構成を読んでおきます。
2. DBOとPFIの検討の「論点」を型にする。設計・建設・運営を一括で委ねる方式の検討で、財政負担の比較、リスクの分担、運営の期間の何が論点になり、どの方式がどの理由で選ばれ、提案のどこが見られたかを型にします。公共営業は、この論点を知っている人がいると、自治体が判断できる提案を組めます。
3. 脱炭素の事業と補助金の周期を型にする。実行計画(温対法第21条)に伴う事業の予算で、国の補助と起債をどう組み、どこに予算が付いたか、公共施設の光熱費と投資の関係をどう見たかを型にします。脱炭素の支援の会社は、この周期を知っている人がいると、提案の順序と時期を組めます。
4. 施設の技術と排出の算定の基本を読む。廃棄物処理施設の仕組み、実行計画の区域施策と事務事業編の違い、再エネの認定の制度(再エネ特措法第9条)を、公開されている資料で読んでおきます。庁内研修(地方公務員法第39条)や自治体職員向けの脱炭素と公共施設の研修があれば、今の業務の能率を上げる研修として受けられます。
5. 求人票で「自治体」「公共」「官公庁」「DBO」「PFI」「脱炭素」「実行計画」の語を探す。環境・GXの求人は技術職と一般の企業向けが多く、自治体向けの枠は少ないので、語で絞って探します。
公務員が使えない支援制度と、代わりの機会
雇用保険の教育訓練給付金(雇用保険法第60条の2)は、対象が雇用保険の被保険者または被保険者でなくなってから一定期間内の人で、支給要件期間が3年以上あることが条件です。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外なので(同法第6条第6号)、在職中の公務員はこの給付の対象になりません。環境や省エネの講座が指定の教育訓練になっていても、在職中は使えないということです。民間に転職した後、被保険者としての期間が要件を満たせば対象になります。
代わりに使えるのは、前述の庁内研修(地方公務員法第39条)と、自治体職員向けに開かれている外部の研修です。「転職の準備」としてではなく「今の業務の能率を上げる研修」として探すと、庁内の手続きも通りやすく、内容も業務に直結します。脱炭素と公共施設のマネジメントの研修は自治体職員向けに開かれているものがあり、会社の側から見ても「財源を組む側の研修を受けた人」として通ります。
服務の線——在職中の準備で触れてはいけないこと
在職中の準備には、地方公務員法の線があります。
営利企業への従事(第38条)。在職中に会社の業務を手伝う、報酬を受けて提案書や事業計画の作成を請け負う、といったことは、任命権者の許可がなければできません。「実務経験を積むために手伝う」は、この線に触れます。
秘密を守る義務(第34条)。個別の施設の方式の選定の経緯、他社の提案との比較、未公表の次の施設の検討、事業費の見込み、出資の未公表の判断は、退職後も秘密です。準備で「型」にするのは制度と業務の型で、個別の内容は手元に置かないでください。施設の整備は会社にとって数年かけて追う案件で、この線は重く見られます。
再就職者による依頼等の規制(第38条の2)。自分の自治体の施設を建設・運営している会社、脱炭素の事業や収集・運搬を受託している会社、再エネの協定を結んでいる会社に移る場合、退職後に元の職場へ職務上の依頼をすることには規制があります。在職中に応募する場合は、勤務時間外に行い、接点があることを応募先にも伝えるほうが安全です。
内定後は、労働基準法第15条により労働条件が書面などで明示されるので、未経験での入社に伴う条件(試用期間、担当する業務が公共営業・企画に特定されているか、業務と就業場所の変更の範囲に技術や運営の現場、施設の建設地が含まれるか——労働基準法施行規則第5条第1号の3、交代制と出張の扱い——同条第2号、賃金の内訳と受注に連動する評価——同条第3号)を通知書で確かめてから承諾してください。
行政が相手の求人は、掲載中のものから「自治体向けの公共営業や企画の枠があるか」「未経験可の条件」「赴任の有無」が業務内容で見えます。行政が相手の求人を見てみる
まとめ
- 環境・GXには、技術(設計・運転・測定・算定)の外側に、公共営業と事業企画、脱炭素の支援の企画、再エネの自治体連携、受託会社の管理部門といった、資格を前提としない領域がある
- 「未経験」は自治体側未経験・民間未経験・技術未経験の3つに分かれ、財政課の方は1つ目については経験者。自治体向けの公共営業と企画では最も重い
- 入り口は環境エンジニアリングの公共営業・事業企画→脱炭素の支援の企画→再エネの自治体連携→受託会社の管理部門→技術職の順に財政課の経験が効く。上の2つは経験者として応募する
- 技術の資格は不要で、公共営業と企画と管理部門に法律上の資格の要件はない。技術と算定は入社後に学ぶ前提。資格の取得を応募の条件にしない
- 在職中の準備は、施設整備の財源の型→DBO・PFIの論点の型→脱炭素の事業と補助金の周期の型→技術と算定の基本→求人票の語の順
- 教育訓練給付金は在職中の公務員は対象外(雇用保険法第6条第6号)。庁内研修と自治体職員向けの脱炭素と公共施設の研修を「業務の能率を上げる研修」として使う
- 在職中に会社の業務を手伝わない(地方公務員法第38条)。個別の施設の選定や事業費の見込みは持ち出さない(第34条)。接点のある会社への応募は隠さない(第38条の2)
よくある質問
30代後半で、技術も民間も未経験です。年齢で入り口は狭くなりますか
枠によります。技術職と運営の現場は、資格と経験を一から積む前提の枠なので、年齢と経験の組み合わせで見られ、会社の考え方で差があります。一方、環境エンジニアリングの会社の公共営業と事業企画、脱炭素の支援の企画では、会社が欲しいのは「施設の財源を組む側、DBOとPFIを検討する側、脱炭素の事業を査定する側にいた人」で、財政課での年数はそのまま経験の厚みとして扱われます。公共営業は数年かけて案件を追う仕事で、自治体との調整の経験がある人ほど動きやすい面もあります。年齢で狭くなるのは技術未経験者として入る枠で、経験者として入る枠では、年数はむしろ材料です。どちらの枠に応募するかを先に決めてください。
環境や省エネの資格を取ってから応募したほうが有利ですか
枠で分かれます。技術職と運営の現場では、資格が前提になる職種があり、取得は入り口の条件になります。公共営業と企画では、資格より「施設の財源、DBO・PFIの検討、脱炭素の事業の査定の経験」が先に見られ、技術と算定は入社後に技術者に教わる前提で通ることがあります。求人の少ない枠ほど、出たときに応募できるかで決まるので、資格の取得を応募の条件にせず、技術の基本の学習は在職中に並行して進めてください。いずれの資格も、公共営業と企画の入り口では法律上の要件ではなく、会社の考え方によります。
在職中に、環境エンジニアリングの会社が主催する自治体向けの施設整備セミナーに参加してよいですか
自治体職員向けに公開されているセミナーに、業務の一環として、または自分の時間に参加すること自体は問題ありません。庁内の手続き(研修としての参加か、私的な参加か)に従ってください。線が引かれるのは、参加をきっかけにその会社の業務を報酬を受けて手伝うこと(地方公務員法第38条の営利企業への従事の制限)と、セミナーの場で自分の自治体の未公表の次の施設の検討や事業費の見込み、方式の選定の経緯を話すこと(第34条)です。また、その会社に応募する意思がある場合、在職中のやり取りは勤務時間外に行い、自分の自治体との接点(施設の建設・運営、公募への参加)があるなら応募先にも伝えておくほうが安全です(第38条の2)。
出典
- 地球温暖化対策の推進に関する法律 第21条(地方公共団体実行計画等)|e-Gov法令検索
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第6条(一般廃棄物処理計画)/第6条の2(市町村の処理等)|e-Gov法令検索
- 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 第9条(再生可能エネルギー発電事業計画の認定)|e-Gov法令検索
- 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第2条(定義)|e-Gov法令検索
- 地方自治法 第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)/第244条の2(公の施設の設置、管理及び廃止)|e-Gov法令検索
- 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条(営利企業への従事等の制限)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)/第39条(研修)|e-Gov法令検索
- 雇用保険法 第6条(適用除外)/第60条の2(教育訓練給付金)|e-Gov法令検索
- 労働基準法 第15条(労働条件の明示)|e-Gov法令検索
- 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索