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業界研究 / 環境・GX

環境・GXは公務員のどの経験を評価するか

環境・GXは、財政課の方が「環境の専門知識や技術の資格がなければ関係のない世界」と感じて候補から外しがちな業界です。この感覚は、施設の設計や環境の測定といった技術の領域については正しく、業界全体については違います。環境・GXには、廃棄物処理施設の整備と運営を担う環境エンジニアリングの会社の公共営業と事業企画、自治体の脱炭素を支援する会社の企画、再生可能エネルギーの事業会社の自治体連携、環境系コンサルといった、技術の資格を前提としない領域があり、そのうち自治体と接点を持つ領域では、財政課の経験が直接効きます。

自治体の側から見ると、財政課は廃棄物処理施設の整備の起債と補助を審査し、施設のDBOやPFIの財政面を検討し、脱炭素の事業の予算を査定し、公共施設への再エネの導入の財政面を見てきた部署です。都道府県と市町村は温室効果ガスの排出の削減のための地方公共団体実行計画を策定し(地球温暖化対策の推進に関する法律第21条)、市町村は一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条)、その計画に従って一般廃棄物を収集・運搬・処分します(第6条の2)。再生可能エネルギーの発電事業は計画の認定を受け(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第9条)、地方公共団体は環境の保全のための施策を実施します(環境基本法第36条)。環境の事業を「発注し、予算を付け、起債と補助で財源を組む側」で見てきた人は、環境・GXの会社の側では少数です。

この記事では、環境・GXの業界構造(実行計画と処理計画、施設の整備と運営、再エネ、自治体との接点)を法律で押さえたうえで、財政課の経験のうちどこが評価され、どこが評価されないかを、職種ごとに整理します。インフラの整備と運営の構造はインフラは公務員のどの経験を評価するかに、エネルギーの事業の構造はエネルギーは公務員のどの経験を評価するかに書いており、環境・GXと重なる部分があります。

業界構造——実行計画と処理計画、施設の整備と運営、再エネ

都道府県と市町村は、地球温暖化対策計画に即して、自らの事務と事業に関する温室効果ガスの排出の削減の措置の計画(地方公共団体実行計画)を策定します(地球温暖化対策の推進に関する法律第21条)。市町村は一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条)、計画に従って収集・運搬・処分を行います(第6条の2)。廃棄物処理施設の整備と運営は、自治体が発注する大きな事業で、設計・建設・運営を一括で委ねるDBOや、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律第2条)の形で組まれることがあります。再エネの発電事業は計画の認定を受け(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第9条)、公共施設への導入は自治体の予算と公民連携で進みます。

自治体との接点は、次の形で現れます。

接点の形内容法律上の前提財政課の関わり
廃棄物処理施設の整備・運営焼却施設やリサイクル施設の設計・建設・運営、DBO、PFI廃棄物処理法第6条・第6条の2、PFI法第2条、地方自治法第234条起債(地方財政法第5条)と補助の財政面の審査、DBO・PFIの財政面の検討、債務負担行為(地方自治法第214条)
脱炭素の事業実行計画の策定支援、公共施設の省エネ、電力の調達温対法第21条脱炭素の事業の予算の査定、公共施設の光熱費と投資の財政面
再エネの導入公共施設への太陽光の導入、地域の再エネの事業への出資や連携再エネ特措法第9条、出資の財源は地方財政法第5条導入の財政面の検討、出資と貸付の審査
収集・運搬と公共施設の管理収集・運搬の委託、施設の指定管理廃棄物処理法第6条の2、地方自治法第244条の2委託料と指定管理料の査定、実績報告の審査
環境の計画と調査環境基本計画、環境影響の調査、実行計画の区域施策環境基本法第36条、温対法第21条計画に伴う事業の予算の査定

財政課は、環境・GXの会社が「外から提案し、受注する」案件のほとんどで、内側にいた部署です。この位置が評価の土台になります。

財政課の経験が効く領域——4つ

1. 施設整備の財政面の審査の経験。廃棄物処理施設の整備で、起債と補助と一般財源をどう組み、償還の見通しをどう立て、複数年の債務負担行為をどう設定したか——財政課はこれを審査してきました。環境エンジニアリングの会社の公共営業と事業企画にとって、「自治体が施設の財源をどう組み、どこで判断が止まるか」を内側から知っている人は、会社の側にいません。

2. DBOとPFIの財政面の検討の経緯。設計・建設・運営を一括で委ねる方式の検討で、財政面から何が論点になり(財政負担の比較、リスクの分担、運営の期間)、どう決まったか——財政課はこの検討に関わってきました。会社の提案が自治体の側でどう評価されるかを知っている人は、提案の組み方を変えられます。

3. 脱炭素の事業と補助金の活用の視点。脱炭素の事業の予算で、国の補助と起債と一般財源をどう組み、公共施設の光熱費と投資の関係をどう見たか——財政課は実行計画に伴う事業を査定してきました。自治体の脱炭素を支援する会社にとって、「自治体が補助金をどう使い、どこで予算が付くか」は提案の順序を組むうえで効きます。

4. 委託と指定管理の審査の視点。収集・運搬の委託、施設の指定管理で、積算を査定し、実績報告で戻した経験——収集・運搬と施設の運営を受託する会社のほとんどは、この審査を通ります。

職種ごとの評価——財政課の経験はどこで効くか

職種業務財政課の経験の評価評価される部分評価されない部分
環境エンジニアリングの会社の公共営業・事業企画廃棄物処理施設の提案、DBO・PFIの事業の組み立て、自治体との調整高い施設整備の財政面、DBO・PFIの財政面の検討の経緯、債務負担行為と起債の仕組み施設の技術と設計は別の経験
自治体の脱炭素を支援する会社の企画実行計画の策定支援、公共施設の省エネの提案、補助金を使う事業の組み立て高い脱炭素の事業の予算の査定、補助金の活用の視点、年度の周期省エネの技術と算定の方法は別の経験
再エネの事業会社の自治体連携地域の再エネの事業の企画、自治体との協定、公共施設への導入中〜高出資と貸付の審査の視点、公共施設の導入の財政面発電の技術と電力の制度は別の経験
収集・運搬と施設運営の受託会社の管理部門委託の受注、指定管理、実績報告、経営管理中委託と指定管理の審査の視点、実績報告の作り方現場の運営と安全の管理は別の経験
環境系コンサル環境の計画の策定支援、環境影響の調査中〜高自治体の内側で計画と事業がどう組まれるかシンクタンクに近い評価

財政課の経験が最も評価されるのは、環境エンジニアリングの会社の公共営業・事業企画と、自治体の脱炭素を支援する会社の企画です。技術の資格は要らず、「施設と事業の財源を組む側にいた」ことが価値になります。

評価されない経験——3つの落とし穴

1つ目は、「起債と補助を審査していたから環境が分かる」の一般化。財政課が見ていたのは施設と事業の財源で、環境の事業は施設の技術、排出の算定、電力の制度、地域の合意と結びついています。「環境が分かる」と言うより、「自治体が施設の財源をどう組み、どこで判断が止まるかを知っている」と言うほうが、会社には伝わります。技術と算定の方法は別の経験として学ぶ前提です。

2つ目は、自分の自治体の運用の一般化。施設整備の財源の組み方、DBOとPFIの考え方、脱炭素の事業の位置づけは自治体で違います。「うちの市ではこうだった」を「自治体はこうだ」と言うと、複数の自治体の施設を手がけてきた会社の営業には浅く見えます。「自治体の内側では、この判断をこう見る」と、判断の型で語ってください。

3つ目は、技術と現場への敬意を欠く言い方。「施設は高すぎる」「脱炭素は補助金ありきだ」といった言い方は、施設の技術と現場を知る面接官には、施設の安全と長期の運営に技術が必要な構造を理解していないと見られます。財政課の経験は「財源を組む側の目で、会社の提案を自治体が通せる形に組み立てる」ことで効き、「費用を評価する」ことで効くのではありません。

自分の経歴が、環境エンジニアリングの会社と脱炭素の支援の会社と再エネの事業会社のどこで、どの職種として通るかは、一人で判断するより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

入り方——職種の選び方と、準備

職種は「自治体との接点」で選びます。財政課の経験が直接効くのは、環境エンジニアリングの会社の公共営業・事業企画と、自治体の脱炭素を支援する会社の企画です。求人票に「自治体」「公共」「官公庁」「DBO」「PFI」「脱炭素」「実行計画」の語があるかを確かめ、なければ「環境に興味がある」だけの応募になり、評価は下がります。

準備は、財政課の業務を「施設整備の財源」「DBO・PFIの検討」「脱炭素の事業と補助金」の3つに分けて棚卸しすることから始めます。施設整備で起債と補助と一般財源をどう組み、償還と債務負担行為をどう審査したか。DBOとPFIの検討で財政面の何が論点になったか。脱炭素の事業で補助金をどう使い、どこで予算が付いたか。それぞれについて、「法律上の根拠」「自分が見た箇所」「直した経験」を並べます。

再エネの事業への出資や協定に関わった経験は、別に取り出してください。地域の再エネの事業への出資と貸付の審査、公共施設への導入の財政面の検討は、再エネの事業会社の自治体連携にとって欲しい視点です。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続くので、未公表の検討の内容は型にとどめます。

自分の自治体の施設を受注している会社や、脱炭素の事業を受託している会社に応募する場合は、接点を隠さないでください。退職後に元の職場へ職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。接点があること自体は問題ではなく、応募先にも伝えるほうが安全です。

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まとめ

よくある質問

環境の専門知識も技術の資格もありませんが、環境・GXの会社に入れますか

入れる領域があります。環境エンジニアリングの会社の公共営業と事業企画、自治体の脱炭素を支援する会社の企画、再エネの事業会社の自治体連携、環境系コンサルは、技術の資格を前提としません。財政課の経験が効くのは、施設の整備の財源を組む側、DBOとPFIの財政面を検討する側、脱炭素の事業の予算を査定する側にいた経験で、それは会社の側にはない視点です。ただし、施設の技術、排出の算定、電力の制度は入社後に学ぶ前提で、「環境に興味がある」を売りにするのは避けてください。求人票に「自治体」「公共」「DBO」「PFI」「脱炭素」の語があるかを先に確かめ、技術の職種と区別して応募してください。

財政課で廃棄物処理施設の整備に直接関わったことがありません。素材はありますか

あります。公共施設の省エネや再エネの導入の財政面の検討、脱炭素の事業の予算の査定と補助金の活用、収集・運搬の委託料の査定、施設の指定管理料の査定、地域の再エネの事業への出資や貸付の審査に関わっていれば、それが「脱炭素の事業と補助金」「委託と指定管理」「再エネ」の素材です。施設の整備そのものに関わっていなくても、「自治体が補助金をどう使い、どこで予算が付くか」「委託の審査でどこを戻すか」を知っている人は、会社にいません。棚卸しは「施設整備の財源」「DBO・PFIの検討」「脱炭素の事業と補助金」の3つに分け、自分が見た箇所と直した経験を並べてください。

自分の自治体の焼却施設を建設・運営している会社に応募したいのですが、問題になりますか

応募すること自体は問題ありませんが、線があります。退職後に、再就職者が元の職場に職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。また、その会社は自分の自治体の施設の相手なので、面接でその事業の個別の内容——方式の選定の経緯、他社の提案との比較、未公表の次の施設の検討、運営の評価——を話すことは、秘密を守る義務(第34条)に触れます。話してよいのは「自治体の内側では施設の財源とDBO・PFIをこう見る」という型です。接点があることは隠さず、応募先にも伝えておくと、会社の側も案件の切り分けを考えられます。

出典

  1. 地球温暖化対策の推進に関する法律 第21条(地方公共団体実行計画等)|e-Gov法令検索
  2. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第6条(一般廃棄物処理計画)/第6条の2(市町村の処理等)|e-Gov法令検索
  3. 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 第9条(再生可能エネルギー発電事業計画の認定)|e-Gov法令検索
  4. 環境基本法 第36条(地方公共団体の施策)|e-Gov法令検索
  5. 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第2条(定義)/第16条(公共施設等運営権)|e-Gov法令検索
  6. 地方財政法 第5条(地方債の制限)|e-Gov法令検索
  7. 地方自治法 第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)/第244条の2(公の施設の設置、管理及び廃止)|e-Gov法令検索
  8. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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