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業界研究 / 環境・GX

環境・GXの年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

環境・GXへの転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、環境・GXの年収の相場やレンジは書いていません。環境エンジニアリングの大手と地域の会社、脱炭素の支援の会社の規模と成長の段階、再エネの事業会社、職種(公共営業か企画か管理部門か)で差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、環境・GXに固有の働き方の構造(数十年に一度の案件の周期、施設の連続運転に伴う交代制、建設地への赴任と出張、会計年度と補助金の周期)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価は環境・GXは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

市町村は一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条)、計画に従って収集・運搬・処分を行います(第6条の2)。廃棄物処理施設の整備と運営は、設計・建設・運営を一括で委ねるDBOや、PFI法(第2条)の形で組まれることがあり、複数年の契約は債務負担行為(地方自治法第214条)を伴います。環境エンジニアリングの会社の収入は、数十年に一度の施設の受注と、その後の長期の運営の契約で決まり、案件の周期が処遇と働き方の周期を作ります。脱炭素の支援の会社の収入は、自治体の実行計画(地球温暖化対策の推進に関する法律第21条)と補助金と会計年度(地方自治法第208条第1項:4月1日から翌年3月31日)の周期で動く事業に依存します。

施設の運営を担う会社の現場は、施設が連続して運転するため交代制で、本部の公共営業と企画は日勤が中心です。施設の建設は数年にわたり、建設地への赴任や長期の出張を伴うことがあります。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(環境・GXを含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の事業場は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与・手当期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項(労働基準法施行規則第5条第5号)。公共営業では受注に連動する評価が賞与に反映される設計がある。赴任と出張の手当は会社による
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項。制度がない会社もありうる(労働基準法第89条第3号の2)
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)。施設の運営では1か月単位の変形労働時間制(第32条の2)、営業の外回りでは事業場外労働のみなし(第38条の2)がありうる
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金、手当)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。環境・GXではもう一つ線があり、就業場所の変更の範囲に施設の建設地や運営の現場が含まれるかで、赴任と転勤の可能性が変わります。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

環境・GXに固有の働き方——法律の側から読む

環境・GXには、他の業界にない働き方の構造が4つあります。

1つ目は、数十年に一度の案件の周期です。廃棄物処理施設の整備は自治体にとって数十年に一度の事業で、会社の公共営業は数年かけて一つの案件を追い、受注すれば建設に数年、運営に長期の契約が続きます。財政課の「毎年同じ周期で回る予算編成」と違い、「案件ごとに数年の周期で成果が出る」働き方で、賞与と評価がその周期にどう連動するかは会社の設計によります。面接では「受注の周期と評価の関係」を聞くと、処遇の見通しが見えます。

2つ目は、施設の連続運転に伴う交代制です。廃棄物処理施設は連続して運転されるため、運営の現場は交代制で、1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)で所定労働時間を組む会社があります。公共営業と企画は日勤が中心ですが、業務の変更の範囲に運営の現場が含まれていれば、交代制に回る可能性があります。労働条件通知書で業務の変更の範囲を確かめてください。

3つ目は、建設地への赴任と出張です。施設の建設は数年にわたり、建設地への赴任や長期の出張を伴うことがあります。就業場所の変更の範囲(労働基準法施行規則第5条第1号の3)に建設地や運営の現場が含まれるか、赴任の手当と期間の扱いを確かめてください。営業の外回りで労働時間を算定し難いときは、事業場外労働のみなし(労働基準法第38条の2)が適用されることがあります。

4つ目は、会計年度と補助金の周期です。脱炭素の支援の会社の事業は、自治体の実行計画と国の補助金と会計年度(地方自治法第208条第1項)の周期で動き、予算編成の時期に提案が集中し、年度末に納品と報告が集中します。財政課の予算編成期と同じ周期ですが、「査定を受ける側の繁忙」になります。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。——担当する業務が公共営業・事業企画に特定されているか、業務の変更の範囲に技術や運営の現場が含まれるか、就業場所の変更の範囲に施設の建設地や運営の現場が含まれるか、赴任の期間と手当。運営の受託会社では、運営の契約の期間と自分の契約期間の関係も見ます。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。1か月単位の変形労働時間制や交代制が適用される場合はその旨と勤務の組み方を、営業で事業場外労働のみなしが適用される場合はその旨を見ます。年度末と提案の集中する時期の繁忙の扱いも確かめます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。——基本給と手当の内訳、受注に連動する評価の仕組み、赴任と出張の手当、時間外の割増賃金の計算の仕方、支払時期。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。第4号の2と第5号は「定めをする場合」の事項なので、書かれていなければ制度がない可能性があります。書かれていない場合は、就業規則を見せてもらい、制度の有無を確認してください。

「この条件は妥当か」は、業界のほかの求人と並べないと判断できません。同じ業務で複数の会社の条件を見比べたうえで、条件の読み方から相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。焼却や清掃の事業を行う事業所は常時5人以上の従業員を使用する場合に適用事業所となり(厚生年金保険法第6条第1項第1号ト)、株式会社などの法人は常時従業員を使用していれば適用事業所です(同項第2号)。環境・GXの会社に入れば、自分の年金と医療は共済から厚生年金と健康保険に切り替わります。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。会社ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

環境エンジニアリングの公共営業は「受注がないと評価されない」と聞きました。財政課と何が違いますか

周期が違います。財政課の評価は毎年の予算編成と執行の周期で決まりましたが、廃棄物処理施設の整備は自治体にとって数十年に一度の事業で、公共営業は数年かけて一つの案件を追い、受注の有無で成果が決まります。賞与と評価がその周期にどう連動するか——受注までの期間の評価、受注後の建設と運営の期間の評価——は会社の設計によるので、労働条件通知書の賃金の決定・計算の方法(労働基準法施行規則第5条第3号)と就業規則の評価の仕組みで確かめてください。「成果が出るまでの数年をどう評価するか」を面接で聞くと、会社の考え方が見えます。

施設の建設地に赴任することはありますか。断れますか

労働条件通知書の就業場所の変更の範囲(労働基準法施行規則第5条第1号の3)で確かめてください。変更の範囲に施設の建設地や運営の現場が含まれていれば、会社はその範囲で就業場所を変えられます。含まれていなければ、赴任には改めて合意が要ります。赴任の期間、手当、家族の扱いは会社の設計によるので、通知書と就業規則で確かめ、含まれる場合は範囲と期間を交渉の対象にしてください。「赴任があるかもしれない」という口頭の説明だけで承諾せず、書面で範囲を確かめることが、財政課の方が通知書を読むときの基本です。

脱炭素の支援の会社は年度末が忙しいと聞きました。財政課の予算編成期と比べてどうですか

周期は同じで、質が違います。自治体の会計年度は4月1日から翌年3月31日で(地方自治法第208条第1項)、脱炭素の支援の事業は、実行計画(温対法第21条)と国の補助金の周期に合わせて、予算編成の時期に提案が集中し、年度末に納品と報告が集中します。財政課の繁忙は自治体の内部の日程で決まる「査定する側の繁忙」でしたが、支援の会社の繁忙は自治体の検収と報告の日程に合わせる「査定を受ける側の繁忙」で、自分で日程を動かせません。時間外労働の扱い(労働基準法第37条)と、外回りのみなし(第38条の2)の適用の有無を、面接と通知書で確かめてください。多い少ないは会社と担当する自治体の数によります。

出典

  1. 地球温暖化対策の推進に関する法律 第21条(地方公共団体実行計画等)|e-Gov法令検索
  2. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第6条(一般廃棄物処理計画)/第6条の2(市町村の処理等)|e-Gov法令検索
  3. 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第2条(定義)|e-Gov法令検索
  4. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第208条(会計年度及びその独立の原則)/第214条(債務負担行為)|e-Gov法令検索
  6. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第38条の2(事業場外労働のみなし労働時間)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  7. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索
  8. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  9. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  10. 厚生年金保険法 第6条(適用事業所)/第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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