業界研究 / まちづくり・都市開発
まちづくり・都市開発の年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか
まちづくり・都市開発を検討される方から、こう伺うことがあります。
「役所と同じような仕事なら、働き方も似ているのでしょうか」
似ている部分と、まったく違う部分があります。
似ているのは、制度の枠組みの中で動くこと。違うのは、時間の単位です。
役所の仕事は、年度で区切られます。この業界の仕事は、事業の段階で区切られます。そして、その段階は法律に書かれています。
この記事では、何が根拠になっているかと、働き方がどう変わるかを扱います。業界の構造は未経験からまちづくり・都市開発に入るにはにあります。
⚠ なお、給与の水準について、当社が数字でお答えすることはできません。会社ごとに事情が違いますし、裏を取っていない数字を並べるのは、この記事の趣旨に反します。
仕事の区切りは、事業の段階です
都市再開発法第72条第1項です。
> (権利変換計画の決定及び認可)第七十二条 施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、施行地区ごとに権利変換計画を定めなければならない。この場合においては、国土交通省令で定めるところにより、都道府県(中略)又は(中略)の認可を受けなければならない。
「前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく」です。
前の手続きが終わってから、次に進む。この積み重ねで事業が進みます。
そして、未経験からまちづくり・都市開発に入るにはで扱った第11条が、組合の設立の認可を定めています。
事業の段階を並べると、こうなります。
| 段階 | 何が起きるか | 仕事の性格 |
|---|---|---|
| 構想・準備 | 権利者の意向の把握、勉強会 | 地道な個別対応が続く |
| 組合の設立 | 第11条の認可(定款・事業計画) | 書類の作成が集中する |
| 事業計画の認可 | 計画の確定 | 行政との協議が集中する |
| 権利変換 | 第72条の権利変換計画の認可 | いちばん神経を使う段階 |
| 工事 | 施工、仮住まいの対応 | 現場対応が増える |
| 完了 | 清算、管理への移行 | 書類の整理が集中する |
この段階ごとに、忙しさの質が変わります。
⚠ そして、年度とは無関係です。3月に忙しいとは限りません。
給与の根拠は、条例から就業規則に変わります
いま、給与の根拠になっているのは条例です。
地方公務員法第24条第1項は、「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」と定め、同条第2項は、生計費・国や他の地方公共団体の職員・民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならないとしています。
労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と行政官庁への届出を義務づけ、記載事項として「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」を挙げています。
| 役所 | この業界の会社 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 条例 | 就業規則・給与規程 |
| 見られるか | 公表されている | 在職者は見られる。応募時は要確認 |
| 評価の単位 | 年度 | 案件の進捗と受注 |
| 資格の扱い | 手当がある場合がある | 資格手当が設けられていることがある |
3行目が、この業界の特徴です。
案件が長期にわたるため、「今年度の成果」で評価しにくいという事情があります。評価の仕組みがどうなっているかは、会社によって違います。面接で確認してください。
働き方は、会社の性格で分かれます
| 全国の大規模な事業を扱う会社 | 地域に根ざした会社 | |
|---|---|---|
| 勤務地 | 転勤・長期の出張がある | 地域が固定されやすい |
| 案件の数 | 1〜2件を深く | 複数件を同時に |
| 忙しさの山 | 案件の段階で来る | 複数の案件の山が重なる |
| 相手 | 大規模な権利者、行政、施工者 | 地元の権利者、市町村 |
| 効く経験 | 制度の理解、大規模な調整 | 地域の制度と担当課の動き方 |
公務員から移る方には、右の列のほうが経験が効きやすいことがあります。自分が知っている地域の制度と、行政の担当課の動き方が分かるからです。
ただし、複数の案件を同時に持つため、段取りの組み方が問われます。
役所と違う点を、4つに整理します
| 違い | 内容 |
|---|---|
| ① 時間の単位 | 年度ではなく、事業の段階で区切られる |
| ② 担当の期間 | 異動が無い。同じ案件に10年関わることがある |
| ③ 相手 | 権利者との個別の対応が中心になる |
| ④ 受注 | 仕事を取ってくる工程がある |
②が、いちばん大きいです。
未経験からまちづくり・都市開発に入るにはでも触れましたが、最後まで見られるのが、この仕事の魅力です。一方で、案件が止まったとき、異動で離れることができません。
③も、覚悟が要る部分です。権利者の方にとっては、住まいや商売の場所が変わる話です。説明会で全体に話すだけでなく、個別に何度も伺うことになります。
役所で用地の取得や住民説明を担当していた方は、この性質を知っています。知らずに入ると、想定より消耗します。
④は、役所には無い工程です。提案書を作り、他社と競って選ばれる。この場面にどう関わるかは、職位と会社によります。
公務員の経験が効く場所・効きにくい場所
効く場所
| 場面 | 効く理由 |
|---|---|
| 行政との協議 | 相手の意思決定の流れと時期が読める |
| 権利者への個別の対応 | 用地の取得、住民説明の経験 |
| 計画・書類の作成 | 策定の手順を知っている |
| 組合の総会・理事会の運営 | 審議会・委員会の事務と同じ構造 |
| 補助の制度の活用 | 交付する側にいた |
| 長期の案件を管理する | 計画の進行管理の経験 |
効きにくい場所
| 場面 | 効きにくい理由 |
|---|---|
| 受注の提案 | 売り込む工程が役所に無い |
| 事業の採算の判断 | 予算の執行とは見る方向が違う |
| 案件が止まった状態への耐性 | 異動で離れられない |
| 不動産の相場の感覚 | 市況の読みは経験で付く |
3つ目について、正直に考えてみてください。
役所では、困難な案件も3年で引き継ぎました。この業界では、引き継げません。同じ相手と、何年も向き合い続けることになります。
これを「最後まで見られる」と取るか、「逃げられない」と取るかで、この転職の評価は分かれます。
入る前に確認しておくこと
労働基準法第15条第1項は、労働契約の締結に際して、賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。条件を示してもらうことは、権利として認められています。
| 確認すること | どこで確認するか |
|---|---|
| 賃金の決定・計算・支払の方法、昇給 | 給与規程・労働条件通知書 |
| 就業の場所と、従事すべき業務 | 労働条件通知書 |
| 転勤・長期の出張の範囲 | 面接で確認する |
| 評価の仕組み(案件が長期の場合) | 面接で確認する |
| 資格手当の有無 | 給与規程 |
| 動いている案件の数と、経過年数 | 面接で確認する |
| 権利者対応で、夜間・休日の対応があるか | 面接で確認する |
最後の項目を忘れないでください。
権利者の方には、お勤めの方もいます。説明や協議が、平日の夜や休日になることがあります。頻度は会社と案件によります。
経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。
面接で聞かれやすいこと
| 聞かれること | 何を見られているか |
|---|---|
| 案件が長期にわたることに抵抗はありますか | 時間の感覚 |
| 権利者と直接話した経験はありますか | 合意形成の経験 |
| まとまらなかった案件は、どう扱いましたか | 止まった状態への向き合い方 |
| 転勤や長期の出張は可能ですか | 前提の確認 |
| 条件面で、譲れない点はありますか | 後から食い違わないか |
3つ目が、この業界では効きます。
まとめた話だけでなく、まとまらなかった話を用意してください。「全員の合意は得られませんでしたが、反対されている方の理由を個別に確認し、どこまでなら受け入れられるかを整理しました」。止まった状態に耐えられる人かどうかが見られています。
まとめ
- 仕事の区切りが、年度から事業の段階に変わります。3月に忙しいとは限りません
- 都市再開発法第72条第1項は、施行者が前条の手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、施行地区ごとに権利変換計画を定め、認可を受けなければならないと定めています
- 同法第11条の組合の設立の認可から、権利変換、工事、完了まで、段階ごとに忙しさの質が変わります
- 給与の根拠が、条例から就業規則・給与規程に変わります。⚠ 案件が長期のため、評価の仕組みを確認してください
- 働き方は、全国の大規模な事業を扱う会社と地域に根ざした会社で分かれます。公務員には後者のほうが経験が効きやすいことがあります
- 役所と違うのは、①時間の単位 ②担当の期間(異動が無い) ③権利者との個別の対応 ④受注の工程の4つです
- ⚠ 案件が止まっても、異動で離れられません。「最後まで見られる」と取るか「逃げられない」と取るかで評価が分かれます
- ⚠ 権利者対応が、平日の夜や休日になることがあります。頻度を確認してください
- ⚠ 前の職場と取引のある会社に移る場合、再就職に関する規程の確認が要ります。所属の人事担当部署に確認してください
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よくある質問
案件が止まったら、給与はどうなりますか
通常、給与そのものが案件の進捗に直結することはありません。労働契約にもとづいて支払われるためです。ただし、賞与や評価に影響する仕組みを設けている会社はあります。確認のしかたは、面接で「評価は、どういう単位で行われますか」と聞くことです。案件が長期にわたる業界なので、年度ごとの成果では測りにくいという事情があり、会社によって工夫が違います。プロセスを評価する仕組み、複数年で見る仕組み、受注への貢献を見る仕組み。どの仕組みかによって、日々の動き方が変わります。なお、当社が会社ごとの制度をお伝えすることはできません。給与規程と、面接での説明で確認してください。
資格は、入る前に取るべきですか
職種によります。技術的な業務を担う職種では、関係する資格が応募の条件になっていることがあります。一方、調整や手続きを担う職種では、要件になっていない募集もあります。判断の目安は、求人票の応募条件です。⚠ 試験の内容や受験の要件については、実施する団体の公表を確認してください。当社が確認していない内容はお伝えできません。なお、資格手当が設けられている会社もあるため、給与規程で扱いを確認しておくと、取る順番を考えやすくなります。資格を取ってから応募する必要は、必ずしもありません。実務の経験があるなら、先に応募して構いません。
退職の時期は、いつにするのが良いですか
この記事では判断できません。退職手当の算定、共済の扱い、年次有給休暇の残りなど、個別の事情で変わります。所属の人事担当部署と、共済組合の窓口で確認してください。⚠ とくにこの業界では、再就職に関する規程の確認を先に行ってください。前の職場と取引のある会社に移る場合、離職前の職務との関係で制限がかかることがあります。確認の結果によっては、応募先の選び方そのものが変わります。一般論として申し上げられるのは、内定が出てから退職の意思を伝えるほうが、選択肢が残るということだけです。当社が、いまの職を辞めることをお勧めすることはありません。