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業界研究 / 商社

商社の年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

商社への転職を検討されている方から、同じ順番で質問をいただきます。

「給与は上がりますか」

「働き方は、きつくなりますか」

どちらも、当社が数字でお答えできる問いではありません。会社ごとに事情が違いますし、裏を取っていない数字を並べるのは、この記事の趣旨に反します。

そのかわりに扱うのは、「何が根拠になっているか」が、役所と商社でどう変わるかです。ここが分かると、求人票と就業規則のどこを見ればよいかが決まります。

未経験から入る道筋は未経験から商社に入るにはにあります。

給与の根拠が、条例から就業規則に変わります

いま、給与の根拠になっているのは条例です。

地方公務員法第24条第1項です。

> 職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。

同条第2項は、「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」と定めています。

つまり、給与の水準を決めるときに考慮すべきものが、法律に書かれているということです。そして、その結果は条例という形で公表されます。

民間企業では、この構造がありません。

労働基準法第89条です。

> 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。>> 一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

第2号として、賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項が挙げられています。

役所商社(民間企業)
根拠条例就業規則・給与規程
決め方法律の考慮事項にもとづく会社が定める
見られるか公表されている在職者は見られる。応募の段階では要確認
改定議会の議決を経る会社の手続きによる

ここがいちばん大きな変化です。条例を見れば分かる状態から、会社の規程を見なければ分からない状態になります。

ですから、選考の過程で規程を確認してください。これは失礼な質問ではありません。

時間外労働には、法律上の限度時間があります

「商社は忙しい」と一括りに語られがちですが、制度の枠組みは決まっています。

労働基準法第36条は、労使の書面による協定を届け出た場合に、労働時間・休日の規定にかかわらず労働させることができるという構造の条文です。

そして、同条第4項です。

> 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。

限度時間が、法律の条文に書かれています。

これは商社に限った話ではなく、民間企業に共通の枠組みです。役所にいると「民間は青天井」という印象を持ちがちですが、制度としてはそうなっていません。

そのうえで、確認していただきたいのは、実際の運用です。協定の内容、特別条項の有無、実際の平均的な時間。これは会社ごとに違うので、面接で聞いてください。

なお、時間外・休日・深夜の労働には、労働基準法第37条により割増賃金が必要です。役所の時間外勤務手当と、考え方は同じです。

出張の多い職種には、みなしの仕組みがあります

商社の営業や調達の職種では、社外で働く時間が長くなります。

労働基準法第38条の2第1項です。

> 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

「労働時間を算定し難いとき」に、みなすという仕組みです。

同条第2項は、労使の書面による協定があるときは、その協定で定める時間を「通常必要とされる時間」とすると定めています。

この仕組みが適用される職種かどうかで、働き方の見え方が変わります。

⚠ 確認していただきたいのは、自分が応募する職種に適用されるかどうかです。内勤の管理の職種では、通常の時間管理であることがほとんどです。

働き方は、職種で大きく分かれます

職種出張時間の見通し役所との差
営業・調達多い相手の都合に左右される差が大きい
貿易の実務少ない船の日程と締切に沿う締切の性質が近い
経理・財務少ない決算期に集中する近い(出納閉鎖と同じ構造)
法務・輸出管理少ない案件の発生による近い(審査の事務と同じ)
事業投資の管理中程度投資先の日程による差が大きい
物流・在庫少ない日々の運用近い

「商社の働き方」は、この表のどこに入るかで別物です。

役所から移った方が馴染みやすいのは、下の4つです。締切が制度や暦で決まっていて、自分で組み立てられるからです。

営業と調達は、相手の都合が優先されます。ここは、役所の窓口業務とも違う性質です。

公務員の経験が効く場所・効きにくい場所

効く場所

場面効く理由
締切が決まっている業務を回す予算・決算・議会の日程で動いてきた
記録を残して説明する監査を受ける前提の書類の作り方
規程や手続きを整える要綱を条文の形で書いてきた
相手の組織の決定の流れを読む官公庁が相手の案件で直接効く
複数の関係先を調整する庁内・庁外の調整の経験

効きにくい場所

場面効きにくい理由
相手の都合で予定が動く働き方自分の暦で組み立ててきた
損益の数字を毎月見る予算の執行率とは見る意味が違う
値決めと採算の判断自分で決める場面が役所には少ない
相場の変動への対応感覚は経験で付く
短い周期での方針の変更役所より変更の頻度が高いことがある

効きにくい場所の1つ目が、いちばん生活に影響します。

面接で「予定が動くことに抵抗はありますか」と聞かれたら、事実で答えてください。家庭の事情で難しい時間帯があるなら、入る前に伝えておくほうが良いです。

入る前に確認しておくこと

労働基準法第15条第1項は、使用者が労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。明示すべき事項は、労働基準法施行規則第5条に具体的に並んでいます。

つまり、条件を示してもらうことは、権利として認められています。

確認することどこで確認するか
賃金の決定・計算・支払の方法、昇給給与規程・労働条件通知書
就業の場所と、従事すべき業務労働条件通知書(転勤の範囲を含む)
始業・終業の時刻、休憩、休日就業規則
時間外労働の有無と、協定の内容面接で確認する
みなし労働時間の適用の有無面接で確認する
賞与や手当の仕組み給与規程

「就業の場所と従事すべき業務」は、商社では特に確認してください。未経験から商社に入るにはでも触れましたが、勤務地が変わる異動があるためです。

⚠ 遠慮して聞かないまま入ると、あとで折り合いません。確認は、入社の意思がある前提で聞くと、角が立ちません。

経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。

面接で聞かれやすいこと

聞かれること何を見られているか
現在の働き方で、いちばん負担なのは何ですかこちらの前提の確認
出張や転居を伴う異動は可能ですか事実の確認
繁忙期に、どう対処してきましたか段取りの作り方
条件面で、譲れない点はありますか後から食い違わないか
数字の責任を負うことに抵抗はありますか予算の執行との違いの理解

4つ目は、必ず答えを用意しておいてください。

「特にありません」は、良い答えではありません。入ったあとに食い違う可能性を残します。勤務地、時間帯、休日のどれかで、譲れない点があるなら、この場で言ってください。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。

よくある質問

求人票に「みなし残業」と書かれています。どう読めばよいですか

2つの仕組みが、同じ言葉で呼ばれていることがあります。1つは、一定時間ぶんの時間外労働に対する割増賃金を、あらかじめ定額で支払う仕組みです。もう1つは、この記事で扱った労働基準法第38条の2の事業場外のみなしです。求人票の表記だけでは区別できないことがあるので、面接で「何時間ぶんが含まれているか」「超えた場合はどうなるか」を確認してください。定額で支払う仕組みの場合、定められた時間を超えた部分については、別に支払われるのが原則です。確認しにくいと感じる方が多い項目ですが、入ってからでは変えられません。なお、当社が会社ごとの運用をお伝えすることはできません。求人票と規程で確認してください。

現在の手当がいくつもあります。移ると、どう変わりますか

手当の構成は、会社ごとに違います。役所の手当は、地方自治法第204条にもとづき条例で定められているため、種類と支給の要件が公表されています。民間企業では、給与規程で定められます。確認のしかたは、「基本給と手当の内訳」を労働条件通知書で示してもらうことです。扶養、住居、通勤、単身赴任など、いま受けている手当に相当するものがあるかどうかを、項目ごとに突き合わせてください。総額だけを比べると、構成の違いが見えません。とくに、住居に関する手当と、転居を伴う異動の際の扱いは、商社では確認しておく価値があります。

退職の時期は、いつにするのが良いですか

この記事では判断できません。退職手当の算定、共済の扱い、年次有給休暇の残りなど、個別の事情で変わります。所属の人事担当部署と、共済組合の窓口で確認してください。一般論として申し上げられるのは、内定が出てから退職の意思を伝えるほうが、選択肢が残るということだけです。当社が、いまの職を辞めることをお勧めすることはありません。確認した結果、残るという結論になっても、それは正しい結論です。条件を並べて比べたうえでの判断であれば、どちらの結論でも、次に迷ったときの材料が増えています。在職のまま、情報を取るだけのご相談も承っています。

出典

  1. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  2. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第36条(時間外及び休日の労働)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第38条の2(事業場外労働のみなし労働時間)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  3. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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