自治体別 / 特別区
荒川区職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
荒川区のラスパイレス指数は96.0で、23区のなかで最も低い数字です。
ところが平均給与月額425,901円は、23区の中位。指数が最も高い中央区100.6との総額の差は、6,473円しかありません。
指数で最下位でも、総額では中位。この読み分けから入ってください。
荒川区の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、荒川区の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 荒川区 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 96.0 |
| 平均年齢 | 39.9歳 |
| 平均給料月額 | 301,900円 |
| 諸手当月額 | 124,001円 |
| 平均給与月額 | 425,901円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 380,326円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 20% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 20% |
指数の最下位と最上位を並べる
| 区 | ラスパイレス指数 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 中央区 | 100.6 | 37.8歳 | 287,700円 | 144,674円 | 432,374円 |
| 荒川区 | 96.0 | 39.9歳 | 301,900円 | 124,001円 | 425,901円 |
指数は4.6ポイント開きますが、総額の差は6,473円です。
しかも平均給料月額では、荒川区が14,200円上回ります。指数が最も低い区のほうが、実際の給料月額は高い。理由は平均年齢で、荒川区39.9歳に対し中央区37.8歳。2.1歳の差が、給料月額に出ています。
一方で諸手当は中央区144,674円、荒川区124,001円。20,673円の差がここで逆に働き、総額では中央区が上回ります。
指数、給料月額、諸手当、総額。この4つが、それぞれ別の順序を示しています。
23区の地域手当と諸手当の分布は千代田区職員の転職に、東京都の数字は東京都職員の転職に整理しています。
特別区は「市が担う仕事」を担っている
地方自治法第281条は、都の区は、これを特別区というと定め、第2項で、特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務を処理すると規定しています。
つまり特別区は、原則として市と同じ仕事を担っています。福祉も保健も都市計画も区の仕事です。そして第282条により、財源は都と区の間で調整されます。
「区役所の仕事」と書かず、担当した事務の名前で書いてください。区の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。詳しくは千代田区職員の転職で整理しています。
区役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 区役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 密集市街地の整備・不燃化 | 用地開発、都市開発、リスクマネジメント |
| 狭あい道路の拡幅・建替えの促進 | 用地開発、渉外 |
| 小規模製造業の支援・販路開拓 | 事業開発、パートナー営業、調達 |
| 都市計画、再開発、地区計画 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 生活保護・福祉の現業と査察 | ケースマネジメント、公共系事業企画 |
| 保健・衛生の監視指導 | 品質保証、規制対応 |
| 区有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
| 都・他区との調整 | 渉外、アライアンス |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「動かない土地を、少しずつ動かす」実務
荒川区役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第1条は、この法律が、密集市街地について計画的な再開発又は開発整備による防災街区の整備を促進するために必要な措置を講ずることにより、密集市街地の防災に関する機能の確保等を図るものだと定めています。
密集市街地は、放っておいても変わりません。
道路が狭く、敷地が小さく、接道が足りない。建て替えようにも、現行の基準では今と同じ規模の建物が建たない。だから所有者は建て替えない。結果として古い建物が残り続けます。
この状態を動かす実務は、次のような形になります。
- 一軒ずつ回り、所有者の事情を聞く
- 建て替えの意向がある人から、順に条件を整える
- 隣と話をつけて、敷地の形を変える
- 道路を広げる代わりに、何を認めるかを設計する
- 一度に全部は動かないので、何十年かけて少しずつ進める
「一気に変えられない対象を、長い時間をかけて動かす」という仕事です。
企業でも、同じ性質の課題があります。
長年の慣行、古いシステム、既存顧客との取引条件、社内の力関係。どれも一度に変えられず、正面から変えようとすると止まります。できるところから順に動かし、実績を作り、次につなげるしかない。
そして「時間のかかる変化を、途中で投げ出さずに進めた」経験を持つ人は多くありません。多くの改革は、短期で成果が出ないと止まるからです。
求人票では、用地開発、都市開発、事業企画、業務改革といった名前で書かれています。
書くときのこつは、完成度を語らないことです。対象の件数、そのうち何件が動いたか、動いた案件で何を交換条件にしたか、そして何年かけて何%まで進んだか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
荒川で、どの経験が値になるか
1. 一気に変えられない対象を、少しずつ動かした経験
密集市街地、狭あい道路、老朽建物。時間をかけて進めた経験は、業務改革や長期の事業開発でそのまま必要とされます。
2. 一軒ずつ所有者と話をつけた経験
事情を聞き、条件を整え、隣と調整する。相手の数だけ事情が違う交渉は、用地開発の職務で直接必要とされます。
3. 小規模な製造業を支えてきた経験
技術を持つ小さな事業者が集積する区です。数が多く、一社ごとが小さい相手を動かした経験は、調達やパートナー営業の職務に直接つながります。
4. 住民の生活を止めずに改善した経験
住み続けてもらいながら、安全を上げる。制約のなかで工程を組んだ経験は、扱える人が限られます。
5. 都や他区との調整
特別区は、都と区、そして区どうしの調整が日常にあります。自分の区だけでは決められない前提で進めた経験は、複数拠点をまたぐ事業に読める経験です。
都内で探すときに、確かめておくこと
荒川区で働いている方は、すでに都内の求人が通勤圏にあります。地理的な制約はほとんどありません。
そのぶん、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすくなります。順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、区役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
進んだ割合を書く
時間のかかる事業では、何年かけて何%まで進んだかが実績です。完成していなくても構いません。進捗と、その速度を上げるために何をしたかを書いてください。
規模を必ず書く
区の人口、対象の件数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。区役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、建築士、電気主任技術者。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
接道不良と狭小敷地の実務は、希少な経験になる
建て替えが進まない土地をどう動かすか。接道の確保、隣地との調整、既存不適格の扱い。不動産開発と建設の両方から求められる経験です。件数と、合意の作り方で書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
区内の企業の多くは、区役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 荒川区の一般行政職はラスパイレス指数96.0、平均給与月額425,901円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 指数は23区で最も低いのに、総額は中位。指数が最も高い中央区とは6,473円差です
- 平均給料月額では、荒川区が中央区を14,200円上回ります。平均年齢2.1歳の差が出ています
- 指数、給料月額、諸手当、総額。この4つが、それぞれ別の順序を示しています
- 一気に変えられない対象を、時間をかけて動かした経験は、業務改革でそのまま必要とされます(密集法1条)。用地開発、都市開発、事業企画という求人名で出ています
- 完成度ではなく、何年かけて何%まで進んだかを書いてください
よくある質問
指数が23区で最も低いのですが、水準が低いのですか
実際に振り込まれる額とは別の数字です。ラスパイレス指数は学歴と経験年数をそろえたときの給料表の位置を示します。荒川区は指数で最下位でありながら、平均給料月額では中央区を14,200円上回り、総額でも中位です。そして23区はすべて地域手当20%で、全国で最も高い水準。まず経験がどこで希少になるかを決め、そのあとで水準の話をしてください。
何年やっても目に見える成果が出ない仕事でした
企業側は、この性質の仕事を続けられる人を探しています。長年の慣行、古いシステム、既存の取引条件。どれも一度に変えられず、正面から変えようとすると止まります。多くの改革は、短期で成果が出ないと止まります。途中で投げ出さずに何年もかけて数字を動かしてきた人は少ない。何年かけて何%まで進んだか、速度を上げるために何をしたかを書いてください。
一軒ずつ所有者と話をつける仕事は、民間で使えますか
用地開発でそのまま必要とされます。相手の数だけ事情が違い、正面から説得しても動かない。建て替えの意向がある人から順に条件を整え、隣と話をつけ、何を交換条件にするかを設計する。この進め方を知っている人は、外から採用しにくい人材です。件数と、合意の作り方で書いてください。