自治体別 / 都道府県
高知県職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
高知県の平均給与月額は375,030円です。同じ四国の徳島県は424,671円。差は49,641円あります。
同じ地方の、隣り合う県です。それでも総額が5万円近く開く。「四国の相場」という一本の物差しは存在しません。
この事実は、応募先を考えるときの前提を変えます。まず数字を読み解いてください。
高知県庁の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、高知県の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 高知県 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 98.7 |
| 平均年齢 | 41.7歳 |
| 平均給料月額 | 309,800円 |
| 諸手当月額 | 65,230円 |
| 平均給与月額 | 375,030円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 330,441円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 0% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 0% |
差はどこから来ているのか
徳島県と並べると、はっきりします。
| 項目 | 高知県 | 徳島県 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均給料月額 | 309,800円 | 328,300円 | 18,500円 |
| 諸手当月額 | 65,230円 | 96,371円 | 31,141円 |
| 平均給与月額 | 375,030円 | 424,671円 | 49,641円 |
| ラスパイレス指数 | 98.7 | 99.0 | 0.3 |
| 平均年齢 | 41.7歳 | 43.3歳 | 1.6歳 |
差の大部分は諸手当から来ています。給料月額の差18,500円に対し、諸手当の差は31,141円。しかもラスパイレス指数はほぼ同じ(98.7と99.0)です。
つまり給料表の水準はほとんど変わりません。違うのは手当の積み上がり方と、年齢構成です。高知県の平均年齢41.7歳は徳島県より1.6歳若く、この分も平均給料月額を低く見せています。
四国4県の比較は香川県職員の転職に、地域手当の全国的な位置は愛知県職員の転職に表で整理しています。
県庁の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 県庁での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 林地開発の許可、森林計画 | 用地開発、再エネ開発、規制対応 |
| 林業・木材産業の振興 | 事業開発、調達、産地開発 |
| 防災・避難計画、危機管理 | BCP策定、リスクマネジメント、危機管理 |
| 中山間地域の振興・交通の確保 | 地域事業、モビリティ事業企画 |
| 水産資源の管理と利用調整 | 事業開発、調達、サステナビリティ推進 |
| 農産物の産地形成と販路開拓 | 事業開発、産地開発、商品企画 |
| 観光の誘客・受入環境整備 | 観光事業企画、地域ブランディング |
| 県土整備の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 市町村への助言・支援 | パートナー支援、カスタマーサクセス |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
山を開く許可を扱った経験は、再エネと物流でいま必要とされている
高知県庁の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
森林法第10条の2は、地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為(土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為)をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。保安林や海岸保全区域内の森林は、別の仕組みで扱われます。
山を開いて何かを作るには、この許可が要るということです。
そして、いま許可の相手方が変わってきています。
- 太陽光や風力の発電設備
- 大規模な物流施設
- 通信や送電の設備
- 土石の採取と、その跡地の扱い
平地が限られる地域で大きな用地を探すと、山に行き当たります。そして企業側には、この許可を通した経験がある人がほとんどいません。
- 何が「開発行為」にあたり、何が該当しないのか
- 排水と防災の計画は、どこまで求められるのか
- 残置森林や造成の基準は、実務上どう運用されるのか
- 隣接地の権利者や下流の集落と、どの順序で話すのか
- 許可の後に条件が守られているか、どう見られるのか
技術でも資金でもなく、ここで止まる案件が実際にあります。求人票では、用地開発、再エネ開発、開発企画、規制対応といった名前で書かれています。
書くときのこつは、法律名を並べないことです。「森林法に基づく許可事務を担当」ではなく、何件を、どういう観点で審査し、どこで判断が割れて、条件を付けてどう成立させたか。断った案件より、通した案件のほうが読まれます。
高知で、どの経験が値になるか
1. 山を扱ってきた経験
林地開発、治山、砂防、森林計画、木材の流通。木材の調達は、いま建設・住宅・家具の各業界が抱えている課題でもあります。制度と現場の両方を知っている人は多くありません。
2. 災害を前提にした計画づくり
避難、施設の配置、事業継続、災害復旧。リスクを織り込んで意思決定した経験は、民間ではBCPやリスクマネジメントとして読まれます。想定と、実際に動かしてみて分かったことをセットで書いてください。
3. 人口減少を前提に制度を回した経験
需要が減る前提で、施設やサービスをどう配置し直すか。統廃合を、合意を得ながらどう進めるか。これは民間企業がこれから直面する判断で、経験者がほとんどいません。書くときは「衰退した」ではなく、判断の基準と合意の作り方を書いてください。
4. 移動手段の確保を扱った経験
路線の維持、乗合の仕組み、需要が薄い区間の扱い。モビリティ事業を手がける企業が最も苦労するのが、まさにここです。制度と補助の両方を知っている人は多くありません。
5. 市町村を相手にしてきた経験
規模も体制もばらばらな市町村を相手に、温度差をどう埋めたか。「連絡調整」ではなく、複数顧客を持つアカウント業務の経験として書けば、そのまま職務能力になります。
県内の求人だけを見ると、選択肢を自分で狭めてしまう
高知県で職種を絞って求人を探すと、県内の件数は限られます。ここで諦めてしまう方が多いのですが、探し方を変えると結果が変わります。
近年はリモート可、週数日出社といった勤務形態の求人が増えています。とくに自治体を顧客にする企業は、担当エリアに出向くことが仕事なので、本社への出社頻度が低い場合があります。担当エリアが四国全域、あるいは西日本全域という求人であれば、住む場所は必ずしも本社の近くである必要がありません。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、この種の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、県庁の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
「止めた話」ではなく「通した話」で書く
許認可の担当は、断った案件のほうが記憶に残ります。しかし企業が知りたいのは、条件を付けて成立させた案件のほうです。どこを直せば通るのかを示せた経験は、そのまま開発側の職務になります。
異動歴を「立ち上げの回数」に変える
異なる制度領域を短期間で立ち上げてきた経験は、民間ではキャッチアップの速さとして読まれます。編年式で並べ、それぞれの配属で最初の数か月に何を習得したかを1行添えてください。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。県庁でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、林業技士、環境計量士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
急峻な地形での施工と治山の経験は、そのまま職務になる
法面、治山、砂防、林道。条件の厳しい場所での設計審査と監督の経験は、扱える人が限られます。建設コンサルタントと、山側に設備を置く事業者の両方から求められます。書くときは、対象施設の数と、条件の厳しさをどう処理したかで書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
県内の企業の多くは、県庁と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。都道府県は年度開始前30日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 高知県の一般行政職はラスパイレス指数98.7、平均給与月額375,030円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 同じ四国の徳島県とは総額が49,641円開きますが、ラスパイレス指数はほぼ同じ(98.7と99.0)。差の大部分は諸手当と年齢構成です
- 諸手当65,230円は薄いぶん、総額のうち条件で動く部分が小さい。去年の源泉徴収票がそのまま物差しになります
- 「四国で低いほうだから動けば上がる」とは言えません。まず経験がどこで希少になるかを決めてください
- 山を開く許可を扱った経験は、再エネと物流でいま必要とされています(森林法10条の2)。用地開発、再エネ開発、規制対応という求人名で出ています
- 経験が効く方向は、山を扱った経験/災害を前提にした計画/人口減少を前提にした判断/移動手段の確保/市町村支援の5つです
よくある質問
四国のなかで給与が低いほうなので、転職すれば上がりますか
この数字からは判断できません。ラスパイレス指数98.7は国家公務員の給料表と比べた位置であって、応募先の民間企業と比べた位置ではありません。しかも徳島県との指数の差は0.3しかなく、給料表の水準そのものはほとんど変わりません。差の大部分は諸手当と年齢構成です。まず自分の経験がどこで希少になるかを決め、そのあとで水準の話をしてください。
中山間の施策を担当していましたが、うまくいった事例が少ないです
企業が知りたいのは成功例ではありません。市場が縮む、拠点をたたむ、サービスの水準を下げる。企業側もこれから同じ問題に入るところで、参考にできる成功例がないからです。聞きたいのは、何を基準に順番を決めたのか、反対をどう扱ったのか、やめた判断をどう説明したのかです。失敗を含めて語れる人のほうが説得力を持ちます。
林地開発の審査をしていましたが、民間で使えますか
使えます。平地が限られる地域で大きな用地を探すと、山に行き当たります。太陽光、風力、大規模な物流施設、通信や送電の設備。企業側にこの許可を通した経験がある人はほとんどいません。何が開発行為にあたるのか、排水と防災の計画がどこまで求められるのか、下流の集落とどの順序で話すのか。条件を付けて成立させた案件を中心に書いてください。