部署別 / 廃棄物・清掃課
廃棄物・清掃課の経験は民間で何と呼ばれるか
廃棄物・清掃課の経験は、求人票の言葉に直すとまったく別の名前で呼ばれています。
「ごみの収集、処理施設に関する業務」
この書き方では、民間の採用担当には何も伝わりません。
実際にやっていたのは、将来の発生量を見込んで、それに合わせて設備と体制を決めるという仕事です。
しかも、その設備は数十年使うものです。
この記事では、庁内の呼び名を民間の言葉に置き換え、中核スキルを5つの工程に分けて整理します。
「発生量及び処理量の見込み」を、計画に定めます
最初に、この仕事の性格を条文で押さえます。経験の値を決める部分です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条は、こう定めています。
市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。
そして第2項は、計画に定める事項として、こう挙げています。
一 一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み/二 一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項/三 分別して収集するものとして……
一号を読んでください。
「発生量及び処理量の見込み」。
将来どれだけ出るかを、予測して、計画に書く。これが法律で義務づけられています。
ここが要点です。
そして、この見込みが、すべての土台になります。
- 施設の処理能力(どれだけの規模で建てるか)
- 最終処分場の容量(何年もつか)
- 収集の車両と人員(何台、何人で回るか)
- 委託の規模と費用(いくらの契約にするか)
見込みを誤ると、施設が足りなくなるか、過大な設備を数十年抱えることになります。
民間でいえば、これは需給の計画です。
そして、施設の建設は、装置産業の設備投資とまったく同じ判断をしています。数十億から数百億の投資を、30年先の需要の見込みに基づいて決める。
この判断の内側にいた——それが、この経歴の値です。
民間での訳語
| 庁内での呼び名 | 民間での呼ばれ方 |
|---|---|
| 一般廃棄物処理計画の策定 | 需給計画・中期の生産計画 |
| 発生量の見込み | 需要予測 |
| 施設の整備計画 | 設備投資の計画 |
| 処理能力の設定 | 生産能力の設計 |
| 最終処分場の残余容量の管理 | 在庫・容量の管理 |
| 施設の基幹的改良 | 設備の大規模改修・延命化 |
| 分別の区分の設計 | 製品ラインの設計 |
| 集積所の配置 | 拠点の配置設計 |
| 収集の順路の設計 | 配送ルートの最適化 |
| 委託の仕様の作成 | 業務委託の要件定義 |
| 広域化・一部事務組合 | 共同出資・共同運営の事業体 |
| 災害廃棄物処理計画 | 事業継続の計画 |
上から5行目までが、いちばん値の付く並びです。需要を予測して、設備の能力を決めて、容量を管理する——これは、装置産業の計画の仕事そのものです。
中核スキルを5つの工程に分ける
この部署の中核は、「数十年先を見て、いまの設備と体制を決めること」です。
工程1:見込む(発生量と処理量の予測)
人口の推計、世帯数、一人あたりの排出量、事業系の量、資源化の見込み。
この工程に固有の制約があります。一人あたりの排出量は、制度で動きます。有料化をすれば減り、分別の区分を増やせば燃やす量が減ります。つまり、予測の前提が、自分たちの政策によって変わります。
外部の環境を予測するのではなく、自分の打ち手を含めて予測する。これは、民間の需要予測でも、価格や販促を織り込む場合と同じ構造です。
工程2:配る(分別の区分と収集の体制)
何をどう分けるか、週に何回出せるか、どの区分を資源化に回すか。
この工程に固有の制約があります。区分を増やすほど、収集の便数が増えて費用が上がります。逆に、減らせば資源化率が下がります。しかも、変えるたびに、全世帯に周知しなければなりません。
この判断は、民間でいう品目を増やすかどうかの判断と同じです。増やせば選ばれやすくなるが、物流と管理の費用が上がる。
工程3:回す(収集の順路と委託)
区域の割り振り、曜日の設計、順路、車両と人員、委託の仕様。
この工程に固有の制約があります。集積所の場所を、行政が自由に決められません。多くの場合、自治会や利用する世帯が管理しています。だから、「ここに置いたほうが効率がよい」と分かっていても、動かせないことがあります。
つまり、拠点の位置が固定された状態で、ルートを組むということです。民間の配送では、拠点を動かせる余地がありますが、ここにはありません。
工程4:燃やす・埋める(施設の運転と残余の容量)
搬入の管理、運転の監督、補修の計画、最終処分場の残りの容量の把握。
この工程に固有の制約があります。施設は、止められません。そして、補修は、搬入の少ない限られた期間にしかできません。加えて、最終処分場は、埋まったら終わりです。次を作るには、用地の選定から供用まで十年以上かかります。
だから、「残り何年か」を常に見ていることになります。これは、民間でいえば、在庫のスペースや、設備の寿命の管理と同じ考え方です。
工程5:畳む・建てる(施設の更新と広域化)
老朽化した施設の更新、他の市町村との共同処理、一部事務組合の運営。
この工程に固有の制約があります。用地の選定、住民への説明、他市との調整、国の交付金の手続。すべてを通すのに、十年以上かかります。
つまり、いま判断しないと間に合いません。そして、その判断をする時点では、完成するころに自分は担当していません。
これは、民間の大規模な設備投資でも同じです。決める人と、使う人が別という構造にあります。
民間の需給計画・設備投資と、どこが同じでどこが違うか
同じところ
- 需要の予測に基づいて、設備の能力を決める
- 設備は、分割できない。必要な分だけ少しずつ作る、ということができません
- 稼働を止められない。補修の時期を、需要の少ない時期に合わせます
違うところ
- 需要を増やせない。営業で量を増やす、という発想がそもそもありません
- 価格を動かせない。手数料は条例で決まっています
- 撤退できない。採算が合わないから畳む、という選択がありません
- 立地を選べない。区域が決まっていて、他の地域に移せません
1番目が、いちばん大きい違いです。
民間の装置産業は、設備が余れば、営業で需要を取りに行きます。この仕事では、むしろ減らすことが目的です。
つまり、「需要を減らしながら、設備の稼働を維持する」という逆向きの計画を立ててきたことになります。
これは、人口が減る地域で事業を続ける会社が、いま直面している問題とまったく同じです。
評価が高くなりやすい4つの方向
1. プラントメーカー・施設の運営受託
発注する側にいた経験が、そのまま効きます。自治体がどの時期に、何を見て、どう決めるかを知っている人は、提案の時期を外しません。
2. 収集運搬・リサイクルの事業
委託の仕様を書いていた経験と、順路と体制の設計が効きます。「発注者が継続の判断で何を見るか」を知っていることも、大きな強みです。
3. 自治体を顧客とするコンサルタント(計画・施設の整備)
計画の作られ方と、交付金の手続を知っていることが効きます。施設の整備は、計画から供用まで十年がかりの案件で、その全体を見たことがある人は多くありません。
4. エネルギー(廃棄物の発電、燃料化)
搬入される量と質の見込みが、そのまま事業の前提になります。この見込みを立てられる人は、事業の成立を判断する側で必要とされます。
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つまずきやすい点
1. 「ごみの収集」と書く
需要の予測と、設備の能力の設計です。そう書いてください。
2. 残余容量を書かない
日常的に見ていた数字なのに、書類には書かれていません。
3. 施設の更新を「担当していた」で終える
十年がかりの案件で、どの段階を持ったかを書いてください。
4. 集積所の制約を説明しない
拠点の位置が動かせない状態でルートを組んだ——これは、難しい条件です。
5. 「量を減らすのが目的」だったことを書かない
需要を減らしながら稼働を維持する計画は、人口が減る地域の会社が、いま直面している問題です。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 廃棄物処理法第6条は、一般廃棄物処理計画に「発生量及び処理量の見込み」を定めることを義務づけています
- この見込みが、施設の能力、処分場の容量、車両と人員、委託の規模のすべての土台になります
- 民間でいえば、需給の計画と、装置産業の設備投資の判断です
- 中核スキルは、①見込む ②配る ③回す ④燃やす・埋める ⑤畳む・建てるの5工程に分かれます
- 違うのは、①需要を増やせない ②価格を動かせない ③撤退できない ④立地を選べないの4点です
- 「需要を減らしながら、設備の稼働を維持する」——人口が減る地域の会社が、いま直面している問題と同じです
よくある質問
施設は一部事務組合の所管で、市は収集だけです
その場合は、線を引いて書いてください。「処理は◯市町で構成する一部事務組合が実施。市は収集運搬と搬入の管理、組合との協議を担当」という形です。そのうえで、組合との協議は、それ自体が書ける経験です。負担金の算定、搬入の計画、施設の整備の合意。複数の自治体が共同で一つの事業体を運営する——これは、民間でいう共同出資の会社の運営と同じ構造です。「関わっていない」のではなく、「協議する側にいた」と書いてください。
収集の現場(直営)に出ていました。事務職として書けますか
書けます。直営の収集は、現場の作業と、運行の管理の両方を含みます。書くべきは、①担当した区域と世帯数 ②車両と人員の体制 ③安全の管理(作業中の事故の防止)④住民からの申出への対応 ⑤収集の実績の記録です。とくに③は、民間の物流や作業の現場で、そのまま必要とされる経験です。「作業していた」ではなく、「安全と運行を管理していた」と書いてください。なお、体を動かす仕事から内勤に移る場合は、記録と計画の部分を前に出すと、書類が合いやすくなります。
災害廃棄物の処理に関わりました。どう書けばよいですか
「事業継続と、臨時の体制の設計」として書いてください。中身は、①仮置場の選定と運営 ②搬入の管理と分別 ③処理先の確保(他の自治体や民間への依頼)④費用の記録と国への報告の4つです。とくに③は、平常時の処理能力を超えた分を、外部に振り分ける判断で、民間でいう代替の供給先の確保と同じです。書くなら、「災害により発生した廃棄物約◯トンについて、仮置場◯か所の運営と、処理先の確保、費用の記録を担当」という形です。この経験を持つ人は多くありません。行き先の絞り方は廃棄物・清掃課から転職しやすい業界と職種に整理しました。