部署別 / 建築指導課
建築指導課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるか
建築指導課の働き方には、他の許認可の部署と違う点があります。
建物は、建った後も終わりません。
確認して、検査して、確認済証と検査済証を出したら終わり——ではないのです。
その後も、定期的に報告が上がってきます。
この記事では、一年の波、評価が見えにくくなる構造、民間に移って変わる4点を整理します。
書き方は建築指導課の職務経歴書、面接での答え方は建築指導課出身者が面接で必ず聞かれることに書いています。
建った後も、定期に調査して報告させます
まず、この仕事の構造を条文で押さえます。
建築基準法第12条第1項は、こう定めています。
……特定行政庁が指定するもの……の所有者……は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員に調査させて……
その結果を、特定行政庁に報告することになっています。
「定期に」。
ここが要点です。
建築確認は、建てる前の1回で終わります。しかし、この条文が扱っているのは、建った後の建物です。
不特定多数が使う建物——店舗、ホテル、病院、共同住宅など、特定行政庁が指定したものは、定期に調査され、その結果が上がってきます。
つまり、この部署が見ているのは、建物の一生です。
| 段階 | 部署の関わり |
|---|---|
| 建てる前 | 確認の審査 |
| 建てている途中 | 中間検査 |
| 建て終わったとき | 完了検査 |
| 使っている間 | 定期報告の受理と確認 |
| 問題が起きたとき | 違反への対応、是正 |
この5つが、同時に流れています。
説明するときは、この形で話してください。
> 建てる前の審査だけではありません。工事の途中の検査、完成時の検査、使っている間の定期報告の確認、そして違反への対応。建物の一生のそれぞれの段階を、同時に見ていました。
「同じ対象を、時間軸で追い続ける」——これは、設備の保全や、製品の品質の管理と同じ考え方です。
一年の波
着工と完成の時期が、そのまま山を作ります。
| 時期 | 中身 | 重さ |
|---|---|---|
| 4月 | 体制の切り替え、前年度の統計の報告 | 中 |
| 5〜6月 | 定期報告の受付(用途ごとに時期が定められている)、審査の平常期 | 中 |
| 7〜8月 | 審査と検査の平常期、工事が動く時期 | 中 |
| 9〜10月 | 台風の後の相談と確認、次年度の予算要求 | 中 |
| 11〜12月 | 着工の波(年度内の完成を目指す工事の確認) | 重い |
| 1〜3月 | 完了検査の集中、年度末の事務 | 最も重い |
山は2つです。
11〜12月(着工の波)と、1〜3月(完了検査の集中)。
この2つは、つながっています。
年度内の完成を目指す工事は、逆算して着工します。だから、秋に確認の申請が増え、その分が年明けから完了検査になって戻ってきます。
そして、1〜3月にはこの部署に固有の事情があります。
完了検査は、現地に行かなければできません。しかも、建物ごとに所在が違います。1日に回れる件数には限りがあり、検査の日程は、工事の完成の予定に合わせるしかありません。
つまり、この時期は「現地に出る日」で埋まります。そのあいだも、新しい申請の審査は止まりません。
机の上の審査と、外での検査を、同じ時期に並行させる——この段取りが、年度末の中心です。
民間でも、竣工が年度末に寄る業種では、まったく同じことが起きています。
評価が見えにくくなる3つの構造
1. 適法に建ったことには、誰も気づかない
確認が下り、検査を通り、問題なく使われている。
これが成果ですが、誰も見ません。
見られるのは、問題が起きたときだけです。
この点には、固有の事情もあります。建物は、その街に何十年も建ち続けます。つまり、自分が通した建物が、毎日目に入ります。通勤の途中でも、休みの日でも。良い意味でも、そうでない意味でも、結果が形として残り続ける——これは、他の許認可の仕事にはあまりない感覚です。面接で話す価値はありませんが、この仕事を続ける動機としては、案外大きい部分です。
2. 見落としの責任が、長く残る
建物は数十年使われます。だから、審査の見落としが、何年も後になって問題になることがあります。
「あのとき、なぜ通したのか」を問われる可能性が、ずっと続きます。
この重さは、他の許認可とは質が違います。
だからこそ、記録の残し方が実務の中心になります。何を、どの資料で、どう判断したか。後から見て、判断の過程をたどれる形にしておく。この習慣は、民間の品質の管理や、法令の遵守の部門で、そのまま求められます。
3. 相談で防いだ手戻りは、記録に残らない
申請の前の相談で、方向が違うことを伝えた。そのおかげで、設計者は無駄な図面を書かずに済みました。
しかし、それは「起きなかったこと」なので、どこにも残りません。
この3つのために、「やったこと」が数字として残りにくくなります。
民間に移って変わる4点
1. 「判定する」から「通す」になる
行政では、適合しているかを判定するだけでした。民間では、どうすれば適合するかを考え、通すところまでが仕事になります。
同じ知識の使い方が、逆になります。ただし、基準を熟知しているからこそ、通る道筋を先に描けます。
2. 件数の重みが変わる
行政では、申請が多くても少なくても、給与は変わりませんでした。民間では、処理した件数が、そのまま事業の規模に直結します。
とくに指定確認検査機関では、この差がはっきりします。
3. 責任の質が変わる
行政では、見落としの責任は組織に及びました。民間では、会社の損害として、より直接に返ってきます。
重さは変わらないが、返り方が変わる——そう考えておいてください。
4. 建物の一生の、どこを見るかが変わる
行政では、建てる前から使っている間まで、全部を見ていました。民間では、会社によって、見る段階が決まります。
設計事務所なら建てる前、施工会社なら建てている途中、不動産の管理なら使っている間。
つまり、範囲は狭くなり、代わりに深くなります。
変わらないのは、図面と現物を突き合わせることです。これは、どこに行っても同じことをします。
どの方向なら自分の経験が効くかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
在職中に残しておくべき記録
辞めた後では、二度と取れません。
| 残すもの | なぜ必要か | どこから取れるか |
|---|---|---|
| 確認の審査の件数(年度別) | この分野では、これが経験の量 | 事務の記録、統計 |
| 用途と構造の内訳 | 配属の判断に使われる。言えないと当てはめられない | 自分で数えるしかない |
| 検査の件数(中間・完了) | 現地を見た量 | 事務の記録 |
| 相談の件数 | 判定の速さの証明 | 自分で数えるしかない |
| 差し戻しの理由の上位項目 | 入社後すぐの成果になる材料 | 審査の記録 |
| 定期報告の受理の件数 | 建物の管理の方向では効く | 事務の記録 |
| 違反への対応の件数と類型 | 是正の経験量 | 事務の記録 |
| 自分が変えたこと(年度別に3つ) | 実績欄の芯になる | 自分でメモするしかない |
2行目、4行目、5行目、最後の行が、後から作れないものです。
とくに用途と構造の内訳は、集計されていないことがほとんどです。
つまずきやすい点
1. 「建築確認をしていた」で終える
建てる前・途中・完成時・使っている間・問題が起きたとき。建物の一生の5段階を見ていました。
2. 年度末の並行を書かない
机の上の審査と、外での完了検査を同じ時期に回します。
3. 用途と構造の内訳を数えていない
配属の判断に使われます。言えないと、当てはめられません。
4. 相談で防いだ手戻りを、成果として数えない
起きなかったことなので、自分で記録するしかありません。
5. 見落としの責任の重さを、弱みとして話す
数十年残る責任を負って判定してきた——それは、慎重さの証明です。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
まとめ
- 建築基準法第12条は、指定された建築物について、「定期に」調査させて報告することを求めています
- つまり、この部署が見ているのは、建物の一生です。建てる前から、使っている間まで
- 山は、11〜12月(着工の波)と、1〜3月(完了検査の集中)の2つで、この2つはつながっています
- 年度末は、机の上の審査と、外での検査を並行させます。竣工が年度末に寄る業種では、同じことが起きています
- 評価が見えにくいのは、①適法に建ったことに誰も気づかない ②見落としの責任が長く残る ③相談で防いだ手戻りが残らないためです
- 用途と構造の内訳は、配属の判断に使われる数字で、在職中にしか作れません
よくある質問
現地に出るのが体力的にきついのですが、内勤に寄せられますか
寄せられます。この経歴には、机の上で完結する部分が十分にあります。図面の審査、関係規定の確認、台帳と記録の管理、定期報告の確認、統計の報告。書類でも、検査の話を前に出さずに、審査と記録の話を前に出すことで、内勤の求人に合う形に組み替えられます。とくに、設計事務所の法規の担当や、不動産の調査は、現地に出る頻度が低い職種です。方向の選び方は建築指導課から転職しやすい業界と職種に整理しました。
定期報告の担当をしていました。書けることはありますか
十分に書けます。定期報告は、「建物が使われている間の安全を確認する仕組み」で、受理して、内容を確認し、是正が必要なものを追いかけるという一連です。書くなら、「定期報告について、年間◯件の受理と内容の確認を行い、指摘事項のある建物の是正の状況を追跡」という形です。これは、民間の建物の管理やプロパティマネジメントで、そのまま同じ仕事です。報告を出す側に回ったときに、何が不備で差し戻されるかを知っている——これが、そのまま強みになります。
異動が近いのですが、何をしておくべきですか
4つあります。1つ目は、確認の審査の件数を、用途と構造で分けて数えること。これは配属の判断に使われる数字で、集計されていないことがほとんどです。2つ目は、相談の件数を1か月だけでも数えること。3つ目は、差し戻しの理由の上位項目を書き出すこと。これは入社後すぐの成果の材料になります。4つ目は、自分が変えたこと——チェックの様式、確認の順序、相談で示す一覧——を3つメモすること。この4つがあれば、数年後に動く場合でも、そのまま書類が作れます。