部署別 / 建築指導課
建築指導課から転職しやすい業界と職種
建築指導課からの転職には、他の部署にない特徴があります。
同じ仕事が、民間にもあります。
行政でやっていた建築確認と検査を、そのまま民間の機関でも行えます。
これは、法律がそう定めているからです。
この記事では、向いている5つの方向と、合いにくい方向を並べます。
言い換えは建築指導課の経験は民間で何と呼ばれるかに書いています。
確認は、指定を受けた民間の機関でもできます
行き先を考える前に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。
建築基準法第6条の2第1項は、こう定めています。
前条第一項各号に掲げる建築物の計画……が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と……みなす。
「指定した者の確認を受け……たときは、……確認とみなす」。
ここが要点です。
建築確認は、行政だけが行うものではありません。指定を受けた民間の機関が行った確認も、行政の確認と同じ効力を持ちます。
つまり、この仕事には、民間に直接の受け皿があります。
他の部署では、こうはいきません。税務も、福祉も、都市計画も、同じ仕事は行政にしかありません。
この分野だけが、違います。
そして、行き先は、この構造から3つに分かれます。
| 使い方 | どういう仕事になるか | 行き先 |
|---|---|---|
| 同じ仕事を続ける | 確認と検査を、民間の機関で行う | 指定確認検査機関 |
| 建てる側に回る | 通る計画を作る、通す手続を担う | 設計・施工・デベロッパー |
| 既存の建物を見る | すでにある建物が適法かを調べる | 不動産の調査・建物の管理 |
どれを選ぶかで、必要な資格も、書類の作り方も変わります。
向いている5つの方向
1. 指定確認検査機関(確認検査員・審査の補助)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 建築確認の審査、中間検査、完了検査。そのまま同じ業務 |
| 求められる形 | 申請の審査、検査の実施、確認済証と検査済証の交付 |
| 入りやすさ | 資格があれば高い。業務の中身が同じ |
書くときの注意。審査と検査の件数を、年度別に書いてください。この分野では、件数がそのまま経験の量です。ただし、確認検査員として審査を行うには、建築基準適合判定資格者の資格が必要です。資格がない場合は、審査の補助や、事務の職からになります。
この方向に固有の制約もあります。民間の機関は、件数で採算が決まります。行政では、申請が来ないからといって困ることはありませんでした。民間では、審査の件数が事業の規模に直結します。つまり、早く、正確に処理することが、そのまま評価になります。丁寧さと速さの両立が、行政にいたときより強く求められます。
2. 設計事務所・組織設計(法規の担当)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 法規の読み方、審査で問われる点、行政との協議 |
| 求められる形 | 計画の初期段階での法規の確認、申請の図書の作成、行政との事前の協議 |
| 入りやすさ | 中〜高。審査する側にいた人は、設計事務所では貴重 |
書くときの注意。「どこで止まるかを知っている」ことを前に出してください。設計の側では、申請してから不適合が分かると、大きな手戻りになります。初期の段階で見分けられる人は、それだけで価値があります。
3. ハウスメーカー・建設会社(技術の管理・品質の管理・申請の担当)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 検査の経験、施工と図面のずれを見抜く目、是正の進め方 |
| 求められる形 | 社内の品質の基準の管理、確認申請の手続、検査の立会い |
| 入りやすさ | 中〜高。現場と法規の両方が分かる人は少ない |
書くときの注意。中間検査の経験を、必ず書いてください。「見えなくなる前に確かめる」という考え方は、施工の品質の管理と、まったく同じです。
4. 不動産(デューデリジェンス・既存の建物の調査・仲介の調査)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 既存不適格の判断、建築計画概要書の読み方、検査済証の有無の意味 |
| 求められる形 | 取引の前の建物の調査、適法性の確認、重要事項の説明に必要な情報の整理 |
| 入りやすさ | 中〜高。判断できる人が業界に足りていない |
書くときの注意。「検査済証がない建物」をどう扱ってきたかを書いてください。取引の現場では、これが頻繁に問題になります。そして、その意味を正確に説明できる人が、そう多くありません。
この方向に固有の制約もあります。不動産の調査では、判断の結果が、取引の可否や価格に直結します。行政では、「適法かどうか」を答えれば済みました。民間では、「では、どうすれば取引できるか」まで求められます。判定の先にある選択肢を考える——ここが、入ってから覚える部分です。
5. 建物の維持管理・不動産の管理(定期報告、改修の法規)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効く経験 | 定期報告の受理と確認、既存の建物への法令の適用、改修時の扱い |
| 求められる形 | 管理する建物の法令の適合の維持、定期報告の取りまとめ、改修の計画 |
| 入りやすさ | 中。求人はあるが、この経歴からの応募は少ない |
書くときの注意。定期報告を「受け取る側」だった経験は、出す側に回ったときにそのまま効きます。何が不備で差し戻されるかを知っているからです。
合いにくい方向
1. 個人向けの営業(住宅の販売など)
相手が事業者や設計者でなくなると、この経歴の技術が使えません。
2. 短期の数字で評価される職種
「正確に判定する」ことが仕事だった感覚とは、評価の形が違います。
3. 立ち上げ期の一人目
基準も前例もない環境で全部を作る役割です。この経歴は、基準を読んで当てはめることに強いため、それがない環境では時間がかかります。
4. 施工の現場監督
検査で現場を見ていたことと、施工を管理できることは別です。施工の経験が前提の職種は、別の検討になります。
5. 構造設計の実務
構造の審査をしていたことと、構造を設計できることは別です。設計の実務の経験が前提になります。
役に立つ資格
この分野は、資格で行ける範囲がはっきり変わります。
| 資格 | 効く方向 | 実際のところ |
|---|---|---|
| 建築基準適合判定資格者 | 指定確認検査機関 | 確認検査員の要件。受験には建築士と実務の経験が必要 |
| 一級・二級建築士 | ほぼすべての方向 | 持っているなら書類の最初に書く。多くの求人の前提 |
| 特定建築物調査員・建築設備検査員 | 建物の管理、定期報告 | 講習で取得できる。管理の方向では分かりやすい裏づけ |
| 宅地建物取引士 | 不動産の調査、仲介 | 不動産の方向に出るなら効く。法令上の制限の知識が既にある |
| 建築施工管理技士 | 建設会社、品質の管理 | 現場に近い方向では効く |
在職中に取れるものは、在職中に取るほうが有利です。とくに、建築基準適合判定資格者は、実務の経験の要件を満たしやすいのが行政にいる間です。
求人を探すときの検索語
庁内の言葉で検索すると、求人が出てきません。
| 探している仕事 | 検索語 |
|---|---|
| 確認検査機関 | 確認検査員/建築確認 審査/判定士 |
| 設計事務所 | 法規 担当/確認申請 担当/申請 業務 |
| 建設・住宅 | 技術管理/品質管理 建築/施工 技術 |
| 不動産の調査 | デューデリジェンス/建物 調査/不動産 調査 |
| 建物の管理 | 定期報告/建物 管理 技術/プロパティマネジメント |
「建築指導」で検索しても、行政の求人しか出てきません。上の言葉に置き換えてください。
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
つまずきやすい点
1. 「同じ仕事が民間にある」ことを知らない
指定確認検査機関は、この経歴のいちばん直接的な行き先です。
2. 件数を書かない
この分野では、件数がそのまま経験の量です。
3. 不動産の調査を、選択肢から外す
判断できる人が業界に足りていません。求人の数も多くあります。
4. 資格の要件を確かめずに応募する
確認検査員は資格が要件です。先に確かめてから方向を決めてください。
5. 「判定だけ」で止まると考える
民間では、判定の先の選択肢まで求められます。そこは入ってから覚える部分です。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 建築基準法第6条の2は、指定を受けた民間の機関が行った確認も、行政の確認とみなすと定めています
- つまり、この分野には、民間に直接の受け皿があります。他の部署にはない特徴です
- 向いているのは、①指定確認検査機関 ②設計事務所 ③建設・住宅 ④不動産の調査 ⑤建物の管理の5方向です
- 不動産の調査は、いちばん見落とされていて、判断できる人が業界に足りていません
- 資格は、建築基準適合判定資格者が確認検査員の要件で、実務の経験を満たしやすいのは行政にいる間です
- 担当の幅が、そのまま選べる求人の幅になります。在職中に工程を1つ増やすことも有効です
よくある質問
事務職で、建築士の資格がありません。行き先はありますか
あります。確かに、確認検査員や設計の実務は資格が要件です。しかし、それ以外の方向では、制度と手続を知っていることが評価されます。とくに、不動産の調査の分野では、建築計画概要書の読み方、検査済証の意味、既存不適格と違反の区分——この知識が直接使われます。加えて、指定確認検査機関でも、審査の補助や、申請の受付、台帳の管理といった職があります。まず、資格がなくても入れる方向を確かめてください。そのうえで、必要なら働きながら取るという順番も現実的です。
技術職ですが、現場の経験がありません。建設会社では通用しますか
役割によります。施工の管理は、現場の経験が前提なので、そこは難しいと考えてください。一方、技術の管理、品質の管理、確認申請の担当は、現場に常駐しない職種です。とくに、社内で法規の適合を確認する役割は、審査する側にいた経験がそのまま使えます。書くときは、「現場の施工の管理の経験はありませんが、検査で現場を確認した経験と、法規の適合を判定した経験があります」と、自分で線を引いて書いてください。線を引いた応募は、読まれます。
何社くらい受けるものですか
決まった数はありません。ただ、この経歴は、資格の有無で応募できる範囲が変わります。資格があるなら、指定確認検査機関と設計事務所を並行して見るのが自然です。どちらも、審査の経験がそのまま評価されます。資格がないなら、不動産の調査と、建物の管理を並行して見てください。どちらも、制度の知識で勝負する方向です。この2つの組は、それぞれ書類の作り直しが少なく済みます。書き方は建築指導課の職務経歴書に整理しています。