部署別 / 建築指導課
建築指導課出身者が面接で必ず聞かれること
建築指導課から民間に移るとき、面接でいちばん実務的に来るのはこれです。
「よく差し戻すのは、どういう点ですか」
これは、雑談ではありません。
設計事務所も、施工会社も、補正のたびに時間と手間を失っています。そして、何でつまずくかを、審査する側から聞ける機会はありません。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は建築指導課の職務経歴書、行き先の絞り方は建築指導課から転職しやすい業界と職種に書いています。
命令の相手は、建築主だけではありません
答え方の前に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。
建築基準法第9条第1項は、こう定めています。
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して……
並んでいる相手を見てください。
建築主、請負人、下請人、現場管理者、所有者、管理者、占有者。
関係する立場のほぼ全員が、命令の相手になり得ます。
ここが要点です。
そして、民間に移ると、自分がこの並びのどこかに入ります。
設計事務所なら、設計者として。施工会社なら、請負人や現場管理者として。不動産の会社なら、所有者や管理者の側として。
つまり、言う側から、言われる側に移ります。
この構造を分かっていることが、面接では効きます。
「行政が何を見て、どこで指摘するか」を知っている人は、指摘される前に潰せるからです。
質問1:「建築指導課では、どういうお仕事をされていたんですか」
避けたい答え方
> 建築確認の審査と、完了検査をしていました。
「窓口の人」で固まります。
組み立て方
件数と、扱った法令の範囲を置いてください。
> 確認の申請を年間◯件くらい審査していました。見るのは、用途、建ぺい率、容積率、高さ、斜線、日影、採光、換気、防火、避難、構造。それに加えて、消防、下水道、バリアフリー、省エネといった関係規定との適合も確認します。検査は年間◯件、申請の前の相談も年間◯件くらい受けていました。
「関係規定」まで言ってください。
建築基準法だけを見ていたのではないということが、そこで伝わります。
質問2:「よく差し戻すのは、どういう点ですか」
冒頭に挙げた質問です。ここが、いちばん値の付く場所です。
避けたい答え方
> 案件によってさまざまです。
何も伝わりません。
組み立て方
類型で答えてください。
> 大きく3つに分かれます。1つ目は、図面どうしが合っていないもの。平面と立面で寸法が違う、面積の求積と表が合っていない。2つ目は、関係規定の確認が抜けているもの。消防の同意や、他法令の協議が済んでいない状態で出てくるケースです。3つ目は、既存の部分の扱いが整理されていないもの。増築や用途の変更で、既存の部分がどういう扱いになるかが書かれていない。このうち、3つ目がいちばん時間を取ります。
類型で答えられると、「量を見てきた人」だと一発で伝わります。
そして、この答えは、入った先でそのまま社内の資料になります。
この質問には、固有の事情もあります。差し戻しの理由は、設計者の技量の問題とは限りません。多くは、制度が複雑で、どの法令がいつ当たるかが分かりにくいことから来ています。だから、「設計者が悪い」という答え方をしないでください。制度の側の分かりにくさを、こちらが整理して示す——この立場で話すほうが、入ってから設計者と仕事をするときにも通ります。
質問3:「検査済証がない建物は、どう扱っていましたか」
不動産や、既存の建物を扱う会社では、これが本題です。
組み立て方
制度の構造から答えてください。
> 検査済証がないことと、違反であることは、同じではありません。完了の検査を受けていないだけで、実際には適法に建っている建物もあります。逆に、検査済証があっても、その後に増築されていれば、いまは適合していないことがあります。なので、確かめるのは3つです。1つ目は、確認の記録があるか(建築計画概要書と台帳)。2つ目は、その後に増築や用途の変更がないか。3つ目は、現況が図面と合っているか。この3つを押さえないと、適法かどうかは判断できません。
「検査済証がない=違反ではない」と言えるかどうかで、この分野の理解の深さが分かります。
取引の現場では、ここで止まる案件が多くあります。
質問4:「違反が見つかったとき、誰に言うんですか」
条文の構造を知っているかを見ています。
組み立て方
> 建築主だけではありません。条文には、請負人、下請人、現場管理者、所有者、管理者、占有者まで並んでいます。つまり、関係する立場のほぼ全員が対象になり得ます。実務では、まず現地を確認して、何がどう基準に合っていないかを特定します。そのうえで、誰に言うのが実際に直せるのかを考えます。施工の途中なら請負人、完成後なら所有者、というように、是正できる立場の人に、文書で通知します。
「是正できる立場の人に言う」という一言が、実務を知っている証明になります。
この判断には、固有の難しさもあります。工事の途中なら止められますが、完成して人が住んでいる場合、直すのは容易ではありません。費用も、生活も、所有の関係もあります。だから、「誰に言えば直るか」と同時に、「どこまでなら現実に直せるか」も見ます。この感覚は、民間の是正や改修の場面でも、そのまま必要になります。
そして、民間では、自分がその相手になります。
質問5:「うちは言われる側ですが、抵抗はありませんか」
立場の反転を、どう受け止めているかを見ています。
組み立て方
> 立場は入れ替わると思っています。これまでは指摘する側でしたが、今度は指摘される側です。ただ、どこを見られるかは分かっているので、指摘される前に潰せるはずです。逆に、「前はこちら側だった」という態度では臨みません。元の職場に便宜を求めることも、するべきではないと考えています。整った申請を出すほうが、結果的に速いので。
この線を、自分から引けることが重要です。
採用する側は、そこを心配しています。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| 指定確認検査機関 | 審査と検査。業務の中身がそのまま同じ |
| 設計事務所 | 申請の前に、補正の理由を潰す |
| 建設・住宅 | 図面と現場のずれを、検査の目で見る |
| 不動産の調査 | 既存の建物が適法かどうかの判断 |
| 建物の管理 | 定期報告と、改修時の法令の扱い |
> 御社の設計の部門でいえば、入って最初にできるのは、差し戻しの理由を類型にして、申請の前の確認の一覧を作ることだと思います。補正が1回減れば、それだけ工程が早まります。逆に、設計そのものの経験はないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 検査で現地に出る日と、審査で図面を見る日が半々くらいでした。年度末は完了検査が集中します。確かめたいのは、現地に出る頻度と、繁忙の時期です。
「図面も見るし、現場にも出る」は、この分野では明確な適性です。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「法規の確認は、社内の誰が行っていますか」
専任がいるのか、設計者が兼ねているのか。専任がいない会社なら、入ってすぐ中心になります。
2. 「確認申請の手続は、どこまで社内でやりますか」
外注しているのか、自社で出しているのか。自社なら、この経歴が直接効きます。
3. 「補正が出たときは、誰が対応しますか」
自分の役割の範囲が分かります。
つまずきやすい点
1. 「案件によってさまざまです」と答える
差し戻しの理由を、類型で答えてください。
2. 件数を言わない
この分野では、件数がそのまま経験の量です。
3. 「検査済証がない=違反」と説明する
同じではありません。そこを区別できるかで、理解の深さが見られます。
4. 命令の相手を「建築主」とだけ答える
請負人、現場管理者、所有者、占有者まで条文に並んでいます。
5. 立場が反転することに触れない
採用する側が心配している点です。自分から線を引いてください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 建築基準法第9条は、命令の相手として建築主、請負人、下請人、現場管理者、所有者、管理者、占有者を挙げています
- つまり、民間に移ると、自分がこの並びのどこかに入ります。言う側から、言われる側になります
- 「よく差し戻すのは、どういう点ですか」——類型で答えられると、量を見てきた人だと伝わります
- 補正の回数の話ができる人は、入ってすぐ何をするかが見えている人として扱われます
- 検査済証がないことと、違反であることは同じではありません。ここを区別できるかが見られます
- 逆質問は、①法規の確認は誰が行うか ②申請はどこまで社内か ③補正は誰が対応するかの3つです
よくある質問
その場で「この建物は適法か」と聞かれたら、どう答えますか
断定しないでください。正解は、「確認すべきことが3つあります」と手順を示すことです。確認の記録があるか、その後に増築や用途の変更がないか、現況が図面と合っているか。そのうえで、「この3つを確かめないと判断できません」と添えます。即答して外すほうが、はるかに損です。実務でも、断定して外せば、会社に損害が出ます。知っていることと、確認が要ることを分けられる——これ自体が、この分野の技術です。
審査より、違反への対応が長かったのですが、不利ですか
不利にはなりません。むしろ、違反への対応は、経験者が少ない部分です。中身は、①端緒 ②現地の確認と記録 ③不適合の特定 ④文書での通知 ⑤是正の計画の確認 ⑥経過の管理の6つで、民間の品質の問題への対応と、まったく同じ工程です。とくに、「相手が納得していない状態で、条文と数字で話を進める」という部分は、経験がないとできません。建設会社や、建物の管理の会社では、この経験が直接必要とされます。書くときも話すときも、手順として整理して伝えてください。
転職の理由を、どう説明すればよいですか
「判定する側から、作る側・使う側に回りたい」——この形が通ります。建築確認は、適合しているかを判定するところまでです。その先の、実際に建て、使い、直していく部分は、民間が担っています。それを何年か見ていると、先まで関わりたいと思うのは自然です。注意点は、制度を否定しないことです。「基準が厳しすぎる」という言い方をすると、入ってから行政と協議する場面で、同じことを言う人に見えます。そして、協議するのは自分です。