部署別 / 建築指導課
建築指導課の職務経歴書|書き出しから実績の出し方まで
建築指導課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「建築確認の審査、建築指導に関する業務」
この1行で終わってしまいます。
読む側は、ここから「窓口で図面を受け取っていた人」という像しか作れません。実際には、建築基準法だけでなく、関係する法令の全部に照らして、工事に着手する前に適合を判定してきたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは建築指導課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は建築指導課から転職しやすい業界と職種に書いています。
見ているのは、建築基準法だけではありません
書き方に入る前に、この仕事の性格を条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
建築基準法第6条第1項は、こう定めています。
建築主は、……当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。……)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して……確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
「建築基準関係規定」の定義を読んでください。
建築基準法だけではありません。
「その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律……で政令で定めるもの」——つまり、他の法律も含まれます。
ここが要点です。
1件の確認の審査で、扱う法令は1つではありません。
消防、下水道、駐車場、バリアフリー、省エネ、宅地の造成。建物の種類と規模によって、当たる法令が変わります。
そして、そのどれか1つでも適合していなければ、確認は下りません。
つまり、この仕事は「複数の法令にまたがる適合の判定」です。
民間でいえば、これは横断的な法令の確認にあたります。1つの案件に、複数の規制がかかり、そのすべてを満たす必要がある。製造業の製品でも、金融の商品でも、同じ構造の仕事があります。
書類には、この部分を書いてください。
- 扱った法令の範囲(建築基準法と、関係する規定)
- 審査と検査の件数
- どの規模・用途の建物を見てきたか
「建築確認の審査」ではなく、この3つです。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所の建築指導課に配属され、建築確認の審査と建築指導に関する業務を担当しました。
件数も、範囲も、規模も入っていません。
良い例
> ◯◯市(特定行政庁)の建築の部門において、建築確認の審査と、中間検査・完了検査を担当しました。確認の申請を年間約◯件審査し、用途・形態の制限・構造・防火・避難の各項目に加え、消防、下水道、バリアフリー、省エネ等の関係規定との適合を確認しています。検査は年間約◯件、申請前の相談を年間約◯件受けました。あわせて、違反の疑いのある建築物について年間◯件の現地の確認と是正の管理、建築計画概要書の閲覧の対応を担当しています。
入っているもの
- 審査と検査の件数(=経験の量)
- 扱った法令の範囲
- 相談の件数
- 違反への対応の件数
1つ目が要点です。この分野では、件数がそのまま経験の量として読まれます。
担当業務
「建築確認の審査」で丸めず、機能に分けて書いてください。
悪い例
> ・建築確認申請の審査> ・完了検査> ・違反建築物の指導> ・その他庶務
良い例
> 【確認の審査(年間約◯件)】> 用途、建ぺい率、容積率、高さ、斜線、日影、採光、換気、防火、避難、構造。確認すべき項目が多いため、図面を見る順序とチェックの様式を定めて、担当者が代わっても同じ品質で見られるようにした。>> 【関係規定との適合】> 消防、下水道、駐車場、バリアフリー、省エネ等。建物の用途と規模によって当たる法令が変わるため、規模別に確認する法令の一覧を整備。>> 【検査(年間約◯件)】> 中間検査、完了検査、現地での確認。完成後には見えなくなる部分があるため、工程に合わせて検査の時期を管理。>> 【相談(年間約◯件)】> 計画の初期段階での相談、設計者との協議、必要な手続の案内。図面が固まっていない段階のため、確定的な回答はできないが、方向が違う場合は早く示す運用を担当。>> 【違反と是正(年間◯件)】> 通報や発見の端緒への対応、現地の確認と記録、不適合の特定、文書による通知、是正の経過の管理。>> 【記録と情報の提供】> 建築計画概要書の管理と閲覧、台帳の整備、定期報告の受理と確認、統計の報告。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。やったことではなく、そこで何を整理していたかを1つずつ足してください。
実績
ここが書きにくい部分です。成果が、確認済証という1枚に見えるからです。
悪い例
> 建築物の安全性の確保と、良好な市街地環境の形成に努めました。
工程も数字も入っていません。
良い例(3つの型)
型1:処理を速くした
> 確認の審査について、差し戻しの理由を1年分集計。上位の◯項目が、特定の図面の記載の不足に集中していたため、申請の前に確認する項目の一覧を作成し、相談の段階で設計者に示す運用に変更。その結果、補正の回数が平均◯回から◯回に減り、受付から確認済証の交付までの期間を◯日短縮した。
型2:見落としを減らした
> 審査の項目が多く、担当者によって見る順序が違っていたため、図面の種類ごとに確認する項目を整理したチェックの様式を作成。構造と防火については、複数人で確認する運用に変更。担当が代わっても、同じ品質で審査できる形にした。
型3:手戻りを減らした
> 申請の前の相談について、建物の用途と規模から、当たる関係法令を割り出せる一覧を作成。相談の初回で、必要な協議先と手続を示す運用に変更。設計者からの問い合わせの往復が減り、相談から申請までの期間が短くなった。
型1が、この経歴でいちばん効く形です。「審査の期間を短くした」という話は、指定確認検査機関でも、設計事務所でも、そのまま価値になります。
型2も強いです。属人的だった判断を、様式にして揃えたという話は、品質の管理でまったく同じことをします。
数字の出し方
公表されている資料と、手元の記録から取ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 確認の審査の件数(年度別) | 職務要約、実績 | この分野では、これが経験の量 |
| 検査の件数(中間・完了) | 職務要約、担当業務 | 現地を見た量 |
| 相談の件数 | 職務要約、実績 | 判定の速さの証明。記録に残っていないことが多い |
| 扱った法令の分野 | 職務要約 | 守備範囲として読まれる |
| 違反への対応の件数 | 担当業務、実績 | 是正の経験量 |
| 受付から確認済証までの期間 | 実績 | 改善を示すならこれ |
| 補正の回数(平均) | 実績 | 審査の質と速さの両方が伝わる |
| 建築計画概要書の閲覧の件数 | 担当業務 | 不動産の方向では効く |
1行目から4行目が中心です。審査・検査・相談の件数と、法令の範囲。この4つが揃うと、「量を見てきた人」として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
自分の数字がどう読まれるかは、話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 指定確認検査機関 | 審査の件数と法令の範囲 | 検査の件数 | 期間と補正の回数 |
| 設計事務所 | 差し戻しが多かった項目 | 相談での判定 | 行政との協議 |
| 建設・住宅 | 検査の経験 | 違反と是正の進め方 | 施工と図面のずれ |
| 不動産の調査 | 既存不適格の判断 | 建築計画概要書と台帳 | 検査済証の扱い |
| 建物の管理 | 定期報告の受理と確認 | 既存の建物への法令の適用 | 改修時の扱い |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
申請も、違反も、立場があるから知り得たものです。
- 申請者、設計者、施工者の名称や、個別の計画の内容
- 違反の建築物の所在、所有者、是正の経緯
- 審査で問題になった個別の案件の中身
- 公表前の相談の内容(計画の段階のもの)
- 建築計画概要書の閲覧の請求者に関すること
- 他の部署や機関との協議のうち、合意に至っていない内容
- 特定の自治体の内部の状況や、部署の評判に関すること
書けるのは、「どういう類型を、何件、どういう手順で処理したか」と「期間」までです。
> ✕ 「◯◯マンションの容積率の違反について、所有者と交渉して是正させた」> ○ 「違反の疑いのある建築物について、現地の確認と記録、不適合の項目の特定、文書による通知、是正の経過の管理という手順を整理し、年間◯件を同じ流れで処理できるようにした」
後者のほうが、書類としても強くなります。個別の案件ではなく、自分が整理した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 「建築確認の審査」で丸める
確認/関係規定/検査/相談/違反と是正/記録の6つに分けてください。
2. 扱った法令の範囲を書かない
建築基準法だけを見ていたのではありません。法令名を並べてください。
3. 相談の件数を数えていない
判定の速さの証明です。いまから数えてください。
4. 「決められたとおりに審査していた」と考える
漏れなく、同じ品質で繰り返せること自体が技術です。
5. 個別の案件を書いてしまう
申請者、所在、是正の経緯。すべて書けません。類型と手順で書いてください。
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まとめ
- 建築基準法第6条は、確認の対象を「建築基準関係規定」とし、建築基準法以外の法令も含むと定めています
- つまり、1件の審査で、複数の法令にまたがる適合を判定していました
- 職務要約には、審査と検査の件数・扱った法令の範囲・相談の件数・違反への対応を入れてください
- 担当業務は、6つの機能に分けて書きます
- 実績は、①処理を速くした ②見落としを減らした ③手戻りを減らしたの3つの型で書けます。①がいちばん効きます
- この分野では、件数がそのまま経験の量として読まれます。必ず書いてください
よくある質問
審査の補助で、自分が確認を下ろしていたわけではありません
それでも書けます。書き方は、「確認の審査について、◯件の図面の照合と、関係規定の確認を担当。確認済証の交付は建築主事が行うため、審査の補助として従事」という形です。正確に線を引いたほうが信用されます。そして、民間の設計事務所や、確認検査機関の補助の職では、この経験がそのまま求められます。「照合ができる」ことが、まず必要とされる技能だからです。資格や職位の話と、実際に見てきた量の話は、分けて書いてください。
木造の小規模な建物ばかりで、大きな建物は見ていません
それは弱みになりません。むしろ、住宅の確認を数多く見てきた人は、ハウスメーカーや住宅の設計事務所では、そのまま即戦力です。件数が多いぶん、判定が速く、よく出る不備も分かっています。書くときは、「木造の住宅を中心に年間◯件」と、対象を明示してください。逆に、大規模な建物や特殊な用途を扱う会社に出す場合は、そこが弱みになります。対象を書いておけば、合わない応募を避けられます。
建築指導課に2年しかいません。書けることはありますか
2年でも、件数は積み上がっています。この仕事は、1年目から申請を見ます。年間◯件を2年見ていれば、それだけの図面を読んでいるということです。書くなら、「◯年間で、確認の審査を延べ約◯件、検査を延べ約◯件」と、延べの件数で書いてください。そのうえで、自分が変えたことを1つ——チェックの様式、確認する順序、相談で示す一覧——書ければ十分です。年数の短さは、件数で埋まります。面接で聞かれることは建築指導課出身者が面接で必ず聞かれることに整理しています。