部署別 / 広報広聴課
広報広聴課の職務経歴書|悪い例と良い例、数字の出し方
広報広聴課の職務経歴書で、いちばん多い失敗はこれです。
「広報紙の編集、ホームページの更新、SNSの運用、市民の声の対応」
担当した経路が並んでいるだけで、何をどう判断したかが1行も入っていません。
読む側は、ここから「発信の作業をしていた人」という像しか作れません。実際には、制度の文章を使う人に届く形に直し、出せる範囲を判断し、届いたかを確かめていたわけですが、それが書かれていません。
この記事では、職務要約・担当業務・実績の3つに分けて、悪い例と良い例を並べます。
言い換えは広報広聴課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は広報広聴課からの転職先に書いています。
「有用性に配慮しつつ、権利利益を保護する」判断をしてきた仕事です
書き方に入る前に、この部署がどういう判断をしてきたかを条文で押さえます。書類の芯になる部分です。
個人情報の保護に関する法律第1条は、この法律の目的について、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とすると定めています。
「有用性に配慮しつつ、権利利益を保護する」。両方を同時に立てると書かれています。
広報広聴課の仕事は、この両立そのものです。
- 広報紙に子どもの写真を載せれば、記事は伝わりやすくなる。だが、本人と保護者の同意はどう取るか
- 住民の声を紹介すれば、制度の使われ方が伝わる。だが、その人が特定されないか
- 災害時に安否の情報を出せば役に立つ。だが、どこまで出してよいか
「出せば伝わるが、出してはいけない場合がある」という判断を、毎回しています。
この判断の経験こそが、書類に書くべきものです。企業の広報でも、未発表の情報、取引先の名前、従業員の個人情報について、まったく同じ判断が必要になります。
職務要約
冒頭の3〜5行で、読まれ方が決まります。
悪い例
> ◯◯市役所に入庁後、複数の部署を経験し、直近では広報広聴課に所属。広報紙の編集、ホームページの運用、SNSの運用、市民からの意見への対応などを担当しました。
経路が並んでいるだけで、規模も判断も入っていません。
良い例
> ◯◯市(人口約◯万人)の広報広聴課で◯年間、住民向けの情報発信全体の設計と実行を担当しました。月1回・約◯万部の広報紙の企画から校了まで、公式サイトとSNSの運用、年間◯件の報道発表、および年間◯件の広聴(意見・要望)の受付と所管課への還元を担当しています。各課から上がる制度の説明文を、対象・期限・窓口の3点に整理し直したうえで発信する工程を担い、掲載可否の判断では個人情報の取扱いと未確定情報の扱いを所管課と調整していました。
入っているもの
- 規模(人口、部数、発行頻度、報道発表件数、広聴件数)
- 担当の広さ(編集・ウェブ・SNS・報道・広聴)
- 判断の中身(整理し直す工程、掲載可否の判断)
3つ目がいちばん効きます。ここで「作業していた人」から「判断していた人」に変わります。
担当業務
経路ごとに並べるのではなく、工程として書いてください。
悪い例
> ・広報紙の編集> ・ホームページの更新> ・SNSの投稿> ・記者発表資料の作成> ・市民の声の受付
良い例
> 【広報紙(月1回・◯ページ・約◯万部)】> 年間の掲載計画の策定、各課からの原稿の取りまとめと編集、制作委託事業者へのディレクション、校正と校了、発行後の反響の確認。制度の説明文を「対象・期限・窓口」の3点に整理し直し、削った内容が不正確になっていないかを所管課と突き合わせて確定させる工程を担当。>> 【公式サイト・SNS】> 掲載ルールの運用と各課への周知、記事の公開、閲覧数の確認と改善。災害時の発信体制の切り替え(通常運用から緊急時運用への移行手順の整備と訓練)。>> 【報道発表(年間◯件)】> 発表資料の作成支援と事実関係の確認、発表日の調整、記者からの問い合わせへの一次対応、出せる範囲と保留する範囲の所管課との整理。>> 【広聴(年間◯件)】> 意見・要望の受付、内容の分類、所管課への回付と回答期限の管理、回答内容の確認、分類結果の施策担当課への還元。
太字にした部分が、他の応募者と差がつく場所です。工程名だけでなく、そこで何を決めていたかを1つずつ足してください。
実績
ここがいちばん書きにくい部分です。広報の成果は、数字にしにくいものが多いからです。
悪い例
> 広報紙の紙面を刷新し、読みやすくしました。SNSのフォロワーが増加しました。
何をしたか(工程)が抜けていて、数字の前提も分かりません。
良い例(3つの型)
型1:届き方を変えた
> 申請率が低かった◯◯制度について、対象世帯を絞った個別通知と広報紙・サイトの三経路に分けて案内する形に変更。従来は広報紙での一斉告知のみだったところ、対象者が受け取る経路を増やした結果、申請件数が前年度の◯件から◯件に増加した。
型2:仕組みを作った
> 各課からの原稿の様式を統一し、「対象・期限・窓口・問い合わせ先」を必須項目とするチェックリストを作成。校正時の差し戻し件数が、1号あたり平均◯件から◯件に減少し、校了日を◯日前倒しできた。
型3:判断の型を残した
> 災害時の情報発信について、通常運用から緊急時運用への切り替え手順(発信の担当、承認の経路、更新の頻度、出さない情報の範囲)を文書化し、年◯回の訓練に組み込んだ。それまで担当者の経験に依存していた判断を、手順として引き継げる形にした。
型3は、数字がなくても書ける形です。広報広聴課の仕事の多くは、「起きなかったこと」や「引き継げるようにしたこと」なので、この型を1つ持っておくと書類が埋まります。
数字の出し方
公表されている範囲の数字を使ってください。
| 数字 | どこで使うか | 注意 |
|---|---|---|
| 広報紙の部数・ページ数・発行回数 | 職務要約、担当業務 | 公表されている発行データを使う |
| 継続年数 | 担当業務 | 「◯年間、毎月発行を維持」と書ける |
| 報道発表の件数(年間) | 職務要約 | 概数で可 |
| 広聴・意見の受付件数(年間) | 職務要約、実績 | 公表している団体が多い |
| サイトの閲覧数 | 実績 | 月間か年間かを明記する |
| SNSのフォロワー数・投稿数 | 担当業務 | 母数が人口に制約される点を添える |
| 委託契約の金額規模 | 担当業務 | 公表されている契約実績の範囲で |
| 申請件数・参加者数の変化 | 実績 | 発信以外の要因も書き添える |
最後の行が大事です。申請件数が増えた要因は、発信だけとは限りません。制度そのものが変わった、対象が広がった、他の要因があった。そこを正直に書き添えたほうが、数字の扱いが分かっている人として読まれます。
盛った数字は、面接で必ず確認されます。
並べ替え:応募先によって前に出すものを変える
同じ経歴でも、順番を変えるだけで通りやすさが変わります。
| 応募先 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 企業広報 | 報道発表・メディア対応 | 危機管理時の発信 | 全社の情報を集約する工程 |
| オウンドメディア編集 | 広報紙の企画〜校了 | 委託事業者のディレクション | 継続発行の体制 |
| 自治体向け企業 | プロポーザルの選定側の経験 | 委託の発注と進行管理 | 自治体の意思決定の実際 |
| マーケティング | 広聴の分類と還元 | 届き方を変えた実績 | 閲覧数などの数値管理 |
| 非営利・公益系 | 一人で複数経路を回した範囲 | 会報誌の継続発行 | 限られた予算での運用 |
1番目に何を置くかだけでも、書類の読まれ方は変わります。全部を書き直す必要はありません。
書いてはいけないこと
個人情報の保護に関する法律第1条が求める「権利利益の保護」の側です。ここを守れる人かどうかも、書類から読まれています。
- 取材や撮影に応じた住民の氏名・所属(掲載済みであっても、書類に再掲しない)
- 広聴に寄せられた意見の内容(要約であっても、発言者が推測できる形にしない)
- 苦情の相手方や、個別のやりとりの経緯
- 未公表の施策・イベント・人事の情報
- 報道機関の個別の記者とのやりとり
- 不祥事案件の内部の経緯(公表済みの発表内容の範囲を超えない)
- 庁内の部署の評判や、職員個人に関する評価
書けるのは、「判断の構造」までです。
> ✕ 「◯◯の不祥事について、××課の対応が遅れたため発表が後手に回った」> ○ 「公表を要する事案について、事実関係の確認手順と、確認が済んだ範囲から段階的に発表する進め方を所管課と整理した」
後者のほうが、書類としても強くなります。組織の内情ではなく、自分が設計した手順が書かれているからです。
つまずきやすい点
1. 担当した経路を並べるだけで終える
工程として書き、そこで何を決めていたかを1つずつ足してください。
2. 委託事業者へのディレクションを書かない
発注者としての経験が消えます。委託の範囲、進行管理、校正の回数、プロポーザルの選定まで書いてください。
3. 「削る」工程を書かない
制度の説明文を、対象・期限・窓口の3点に整理し直す工程。いちばん手間がかかっている部分です。
4. 数字の前提を書かない
申請件数が増えた要因は発信だけとは限りません。他の要因を書き添えるほうが、信頼されます。
5. 応募先ごとに並べ替えない
1番目を変えるだけで十分です。全部書き直す必要はありません。
書類は一度見てもらったほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 個人情報の保護に関する法律第1条は、有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています。広報広聴課は「出せば伝わるが、出してはいけない場合がある」判断を毎回してきた部署です
- 職務要約には、規模・担当の広さ・判断の中身の3つを入れてください。3つ目で読まれ方が変わります
- 担当業務は、経路ごとの一覧ではなく工程として書き、そこで何を決めていたかを足します
- 実績は、①届き方を変えた ②仕組みを作った ③判断の型を残したの3つの型で書けます。③は数字がなくても書けます
- 数字は公表されている範囲で。発信以外の要因も書き添えたほうが信頼されます
- 応募先ごとに、1番目に置くものだけを変えてください
よくある質問
職務経歴書は何枚くらいが適切ですか
2枚が目安です。広報広聴課は担当範囲が広いため、全部書くと3枚を超えます。応募先の方向に関係の薄い経路は、見出しと1行だけにとどめてください。たとえば企業広報に応募するなら、広聴は「年間◯件の受付と所管課への還元」の1行で足ります。削ったほうが、残した部分が読まれます。
前の部署の経験も書いたほうがよいですか
広報広聴課の前にいた部署の経験は、応募先によっては強い材料になります。福祉や税務にいたなら、制度を内側から知ったうえで発信していたという説明ができます。自治体向け企業に応募するなら、発注・契約の経験がある部署にいたことが効きます。ただし、時系列で全部並べると焦点がぼやけるので、応募先に関係するものだけを選んで書いてください。
制作物を提出したほうがよいですか
公表されているものなら、有効です。自分が担当した広報紙の号や、企画したページを、発行済みのものから選んで示せます。ただし、個人が写り込んでいる誌面は避けてください。また、未公表の企画書やデザイン案は提出できません。提出するなら、「どこを自分が担当したか」を一言添えると伝わります。面接で聞かれることは面接で聞かれることに整理しています。