部署別 / 広報広聴課
広報広聴課の働き方と評価|一年の波と、成果が測られにくい理由
広報広聴課の働き方には、他の部署にない特徴があります。
締切が、外から固定されていることです。
広報紙の発行日、記者発表の日時、サイトの公開日。どれも自分の都合で動かせません。そして、全庁の原稿が集まってこないと、こちらの仕事が始まりません。
つまり、待つ時間と、詰まる時間が、毎月繰り返される構造になっています。
この記事では、一年の波と、成果が測られにくくなる構造、そして民間に移ったときに何が変わるかを整理します。不満の話ではなく、構造の話として読んでください。転職の場面で、自分の仕事をどう説明するかに直結します。
言い換えは広報広聴課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は広報広聴課からの転職先、書類は職務経歴書、面接は面接で聞かれることに分けています。
「毎年、見直さなければならない」と書かれている計画があります
まず、この部署の一年に組み込まれている法定の仕事を確認します。
災害対策基本法第42条第1項は、市町村防災会議について、防災基本計画に基づき、当該市町村の地域に係る市町村地域防災計画を作成し、及び毎年市町村地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないと定めています。
「毎年検討を加え」「修正しなければならない」です。
そして第2項では、計画に定める事項として、情報の収集及び伝達、災害に関する予報又は警報の発令及び伝達が挙げられています。
つまり、災害時に誰がどう発信するかは、毎年見直すことが法律で決まっているわけです。
広報広聴課は、この見直しに発信の担当部署として関わります。防災担当課が計画全体を回し、広報は伝達の経路と手順の部分を受け持ちます。
ここが、民間の広報にはない一年の固定点です。企業にも危機管理の手順はありますが、毎年見直すことが法律で義務づけられている組織は多くありません。
面接では、この経験を材料にしてください。「手順を作れる人」ではなく、「手順を毎年更新し、訓練に組み込んできた人」と言えます。
一年の波
年間の動きは、月次の波と、年次の波が重なる形になります。
| 時期 | 主な仕事 | 忙しさ |
|---|---|---|
| 4月 | 新年度の体制・制度改正の一斉告知、人事異動の発表 | 最も高い |
| 5〜6月 | 年間の掲載計画の調整、出水期に向けた発信手順の確認 | 中 |
| 7〜9月 | 台風・大雨への緊急対応、地域防災計画の見直し作業 | 高(読めない) |
| 10〜11月 | 翌年度予算の要求(広報紙の印刷委託、サイトの改修) | 中 |
| 12〜1月 | 委託事業者の選定(プロポーザル・入札)、成人式など行事 | 高 |
| 2〜3月 | 年度末の制度改正の告知、次年度に向けた様式の整備 | 高 |
| 毎月 | 広報紙の企画・入稿・校正・校了 | 通年で固定 |
| 通年 | 報道発表、サイト更新、SNS、広聴の受付と回付 | — |
いちばん重いのは4月です。制度改正が年度替わりに集中するため、告知が一気に重なります。しかも、人事異動で各課の担当者が入れ替わった直後なので、原稿の質が落ちる時期でもあります。
そして、読めないのが7〜9月です。台風や大雨のたびに、通常の業務が止まります。しかも、広報紙の発行日は動きません。
この「毎月の固定した締切」と「読めない緊急対応」の重なりが、この部署の働き方を決めています。
成果が測られにくいのは、指標の置き方によるものです
広報広聴課の成果が測られにくいのには、3つの構造的な理由があります。評価してもらえないという話ではなく、指標の設計からそうなるという話です。
1. 目的が「売る」ではなく「使われる」ことにある
企業の広報は、最終的に売上・採用・企業価値につながることを求められます。自治体の広報は、制度が使われることが目的です。
ところが、制度が使われた件数を所管しているのは所管課であり、広報広聴課の実績として集計される仕組みになっていません。成果は出ているのに、こちらの数字にならない構造です。
2. 予防がうまくいくほど、何も起きない
誤解を招く表現を事前に直した。個人が特定される情報を掲載前に外した。災害時に手順どおりに発信できた。どれも「何も起きなかった」という形でしか表に出ません。
一方、間違えたときだけ表に出ます。
3. 届いていない層への到達は、数字になりにくい
高齢者に紙で届ける、外国語で出す、対象世帯に個別通知を出す。手間はかかりますが、閲覧数のような数字には表れません。効率の指標で測ると、むしろ悪く見えます。
この3つのうち、1つ目は自分で解消できます。
所管課が持っている「制度が使われた件数」と、自分の発信を突き合わせておくことです。これをやっておくと、面接でいちばん詰められる「成果はどう測っていましたか」への答えが手元にできます。
民間に移ると変わる4つのこと
1. 数字で測られるようになる
企業では、掲載件数、問い合わせ件数、応募数、閲覧数が指標として置かれます。測られること自体は、広報広聴課の経験にとって有利です。成果が数字で残るようになります。
不利なのは、届いていない層への到達のように、数字になりにくい仕事が後回しに見えることです。
2. 目的が上流に結び付けられる
企業の広報は、事業の目標から逆算して設計されます。「何のために出すのか」を毎回問われます。
自治体では、制度があるから告知するという順番が多いので、ここは切り替えが要ります。ただし、「届いていない層に届ける」という発想は逆に持ち込む価値があります。
3. 出せない情報の線が引き直される
自治体では、個人が特定される情報と、意思決定前の情報が出せません。企業では、未発表の業績、新製品、取引先の情報が出せません。
「出せないものを扱う訓練」を受けている点は同じですが、線の位置が違うので覚え直しが必要です。
4. 発信の速さが上がる
自治体では、掲載の可否を所管課と調整し、決裁を通してから出します。企業では、広報の判断で出せる範囲が広くなります。
速いぶん、判断の責任がはっきり自分に来ます。
在職中に残しておくべき記録
転職を考え始めたら、在職中に手元に控えておくものがあります。辞めてからでは取りにくくなります。
| 残すもの | 使う場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 広報紙の部数・ページ数・発行回数・継続年数 | 職務要約、担当業務 | 公表されている発行データを使う |
| 報道発表の年間件数 | 職務要約 | 概数で可 |
| 広聴・意見の年間受付件数 | 職務要約、実績 | 公表している団体が多い |
| サイトの閲覧数(月間・年間) | 実績 | どちらか明記する |
| 委託契約の金額規模と委託の範囲 | 担当業務 | 公表されている契約実績の範囲で |
| プロポーザルの評価項目を設計した経験 | 自治体向け企業への応募 | 提案内容や事業者名は書かない |
| 担当した発信と、制度の申請件数の推移 | 面接の最重要材料 | 他の要因も併記する |
| 災害時の発信手順と訓練の実施回数 | 危機管理広報への応募 | 計画の公表範囲にとどめる |
いちばん取りにくいのが、最後から2番目です。自分の発信と、所管課が持つ件数を突き合わせた記録は、辞めてからでは作れません。1件でよいので、在職中に作っておいてください。
そして、書いてはいけないものも確認しておきます。
- 取材や撮影に応じた住民の氏名・所属
- 広聴に寄せられた意見の内容(発言者が推測できる形にしない)
- 苦情の相手方と、個別のやりとりの経緯
- 未公表の施策・イベントの情報
- 報道機関の個別の記者とのやりとり
- 庁内の部署の評判や、職員個人に関する評価
公表されている資料に載っている範囲で書くのが原則です。
つまずきやすい点
1. 「広報紙を作っていた」で説明を終える
編集・報道対応・ウェブ・広聴の4つに分けて書いてください。
2. 他部署への依存を「大変だった」で終える
「他部署の進捗に依存する工程を、期限内に収めてきた」と言い換え、依存を減らす工夫を1つ足してください。
3. 制度の申請件数と突き合わせない
面接でいちばん詰められる質問への答えになります。在職中にしか作れません。
4. 災害時の発信経験を書かない
民間側に少ない経験です。計画の公表範囲で、手順と訓練として書いてください。
5. 退職後の手続きを確認しないまま動く
退職手当や共済の扱いは在職期間で変わります。所属の人事担当課と共済組合で先に確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
どの経験がどの方向で値が付くかは、募集の出方で変わります。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 災害対策基本法第42条は、市町村地域防災計画を毎年検討し、必要なら修正しなければならないと定め、情報の収集及び伝達を計画事項に挙げています。発信の手順を毎年更新してきた経験は、民間側に少ない材料です
- 一年の山は4月の制度改正の一斉告知と7〜9月の緊急対応、それに12〜1月の事業者選定。毎月の広報紙の締切は動きません
- 成果が測られにくいのは、目的が「使われること」にある/予防がうまくいくほど何も起きない/届いていない層への到達が数字になりにくいという3つの構造によるものです
- 制度が使われた件数と自分の発信を突き合わせておくと、1つ目は自分で解消できます
- 民間に移ると、数字で測られる/目的が事業目標から逆算される/出せない情報の線が引き直される/発信の速さが上がるの4点が変わります
- 災害時の発信経験とプロポーザルの経験は、いまの場所でしか積めません
よくある質問
残業は多い部署ですか
団体や年によって違うため、一般化はできません。ただし、構造として、毎月の広報紙の締切が固定されていること、4月に制度改正の告知が集中すること、出水期の緊急対応が予定を押しのけることは、どこでも共通します。面接で聞かれたら、時期の偏りと、締切が外から固定されている性質を説明するのが正確です。個別の職場の事情をそのまま話す必要はありません。
写真撮影やデザインのスキルは求められますか
方向によります。企業広報やオウンドメディア編集では、企画・原稿・進行・校正ができれば足り、制作は委託や社内のデザイナーが担うのが普通です。一方、小規模な組織の広報では、簡単な制作まで求められることがあります。面接では、「レイアウトと印刷は委託先が担い、自分は企画と進行と校正を担当した」と正確に言ってください。できないことを書かないほうが、書類も面接も強くなります。
異動して1年ですが、経歴として使えますか
使えます。ただし、一巡した工程が1つあるかどうかで書きやすさが変わります。広報紙を12号出した、報道発表を1年分回した、出水期を一度越えた。どれか1つでも一巡していれば、担当業務として書けます。逆に、まだどの工程も途中なら、もう一年で完結させてから動くほうが、書類に書ける材料が増えます。書き方は職務経歴書に整理しています。