部署別 / 用地課
用地課出身者が面接で必ず聞かれること
用地課から民間に移るとき、面接でいちばん来るのはこれです。
「断られたら、どうするんですか」
そして、ここでの答え方が、評価を決めます。
「粘ります」と答えると、方法を持っていない人に見えます。
「収用があるので」と答えると、民間では使えない話になります。
この記事では、実際に聞かれる質問を7つ挙げて、避けたい答え方と、組み立て方を並べます。
書類の書き方は用地課の職務経歴書、行き先の絞り方は用地課から転職しやすい業界と職種に書いています。
「なぜ必要なのか」の要件が、法律に書かれています
答え方の前に、この仕事の立ち位置を条文で押さえます。
土地収用法第20条は、事業の認定の要件をこう定めています。
国土交通大臣又は都道府県知事は、申請に係る事業が左の各号のすべてに該当するときは、事業の認定をすることができる。
一 事業が第三条各号の一に掲げるものに関するものであること。/二 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。/三 事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること。/四 土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること。
4つの要件が並んでいます。
そして、この4つは、そのまま「なぜこの土地が必要なのか」の説明の構造になっています。
| 号 | 説明の中身 |
|---|---|
| 一 | そもそも、どういう種類の事業か |
| 二 | それをやり切る意思と能力があるか |
| 三 | その計画は、土地の使い方として合理的か |
| 四 | そのために、この土地が必要か |
ここが要点です。
用地の担当者は、この4つを、毎日の交渉の中で説明しています。
収用の手続まで進まなくても、話す中身は同じです。
どういう事業で、市は本当にやるのか、なぜこの場所なのか、なぜあなたの土地なのか。
この構造を持っていることが、民間でもそのまま効きます。
なぜなら、民間の用地の交渉でも、聞かれることは同じだからです。
質問1:「用地課では、どういうお仕事をされていたんですか」
避けたい答え方
> 公共事業の用地の取得と、補償の事務をしていました。
「手続の人」で固まります。
組み立て方
量と、通した工程を置いてください。
> 道路や河川の事業で、年間◯件・◯筆、地権者にして約◯人を担当していました。登記と現況の調査から、境界の確定、物件の調査、補償の算定、交渉、契約、登記までを、一人で通しています。補償は土地の代金だけではなく、建物の移転、工作物、立木、営業の損失、借家人まで扱いました。相続の登記が済んでいない土地も年間◯件あって、相続人を追うところから始めています。
最後の一文が、いちばん効きます。
民間の用地の担当者が、いちばん苦手にする部分だからです。
質問2:「断られたら、どうするんですか」
冒頭に挙げた質問です。ここが分かれ目になります。
避けたい答え方
> 粘り強く通って、ご理解いただけるよう努めます。
方法を持っていない人に見えます。
組み立て方
「断られる理由」を分けてから答えてください。
> 断られる理由は、いくつかに分かれます。金額が合わない、移転先が見つからない、先祖からの土地で手放したくない、家族の中で意見が割れている、そもそも事業に反対している。この5つで、打つ手がまったく違います。金額なら、算定の根拠を項目ごとに示し直します。移転先なら、候補地を一緒に探します。家族の中で割れているなら、時間を置いて、決められる状態になるのを待ちます。事業そのものへの反対なら、用地の担当だけでは解決できないので、事業の部門と一緒に説明の場を作ります。つまり、「粘る」のではなく、理由を特定して、それに合わせて手を変えます。
この答え方ができると、「交渉の技術を持っている人」として読まれます。
質問3:「なぜあなたに売らなければいけないのか、と言われたら」
説明の構造を持っているかを見ています。
組み立て方
4つに分けて答えてください。
> 順番に説明します。まず、どういう事業なのか。道路なら、どこからどこまでを、なぜつなぐのか。次に、市が本当にやるのか。予算と計画の裏づけがあるか。それから、なぜこの経路なのか。他の案と比べて、どういう理由でこの線になったのか。最後に、なぜこの土地なのか。実は、この4つの順序が、法律の要件とほぼ同じです。最初から「あなたの土地をください」と言っても、話は進みません。外側から順に説明して、最後に自分の土地に降りてくる——この順番が、いちばん納得を得やすい形でした。
「外側から順に説明する」——これは、民間の用地の交渉でもそのまま使えます。
質問4:「相続が絡む土地は、どう処理しましたか」
この経歴のいちばん値の付く部分です。手順で答えてください。
組み立て方
> まず、戸籍をたどって相続人の範囲を確定させます。数代前の名義のままだと、相続人が十数人になることもあります。次に、連絡先を調べて、書面で説明を送ります。ここで、自分が土地を相続していたことを知らない方が出てきます。そのうえで、連絡が取れた方から順に説明し、同意を得ていきます。遠方の方には、書面と電話で対応しました。全員が揃わないと契約できないので、順序を設計することが重要です。話がまとまりやすい方から先に固めて、難しい方を後に回す——この順番で、時間がかなり変わります。
「順序を設計する」まで言えると、手順として持っている人だと伝わります。
質問5:「うちは民間なので、公益性は使えませんが」
立場の違いを分かっているかを見ています。
組み立て方
> 公益性という後ろ盾がなくなることは、理解しています。ただ、実務では、公益性を持ち出して解決した案件は、ほとんどありませんでした。実際に効いていたのは、算定の根拠を丁寧に示すことと、移転先まで一緒に考えることです。それは、民間でも同じだと思っています。むしろ、民間では「買えないなら諦める」という選択があるぶん、時間の使い方の判断が増えると考えています。そこは、入ってから覚える部分です。
「公益性に頼っていなかった」と言えることが、この質問の答えです。
そして、「見切る判断は覚える側だ」と添えることで、構造も分かっていることが伝わります。
質問6:「うちで、何ができると思いますか」
| 応募先 | 当てる工程 |
|---|---|
| デベロッパー・用地の仕入れ | 相続や共有が絡む土地の処理 |
| 鉄道・電力・ガス・通信 | 連続した区間の取得と、事業の日程との調整 |
| 補償のコンサル | 補償の項目ごとの算定と、根拠の説明 |
| 不動産の仲介・買取 | 権利関係が複雑な物件の調査と調整 |
| 自治体を顧客とする企業 | 公共事業の進め方と、年度の制約 |
> 御社の仕入れでいえば、入って最初にできるのは、権利関係が複雑で止まっている案件を引き取ることだと思います。相続、共有、未登記の建物、借地。この類型は、手順を持っています。逆に、価格を自分で決めて交渉する経験がないので、そこは学ぶ側になります。
できないことを1つ添えると、できることの信用が上がります。
質問7:働き方と条件について
組み立て方
> 地権者の都合に合わせるので、夜間や休日の訪問もありました。相手が仕事をしている時間には会えないので、そこは当然だと思っています。確かめたいのは、訪問の時間帯の考え方と、その場合の勤務の扱いです。
「相手の時間に合わせる」は、用地の仕事では前提です。そこを言えることが、経験の証明になります。
働き方の違いは用地課から民間に移ると働き方と評価はどう変わるかに整理しました。
逆質問で聞いておくこと
3つに絞ってください。
1. 「1件あたり、どれくらいの期間をかけますか」
数か月なのか、数年なのか。この経歴は長い案件に慣れているので、短いほうが戸惑います。
2. 「買えないと判断するのは、誰が、どの段階でしますか」
見切りの基準が、会社にあるのか、担当の判断か。ここが働き方を大きく左右します。
3. 「調査と交渉は、同じ人が担当しますか」
分かれているなら、自分の役割が限られます。一貫して持てる会社かどうかを確かめてください。
つまずきやすい点
1. 「粘り強く」と答える
断られる理由を分類して、それぞれに手を変えていたと話してください。
2. 収用を持ち出す
民間では使えません。そして、実務でもほとんど使っていないはずです。
3. 「なぜこの土地か」を、いきなり説明する
外側から順に——事業、実施の裏づけ、経路、そして土地。この順番です。
4. 相続の案件を、苦労話にする
順序を設計したというところまで話してください。
5. 担当した事業の種類を言わない
線的な取得か、面的な取得か。応募先の形と合わせてください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 土地収用法第20条は、事業の認定の要件として、事業の種類・遂行する意思と能力・計画の合理性・公益上の必要の4つを挙げています
- この4つは、そのまま「なぜこの土地が必要なのか」の説明の構造です
- 「断られたら、どうするか」には、理由を分類して、それぞれに手を変えると答えてください
- 「粘る」のではありません。理由を特定して、方法を変えるのが交渉です
- 公益性に頼っていなかったと言えることが、民間への転職では効きます
- 担当した事業の種類(線的か、面的か)を、応募先の形と合わせてください
よくある質問
交渉がうまくいかなかった案件を聞かれたら、どう答えますか
正直に答えてください。用地の仕事では、まとまらない案件が必ずあります。答え方としては、「◯年かけて合意に至らなかった案件があります。理由は、事業そのものへの反対で、用地の担当だけでは解決できない性質のものでした。事業の部門と一緒に説明の場を作りましたが、最終的には自分の異動まで動いていません」という形です。そのうえで、「いま振り返ると、もっと早く事業の部門を巻き込むべきだった」と続けると、振り返りができる人として読まれます。うまくいった話だけを並べるより、信用されます。
夜間や休日の訪問は、民間でもありますか
あります。用地の交渉は、相手の都合に合わせるのが原則なので、平日の日中に会えない方には、夜や休日に訪問します。これは、行政でも民間でも同じです。むしろ、民間のほうが件数が多く、頻度が上がることもあります。確かめるべきは、その場合の勤務の扱いです。振替があるのか、手当が出るのか、裁量に任されるのか。面接で聞いておいてください。なお、「夜間の訪問に慣れている」こと自体は、この分野では明確な適性として評価されます。
転職の理由を、どう説明すればよいですか
「同じ仕事を、事業の側で続けたい」——この形が通ります。用地の取得は、行政でも民間でも中身が同じです。だから、「別の仕事がしたい」ではなく、「同じ技術を、別の立場で使いたい」と言えます。加えて、「公共事業では、取得した後の事業に関われませんでした。取得から先まで見たい」という理由も、嘘がなく、応募先の関心とも合います。注意点は、「行政は遅い」と言わないことです。用地の仕事が遅いのは、相手の事情によるもので、それは民間でも変わりません。