自治体別 / 特別区
江東区職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
江東区・台東区・荒川区は、平均給料月額がいずれも301,900〜305,300円で、平均年齢も39.8〜39.9歳とほぼ同じです。
それなのに諸手当は、台東区140,014円、荒川区124,001円、江東区111,909円。28,105円開きます。
23区は地域手当もすべて20%で同じ。条件をここまでそろえてなお残る差が何なのか、そこから読み解いてください。
江東区の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、江東区の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 江東区 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 97.8 |
| 平均年齢 | 39.8歳 |
| 平均給料月額 | 301,900円 |
| 諸手当月額 | 111,909円 |
| 平均給与月額 | 413,809円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 380,469円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 20% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 20% |
条件をそろえても、諸手当だけが残る
| 区 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 地域手当 | 諸手当月額 | 平均給与月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 台東区 | 39.9歳 | 305,300円 | 20% | 140,014円 | 445,314円 |
| 荒川区 | 39.9歳 | 301,900円 | 20% | 124,001円 | 425,901円 |
| 江東区 | 39.8歳 | 301,900円 | 20% | 111,909円 | 413,809円 |
江東区と荒川区は、平均給料月額が301,900円でまったく同じ。平均年齢も0.1歳しか違いません。地域手当も同じ20%です。
それでも諸手当が12,092円開きます。
地域手当も、年齢も、給料月額もそろえたとき、なお残る差は「地域手当以外の手当の積み上がり」だけということになります。時間外、管理職、扶養、住居。これらの合計が、区によって違うということです。
江東区の諸手当111,909円は、墨田区111,364円に次いで23区で2番目に薄い数字です。
23区の地域手当と諸手当の分布は千代田区職員の転職に、東京都の数字は東京都職員の転職に整理しています。
特別区は「市が担う仕事」を担っている
地方自治法第281条は、都の区は、これを特別区というと定め、第2項で、特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務を処理すると規定しています。
つまり特別区は、原則として市と同じ仕事を担っています。福祉も保健も都市計画も区の仕事です。そして第282条により、財源は都と区の間で調整されます。
「区役所の仕事」と書かず、担当した事務の名前で書いてください。区の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。詳しくは千代田区職員の転職で整理しています。
区役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 区役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 水害対策・避難確保計画の指導 | BCP策定、リスクマネジメント、施設管理 |
| 人口急増に対応した施設整備 | 拠点戦略、需要予測、施設企画 |
| 都市計画、再開発、地区計画 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 臨海部の土地利用と物流施設 | 用地開発、SCM企画、事業開発 |
| 生活保護・福祉の現業と査察 | ケースマネジメント、公共系事業企画 |
| 保健・衛生の監視指導 | 品質保証、規制対応 |
| 区有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
| 都・他区との調整 | 渉外、アライアンス |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「他人の施設に、計画を作らせて回す」実務
江東区役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
水防法第15条の3は、市町村地域防災計画にその名称及び所在地を定められた要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、当該施設の利用者の洪水時等の避難の確保のための措置に関する計画を作成しなければならないと定めています。
行政が計画を作るのではありません。施設の側に作らせる仕組みです。
対象になるのは、高齢者や障害者、子どもが利用する施設です。介護施設、保育所、病院、学校。どれも民間や社会福祉法人が運営していることが多く、行政に直接の指揮権はありません。
実務としては、次のような作業になります。
- 対象になる施設を特定し、一覧にする
- 計画の作成を促し、様式や記載例を用意する
- 出てきた計画の中身を見て、実際に動くかを確かめる
- 訓練の実施を求め、結果を確認する
- 作らない施設、動かない計画にどう働きかけるか決める
これは、民間の「取引先や委託先に、基準を守らせる」仕事とまったく同じ構造です。
サプライヤーの品質管理、加盟店の運営基準、委託先の情報セキュリティ。自社ではない組織に、文書を作らせ、実行させ、確認する。そして指揮命令はできない。
この立場で成果を出した経験は、外から採用しにくいものです。多くの企業が、様式を配って回収するところで止まっています。出てきた書類が実際には動かないことに、気づいていない。
求人票では、リスクマネジメント、BCP策定、品質保証、サプライヤー管理といった名前で書かれています。
書くときのこつは、制度名を並べないことです。対象施設の数、計画を出させた割合、中身を見て何を直させたか、訓練で何が動かないと分かったか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
江東で、どの経験が値になるか
1. 他の組織に基準を守らせた経験
計画の作成、訓練、確認、改善。指揮命令できない相手を動かした経験は、サプライヤー管理や加盟店管理でそのまま必要とされます。
2. 水害を前提にした土地利用と施設配置
標高の低い地域を抱える区です。浸水を前提に、施設の配置や設備の高さを設計した経験は、物流施設やデータセンターを扱う企業が求めています。
3. 人口が急増する前提で、先回りして整備した経験
保育、学校、施設。増えてから作ったのでは間に合わないという条件での判断は、企業の拠点戦略と同じです。
4. 臨海部の土地利用を扱った経験
物流施設、工場、住宅が混在する地域です。用途が違うものを同じ区域でどう成立させたかは、用地開発の職務に直接つながります。
5. 都や他区との調整
特別区は、都と区、そして区どうしの調整が日常にあります。自分の区だけでは決められない前提で進めた経験は、複数拠点をまたぐ事業に読める経験です。
都内で探すときに、確かめておくこと
江東区で働いている方は、すでに都内の求人が通勤圏にあります。地理的な制約はほとんどありません。
そのぶん、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすくなります。順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、区役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
「動かなかった相手」を書く
他の組織に基準を守らせる仕事では、応じなかった相手にどう働きかけたかが実力を示します。全部が応じることはないからです。
規模を必ず書く
区の人口、対象施設の数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。区役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、建築士、電気主任技術者。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
軟弱地盤と浸水対策の実務は、そのまま職務になる
地盤改良、排水、電気設備の高さ、止水。浸水を前提に構造物を成立させた経験は、物流施設やデータセンターの開発でそのまま必要とされます。対象の規模と、条件の整え方で書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
区内の企業の多くは、区役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 江東区の一般行政職はラスパイレス指数97.8、平均給与月額413,809円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 荒川区とは平均給料月額が301,900円で同じ、平均年齢も0.1歳差、地域手当も同じ20%。それでも諸手当が12,092円開きます
- 条件をそろえてなお残る差は「地域手当以外の手当の積み上がり」だけです
- 諸手当の比率27.0%は23区では低いほう。動く部分が小さく、去年の源泉徴収票が物差しになります
- 他人の施設に計画を作らせて回す実務は、サプライヤー管理と同じ構造です(水防法15条の3)。リスクマネジメント、BCP策定、品質保証という求人名で出ています
- 応じなかった相手への働きかけを書いてください。全部が応じることはないからです
よくある質問
荒川区と条件が同じなのに、諸手当が開くのはなぜですか
地域手当以外の手当の積み上がりが違うからです。時間外、管理職、扶養、住居など。江東区と荒川区は平均給料月額301,900円が同じ、平均年齢も0.1歳差、地域手当も同じ20%です。それでも諸手当が12,092円開きます。ただし諸手当の総額は職員全体の働き方を映した数字で、個々人の額ではありません。源泉徴収票の支払金額を使ってください。
施設に計画を作らせる仕事は、実績になりますか
企業側は逆に評価します。自社の部下に指示するのは誰でもできます。難しいのは、指揮命令できない相手に文書を作らせ、実行させ、確認することです。多くの企業が様式を配って回収するところで止まり、出てきた書類が動かないことに気づいていません。訓練をして初めて、連絡先が古い、責任者が不在、経路が塞がると分かる。この確認までやってきた人が必要とされています。
水害対策の経験は、どこで使えますか
物流施設やデータセンターを扱う企業です。浸水を前提に、施設の配置、設備の高さ、止水、排水をどう設計するか。近年は立地の選定そのものに、浸水想定が織り込まれるようになりました。行政側で想定区域と避難の実務を見てきた経験は、外から採用しにくいものです。対象の規模と、条件の整え方で書いてください。