自治体別 / 特別区
大田区職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
大田区のラスパイレス指数は100.2です。23区のなかで3番目に高い数字にあたります。
ところが平均給与月額413,514円は、23区で下から3番目。指数と総額の位置が、正反対になっています。
23区は地域手当がすべて20%で同じなので、この逆転の理由は絞り込めます。
大田区の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、大田区の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 大田区 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 100.2 |
| 平均年齢 | 39.5歳 |
| 平均給料月額 | 299,300円 |
| 諸手当月額 | 114,214円 |
| 平均給与月額 | 413,514円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 376,239円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 20% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 20% |
指数が高い3区を並べる
| 区 | ラスパイレス指数 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 中央区 | 100.6 | 37.8歳 | 287,700円 | 144,674円 | 432,374円 |
| 千代田区 | 100.4 | 38.9歳 | 291,400円 | 129,427円 | 420,827円 |
| 大田区 | 100.2 | 39.5歳 | 299,300円 | 114,214円 | 413,514円 |
指数が高い順に並べると、総額は逆の順序になります。
指数は学歴と経験年数を補正した給料表の位置を示す数字です。大田区の100.2は、同じ条件で比べたときの支給水準が23区で3番目に高いということを意味します。
一方、諸手当114,214円は23区で4番目に薄い。地域手当はすべての区で20%なので、この差は時間外、管理職、扶養、住居といった手当の積み上がりから来ています。
給料表の位置が高く、手当の積み上がりが薄い。これが大田区の形です。
23区の地域手当と諸手当の分布は千代田区職員の転職に、東京都の数字は東京都職員の転職に整理しています。
特別区は「市が担う仕事」を担っている
地方自治法第281条は、都の区は、これを特別区というと定め、第2項で、特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務を処理すると規定しています。
つまり特別区は、原則として市と同じ仕事を担っています。福祉も保健も都市計画も区の仕事です。そして第282条により、財源は都と区の間で調整されます。
「区役所の仕事」と書かず、担当した事務の名前で書いてください。区の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。詳しくは千代田区職員の転職で整理しています。
区役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 区役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 空港周辺の環境・まちづくり調整 | インフラ企画、渉外、用地開発 |
| 小規模製造業の支援・販路開拓 | 事業開発、パートナー営業、調達 |
| 都市計画、再開発、地区計画 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 国際化・外国人住民への対応 | ダイバーシティ推進、CS設計 |
| 生活保護・福祉の現業と査察 | ケースマネジメント、公共系事業企画 |
| 保健・衛生の監視指導 | 品質保証、規制対応 |
| 区有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
| 都・他区との調整 | 渉外、アライアンス |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「自分たちが決められない施設」と共存してきた経験
大田区役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
空港法第1条は、この法律が空港の設置及び管理を効果的かつ効率的に行うための措置並びに空港の脱炭素化を推進するための措置を定めることにより、環境の保全に配慮しつつ、空港の利用者の便益の増進等を図るものだと定めています。
空港の設置と管理は、区が決めることではありません。
それでも区域内にあれば、その影響は区の実務になります。騒音、交通、土地利用、雇用、来訪者。決定権はないが、影響は全部受けるという立場です。
この条件での実務は、次のような形になります。
- 決まったことの影響を、住民にどう説明するか
- 決まる前の段階で、どう意見を差し込むか
- 影響を受ける区域に、どんな手当てを用意するか
- 施設がもたらす利点を、地域にどう還元させるか
- 立場の違う相手と、長期の関係をどう保つか
これは、民間企業の多くが置かれている立場と同じです。
本社が決めた方針、親会社の判断、大口取引先の都合、法改正。自分たちでは決められないことの影響を受けながら、現場を成立させなければならない。
そして「決められない相手と、長く付き合いながら条件を引き出す」経験を持つ人は多くありません。多くの人は、決定権のある立場でしか交渉したことがないからです。
求人票では、渉外、アライアンス、インフラ企画、パブリックアフェアーズといった名前で書かれています。
書くときのこつは、施設名を出さないことです。相手が誰で、自分にどこまで権限がなく、それでも何を引き出したか。長期の関係をどう保ったか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
大田で、どの経験が値になるか
1. 決定権のない相手から、条件を引き出した経験
国の機関、事業者、隣接自治体。権限がない立場での交渉は、社内外の調整を担う職務でそのまま必要とされます。
2. 小規模な製造業を支えてきた経験
技術を持つ小さな工場が集積する区です。数が多く、一社ごとが小さい相手を動かした経験は、調達やパートナー営業の職務に直接つながります。
3. 国際的な人の流れを扱った経験
来訪者、外国人住民、多言語対応。言葉と背景が違う相手に制度を届けた経験は、企業の人事企画やCS設計に接続します。
4. 広い区域で、条件の違う地域を扱った経験
臨海部、工業地、住宅地、商業地。同じ制度を、条件の違う区域に当てはめる経験は、全国展開する企業がいちばん苦労するところです。
5. 都や他区との調整
特別区は、都と区、そして区どうしの調整が日常にあります。自分の区だけでは決められない前提で進めた経験は、複数拠点をまたぐ事業に読める経験です。
都内で探すときに、確かめておくこと
大田区で働いている方は、すでに都内の求人が通勤圏にあります。地理的な制約はほとんどありません。
そのぶん、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすくなります。順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、区役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
権限がなかったことを、隠さずに書く
決定権のない相手との交渉では、権限がない前提で何を引き出したかが実力です。「調整した」ではなく、何を示して相手が動いたかを書いてください。
規模を必ず書く
区の人口、事業所の数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。区役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、建築士、電気主任技術者、環境計量士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
騒音・振動の測定と説明は、そのまま職務になる
測定、記録、住民や事業者への説明。測った経験だけでなく、その数値をどう説明したかまで書いてください。設備を持つ企業と、環境計量を事業とする企業の両方から求められます。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
区内の企業の多くは、区役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 大田区の一般行政職はラスパイレス指数100.2、平均給与月額413,514円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 指数は23区で3番目に高いのに、総額は下から3番目。位置が正反対になっています
- 指数が高い3区(中央・千代田・大田)を並べると、総額は逆の順序になります
- 諸手当の比率27.6%は23区では低いほう。動く部分が小さく、去年の源泉徴収票が物差しになります
- 決定権のない相手と共存し、条件を引き出した経験は、渉外やアライアンスの職務になります(空港法1条)
- 「調整した」で終わらせず、権限がない前提で何を示したら相手が動いたかを書いてください
よくある質問
指数が23区で3番目に高いのに、総額が下から3番目なのはなぜですか
諸手当の積み上がりが薄いからです。23区は地域手当がすべて20%なので、差を作るのは平均年齢と、地域手当以外の手当だけです。大田区の諸手当114,214円は23区で4番目に薄く、これが総額を下げています。指数は給料表の位置を示す数字で、実際に振り込まれる額とは別です。
自分には決定権がなかったので、実績と言えません
採用の場では、そこが見どころになります。社内で権限を持って指示できる立場にいる人はごく一部で、大半の仕事は決められない相手に動いてもらう形で進みます。本社の方針、親会社の判断、大口取引先の都合。影響は受けるが決められない。この状況で条件を引き出した経験は、そのまま渉外やアライアンスの職務になります。
諸手当が薄いことは、転職で不利になりますか
むしろ扱いやすい条件です。総額のうち条件で動く部分が小さいので、業務や役職が変わっても総額が大きく振れません。去年の源泉徴収票の支払金額が、そのまま自分の実額の目安として使えます。諸手当が3割を超える区では「どの年を基準にするか」で見積もりがぶれますが、大田区ではそれが起きにくくなります。