自治体別 / 特別区
新宿区職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
新宿区のラスパイレス指数は97.8です。23区のなかでは低いほうにあたります。
ところが平均給与月額431,610円は、23区で6番目。指数の順位より、総額の順位のほうが上です。
23区は地域手当がすべて20%で同じなので、この差の理由は2つに絞り込めます。そこから読み解いてください。
新宿区の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、新宿区の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 新宿区 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 97.8 |
| 平均年齢 | 40.3歳 |
| 平均給料月額 | 300,800円 |
| 諸手当月額 | 130,810円 |
| 平均給与月額 | 431,610円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 377,604円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 20% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 20% |
差の理由は、2つしかない
23区はすべて地域手当20%です。国の指定基準も実際の支給割合も一致しています。
つまり23区のあいだで総額に差が出る理由は、次の2つだけです。
- 平均年齢(給料表は勤続年数とともに上がるため、給料月額に効く)
- 地域手当以外の手当の積み上がり(時間外、管理職、扶養、住居など)
新宿区の場合、平均年齢40.3歳は23区では高めで、給料月額300,800円を押し上げています。そして諸手当130,810円は23区で7番目に厚い。
| 区 | ラスパイレス指数 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 新宿区 | 97.8 | 40.3歳 | 300,800円 | 130,810円 | 431,610円 |
| 中央区 | 100.6 | 37.8歳 | 287,700円 | 144,674円 | 432,374円 |
| 千代田区 | 100.4 | 38.9歳 | 291,400円 | 129,427円 | 420,827円 |
| 杉並区 | 98.7 | 40.3歳 | 297,600円 | 131,217円 | 428,817円 |
| 渋谷区 | 99.0 | 39.5歳 | 293,200円 | 111,927円 | 405,127円 |
新宿区と中央区の総額は764円しか違いません。それでも指数は2.8ポイント開き、平均年齢は2.5歳違います。中身がまったく別なのに、総額がほぼ並ぶという形です。
23区の地域手当と諸手当の分布は千代田区職員の転職に、東京都の数字は東京都職員の転職に整理しています。
特別区は「市が担う仕事」を担っている
地方自治法第281条は、都の区は、これを特別区というと定め、第2項で、特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務を処理すると規定しています。
つまり特別区は、原則として市と同じ仕事を担っています。福祉も保健も都市計画も区の仕事です。そして第282条により、財源は都と区の間で調整されます。
「区役所の仕事」と書かず、担当した事務の名前で書いてください。区の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。詳しくは千代田区職員の転職で整理しています。
区役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 区役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 宿泊事業の届出・監視指導 | 品質保証、規制対応、事業開発 |
| 生活衛生・食品衛生の監視指導 | 品質保証、規制対応 |
| 繁華街の環境整備・事業者対応 | 店舗開発、渉外、リスクマネジメント |
| 都市計画、再開発、地区計画 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 生活保護・福祉の現業と査察 | ケースマネジメント、公共系事業企画 |
| 多文化共生・外国人住民の支援 | ダイバーシティ推進、人事企画、CS設計 |
| 区有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
| 都・他区との調整 | 渉外、アライアンス |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「新しい事業形態を、既存の制度に着地させる」実務
新宿区役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
住宅宿泊事業法第1条は、この法律が、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保すること等を目的とする、と定めています。
この法律は、先に事業が広がり、あとから制度が作られた例です。
住宅を宿泊に使う動きが実際に広がり、既存の旅館業の枠組みでは扱いきれなくなった。そこで届出と登録の仕組みが作られ、自治体が窓口と監視を担うことになりました。
この領域の実務は、行政のなかでも特殊な形をしています。
- 事業者が、そもそも制度を知らないまま始めている
- 近隣とのトラブルが、行政に持ち込まれる
- 仲介するのは海外の事業者で、直接の相手がいない
- 建物の用途や管理規約との関係が、その都度違う
- 制度ができたあとも、実態が先に動き続ける
「ルールより先に事業が動いている領域を、どう着地させるか」という仕事です。
そしてこれは、いま企業で最も人が足りていない役割のひとつです。
新しいサービスを始めようとすると、既存の制度にきれいに収まらないことがほとんどです。社内では、法務は「グレーだから止めましょう」と言い、事業部は「他社もやっている」と言う。その間を埋めて、どこまでなら成立し、どこからは無理かを見立てられる人がいない。
求人票では、事業開発、規制対応、パブリックアフェアーズ、品質保証といった名前で書かれています。
書くときのこつは、制度名を並べないことです。何件の相談や届出を扱い、どこが論点になり、事業者に何を示して着地させたか。そして着地しなかった案件は、なぜ無理だったか。この見立てが書ければ、そのまま職務能力として読まれます。
新宿で、どの経験が値になるか
1. 制度が追いついていない領域を扱った経験
届出、監視、苦情対応、事業者への指導。ルールより先に事業が動いている状態を実際に処理した経験は、新規事業を検討する企業で必要とされます。
2. 繁華街で事業者を相手にしてきた経験
飲食、宿泊、接客業。数が多く、入れ替わりが早く、制度を知らない事業者が多い環境での実務は、多店舗展開する企業の管理と同じ構造です。
3. 多様な住民に向けた制度の設計
言語や背景が異なる住民に、どう制度を届けるか。伝わらない前提で設計した経験は、外国人材を雇う企業の人事企画に接続します。
4. 大規模再開発に関わった経験
権利者が多く、期間が長く、利害が食い違う案件。合意をどう作ったかを書ければ、民間の開発事業でそのまま通じます。
5. 都や他区との調整
特別区は、都と区、そして区どうしの調整が日常にあります。自分の区だけでは決められない前提で進めた経験は、複数拠点をまたぐ事業に読める経験です。
都内で探すときに、確かめておくこと
新宿区で働いている方は、すでに都内の求人が通勤圏にあります。地理的な制約はほとんどありません。
そのぶん、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすくなります。順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、区役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
「着地しなかった案件」の理由を書く
制度が追いついていない領域では、どこからは無理かを説明できることが価値です。企業が最も避けたいのは、進めてから止まることだからです。
規模を必ず書く
区の人口、事業者の数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。区役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、建築士、電気主任技術者、食品衛生監視員。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
用途変更と既存建物の審査は、希少な経験になる
住宅を宿泊に、事務所を店舗に。用途が変わるとき、どこから手続きになるかを判断できる人は限られます。不動産とホテル運営の両方から求められる経験です。件数と、判断が割れた事例で書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
区内の企業の多くは、区役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 新宿区の一般行政職はラスパイレス指数97.8、平均給与月額431,610円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 23区はすべて地域手当20%なので、総額の差が出る理由は「平均年齢」と「地域手当以外の手当の積み上がり」の2つだけです
- 中央区とは総額が764円差ですが、指数は2.8ポイント、平均年齢は2.5歳違います。中身がまったく別なのに総額が並びます
- 指数が低いことを「水準が低い」と読まないでください
- 制度が追いついていない領域を着地させた経験は、新規事業を検討する企業で必要とされます(住宅宿泊事業法1条)。事業開発、規制対応、パブリックアフェアーズという求人名で出ています
- 着地しなかった案件の理由を書いてください。企業が最も避けたいのは、進めてから止まることです
よくある質問
指数が23区で低いほうですが、水準が低いのですか
実額とは別の話です。ラスパイレス指数は学歴と経験年数を補正した給料表の位置で、新宿区は97.8です。しかし総額431,610円は、指数100.6の中央区と764円しか違いません。23区は地域手当がすべて20%なので、差を作るのは平均年齢と、地域手当以外の手当の積み上がりだけです。源泉徴収票の支払金額を使ってください。
苦情対応や事業者指導ばかりで、前向きな仕事をしていません
企業が探しているのは、まさにその処理の経験です。新しいサービスを始めた会社が直面するのは、想定していなかった苦情と制度との噛み合わなさだからです。社内では法務が止め、事業部が押し、その間を埋めて「どこまでなら成立し、どこからは無理か」を見立てられる人がいません。処理件数と、着地しなかった案件の理由を書いてください。
区外・都外の求人を見るとき、何に気をつければよいですか
地域手当20%が付かない前提で提示額を読んでください。23区の地域手当20%は全国で最も高い水準です。区外の企業では、この上乗せに相当する部分がない場合があります。複数年の源泉徴収票で実額とぶれ幅を把握し、そのうえで求人票の想定年収と比べてください。住居費まで含めた手元に残る額で考えると、見え方が変わることがあります。