自治体別 / 特別区
墨田区職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
墨田区の平均給料月額309,500円は、23区のなかで最も高い額です。そして諸手当111,364円は、23区で最も薄い。
23区はすべて地域手当20%で揃っています。両端が同じ区に現れているのは、この区だけです。
結果として、平均給与月額(国ベース)388,961円は23区で最も高い数字になります。まず構造を確認してください。
墨田区の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、墨田区の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 墨田区 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 98.6 |
| 平均年齢 | 40.8歳 |
| 平均給料月額 | 309,500円 |
| 諸手当月額 | 111,364円 |
| 平均給与月額 | 420,864円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 388,961円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 20% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 20% |
給料月額が最高で、諸手当が最低
| 区 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 | 諸手当の比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 墨田区 | 40.8歳 | 309,500円 | 111,364円 | 420,864円 | 26.5% |
| 江東区 | 39.8歳 | 301,900円 | 111,909円 | 413,809円 | 27.0% |
| 目黒区 | 39.8歳 | 298,300円 | 147,318円 | 445,618円 | 33.1% |
| 中央区 | 37.8歳 | 287,700円 | 144,674円 | 432,374円 | 33.5% |
墨田区と目黒区を比べてください。給料月額は墨田区が11,200円上回るのに、諸手当では35,954円下回ります。結果、総額では目黒区が24,754円上回る。
23区は地域手当がすべて20%で同じです。だから差を作るのは、平均年齢と、地域手当以外の手当の積み上がりだけ。墨田区の平均年齢40.8歳は23区で2番目に高く、給料月額を押し上げています。
一方で諸手当111,364円は23区で最も薄い。時間外、管理職、扶養、住居といった手当の積み上がり方が、他区と違うということです。
23区の地域手当と諸手当の分布は千代田区職員の転職に、東京都の数字は東京都職員の転職に整理しています。
特別区は「市が担う仕事」を担っている
地方自治法第281条は、都の区は、これを特別区というと定め、第2項で、特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務を処理すると規定しています。
つまり特別区は、原則として市と同じ仕事を担っています。福祉も保健も都市計画も区の仕事です。そして第282条により、財源は都と区の間で調整されます。
「区役所の仕事」と書かず、担当した事務の名前で書いてください。区の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。詳しくは千代田区職員の転職で整理しています。
区役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 区役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 小規模製造業の支援・販路開拓 | 事業開発、パートナー営業、調達 |
| 産業観光・工場見学の企画 | 観光事業企画、ブランド企画 |
| 都市計画、再開発、地区計画 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 密集市街地の防災・不燃化 | リスクマネジメント、用地開発 |
| 生活保護・福祉の現業と査察 | ケースマネジメント、公共系事業企画 |
| 保健・衛生の監視指導 | 品質保証、規制対応 |
| 区有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
| 都・他区との調整 | 渉外、アライアンス |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「数が多く、一社ごとが小さい」相手を扱った経験
墨田区役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
中小企業基本法第3条は、中小企業について、多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供し、個人がその能力を発揮しつつ事業を行う機会を提供することにより我が国の経済の基盤を形成しているものであり、とくに多数の中小企業者が創意工夫を生かして経営の向上を図るための事業活動を行うことを通じて、新たな産業を創出する、と定めています。
「多数の」という言葉が、条文に入っています。
墨田区には小規模な製造業が集積しています。この相手を扱う実務は、大企業を相手にする場合とまったく違う形になります。
- 制度をそのまま説明しても、読む時間がない
- 書類の様式が、そもそも社内に整っていない
- 決めるのは経営者一人で、しかも現場に立っている
- 一社あたりの規模は小さいが、数が多い
- 廃業や事業承継が、常に隣り合わせにある
この条件で成果を出すには、やり方を変えるしかありません。制度を噛み砕く、書類を代わりに整える、集まってもらうのではなく訪ねる、経営者の時間に合わせる。
そして民間でも、同じ課題を抱える企業が増えています。
小規模事業者を顧客にするサービス、地域の加盟店を束ねる事業、部品を小さな工場に頼っている製造業。どれも「数が多く、一社ごとが小さい」相手をどう動かすかで詰まっています。大企業向けの営業手法が通じないからです。
求人票では、パートナー営業、事業開発、調達、カスタマーサクセスといった名前で書かれています。
書くときのこつは、支援制度の名前を並べないことです。訪ねた事業者の数、制度をどう噛み砕いたか、動いた事業者と動かなかった事業者の違い、そして事業承継や廃業をどう扱ったか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
墨田で、どの経験が値になるか
1. 小規模な事業者を、個別に動かしてきた経験
訪問、説明、書類の整備、伴走。数が多く一社ごとが小さい相手を動かした経験は、パートナー営業や調達の職務で直接必要とされます。
2. 技術を持つ事業者と、外の市場をつないだ経験
販路開拓、展示会、産業観光。作れるが売れない、という状態をどう変えたかは、製造業の事業開発でそのまま読まれます。
3. 密集市街地の防災と再生
古い建物、狭い道路、木造の密集。住み続けながら改善を進めるという条件での合意形成は、扱える人が限られます。
4. 事業承継・廃業に関わった経験
続けるのか、譲るのか、畳むのか。採算だけでは決められない判断を見てきた経験は、いま多くの企業が直面している課題と同じです。
5. 都や他区との調整
特別区は、都と区、そして区どうしの調整が日常にあります。自分の区だけでは決められない前提で進めた経験は、複数拠点をまたぐ事業に読める経験です。
都内で探すときに、確かめておくこと
墨田区で働いている方は、すでに都内の求人が通勤圏にあります。地理的な制約はほとんどありません。
そのぶん、条件から絞ろうとすると候補が決まらないという状態になりやすくなります。順序を決めてください。
- 職種で絞る(自分の経験がどこで希少になるか)
- 業界で絞る(行政が顧客か、規制を受ける側か、まったく別か)
- 勤務形態を確認する(出社頻度、担当エリア)
この順序を逆にすると、条件のよい求人が視界から消えます。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、区役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
相手の数と規模を書く
小規模事業者を相手にした仕事では、何社を訪ね、そのうち何社が動いたかが実績です。動かなかった側の理由も書くと、見立ての精度として読まれます。
規模を必ず書く
区の人口、事業所の数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。区役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、建築士、電気主任技術者。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
密集市街地の改善は、希少な経験になる
狭い道路、接道不良、木造の密集。建て替えが進まない土地をどう動かすかを扱える人は限られます。不動産開発と建設の両方から求められる経験です。件数と、合意の作り方で書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。産業支援に関わったなら、訪問した事業者の数、動いた割合、扱った金額で答えてください。「行政なので利益はありません」と答える必要はありません。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
区内の企業の多くは、区役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 墨田区の一般行政職はラスパイレス指数98.6、平均給与月額420,864円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 平均給料月額309,500円は23区で最も高く、諸手当111,364円は23区で最も薄い。両端が同じ区に現れています
- 平均給与月額(国ベース)388,961円は23区で最も高い数字です
- 諸手当の比率26.5%は23区で最も低く、条件で動く部分が小さい。去年の源泉徴収票が物差しになります
- 数が多く一社ごとが小さい相手を動かした経験は、民間でいま必要とされています(中小企業基本法3条)。パートナー営業、事業開発、調達という求人名で出ています
- 訪ねた数と、動いた数と、動かなかった理由を書いてください
よくある質問
給料月額が23区で最も高いのに、総額が上位でないのはなぜですか
諸手当が23区で最も薄いからです。墨田区の諸手当111,364円に対し、目黒区は147,318円。給料月額では墨田区が11,200円上回りますが、諸手当では35,954円下回ります。23区は地域手当がすべて20%なので、差を作るのは平均年齢と、地域手当以外の手当の積み上がりだけです。
補助金の窓口をしていただけですが、実績になりますか
採用側が見ているのは、窓口業務ではなく相手の動かし方です。小規模な事業者は、制度を作っても使いません。読む時間がなく、書類も整っていないからです。噛み砕いて説明し、書類を一緒に整え、経営者の時間に合わせて訪ねる。この手間を引き受けた経験が、小規模事業者を顧客にする企業で必要とされています。訪ねた数と、動いた数と、動かなかった理由を書いてください。
諸手当が薄いことは、転職で不利になりますか
むしろ扱いやすい条件です。総額のうち条件で動く部分が小さいので、業務や役職が変わっても総額が大きく振れません。去年の源泉徴収票の支払金額が、そのまま自分の実額の目安として使えます。諸手当が3割を超える区では「どの年を基準にするか」で見積もりがぶれますが、墨田区ではそれが起きにくくなります。