制度とお金 / 休暇
育児部分休業・部分休暇
育児休業から復帰した後、フルタイムに戻るか、働く時間を短くするか。財政課の勤務の形と育児の両立を考えるとき、復帰後の働き方を支える制度が何種類あり、どれが自分に合うかは、転職を考えるかどうかの判断にも直接効きます。
地方公務員には、部分休業、育児短時間勤務、育児時間、子の看護等休暇の4つの制度があります。それぞれ根拠が違い、対象の子の年齢、1日の時間、給与の扱いが違います。制度を知らずに「両立できないから転職」と考える前に、4つを並べて、使える組合せを確かめる価値があります。
この記事では、4つの制度の仕組みと給与、転職先の短時間勤務との違いを整理します。日数と時間の細目は自治体の条例によるので、人事の担当課で確かめてください。育児休業そのものは育児休業の制度に書いています。
4つの制度を並べる
| 制度 | 根拠 | 対象の子 | 内容 | 給与 |
|---|---|---|---|---|
| 部分休業 | 地方公務員の育児休業等に関する法律第19条 | 小学校就学の始期に達するまで | 1日の勤務時間の一部(2時間を超えない範囲)を勤務しない | 勤務しない時間の分を減額(条例) |
| 育児短時間勤務 | 同法第10条 | 小学校就学の始期に達するまで | 常時勤務を要する職を占めたまま、短時間の勤務の形態で勤務(1日の時間を短くする形、週の勤務日を減らす形など) | 勤務時間に応じた額(条例) |
| 育児時間 | 特別休暇(勤務時間法第19条、人事院規則一五―一四第22条。自治体は条例) | 生後1年に達しない子 | 授乳等のため、1日2回それぞれ30分以内 | 国の例では有給 |
| 子の看護等休暇 | 特別休暇(同上) | 9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子(国の例) | 子の看護、予防接種・健診、学校の休業に伴う世話、行事への参加などのため、1年に5日(対象の子が2人以上なら10日) | 国の例では有給 |
特別休暇の2つ(育児時間、子の看護等休暇)は、国の制度を人事院規則で示したもので、自治体は条例で定めています。多くの自治体が国の例に準じていますが、日数と対象は条例で確かめてください。
部分休業——第19条
第19条第1項は、任命権者は、職員が請求した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、条例で定めるところにより、小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、1日の勤務時間の一部について勤務しないことを承認することができる、と定めています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員(育児短時間勤務職員などを除く) |
| 時間 | 1日の勤務時間の一部。2時間を超えない範囲(第1項) |
| 要件 | 公務の運営に支障がないこと |
| 請求 | 条例で定める1年の期間ごとに、あらかじめ請求(第2項) |
| 給与 | 勤務しない時間の分を減額(条例) |
朝の1時間と夕方の1時間、または夕方の2時間といった使い方が典型で、保育園の送迎の時間に合わせて使う方が多い制度です。育児休業と違い、給与は勤務した分が支給されます。
育児短時間勤務——第10条
第10条第1項は、職員が任命権者の承認を受けて、小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、常時勤務を要する職を占めたまま、法律の定める勤務の形態のいずれかで、希望する日と時間帯において勤務することを定めています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員(非常勤職員などを除く) |
| 勤務の形態 | 第1項各号に定める形態。1日の勤務時間を短くする形(週5日)、週の勤務日を減らす形(週3日など)、その組合せなど |
| 職 | 常時勤務を要する職を占めたまま(身分は変わらない) |
| 制限 | 同じ子について育児短時間勤務を終えてから1年を経過しないときは、条例で定める特別の事情がある場合を除き、再度の承認は受けられない(第1項ただし書) |
| 給与 | 勤務時間に応じた額(条例) |
部分休業が「フルタイムの職員が1日2時間まで勤務しない」制度であるのに対し、育児短時間勤務は「勤務の形態そのものを短時間に変える」制度です。週の勤務日を減らす形が取れる点が、部分休業との大きな違いです。
特別休暇——育児時間と子の看護等休暇
育児時間は、生後1年に達しない子を育てる職員が、授乳等を行う場合に、1日2回それぞれ30分以内の期間を取れる特別休暇です(国の例)。育児休業から早期に復帰した方が、部分休業と組み合わせて使うことがあります。
子の看護等休暇は、国の例では、9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子を養育する職員が、子の看護(負傷・疾病の世話、予防接種・健康診断、学校の休業に伴う世話、教育・保育の行事への参加など)のため、1年に5日(対象の子が2人以上なら10日)を取れる特別休暇です。子の急な発熱に、年次有給休暇を使わずに対応できるのがこの制度の意味です。
組合せの例
| 子の年齢 | 使える制度 | 組合せの例 |
|---|---|---|
| 生後1年未満 | 育児休業、育児時間、部分休業、子の看護等休暇 | 早期に復帰し、育児時間+部分休業で送迎 |
| 1歳〜3歳 | 育児休業(3歳まで)、部分休業、育児短時間勤務、子の看護等休暇 | 育児休業から復帰し、部分休業で夕方2時間 |
| 3歳〜小学校就学 | 部分休業、育児短時間勤務、子の看護等休暇 | 育児短時間勤務で週4日 |
| 小学校就学後〜9歳の年度末 | 子の看護等休暇 | 年5日を急な発熱と行事に |
小学校就学で、部分休業と育児短時間勤務が終わります。「小1の壁」と呼ばれる時期で、この時期に転職を考える方が多いのは、制度の切れ目と重なるからです。
転職先の短時間勤務との違い
| 項目 | 地方公務員 | 民間(育児・介護休業法の最低基準) |
|---|---|---|
| 短時間勤務 | 部分休業(2時間まで)と育児短時間勤務。小学校就学まで | 所定労働時間の短縮の措置は3歳に達するまで(第23条)。3歳から小学校就学までは、始業時刻の変更、在宅勤務、短時間勤務などから事業主が2つ以上の措置を講じる義務(第23条の3)で、短時間勤務が選ばれるとは限らない |
| 子の看護等休暇 | 国の例で9歳の年度末まで、年5日(2人以上10日) | 小学校3年生修了まで、年5日(2人以上10日)(第16条の2)。事業主は申出を拒めない(第16条の3) |
| 給与 | 条例による減額(勤務した分は支給) | 企業の定め(ノーワーク・ノーペイが基本) |
公務員の部分休業と育児短時間勤務は、小学校就学まで「短時間勤務」の形で使えます。民間では、3歳を過ぎると短時間勤務が措置の選択肢の1つになり、事業主が在宅勤務や始業時刻の変更を選べば短時間勤務は使えないことがあります。転職先の就業規則で、3歳以降にどの措置が講じられているかを確かめてください。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、部分休業・部分休暇で効いてくる点は3つです。
1. 転職を考える前に、4つの制度で解決しないかを確かめる
部分休業は小学校就学まで、1日2時間までです。制度で解決すれば転職は要りません。
2. 転職先の短時間勤務は、3歳までが義務。3歳以降は措置の選択肢の1つ
公務員の制度は小学校就学まで短時間勤務の形で使えるので、転職先の就業規則で3歳以降の措置を確かめてください。
3. 制度の切れ目(小学校就学)が転職の時期と重なりやすい
切れ目を知っていれば、切れ目の前に転職先の制度を確かめられます。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 復帰の前 | 4つの制度のうち使えるものを確かめる | 復帰の前 | 人事の担当課 |
| 部分休業 | 条例で定める1年の期間ごとに、あらかじめ請求 | 条例の期限 | 任命権者 |
| 育児短時間勤務 | 承認の請求(勤務の形態、期間) | 条例の期限 | 任命権者 |
| 育児時間・子の看護等休暇 | 特別休暇の請求 | そのつど | 職場 |
| 転職を考えたら | 制度で解決しないかを確かめてから、転職先の短時間勤務・看護休暇の制度を確かめる | 内定の前 | 転職先 |
| 小学校就学の前 | 部分休業・育児短時間勤務の終了後の働き方を考える | 就学の前年 | ── |
誤解されやすい点
「財政課では部分休業は取れない」と思い込む
要件は「公務の運営に支障がないこと」で、部署で制限する規定はありません(第19条)。
「部分休業は育児休業の一種で無給」と思い込む
勤務した分の給与は支給され、勤務しない時間の分だけ減額です。
「短時間勤務は3歳まで」と思い込む
公務員の部分休業と育児短時間勤務は小学校就学までです。3歳までは民間の所定労働時間の短縮措置の義務の範囲です。
「子の看護休暇は年次有給休暇を使うもの」と思い込む
別の特別休暇で、国の例では年5日(2人以上なら10日)です。年次有給休暇を減らさずに使えます。
まとめ
- 復帰後の働き方を支える制度は、部分休業(第19条)、育児短時間勤務(第10条)、育児時間、子の看護等休暇(特別休暇)の4つです
- 部分休業は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、1日の勤務時間の一部(2時間を超えない範囲)を勤務しない制度で、要件は公務の運営に支障がないこと、給与は勤務しない時間の分を減額です
- 育児短時間勤務は、常時勤務を要する職を占めたまま、勤務の形態を短時間に変える制度で、週の勤務日を減らす形も取れます
- 育児時間は生後1年未満の子について1日2回30分以内、子の看護等休暇は国の例で9歳の年度末までの子について年5日(2人以上10日)の特別休暇です。自治体は条例で定めています
- 公務員の短時間勤務は小学校就学まで。民間は3歳までが短縮措置の義務で、3歳以降は複数の措置から事業主が選ぶ形です。転職先の就業規則で3歳以降の措置を確かめてください
- 「両立できないから転職」と決める前に、4つの制度で解決しないかを確かめると、判断の質が上がります
よくある質問
財政課で部分休業を取ると、予算編成の時期に迷惑をかけませんか
要件は「公務の運営に支障がないこと」で、部署を理由に断る規定はありません。運用の工夫で両立している例が多いです。第19条第1項は、公務の運営に支障がないと認めるときに承認できると定めており、財政課であることが支障の理由になるわけではありません。予算編成の時期は業務量が増えますが、部分休業は1日2時間までの制度で、その2時間分の業務を課内でどう分担するかは、係の人員配置と業務の割振りの問題です。実務上は、部分休業の請求を早めに出し、予算編成の時期の業務の分担を係長と相談しておくと、承認と運用の両方が滑らかになります。部分休業を取ったことを理由とする不利益な取扱いは、育児休業と同様に許されません。もし「財政課では取れない」と言われたら、人事の担当課に制度の運用を確かめてください。制度で時間を確保できれば、転職を考える理由の1つが消えるか、逆に「制度を使っても回らない」という転職の理由が明確になります。どちらにしても、確かめてからの判断のほうが、後悔が少ないです。
育児短時間勤務と部分休業は、どちらを選べばよいですか
必要な時間の長さと、週の勤務日で選びます。部分休業は、フルタイムの職員のまま、1日の勤務時間の一部(2時間を超えない範囲)を勤務しない制度で、送迎のために朝夕1時間ずつ、または夕方2時間、という使い方に向いています。育児短時間勤務は、勤務の形態そのものを短時間に変える制度で、1日の時間を短くする形のほか、週の勤務日を減らす形(週3日など)も取れます。1日2時間で足りるなら部分休業、それ以上に短くしたい、または週の勤務日を減らしたいなら育児短時間勤務です。給与はどちらも勤務した分に応じた額ですが、育児短時間勤務は期末手当・勤勉手当や昇給の扱いが条例で別に定められていることがあるので、人事の担当課で確かめてください。育児短時間勤務は、同じ子について終了後1年を経過しないと再度の承認を受けられない制限(第10条第1項ただし書)があるので、途中で形態を変える可能性がある方は、最初の期間の設定を慎重に決めてください。両者は併用できず(部分休業は育児短時間勤務職員を除く)、どちらか一方です。
転職先に短時間勤務の制度があるか、どう確かめればよいですか
就業規則と、内定時の条件の確認で、対象の子の年齢と時間を聞いてください。民間の育児・介護休業法では、3歳に達するまでの子を養育する労働者について所定労働時間の短縮の措置を講じることが事業主の義務で(第23条)、3歳から小学校就学までは、始業時刻の変更、在宅勤務、短時間勤務、養育のための休暇などから事業主が2つ以上の措置を講じる義務です(第23条の3)。公務員の部分休業と育児短時間勤務は小学校就学まで短時間勤務の形で使えますが、転職先が3歳以降に短時間勤務以外の措置を選んでいれば、3歳を過ぎた時点で短時間勤務は使えません。子の看護等休暇は、民間でも小学校3年生修了まで年5日(2人以上10日)で、事業主は申出を拒めません(第16条の2、第16条の3)。内定の段階で、「短時間勤務の対象の年齢と時間、3歳以降に講じられている措置、子の看護等休暇の日数、在宅勤務の制度」を人事に聞くのが、条件の確認として自然です。制度の有無は、給与と同じくらい、入社後の生活を左右します。