制度とお金 / 休暇
病気休暇と病気休職
財政課の繁忙期に体調を崩し、病気休暇を取り、そのまま転職を考え始める——面談で伺う転職の経緯の中で、少なくない形です。療養中に転職を考える方にとって、病気休暇と病気休職がどういう制度で、給与と退職手当にどう効くかは、転職の時期を決める材料になります。
病気休暇と病気休職は、名前が似ていますが別の制度です。病気休暇は「休暇」で、勤務を要しない日として給与が支給されます。病気休職は「分限処分としての休職」で、職を保有したまま職務に従事しない状態になり、給与は条例により減額されます。どちらも自治体の条例で定められ、多くの自治体が国の制度に準じています。
この記事では、病気休暇と病気休職の仕組み、給与と共済の傷病手当金、退職手当への影響、療養中の転職の考え方を整理します。期間と給与の扱いは自治体の条例によるので、自分の自治体の制度は人事の担当課で確かめてください。
2つの制度を並べる
| 項目 | 病気休暇 | 病気休職 |
|---|---|---|
| 性質 | 休暇(勤務を要しない日) | 分限処分としての休職(職は保有、職務には従事しない) |
| 根拠 | 自治体の勤務時間条例・規則。国は人事院規則一五―一四第21条 | 地方公務員法第28条第2項第1号「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」。効果は条例(第28条第3項) |
| 期間(国の例) | 療養のためやむを得ない必要最小限度の期間。連続する90日を超えることはできない | 3年を超えない範囲内で休養を要する程度に応じて定める(人事院規則一一―四第5条) |
| 給与 | 国の例では支給。自治体も有給が一般的 | 条例により、一定期間は一定割合を支給し、その後は無給とする形が多い |
| 本人の意思 | 本人が請求 | 本人の意に反しても行える(第28条第2項)。本人の同意を得て行うことも多い |
| 順序 | 先に病気休暇 | 病気休暇の期間を超えて療養が要る場合に休職 |
病気休暇が先で、90日(国の例)を超えて療養が続くと病気休職に移る、という順序が一般的です。病気休暇の90日は、多くの自治体で「連続する」で数え、間に出勤日を挟んでも一定の条件で通算されます。
病気休職の根拠——第28条
地方公務員法第27条第2項は、職員は、この法律または条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して休職されることがない、と定めています。第28条第2項第1号が、心身の故障のため、長期の休養を要する場合を、意に反する休職の事由として定めています。
第28条第3項により、休職の手続きと効果は条例で定めます。休職の期間、給与の扱い、復職の手続きは、自治体の分限条例と給与条例によります。国の例では、休職の期間は3年を超えない範囲(人事院規則一一―四第5条)で、休職期間中にその事故が消滅したときは休職は当然終了し、速やかに復職を命じなければならないとされています(国家公務員法第80条)。
給与と傷病手当金——所得はどう続くか
| 段階 | 給与(国の例と、一般的な条例) | 共済の傷病手当金 |
|---|---|---|
| 病気休暇の期間 | 支給 | 給与が支給されているので原則として支給されない(給与との調整) |
| 休職の最初の期間 | 条例により、一定期間は給与の一定割合を支給する形が多い | 給与が傷病手当金の額を下回る場合、差額が支給されることがある |
| 休職の給与が終わった後 | 無給 | 地方公務員等共済組合法第68条により、公務によらない病気・負傷で勤務できない場合、支給の開始から1年6か月間(結核性の疾病はそれより長い)を限度に支給 |
病気休職に入ってから、給与が無給になるまでの期間と割合は、自治体の給与条例によります。無給になった後は、共済の傷病手当金が所得の補てんの中心になります。傷病手当金の額は標準報酬を基礎に計算され、支給の期間は1年6か月が上限です。休職の3年と傷病手当金の1年6か月は別の期間なので、休職が長引くと、傷病手当金が終わった後に無給の期間が生じます。
公務災害の場合は、傷病手当金ではなく公務災害の休業補償です(公務災害の補償と、退職後の扱い)。
退職手当への影響——休職期間の2分の1除算
国家公務員退職手当法第7条第4項は、在職期間のうちに休職月等があるときは、その月数の2分の1に相当する月数を在職期間から除算すると定めています(公務上の傷病による休職などは除きます)。自治体の退職手当条例も、国の法律に準じた除算の定めを置いていることが一般的です。
| 期間 | 退職手当の在職期間への算入(国の例) |
|---|---|
| 病気休暇の期間 | 算入される(休暇は在職期間) |
| 心身の故障による休職の期間 | その月数の2分の1が除算される |
| 公務上の傷病による休職の期間 | 除算されない |
病気休職が1年続けば、退職手当の在職期間が6か月分減る計算です。自分の自治体の条例の除算の扱いは、人事の担当課で確かめてください。退職手当の在職期間の数え方は退職手当の基本額の計算に書いています。
療養中の転職——考え方
療養中に転職を考える方に、面談で伝えていることを整理します。
| 点 | 考え方 |
|---|---|
| 回復が先 | 転職活動は、面接と入社後の勤務に耐える体調が要ります。主治医の判断を優先してください |
| 病気休暇中の転職活動 | 休暇は療養のためのもので、転職活動のための休暇ではありません。療養の範囲で、主治医が認める活動に限るのが、制度の趣旨に沿った形です |
| 休職中の転職活動 | 休職は職務に従事しない状態で、転職活動を禁じる規定はありませんが、療養が前提の休職中に活動することは、復職を求められる根拠にもなり得ます。主治医と相談のうえで |
| 転職先への説明 | 病歴の申告の義務は、業務に支障がある場合などに限られ、すべてを話す義務はありません。入社後の勤務に影響する場合は、伝えたうえで条件を確かめるのが、双方のためです |
| 退職の時期 | 病気休暇の期間中に退職すると、休暇の残りを失います。休職中に退職すると、休職の期間が退職手当の除算の対象になります。傷病手当金は、退職前から受けていれば退職後も継続の仕組みがあります(短期給付とは何か) |
「病気になったから辞める」と「病気で辞めさせられる」は違います。心身の故障は第28条第1項第2号により意に反する免職の事由にもなりますが、休職の期間が満了するまでは、通常は休職で対応されます。療養の期間を制度の範囲で使い切ってから転職を考えても遅くありません。
転職するとどうなるか
療養中に転職を考えている方にとって、効いてくる点は3つです。
1. 回復が先。制度の時間は使える
病気休暇、休職、傷病手当金は、回復のための時間です。使い切る前に辞める必要はありません。
2. 休職の期間は退職手当の在職期間から2分の1除算される
休職が長引くほど、退職手当の在職期間が減ります。回復の見込みと退職の時期を、除算の影響と合わせて考えてください。
3. 傷病手当金は退職後も続く仕組みがある
退職前から受けていれば、1年6か月の範囲で退職後も継続できます。転職先が決まる前に退職する場合の所得の補てんになります。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 病気休暇に入ったら | 診断書の提出、病気休暇の残りの確認 | すぐ | 職場、人事の担当課 |
| 同時に | 休職の期間、給与の割合、傷病手当金の開始、退職手当への影響を照会 | 早めに | 人事の担当課、共済組合 |
| 病気休暇の90日(国の例)が近づいたら | 主治医と復職の見込みを相談。休職の手続き | 期限前 | 職場、人事の担当課 |
| 休職中 | 傷病手当金の請求(給与が減額・無給になった段階で) | 条例の時期 | 共済組合 |
| 回復したら | 復職の手続き(診断書、復職の面談など) | 主治医の判断で | 職場、人事の担当課 |
| 転職を考えるなら | 主治医の判断を優先し、活動の範囲を相談 | 回復の程度で | 主治医 |
| 退職するなら | 傷病手当金の継続の要件を確かめてから退職日を決める | 退職前 | 共済組合 |
誤解されやすい点
「病気休暇と病気休職は同じもの」と思い込む
休暇と分限処分で、性質も給与も違います。病気休暇が先で、その後に休職です。
「休職になったら辞めさせられる」と思い込む
休職は職を保有したまま療養する制度です。期間が満了するまでは、通常は休職で対応されます。
「休職中も退職手当の在職期間は満額」と思い込む
心身の故障による休職の期間は、国の例で2分の1が除算されます。自治体の条例を確かめてください。
「病気で辞めるなら早いほうがよい」と思い込む
制度の時間を使い切ってから考えても遅くありません。傷病手当金は退職後も継続の仕組みがあります。
まとめ
- 病気休暇は休暇、病気休職は分限処分で、別の制度です。病気休暇が先で、国の例では連続する90日を超えることはできず(人事院規則一五―一四第21条)、その後に休職に移ります
- 病気休職の根拠は地方公務員法第28条第2項第1号(心身の故障のため、長期の休養を要する場合)で、手続きと効果は条例で定めます(第28条第3項)。国の例では3年を超えない範囲です(人事院規則一一―四第5条)
- 給与は、病気休暇の期間は支給、休職は条例により一定期間は一定割合、その後は無給とする形が多く、無給になった後は共済の傷病手当金(1年6か月が上限)が所得の補てんになります(地方公務員等共済組合法第68条)
- 心身の故障による休職の期間は、国の例で退職手当の在職期間から2分の1が除算されます(国家公務員退職手当法第7条第4項)。自治体の条例も同様の形が多いです
- 療養中の転職は回復が先、主治医の判断を優先。制度の時間を使い切る前に辞める必要はなく、傷病手当金は退職後も継続の仕組みがあります
- 病気休暇に入ったら、制度の期間、給与の変わる時期、傷病手当金、退職手当への影響を1枚にまとめてもらってください
よくある質問
病気休暇が90日に達しそうです。その後はどうなりますか
自治体の条例によりますが、国の例では、90日を超えて療養が必要な場合は病気休職に移ります。人事院規則一五―一四第21条は、病気休暇の期間を療養のためやむを得ない必要最小限度の期間とし、連続する90日を超えることはできないと定めています。多くの自治体の条例も同様で、90日を超えると、地方公務員法第28条第2項第1号の「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」として休職の手続きに入ります。休職は分限処分ですが、本人の同意を得て行うことが多く、診断書と復職の見込みをもとに期間が決まります。休職に入ると、給与が条例の定める割合に減り、一定期間の後に無給になり、共済の傷病手当金に切り替わるのが一般的な流れです。90日が近づいたら、主治医に復職の見込みを相談し、人事の担当課に休職の期間と給与の扱いを確かめてください。復職できる見込みがあれば、休職に入らずに復職する道もあり、段階的な復職(短時間勤務からの復帰)の制度を設けている自治体もあります。
休職中に転職活動をしてよいですか
禁じる規定はありませんが、休職は療養が前提なので、主治医と相談のうえで、療養の範囲で行ってください。休職は職を保有したまま職務に従事しない状態で、転職活動を禁じる法律の条文はありません。ただし、休職の事由は「心身の故障のため、長期の休養を要する」ことなので、活発に転職活動ができる状態であれば、休養を要する状態ではないとして復職を求められる根拠になり得ます。回復が先で、転職活動は回復の程度に応じてというのが、制度の趣旨に沿った形です。転職活動をするなら、面接と入社後の勤務に耐える体調であることを主治医に確かめ、転職先には入社後の勤務に影響する事情があれば伝えたうえで条件を確かめてください。休職中に転職先が決まって退職する場合、休職の期間は退職手当の在職期間から2分の1が除算され(国の例)、傷病手当金は退職前から受けていれば退職後も継続の仕組みがあります。退職日を決める前に、共済組合と人事の担当課で、傷病手当金の継続の要件と退職手当の除算を確かめてください。
病気で退職する場合、退職手当は自己都合と同じですか
自治体の退職手当条例によりますが、心身の故障による退職を、自己都合より有利な支給率で扱う定めを置いている自治体が多いです。国家公務員退職手当法では、傷病による退職について、自己都合退職とは別の区分で支給率を定めており、自治体の条例も国に準じた形が一般的です。ただし、「傷病による退職」として扱われるには、条例の定める要件(診断書、休職の経過など)を満たす必要があり、自己都合退職として扱われる場合もあるので、退職の前に人事の担当課で、自分の場合の退職の事由の区分と支給率を確かめてください。併せて、休職の期間があれば在職期間からの除算(国の例で2分の1)が効くので、除算の後の在職期間で計算した見込額を聞いてください。退職手当の額と、傷病手当金の継続、退職後の健康保険の切替え(退職後の健康保険、3つの選択肢)を合わせて、退職後の資金の見込みを立ててから、退職日を決めるのが安全です。焦って退職の申出をする前に、制度の照会として聞けます。