制度とお金 / 休暇
育児休業の制度
育児休業の最中に、または育児休業から復帰した後に、転職を考える方は少なくありません。財政課の勤務の形と育児の両立に見通しが立たない、復帰後の配属で経験が途切れる、といった事情が背景にあります。
地方公務員の育児休業は、民間の育児休業よりも長く取得でき(子が3歳に達するまで)、給与は支給されない代わりに、共済の育児休業手当金と掛金の免除で支えられます。転職を考えるなら、この制度を使い切るか、途中で退職するか、復帰してから転職するかで、資金と経歴の両方が変わります。
この記事では、地方公務員の育児休業の仕組み(期間、給与、手当金、掛金)と、転職との関係を整理します。細目は自治体の条例と共済組合の定めによるので、自分の場合は人事の担当課と共済組合で確かめてください。部分休業と育児短時間勤務は育児部分休業・部分休暇に書いています。
根拠——地方公務員の育児休業等に関する法律
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第2条(育児休業の承認) | 職員は、任命権者の承認を受けて、子が3歳に達する日まで、育児休業をすることができる(非常勤職員は1歳から1歳6か月までの間で条例で定める日まで。特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託された児童なども対象) |
| 第4条(効果) | 育児休業をしている職員は、職を保有するが、職務に従事しない。給与を支給しない |
| 第5条(失効等) | 産前の休業の開始、出産、休職・停職の処分、子の死亡などで承認は失効。子を養育しなくなった場合などは取消し |
| 第7条(期末手当等) | 給与は支給しないが、期末手当・勤勉手当は、国の基準に準じた条例により支給できる |
| 第9条(不利益取扱いの禁止) | 育児休業を理由として、不利益な取扱いを受けることはない |
| 第10条(育児短時間勤務) | 小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、常時勤務を要する職を占めたまま、短時間の勤務の形態で勤務できる |
民間の育児休業(育児・介護休業法)が原則として子が1歳に達するまで(一定の場合1歳6か月、2歳まで)であるのに対し、地方公務員は3歳に達するまでです。これが、公務員の育児休業の最大の特徴です。
給与と手当金——所得はどう続くか
| 段階 | 給与 | 共済の育児休業手当金 | 掛金 |
|---|---|---|---|
| 育児休業の開始〜180日 | 支給なし(第4条第2項) | 標準報酬の日額の100分の67(第70条の2) | 免除(第114条の2) |
| 181日目〜子が1歳に達する日 | 支給なし | 標準報酬の日額の100分の50 | 免除 |
| 1歳〜3歳 | 支給なし | 原則として支給なし(保育所に入れないなど総務省令で定める場合は1歳6か月または2歳まで延長) | 免除 |
| 期末手当・勤勉手当 | 条例により、休業の期間に応じて支給できる(第7条) | ── | ── |
育児休業手当金は、子が1歳に達する日までが原則です(第70条の2第1項)。配偶者も育児休業をした場合の延長(第2項)、保育所に入れない場合などの1歳6か月・2歳までの延長があります。1歳を過ぎて3歳まで休業を続ける場合、手当金はなく、掛金の免除だけが続きます。
掛金の免除(第114条の2)は、組合への申出で、育児休業等の期間の掛金等を徴収しないというものです。短期給付(健康保険)も長期給付(年金)も、免除の期間中は納めたものとして扱われるので、年金の記録に空白は生じません。
第70条の3の育児休業支援手当金は、対象期間内に配偶者も育児休業等をした場合などの要件を満たすとき、育児休業等をした日1日につき標準報酬の日額の100分の13を支給するもので、要件は共済組合で確かめてください。
転職との関係——3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 | 資金 | 経歴 |
|---|---|---|---|
| A. 育児休業を使い切ってから復帰し、転職を考える | 3歳まで(または手当金のある1歳まで)休業し、復帰後に転職活動 | 手当金と掛金免除を最大限に使える | 休業の期間が経歴の空白になる。復帰後の転職なら「復帰して働いている人」として応募できる |
| B. 育児休業の途中で退職する | 休業中に転職先を決めて退職 | 退職の日で手当金と掛金免除が終わる。退職手当の在職期間に休業の期間の除算が効く | 休業中の転職活動は、面接の日程と子の預け先の調整が要る |
| C. 復帰してから転職する | 休業を短く切り上げて復帰し、働きながら転職活動 | 給与が戻る。転職先の育児休業は入社後1年未満だと取れないことがある | 「働いている人」として応募できる |
どれが有利かは、資金、転職先の制度、子の預け先で変わります。共通して言えるのは、育児休業の制度は使い切っても不利益な取扱いを受けない(第9条)ので、転職のために休業を短くする必要はない、ということです。
転職先の育児休業との違い
| 項目 | 地方公務員 | 民間(育児・介護休業法の最低基準) |
|---|---|---|
| 期間 | 子が3歳に達するまで | 原則1歳(一定の場合1歳6か月・2歳) |
| 所得 | 共済の育児休業手当金(1歳まで) | 雇用保険の育児休業給付(1歳まで、一定の場合延長) |
| 取得の要件 | 承認(条例で定める職員を除く) | 労使協定により、入社1年未満の労働者を除外できる |
| 短時間勤務 | 育児短時間勤務(小学校就学まで) | 短時間勤務(3歳まで)など |
転職先で育児休業を取る予定がある方は、入社1年未満の除外の有無を、内定の段階で確かめてください。転職の直後に第2子の予定がある場合、公務員の制度と民間の制度の差が、転職の時期の判断に直接効きます。
休業中の退職——手続きと注意
| 点 | 内容 |
|---|---|
| 退職の申出 | 休業中でも申し出られる。任命権者の承認で辞職 |
| 手当金 | 退職の日で終了。退職後に受け続ける仕組みはない(傷病手当金と違う) |
| 掛金の免除 | 退職で組合員でなくなり、免除も終了。退職後は国民年金・転職先の厚生年金 |
| 退職手当 | 育児休業の期間は、国の例では休職等に準ずる期間として在職期間から一定の割合が除算される。自治体の条例で確かめる |
| 健康保険 | 退職の翌日から共済の組合員証は使えない。任意継続、国民健康保険、転職先の健康保険、家族の扶養のいずれか(退職後の健康保険、3つの選択肢) |
| 転職先の入社日 | 退職日の翌日に入社すれば、健康保険と年金の空白がない |
休業中に退職する場合、手当金が退職の日で止まることを、転職先の入社日と資金の見込みに入れてください。
転職するとどうなるか
育児休業中または復帰後に転職を考えている方にとって、効いてくる点は3つです。
1. 育児休業を使い切ることは、転職の不利にならない
第9条により不利益な取扱いを受けず、転職先が休業の期間を経歴の空白として扱うかどうかは、説明の仕方で変わります。
2. 手当金は1歳まで。退職で止まる
休業中に退職するなら、手当金の終了日と入社日を合わせるのが資金の面で有利です。
3. 転職先の育児休業は、入社1年未満だと取れないことがある
第2子の予定がある方は、内定の段階で労使協定の除外の有無を確かめてください。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 育児休業の開始 | 承認の請求(子の氏名、期間など) | 条例の定める期限まで | 任命権者(人事の担当課) |
| 同時に | 育児休業手当金の請求、掛金の免除の申出 | 開始後速やかに | 共済組合 |
| 転職を考えたら | 休業の残り、手当金の終了日、退職手当への影響を照会 | 早めに | 人事の担当課、共済組合 |
| 転職先の内定 | 育児休業・短時間勤務の制度と、入社1年未満の除外の有無を確かめる | 内定後 | 転職先 |
| 休業中に退職する場合 | 退職の申出。入社日を退職日の翌日に | 転職先の確定後 | 人事の担当課 |
| 復帰する場合 | 復帰の届出。部分休業や育児短時間勤務の請求 | 復帰前 | 人事の担当課 |
誤解されやすい点
「公務員の育児休業は民間と同じ1歳まで」と思い込む
子が3歳に達するまで取得できます(第2条)。手当金は1歳までです。
「休業中も給与の一部が出る」と思い込む
給与は支給されません(第4条第2項)。共済の育児休業手当金と、条例による期末手当・勤勉手当です。
「休業中の掛金は自分で納める」と思い込む
申出により免除されます(第114条の2)。年金の記録にも空白は生じません。
「休業中に転職活動をしてはいけない」と思い込む
禁じる規定はありません。不利益取扱いの禁止(第9条)は、休業を理由とする不利益を禁じるものです。
まとめ
- 地方公務員の育児休業は、子が3歳に達するまで取得でき(地方公務員の育児休業等に関する法律第2条)、職は保有するが給与は支給されません(第4条)。期末手当・勤勉手当は条例により支給できます(第7条)
- 所得は共済の育児休業手当金で、子が1歳に達する日まで、標準報酬の日額の100分の50(180日までは100分の67)です(地方公務員等共済組合法第70条の2)。保育所に入れない場合などの延長があります
- 掛金は申出により免除され(第114条の2)、年金の記録に空白は生じません
- 育児休業を理由とする不利益な取扱いは禁じられています(第9条)。休業中の転職活動を禁じる規定もありません
- 休業中に退職すると手当金と掛金の免除は退職の日で終わり、育児休業の期間は退職手当の在職期間から一定の割合が除算されます(条例で確認)
- 転職先の育児休業は入社1年未満の労働者を労使協定で除外できるので、第2子の予定がある方は内定の段階で確かめてください
よくある質問
育児休業中に転職先が決まりました。退職日はいつにすればよいですか
転職先の入社日の前日を退職日にするのが、健康保険と年金の空白を作らない形です。育児休業中でも退職の申出はでき、任命権者の承認で辞職します。退職の日で育児休業手当金と掛金の免除が終わるので、入社日までに空白があれば、その間は無収入で、健康保険と国民年金の切替えが要ります。手当金が続く期間の残りと、転職先の入社日を並べて、空白が生じないよう調整してください。転職先が入社日を急がないなら、手当金の終了日(子が1歳に達する日など)まで休業を続け、その翌日を入社日にする形も考えられます。退職手当は、育児休業の期間が在職期間から一定の割合で除算されるので、人事の担当課で見込額を確かめてください。復帰せずに退職する場合、職場への引継ぎは休業に入る前に済んでいることが多いですが、退職の挨拶と貸与品の返却、共済の組合員証の返納は要ります。転職先の育児休業の要件(入社1年未満の除外)も、第2子の予定がある方は内定の段階で確かめてください。
育児休業から復帰して半年です。転職しても不利になりますか
制度の面では不利になりません。転職先での育児休業の取得には、入社1年未満の除外の有無が効きます。復帰後の転職は、「働いている人」として応募できるので、休業中の転職より説明が簡単です。休業の期間は経歴の空白として見られることがありますが、「育児休業を取得し、復帰後は財政課で○○を担当」と事実を書けば、育児休業は一般的な事情として理解されます。注意するのは、転職先で次の育児休業を取る予定がある場合で、民間の育児・介護休業法では、労使協定により入社1年未満の労働者を育児休業の対象から除外できます。転職の直後に第2子の予定があるなら、内定の段階で転職先の労使協定の内容を確かめてください。公務員の育児休業(3歳まで、手当金は1歳まで)と転職先の制度(原則1歳まで、雇用保険の育児休業給付)の差も、転職の時期の判断に入れてください。復帰後に部分休業や育児短時間勤務を使っている方は、転職先の短時間勤務の制度の有無も確かめます。
育児休業を3歳まで取ると、退職手当と年金はどうなりますか
年金は掛金の免除により空白が生じません。退職手当は、休業の期間の一部が在職期間から除算されます。共済の長期給付(厚生年金相当)は、第114条の2により育児休業等の期間の掛金が免除され、免除の期間は保険料を納めたものとして扱われるので、将来の年金額の計算で不利になりません。退職手当は、国家公務員退職手当法第7条第4項が休職等に準ずる期間について在職期間からの除算を定めており、育児休業の期間もこれに準じて一定の割合が除算されます。除算の割合は自治体の退職手当条例で定められているので、人事の担当課に「育児休業を3歳まで取った場合の在職期間の除算と、退職手当の見込額」を照会してください。3歳まで取ること自体は法律で認められた権利で、第9条により不利益な取扱いは禁じられていますが、退職手当の除算は法律の定める計算であって不利益取扱いではありません。転職を考えている方は、除算の影響と、1歳を過ぎてからは手当金がないことを、資金の計画に入れてください。