選考対策 / 面接
ケース面接が出る業界と対策
その場で課題を示され、考えを述べる形式の面接があります。
「ある自治体で、窓口の待ち時間を減らすには、どうすればよいと思いますか」
正解を当てる形式ではありません。前提を置いて、筋道を立てて、結論まで運べるかが見られています。
実施の有無や形式は、会社と職種によって異なります。募集の案内に記載がある場合は、そちらが確実です。
この記事では、出る場面と、答え方の型を扱います。
公的統計は、誰でも使えます
この形式で必ず必要になるのが、数字の前提です。
統計法第3条です。
> 公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならない。>> 3 公的統計は、広く国民が容易に入手し、効果的に利用できるものとして提供されなければならない。
中立性と信頼性が確保された統計が、誰でも入手できる形で提供されている。
役所で仕事をしてきた方は、この統計を日常的に使っています。人口の推計、世帯の数、産業の構成。どこにどの数字があるかを知っているというのは、この形式では強みです。
「その数字は、どこから持ってきましたか」と聞かれたときに、公的統計の名前を挙げられる人は多くありません。
出る場面
| 業界・職種 | 出やすさ |
|---|---|
| コンサルティング | 出ることが多いとされています |
| 企画・事業開発 | 会社によって実施されます |
| 自治体向けの事業の企画職 | 実施されることがあります |
| 営業・事務・技術 | 多くありません |
多くの応募先では、この形式は出ません。
応募先が上の2つに当たる場合のみ、準備してください。
問題の3つの型
| 型 | 問われること | 例 |
|---|---|---|
| 推定 | 数字を組み立てる力 | 「ある市の◯◯の利用者数は、どのくらいと考えますか」 |
| 打ち手 | 課題を分解し、案を出す力 | 「◯◯を増やすには、何をすればよいですか」 |
| 意思決定 | 選択肢を比べて決める力 | 「AとB、どちらを選びますか。理由も」 |
3つとも、役所の仕事で似た場面があります。
推定は、事業の利用の見込みを積む作業。打ち手は、計画の施策を立てる作業。意思決定は、予算の査定で事業を選ぶ作業です。
答え方の4段
| 段 | 内容 |
|---|---|
| ① 前提を置く | 何を前提にするかを、先に宣言する |
| ② 構造に分解する | 全体を、足し算・掛け算できる要素に分ける |
| ③ 数字を置く | 根拠のある数字(公的統計、経験則)を当てる |
| ④ 結論と検証 | 結論を述べ、どこが弱いかを自分で言う |
①がいちばん重要です。
前提を置かずに答え始めると、途中で崩れます。「対象を◯◯市のような人口◯万人規模の市とし、期間は年間として考えます」。この一言で、話の土台ができます。
④の「弱いところを自分で言う」も、評価される部分です。
> いまの試算で弱いのは、◯◯の割合を経験則で置いている部分です。実際には、◯◯の統計で確認できると思います。
完璧を装うより、検証の余地を示すほうが信頼されます。
答えの例
> 「ある市で、窓口の待ち時間を減らすには」>> 前提として、人口約◯万人の市の、住民異動の窓口を想定します。待ち時間は、繁忙期に長くなるものとします。(①)>> 待ち時間は、「1人あたりの処理の時間 × 待っている人数 ÷ 窓口の数」で決まります。減らす方向は3つで、処理の時間を短くするか、来庁する人数を減らすか、窓口を増やすかです。(②)>> このうち、窓口を増やすのは人員の制約があるため、短期では難しいと考えます。処理の時間は、記載の不備による差し戻しが一定の割合を占めるので、事前の案内で減らせます。来庁の人数は、電子申請や郵送で代替できる手続きを分けることで減らせます。(③)>> 結論としては、まず手続きの種類ごとに所要時間と件数を測り、時間がかかる手続きから事前の案内と代替の経路を整えるという順です。弱いのは、差し戻しの割合を経験則で置いている点なので、実測が必要だと考えます。(④)
役所の実務そのものです。この形式は、公務員の経験が直接に使えます。
役所の実務との対応
この形式の4段は、役所の企画の仕事とほぼ同じ手順です。
| 4段 | 役所での対応する作業 |
|---|---|
| ① 前提を置く | 事業の対象と範囲を、要綱や計画で定義する |
| ② 構造に分解 | 対象者数 × 利用率 × 単価で事業費を積む |
| ③ 数字を置く | 人口推計、過去の実績、類似団体の数値を当てる |
| ④ 結論と検証 | 見込みの根拠を示し、不確実な部分を注記する |
④は、予算の要求の資料で毎年やっていることです。「この見込みは、◯◯を前提としており、状況によって変動します」。役所の資料には、この注記が入っています。
つまり、新しく覚える技術ではありません。すでにやっている作業を、面接の場で口頭でやるだけです。この対応関係を理解しておくと、身構えずに済みます。
避けたほうがよいこと
| ✕ | 理由 |
|---|---|
| 前提を置かずに話し始める | 途中で崩れます |
| 沈黙する | 考えている過程を声に出して構いません |
| 数字を根拠なく置く | 「どこから出た数字ですか」と聞かれます |
| 完璧な結論を装う | 検証の余地を示すほうが信頼されます |
| 面接官の反応で答えを変える | 筋が通らなくなります |
2つ目について補足します。この形式では、考えている過程そのものが見られています。
「少し整理させてください」と断ってから、声に出して考えて構いません。沈黙は、判断の材料が渡せない時間になります。
準備の仕方
| 準備 | 内容 |
|---|---|
| 型を覚える | ①〜④の4段だけ覚えておく |
| 自分の実務で練習する | 担当した事業を、4段で説明してみる |
| 統計の在りかを整理する | 人口、世帯、産業、施設の数字がどこにあるか |
| 時間を計る | 5分程度で結論まで運ぶ練習 |
3つ目は、公務員の方にとって復習に近い作業です。
普段使っている統計を思い出しておくだけで、③で置く数字の根拠が変わります。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 前提を置かない
話の土台がないまま進みます。
2. 沈黙する
考えている過程を声に出してください。
3. 制約を無視した案を述べる
実務では通りません。
4. 数字を根拠なく置く
出どころを言えるようにしてください。
5. 弱い部分を隠す
自分で示すほうが信頼されます。
6. 出ない業界のために準備する
多くの応募先では、この形式は出ません。
まとめ
- その場で課題を考える形式は、実施の有無も形式も、会社と職種によって異なります
- 統計法第3条は、公的統計に中立性と信頼性を求め、広く国民が容易に入手し、効果的に利用できるものとして提供するとしています
- どこにどの数字があるかを知っていることが、この形式では強みになります
- 問題の型は、推定・打ち手・意思決定の3つ。役所の実務に対応する場面があります
- 答えは、①前提を置く ②構造に分解 ③数字を置く ④結論と検証の4段です
- 制約を現実的に置けることと、まず測るという発想が、公務員の有利な点です
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よくある質問
数字を計算するのが苦手です
複雑な計算は求められません。必要なのは、掛け算と割り算で構造を作ることです。「人数 × 1人あたりの回数 × 単価」。この程度の組み立てができれば足ります。むしろ、計算の正確さより、置いた前提が説明できるかが見られています。加えて、計算の途中で「概算で構いませんか」と確認して構いません。多くの場合、概算で十分と言われます。電卓や紙の使用を認められることもあるので、始まる前に確認してください。暗算の速さを競う形式ではありません。
自治体を題材にした問題が出る可能性はありますか
自治体を顧客とする会社では、出ることがあります。その場合、公務員の経験が直接に使えます。注意するのは、在職している自治体の内部の情報を持ち出さないことです。地方公務員法第34条の守秘の義務は、退職後も続きます。答えるときは、一般的な制度の仕組みと、公表されている統計の範囲で構成してください。「一般に、自治体の予算は◯月頃に要求が始まり」という形です。個別の運用を根拠にすると、線を越えます。制度の話に限れば、問題ありません。
答えが思いつかないまま時間が過ぎたら
分からないまま黙るより、途中まででも述べてください。「まだ結論まで組み立てられていませんが、いまの時点では◯◯と◯◯の2つの方向を考えています」。この形で構いません。面接官は、結論の正しさより、考える過程を見ています。加えて、質問して構いません。「対象は個人の顧客と法人の顧客のどちらを想定しますか」と確認すれば、前提が絞られて考えやすくなります。確認することは、この形式では減点になりません。むしろ、前提を確かめる姿勢として受け取られます。