部署別 / 管財課
管財課の経験は民間で何と呼ばれるか
管財課から転職しようとすると、たいてい「総務」か「施設管理」で探し始めます。
そこから広がらないまま、「備品の発注と庁舎の鍵の管理をしていた人」として読まれてしまう。よくある流れです。
実際にやっていたのは、組織が持つ資産の全体を把握し、使い方を決め、直すか手放すかを判断する仕事です。民間でいえばアセットマネジメントにあたります。
この記事では、管財課の仕事を分解して、それぞれが求人票でどう書かれているかを並べます。
「売れない資産」を持ち続ける前提の仕事です
先に、この部署の立ち位置を条文で押さえます。ここが、民間に説明するときのいちばんの材料になります。
1つ目は、扱う財産の広さです。
地方自治法第238条第1項は、公有財産を、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち、不動産/船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機/これらの従物/地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利/特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利/株式、社債、地方債及び国債その他これらに準ずる権利/出資による権利/財産の信託の受益権と定めています(基金に属するものを除く)。
不動産だけではありません。権利も、株式も、知的財産も入ります。
2つ目が、いちばん大きい特徴です。
第238条の4第1項は、行政財産は、次項から第4項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができないと定めています。
行政財産は、原則として貸せず、売れず、担保にも入れられません。
第2項以下で例外は置かれていますが、用途又は目的を妨げない限度においてという条件がつきます。
つまり管財課は、「動かせない資産」を大量に抱えたまま、維持し、使い方を工夫し、いつ手放すかを判断する仕事をしてきたことになります。
民間の不動産管理は、売れる前提で成り立っています。採算が合わなければ売る、貸す、建て替える。その手段が最初から制限されている環境で、資産をどう扱うか。ここが、この経歴の中心にある専門性です。
管財課が実際にやっていること
自治体によって所管の範囲は違いますが、おおむね次の仕事が入ります。
- 公有財産台帳の管理(土地、建物、工作物、物品)
- 財産の取得、登記、境界の確定
- 行政財産の目的外使用許可(自動販売機、電柱、催事など)
- 普通財産の貸付け、売払い、譲与
- 庁舎の維持管理(保守、清掃、警備、設備の更新)
- 光熱水費の管理、省エネの取組
- 公共施設等総合管理計画、個別施設の長寿命化計画
- 施設の統廃合、複合化の検討
- 遊休資産の洗い出しと活用
- 庁用車の管理、リースの契約
- 建物の保険(火災、賠償責任)
- 財産に関する訴訟や境界の紛争への対応
大きく3つに分かれます。台帳と権利の管理、日々の維持管理、そして中長期の計画です。
「動かせない資産」を扱う5つの工程
この部署の専門性は、ここに集約されます。そのまま面接の答えになります。
1. 分類する
行政財産か、普通財産か。この分類で、できることが決まります。行政財産は原則として貸せませんが、普通財産なら貸せるし売れます。用途を廃止して普通財産に切り替える判断が、資産活用の入口です。
2. 台帳に載せる
何が、どこに、いくつあり、いつ取得し、いくらで評価されているか。台帳が実態と合っていない組織は珍しくありません。現物と突き合わせる作業は、地味ですが基礎になります。
3. 使い方を決める
行政財産のまま貸せる範囲(目的外使用許可)、普通財産としての貸付け、譲与。「使われていない」と「使えない」は違います。どちらなのかを見分けるのが仕事です。
4. 直すか、やめるかを決める
長寿命化して使い続けるのか、統廃合するのか。建物には更新の時期が必ず来ます。その前に判断しなければ、直す以外の選択肢がなくなります。
5. 手放す
用途を廃止し、普通財産にし、売却または譲与する。手放す判断には、地元の合意と議会の手続が絡みます。
民間のアセットマネジメントも、工程はまったく同じです。違うのは、1と5に制度上の手続が入ることだけです。
庁内の言葉と、求人票の言葉の対応
| 庁内での言い方 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 公有財産台帳の管理 | 固定資産台帳の管理、資産管理 |
| 現物との突合、実地調査 | 資産の実査、棚卸し |
| 行政財産・普通財産の分類 | 資産区分の管理、保有区分の判断 |
| 目的外使用許可 | スペースの貸出し、テナント管理 |
| 普通財産の貸付け・売払い | 不動産の賃貸・売却、遊休資産の処分 |
| 境界の確定、登記 | 不動産の権利関係の整理 |
| 庁舎の維持管理 | ファシリティマネジメント、設備管理 |
| 保守・清掃・警備の委託 | 施設運営の委託管理、ベンダー管理 |
| 光熱水費の管理、省エネ | エネルギー管理、コスト削減 |
| 公共施設等総合管理計画 | 中長期保全計画、アセットマネジメント計画 |
| 長寿命化計画 | ライフサイクルコストの管理 |
| 施設の統廃合・複合化 | 拠点の再編、オフィス戦略 |
| 遊休資産の活用 | 遊休不動産の有効活用 |
| 庁用車の管理 | 社用車管理、リース管理 |
| 建物の保険 | 保険の付保管理、リスク管理 |
並べると、資産管理・ファシリティマネジメント・不動産の3領域にまたがっていることが分かります。
民間の資産管理と、どこが同じでどこが違うか
同じところ
- 保有する資産を台帳で把握し、現物と突き合わせる
- 使っていない資産を洗い出し、活用するか手放すかを決める
- 建物の更新時期を見込み、費用を積む
- 維持管理を外部に委託し、事業者を管理する
- 保険をかけ、事故に備える
違うところ
- 行政財産は原則として貸せず、売れない(民間は保有する資産を自由に処分できる)
- 手放すのに、用途の廃止という手続が要る
- 適正な対価なく貸したり譲ったりするには、条例か議会の議決が要る
- 収益を目的としない施設を大量に抱えている(採算で判断できない)
- 利用者が住民なので、統廃合に合意形成が必要になる
この5つのうち、面接でいちばん効くのは4つ目です。
民間の資産管理は、採算という物差しがあります。合わなければ手放す。管財課には、その物差しが使えない施設が大量にあります。では何を基準に判断していたのか。利用の実績、更新にかかる費用、代替できる施設が近くにあるか、統合したときの移動距離。採算以外の基準で優先順位をつけてきた経験は、企業でも「すぐには閉められない拠点」を扱う場面でそのまま使えます。
この経験がとくに高く評価される場所
1. 不動産・アセットマネジメント
台帳の管理、貸付け、売払い、遊休資産の活用を担当していた方の接続先です。
企業側では、資産管理、不動産の運用、遊休不動産の有効活用といった職種になります。
効くのは、「売れない資産をどう扱うか」を考え続けてきたことです。民間でも、すぐには売れない資産、売ると事業に支障が出る資産は必ずあります。手段が限られた状態での判断は、そのまま使えます。
2. ファシリティマネジメント・施設運営
庁舎の維持管理、保守・清掃・警備の委託、設備の更新を担当していた方の接続先です。
企業側では、ファシリティマネジメント、設備管理、オフィスの運営といった職種になります。
複数の委託事業者を並行して管理してきた経験が効きます。
3. 中長期の保全計画・拠点再編
公共施設等総合管理計画や長寿命化計画に関わった方の接続先です。
企業側では、中長期保全計画、拠点の再編、オフィス戦略といった職種になります。保有する建物の総量と更新費用を出し、残すものと手放すものを決める。この作業を通した人は、民間でも多くありません。
4. 自治体を顧客にする企業
公有財産システム、施設管理のサービス、公共施設の再編を支援するコンサルティング会社です。
台帳の実態、目的外使用許可の運用、統廃合が進まない理由を知っていることが値になります。
職務経歴書でつまずきやすい点
1. 「庁舎管理」で止める
「アセットマネジメント」「資産管理」に置き換えてください。
2. 規模を書かない
管理する施設の数、延べ床面積、土地の筆数、台帳の件数、委託事業者の数、年間の維持管理費。規模が伝わる数字を必ず入れてください。
3. 計画に関わった話を落とす
公共施設等総合管理計画と長寿命化計画は、この経歴でいちばん効く材料です。必ず書いてください。
4. 統廃合の話を書かない
「やめた判断」は、企業のアセットマネジメントでいちばん求められる部分です。合意に至らなかった話でも構いません。何を材料に議論したかを書いてください。
5. 個別の相手方が分かる書き方をする
貸付けや訴訟は、扱いに注意が要ります。判断の構造で書いてください。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第238条は、公有財産を不動産だけでなく、船舶、権利、株式、知的財産、信託の受益権まで含めて定義しています
- 第238条の4第1項は、行政財産は原則として貸付け、交換、売払い、譲与、出資、信託、私権の設定ができないとしています
- 「動かせない資産」を抱えたまま、維持し、使い方を工夫し、いつ手放すかを判断する。これがこの部署の中心です
- 工程は分類する/台帳に載せる/使い方を決める/直すかやめるかを決める/手放すの5つ。民間のアセットマネジメントと同じです
- 庁内の「庁舎管理」は、求人票では「アセットマネジメント」「資産管理」「ファシリティマネジメント」と書かれています
- 公共施設等総合管理計画に関わった経験は、いちばん効く材料です。必ず前に出してください
在職中でも、情報収集だけでも構いません。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。
よくある質問
宅地建物取引士の資格は必要ですか
必須ではありません。不動産の売買や仲介を業として行う場合に関わる資格なので、資産管理やファシリティマネジメントの求人では、あると読みやすくなる程度です。それより、台帳の管理、貸付けの実務、計画の策定を通した経験のほうが直接読まれます。先に方向を決めてから、必要かどうかを判断してください。
技術職でなくても、施設の管理は評価されますか
評価されます。設備の技術的な判断は技術職が担う一方、委託事業者の管理、契約の設計、費用の管理、計画の策定は事務職の仕事です。民間のファシリティマネジメントでも、この区分は同じです。書くときは、技術的な判断をしていたのか、管理と契約を回していたのかを正確に書き分けてください。
公共施設等総合管理計画は、民間でどう説明しますか
「保有する建物の総量と、更新にかかる費用の見込みを出し、何を残し何をやめるかの方針を立てる計画」と説明してください。企業でいえば、拠点の再編計画やオフィス戦略にあたります。書くときは、対象の施設数、延べ床面積、見込んだ更新費用の規模、計画の期間を添えると、規模が伝わります。