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部署別 / 管財課

管財課の働き方と評価|一年の波と、成果が見えにくい理由

管財課の仕事は、うまくいっているときほど、誰にも気づかれません。

雨漏りが起きない。停電しない。台帳と現物が合っている。契約が切れない。どれも「何も起きていない」という形でしか表に出ません。

一方で、何か起きたときだけ、名前が出ます。

この記事では、管財課の一年の波と、成果が見えにくくなる構造、そして民間に移ったときに何が変わるかを整理します。不満の話ではなく、構造の話として読んでください。転職の場面で、自分の仕事をどう説明するかに直結します。

言い換えは管財課の経験は民間で何と呼ばれるか、行き先は管財課からの転職先、書類は職務経歴書、面接は面接で聞かれることに分けています。

「他の課に報告を求め、実地を調査できる」という立場

まず、この部署の立ち位置を条文で確認します。

地方自治法第238条の2第1項は、こう定めています。

普通地方公共団体の長は、公有財産の効率的運用を図るため必要があると認めるときは、委員会若しくは委員又はこれらの管理に属する機関で権限を有するものに対し、公有財産の取得又は管理について、報告を求め、実地について調査し、又はその結果に基づいて必要な措置を講ずべきことを求めることができる。

読み解くと、こうなります。

つまり、公有財産については、他の機関に対して「見せてください」「直してください」と言える権限が長に置かれていて、実務としてそれを担っているのが管財課です。

ここが、この部署の働き方を決めています。

管財課は、自分の課の中で完結する仕事をほとんど持っていません。財産を実際に使っているのは各事業課であり、管財課は全体を見渡して、横から調整する側にいます。

だから、仕事の中身は「他部署に頼み、待ち、突き合わせる」ことの繰り返しになります。そして、この「横から全体を見る」立場こそが、企業の資産管理・総務・ファシリティの部署とまったく同じ構造です。

一年の波

年間の動きは、年度末と年度当初に集中します。

時期主な仕事忙しさ
4〜5月委託契約の開始、各課からの財産異動の受付、年度当初の点検高
6〜7月決算に向けた台帳の確認、修繕の要望とりまとめ中
8〜9月翌年度予算の要求(修繕・更新・保守委託)、現物調査高
10〜11月入札・契約の準備、売払い物件の公募中
12〜1月予算の査定対応、総合管理計画の進行管理中
2〜3月委託契約の更新、年度末の台帳更新、物件の引渡し最も高い
通年庁舎の維持管理、目的外使用許可、境界・登記の処理、緊急対応—

山は2つあります。

1つ目は8〜9月の予算要求。建物の修繕と設備の更新をどこまで要求するかを決めます。要求できる額に限りがあるため、優先順位をつける作業がここに集中します。

2つ目は2〜3月。委託契約の更新と台帳の更新が重なります。契約は年度をまたいで切らせられないので、期限が動かせません。

そして、通年でいちばん読みにくいのが緊急対応です。設備の故障、漏水、台風による破損。予定に入っていない仕事が、予定を押しのけて入ってきます。

成果が見えにくいのは、性質によるものです

管財課の成果が外から見えにくいのには、3つの構造的な理由があります。評価してもらえないという話ではなく、仕事の性質からそうなるという話です。

1. 成果が「起きなかったこと」の形をとる

適切に修繕したから雨漏りしない。契約を切らさなかったから清掃が止まらない。予防がうまくいくほど、何も起きません。一方、うまくいかなかったときだけ事象として表に出ます。

2. 効果が出るまでの時間が長い

屋上防水を打ち替えても、効果が分かるのは10年後です。総合管理計画で更新需要を試算しても、その計画が正しかったかは数十年後にしか分かりません。在任中に答えが出ない仕事が、かなりの割合を占めます。

3. 数字が自分の課の外にある

管財課が台帳を整え、優先順位をつけても、実際に使うかどうかを決めるのは各事業課です。売払いで収入が上がっても、予算上は歳入として計上されるだけで、管財課の実績として集計されるとは限りません。

この3つは、企業の総務・ファシリティ部門でもほぼ同じように起きます。だから、転職先で急に評価されるようになる、とは考えないほうが正確です。

ただし、変わることはあります。

民間に移ると変わる4つのこと

1. 「いくら浮いたか」が測られるようになる

企業では、維持管理費の削減額、賃料の削減額、遊休資産の売却益が直接の指標になります。自治体では「適正に管理した」で評価が止まりがちですが、企業では金額に換算して報告することが前提です。

これは有利にも不利にもなります。有利なのは、成果が数字で残ること。不利なのは、数字で示せない仕事(台帳の精度、法令の順守)が後回しに見えることです。

2. 決める速さが上がる

自治体では、財産の処分に条例や議会の議決が必要な場面があります。企業では、決裁の階層を通れば動きます。「決めてから動くまで」が明確に短くなります。

ただし、速いぶん、判断の責任がはっきり自分に来ます。

3. 「閉める」が現実の選択肢になる

公の施設は、住民の利用を前提としているため簡単には閉められません。企業の拠点は、採算で閉められます。閉める判断そのものが仕事になるので、「閉められない理由を分類してきた」経験が、そのまま意思決定の材料になります。

4. 台帳が「会計の一部」になる

自治体の公有財産台帳と、企業の固定資産台帳は、目的が違います。企業では、台帳の数字がそのまま決算に乗ります。減価償却、減損、除却損。会計の締切に間に合うことが強く求められます。

ここは、入ってから覚える部分です。簿記2級程度の知識があると、立ち上がりが明確に早くなります。

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在職中に残しておくべき記録

転職を考え始めたら、在職中に手元に残しておくものがあります。辞めてからでは取れません。

残すもの使う場面注意
所管する財産の規模(筆数・棟数・延べ床面積)職務経歴書、面接の冒頭概数で可。公表資料の数字を使う
台帳の登録件数規模感の裏づけ同上
年間の維持管理費と委託契約件数予算管理の実績総額のみ。個別契約の中身は書かない
関わった計画の名称と改定時期総合管理計画の経験公表されている計画名を使う
現物調査で是正した件数実績の核件数のみ。個別物件は特定しない
売払い・貸付けの件数と収入の増減資産活用の実績相手方は書かない
統廃合の検討で、どこまで進んだか拠点再編の求人未公表の予定は書かない

いちばん忘れられやすいのが、延べ床面積です。規模がひと言で伝わる数字なので、必ず控えておいてください。

そして、書いてはいけないものも確認しておきます。

公表されている資料に載っている範囲で書くのが原則です。

つまずきやすい点

1. 「維持管理をしていた」で説明を終える

計画・契約・判断の3つに分けて話してください。維持管理だけを言うと、日常の面倒を見ていた人に読まれます。

2. 緊急対応の話を「大変だった」で終える

「割り込みのある業務設計に慣れている」と言い換え、割り込みを次の計画の材料に変えていた話を足してください。

3. 成果が見えにくいことを、組織の問題として話す

性質の話として整理してください。面接で組織の問題として話すと、次の職場でも同じことを言う人だと読まれます。

4. 数字を控えないまま辞める

延べ床面積、台帳件数、委託契約件数、年間維持管理費。在職中しか取れません。

5. 退職後の手続きを確認しないまま動く

退職手当や共済の扱いは在職期間で変わります。所属の人事担当課と共済組合で先に確認してください。公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。

どの経験がどの方向で値が付くのかは、募集の出方によって変わります。経歴を見ながらの相談もできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

よくある質問

残業は多い部署ですか

団体や年によって違うため、一般化はできません。ただし、仕事の構造として、2〜3月に契約更新と台帳更新が重なること、緊急対応が予定を押しのけて入ることは、どこでも共通します。面接で聞かれたら、時期の偏りと割り込みの性質を説明するのが正確です。個別の職場の事情をそのまま話す必要はありません。

技術職ではないのに、設備の話についていけますか

判断に必要な範囲までで足ります。管財課の事務職は、設備の技術的な仕様を自分で決めるわけではなく、技術職や委託先の見立てを受けて、費用と時期を決める側にいます。面接でも、「技術判断は技術職が担い、自分は計画と契約を回していた」と正確に言ってください。分かるふりをするより、役割の線がはっきりしているほうが読まれ方がよくなります。

異動して間もないのですが、経歴として使えますか

1年でも、関わった範囲を具体的に言えれば使えます。年数より、何を扱ったかのほうが読まれます。台帳の現物調査を1回通したか、委託契約の更新を1年分回したか、総合管理計画の改定に関わったか。一巡した仕事が1つでもあれば、書けます。逆に、年数が長くても、扱った範囲が説明できないと書類が薄くなります。書き方は職務経歴書に整理しています。

出典

  1. 地方自治法 第238条の2(公有財産に関する長の総合調整権)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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