部署別 / 管財課
管財課からの転職先|経験が値になる5つの方向
管財課から動こうとすると、「不動産の会社しかないのでは」と考える方が多くいます。
実際には、方向は5つあります。分かれ道になるのは、自分が持ち出すのが「資産の管理」なのか「施設の運営」なのかという点です。
この記事では5方向を並べ、合いにくい方向も同じだけ書きます。
言い換えの一覧は管財課の経験は民間で何と呼ばれるかに整理しているので、そちらと合わせて読んでください。
採算では判断できない施設を、大量に抱えています
先に、この経験の値がどこにあるかをはっきりさせます。
地方自治法第244条第1項は、普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとすると定めています。
第2項は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならないとしています。
そして第244条の2第1項は、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならないと定め、第2項では、条例で定める特に重要な公の施設を廃止したり、長期かつ独占的な利用をさせたりする場合の手続を置いています。
読み取ってほしいのは3つです。
1つ目は、目的が「住民の福祉の増進」であること。収益を上げることではありません。採算という物差しが、最初から使えません。
2つ目は、利用を拒めないこと。混んでいるから断る、採算が合わないから閉める、という判断が簡単にはできません。
3つ目は、設置も管理も廃止も条例によること。閉めるには、条例の改正と議会の手続が要ります。
つまり管財課は、「採算では判断できず、簡単には閉められない施設」を大量に抱えたまま、優先順位をつけてきたことになります。
では、何を基準に判断していたのか。利用の実績、更新にかかる費用、代替できる施設が近くにあるか、統合したときの利用者の移動距離。
この「採算以外の基準で優先順位をつける」経験が、この経歴の芯にある値です。企業でも、すぐには閉められない拠点は必ずあります。
創業の地にある工場、労使の合意で維持している寮、取引先との関係で残している営業所。数字だけ見れば閉めるべきなのに、閉められない。このとき必要なのは、採算以外の物差しを言葉にして、優先順位を説明できる形にすることです。管財課は、それを制度の中でやってきました。
そして、もう一つ。「閉められない理由」を分類できることも強みです。法令で決まっているのか、条例を変えれば動くのか、合意が得られれば動くのか、単に前例で続いているだけなのか。この4つを分けられると、手のつけられる順番が見えてきます。企業でも、同じ分類がそのまま使えます。
方向1:不動産・アセットマネジメント
台帳の管理、貸付け、売払い、遊休資産の活用を担当していた方の、いちばん自然な接続先です。
企業側では、資産管理、不動産の運用、遊休不動産の有効活用といった職種になります。
効くのは、「手段が限られた状態での判断」です。行政財産は原則として貸せず売れないので、用途を廃止して普通財産に切り替えるところから始まります。民間でも、事業に使っているから売れない資産は同じ扱いになります。
方向2:ファシリティマネジメント・設備管理
庁舎の維持管理、保守・清掃・警備の委託、設備の更新を担当していた方の接続先です。
企業側では、ファシリティマネジメント、設備管理、オフィスの運営といった職種になります。
効くのは2点です。
複数の委託事業者を並行して管理してきたこと。保守、清掃、警備、設備の点検。契約が別々で、期間も違い、問題が起きたときの切り分けが要ります。
費用を管理してきたこと。光熱水費、修繕費、委託料。予算の枠のなかで優先順位をつけてきた経験は、そのまま使えます。とくに、修繕の要望が予算を超えたときにどう並べたかは、企業でも同じ判断が必要になります。
方向3:拠点再編・中長期の保全計画
公共施設等総合管理計画や長寿命化計画に関わった方の接続先です。
企業側では、拠点の再編、オフィス戦略、中長期保全計画といった職種になります。
保有する建物の総量を把握し、更新にかかる費用を見込み、何を残し何をやめるかの方針を立てる。この作業を通した人は、民間でも多くありません。
とくに、統廃合の合意形成を経験しているなら、それを前に出してください。閉めると決めてから実際に閉まるまでに何が必要かを知っている人は希少です。
方向4:施設運営・指定管理
公の施設の管理、指定管理者との協定や監督を担当していた方の接続先です。
企業側では、指定管理を受託する会社の運営管理、施設の受託運営、公共施設のサービス企画といった職種になります。
ここでは、発注者側にいた経験が直接使えます。どういう仕様で公募され、何が評価され、協定でどこまで縛られるのか。受託する側に回ると、この理解がそのまま武器になります。
ただし、受託の仕事は収支の目標を持つことになります。採算以外の基準で判断してきた側から、採算を求められる側に移るので、その切り替えは必要です。
方向5:自治体を顧客にする企業
公有財産システム、施設管理のサービス、公共施設の再編を支援するコンサルティング会社です。
台帳の実態、目的外使用許可の運用、統廃合が進まない理由を知っていることが値になります。とくに、なぜ計画どおりに減らないのかを内側から見てきた人は、外から採用しようとしても見つかりません。
合いにくい方向も書いておきます
不動産の売買仲介・営業
管財課は、買い手を探して売る仕事はしていません。普通財産の売払いは入札や公募が中心で、顧客を開拓して価格を交渉するという形とは違います。方向を選ぶときは、営業職なのか管理職種なのかを必ず確認してください。
収益を最大化する運用
公の施設は住民の福祉の増進が目的で、利用を拒めません。収益の最大化を求められる運用は、前提が違います。方向4(施設運営)を狙うときは、収支の目標を持つ働き方を経験していないことを自分から言えるようにしておいてください。
台帳も計画も無い段階の組織
管財課の強みは、台帳と計画に基づいて判断することです。そもそも何を持っているか分かっていない組織では、まず作るところから始まります。逆に言えば、作る側に回る前提なら合います。面接で「固定資産台帳と中長期の保全計画はどの段階か」を確かめてください。
資格は、方向を決めてから考える
宅地建物取引士
方向1で、あると読みやすくなります。ただし必須ではありません。売買の仲介を業として行う場合の資格なので、資産管理の求人では実務経験のほうが先に読まれます。
ファシリティマネジャー・建築物環境衛生管理技術者
方向2で、募集要項に挙がることがあります。建築物環境衛生管理技術者は、一定規模の建物に選任が必要になるため、実務上の意味があります。
取る前に考えること
管財課の繁忙は、年度末の台帳の更新と、年度当初の契約の更新に重なります。この時期に学習を始めて中断する例が多いので、始めるなら山を越えてからにしてください。そして、資格を取ってから動こうとすると、動くのが1年以上先になります。
探すときに使う言葉
| 持ち出すもの | 検索に使う言葉 |
|---|---|
| 公有財産台帳の管理 | 固定資産台帳、資産管理 |
| 普通財産の貸付け・売払い | 不動産の賃貸・売却、遊休資産の活用 |
| 目的外使用許可 | スペースの貸出し、テナント管理 |
| 庁舎の維持管理 | ファシリティマネジメント、設備管理 |
| 保守・清掃・警備の委託 | 施設運営の委託管理、ベンダー管理 |
| 公共施設等総合管理計画 | アセットマネジメント計画、中長期保全計画 |
| 施設の統廃合・複合化 | 拠点の再編、オフィス戦略 |
| 指定管理者との協定・監督 | 受託運営、委託先の管理 |
部署ごとの対応は自治体の部署別 仕事ガイドにもまとめています。
つまずきやすい点
1. 「施設管理」で検索して止まる
「アセットマネジメント」「資産管理」「ファシリティマネジメント」に置き換えてください。
2. 資産の管理と施設の運営を分けないまま応募する
方向によって読まれる経験が違います。先に整理してください。
3. 方向4を、収支の目標なしに選ぶ
受託の仕事は収支の目標を持ちます。面接で確認してください。
4. 計画に関わった経験を前に出さない
公共施設等総合管理計画は、この経歴でいちばん効く材料です。
5. 応募先を1方向に絞りすぎる
方向4(施設運営)と方向5(自治体向け企業)は求人の数が限られます。方向1か方向2を並行して見ておくと、選択肢が減りません。
自分の経歴がどの方向に向いているかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
まとめ
- 地方自治法第244条は、公の施設を住民の福祉を増進する目的の施設と定め、正当な理由がない限り利用を拒めないとしています
- 第244条の2は、設置も管理も廃止も条例によるとしています。閉めるには議会の手続が要ります
- つまり、採算では判断できず、簡単には閉められない施設を大量に抱えたまま優先順位をつけてきたことになります
- 「採算以外の基準で優先順位をつける」経験が、この経歴の芯です。企業でも、すぐには閉められない拠点は必ずあります
- 5方向は、不動産・アセットマネジメント/ファシリティマネジメント・設備管理/拠点再編・中長期保全計画/施設運営・指定管理/自治体を顧客にする企業です
- 分かれ道は、資産の管理を持ち出すか、施設の運営を持ち出すかです
よくある質問
管財課にいたのが数年でも、応募できますか
できます。方向2(ファシリティマネジメント)は、在籍年数より管理した施設の数と、委託事業者をどう回したかが問われます。一方、方向1と方向3は減らした実績や計画の策定が効くので、そこが薄いなら方向2を先に見てください。
指定管理者の監督をしていた経験は、受託する側で使えますか
使えます。どういう仕様で公募され、何が評価され、協定でどこまで縛られ、報告に何を求められるか。発注者側にいた人にしか分からない部分です。ただし、受託の仕事は収支の目標を持つことになるので、そこは切り替えが要ります。面接では「収支の責任はどこまで持ちますか」と確認してください。
統廃合が進まなかった経験は、書いてよいですか
書いてください。むしろ、なぜ進まなかったのかを説明できることが値になります。利用者の反対、代替施設までの距離、地域ごとの事情、議会の判断。企業の拠点再編でも、まったく同じことが起きます。「計画は立てたが実行できなかった」で終わらせず、何が障害で、どこまで進んだかを書いてください。