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業界研究 / 再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは公務員のどの経験を評価するか

再生可能エネルギーは、財政課の方が「電気と発電の技術がなければ関係のない世界」と感じて候補から外しがちな業界です。この感覚は、発電設備の設計と保守の技術については正しく、業界全体については違います。再生可能エネルギーには、発電事業者の自治体連携と用地の開発、地域の新電力の経営管理、公共施設への導入を提案する会社の営業と企画、再エネのファンドと金融の自治体向けの企画といった、技術の資格を前提としない領域があり、そのうち自治体と接点を持つ領域では、財政課の経験が直接効きます。

自治体の側から見ると、財政課は地域の再エネの事業への出資と貸付を審査し、公有財産の貸付と屋根貸しの財政面を見て、公共施設の電力の調達を査定し、地域の新電力への関与の財政面を検討してきた部署です。再生可能エネルギー電気は再生可能エネルギー発電設備を用いて得られる電気で(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第2条)、発電事業は計画の認定を受け(第9条)、電気事業者があらかじめ定められた価格と期間で調達する仕組みが組まれています(第3条)。自治体は実行計画で促進区域を定めることができ(地球温暖化対策の推進に関する法律第21条)、地域脱炭素化促進事業は計画の認定を受けます(第22条の2)。再エネの事業を「出資し、財産を貸し、電力を買う側」で見てきた人は、再エネの会社の側では少数です。

この記事では、再生可能エネルギーの業界構造(認定と調達の仕組み、促進区域、電気事業の区分、自治体との接点)を法律で押さえたうえで、財政課の経験のうちどこが評価され、どこが評価されないかを、職種ごとに整理します。エネルギーの供給の制度はエネルギーは公務員のどの経験を評価するかに、脱炭素の事業と廃棄物処理施設は環境・GXは公務員のどの経験を評価するかに書いており、再エネと重なる部分があります。

業界構造——認定と調達の仕組み、促進区域、電気事業の区分

再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気は、計画の認定(再エネ特措法第9条)を受けた事業について、経済産業大臣が定める価格と期間などの条件で電気事業者が調達する仕組みの対象になります(第3条)。電気事業には小売、一般送配電、発電などの区分があり(電気事業法第2条)、地域の新電力は小売電気事業として電気を供給します。自治体は実行計画で再エネの促進区域を定めることができ(温対法第21条)、地域脱炭素化促進事業は協議会の協議を経て計画の認定を受けます(第22条の2)。自治体の土地と建物は公有財産で(地方自治法第238条)、行政財産の貸付には制限があり(第238条の4)、屋根貸しや遊休地の活用はこの枠の中で組まれます。

自治体との接点は、次の形で現れます。

接点の形内容法律上の前提財政課の関わり
公有財産の活用公共施設の屋根貸し、遊休地の貸付、公有地での発電地方自治法第238条、第238条の4貸付料と財政面の審査、行政財産の貸付の可否の確認
出資と協定地域の再エネの事業や新電力への出資、貸付、協定出資と貸付の財源は地方財政法第5条出資と貸付の審査、経営の見通しの確認、自治体の関与の範囲
公共施設への導入太陽光と蓄電池の導入、PPAなどの契約、電力の調達地方自治法第234条の契約方法導入の財政面の検討(購入かPPAか)、電力の調達の査定
促進区域と地域の合意実行計画の促進区域、地域脱炭素化促進事業の認定温対法第21条、第22条の2計画に伴う事業の予算の査定
地域の新電力自治体が関与する新電力の設立と経営電気事業法第2条の小売電気事業、出資の財源は地方財政法第5条設立の財政面の検討、出資の審査、経営状況の報告の確認

財政課は、再エネの会社が「外から提案し、協定を組む」案件のほとんどで、内側にいた部署です。この位置が評価の土台になります。

財政課の経験が効く領域——4つ

1. 出資と貸付の審査の視点。地域の再エネの事業や新電力への出資と貸付で、経営の見通し、自治体の関与の範囲、財源(地方財政法第5条)をどう審査し、経営状況の報告をどう確認したか——財政課はこれを審査してきました。発電事業者の自治体連携と、地域の新電力の経営管理にとって、「自治体が出資と協定で何を見るか」を内側から知っている人は、会社の側にいません。

2. 公有財産の貸付の財政面。公共施設の屋根貸しと遊休地の貸付で、貸付料の考え方、行政財産の貸付の可否(地方自治法第238条の4)、契約の期間と財政面をどう見たか——財政課は公有財産の活用を財政面から審査してきました。用地の開発を担う会社にとって、自治体の側で公有財産の活用がどう判断されるかは、提案を組むうえで欲しい情報です。

3. 電力の調達と導入の査定の視点。公共施設の電力の調達で、価格と契約の期間をどう査定し、太陽光と蓄電池の導入で購入とPPAをどう比べたか——財政課は電力の調達と導入を査定してきました。公共施設への導入を提案する会社にとって、「自治体が購入とPPAをどう比べ、どこで判断が止まるか」は提案の順序を組むうえで効きます。

4. 促進区域と地域の合意の財政面。実行計画の促進区域と地域脱炭素化促進事業で、計画に伴う事業の予算をどう査定し、地域の合意のための事業をどう見たか——財政課は計画に伴う事業を査定してきました。

職種ごとの評価——財政課の経験はどこで効くか

職種業務財政課の経験の評価評価される部分評価されない部分
発電事業者の自治体連携・用地開発促進区域と用地の開発、自治体との協定、地域の合意高い出資と協定の審査の視点、公有財産の貸付の財政面、促進区域の仕組み発電の技術と系統の制度は別の経験
地域の新電力の経営管理経営計画、電力の調達と販売、自治体との調整、経営状況の報告高い出資の審査の視点、経営状況の報告で自治体が何を見るか、公共施設の電力の調達電力の取引と需給の管理は別の経験
公共施設への導入を提案する会社の営業・企画太陽光と蓄電池の提案、PPAの設計、自治体への提案中〜高導入の財政面の検討の視点、購入とPPAの比較、年度の周期設備の技術と設計は別の経験
再エネのファンド・金融の自治体向け企画地域の再エネの事業への資金の組み立て、自治体との連携中〜高出資と貸付の審査の視点、財源の仕組み地方銀行・信用金庫に近い評価
設備の技術・保守発電設備の設計、施工、保守低い—技術の資格と経験が前提

財政課の経験が最も評価されるのは、発電事業者の自治体連携・用地開発と、地域の新電力の経営管理です。技術の資格は要らず、「出資し、財産を貸し、電力を買う側にいた」ことが価値になります。

評価されない経験——3つの落とし穴

1つ目は、「出資と電力の調達を査定していたから再エネが分かる」の一般化。財政課が見ていたのは出資と契約と調達の財政面で、再エネの事業は発電の技術、系統の接続、電力の取引、地域の合意と結びついています。「再エネが分かる」と言うより、「自治体が出資と協定と公有財産で何を見るかを知っている」と言うほうが、会社には伝わります。技術と電力の制度は別の経験として学ぶ前提です。

2つ目は、自分の自治体の運用の一般化。出資の審査の仕方、公有財産の貸付の考え方、新電力への関与の判断は自治体で違います。「うちの市ではこうだった」を「自治体はこうだ」と言うと、複数の自治体と協定を組んできた会社の担当者には浅く見えます。「自治体の内側では、この判断をこう見る」と、判断の型で語ってください。

3つ目は、地域と現場への敬意を欠く言い方。「地域の合意は時間がかかりすぎる」「新電力は採算が合わない」といった言い方は、地域と向き合う会社の面接官には、再エネの事業が地域の合意と長期の関係で成り立つ構造を理解していないと見られます。財政課の経験は「出資と協定を審査する側の目で、会社の提案を自治体が通せる形に組み立てる」ことで効き、「事業を評価する」ことで効くのではありません。

自分の経歴が、発電事業者と新電力と導入を提案する会社のどこで、どの職種として通るかは、一人で判断するより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

入り方——職種の選び方と、準備

職種は「自治体との接点」で選びます。財政課の経験が直接効くのは、発電事業者の自治体連携・用地開発と、地域の新電力の経営管理です。求人票に「自治体」「地域」「協定」「促進区域」「新電力」「公共施設」「PPA」の語があるかを確かめ、なければ「再エネに興味がある」だけの応募になり、評価は下がります。

準備は、財政課の業務を「出資と協定」「公有財産の貸付」「電力の調達と導入」の3つに分けて棚卸しすることから始めます。出資と貸付で経営の見通しと財源をどう審査し、自治体の関与の範囲をどう線引きしたか。屋根貸しと遊休地の貸付で貸付料と行政財産の貸付の可否をどう見たか。電力の調達で価格と期間をどう査定し、購入とPPAをどう比べたか。それぞれについて、「法律上の根拠」「自分が見た箇所」「直した経験」を並べます。

地域の新電力の設立や経営状況の報告に関わった経験は、別に取り出してください。設立の財政面の検討、出資の審査、経営状況の報告の確認は、新電力の経営管理にとって欲しい視点です。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続くので、未公表の経営状況は型にとどめます。

自分の自治体と協定を結んでいる会社や、出資している新電力に応募する場合は、接点を隠さないでください。退職後に元の職場へ職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。接点があること自体は問題ではなく、応募先にも伝えるほうが安全です。

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まとめ

よくある質問

電気の技術も資格もありませんが、再生可能エネルギーの会社に入れますか

入れる領域があります。発電事業者の自治体連携と用地開発、地域の新電力の経営管理、公共施設への導入を提案する会社の営業と企画、ファンドと金融の自治体向けの企画は、技術の資格を前提としません。財政課の経験が効くのは、出資と貸付を審査する側、公有財産を貸す側、電力を調達する側にいた経験で、それは会社の側にはない視点です。ただし、発電の技術、系統の接続、電力の取引は入社後に学ぶ前提で、「再エネに興味がある」を売りにするのは避けてください。求人票に「自治体」「地域」「協定」「新電力」の語があるかを先に確かめ、技術の職種と区別して応募してください。

財政課で再エネの出資や新電力に直接関わったことがありません。素材はありますか

あります。公共施設の電力の調達の査定、太陽光と蓄電池の導入の財政面の検討、公有財産の貸付料と行政財産の貸付の可否の確認、脱炭素の事業の予算の査定と補助金の活用に関わっていれば、それが「公有財産の貸付」「電力の調達と導入」の素材です。出資と新電力に関わっていなくても、「自治体が電力の調達と公有財産の活用で何を見て、どこで判断が止まるか」を知っている人は、会社にいません。棚卸しは「出資と協定」「公有財産の貸付」「電力の調達と導入」の3つに分け、自分が見た箇所と直した経験を並べてください。

自分の自治体が出資している地域の新電力に応募したいのですが、問題になりますか

応募すること自体は問題ありませんが、線があります。退職後に、再就職者が元の職場に職務上の依頼をすることには規制があり(地方公務員法第38条の2)、在職中に応募先とやり取りする場合は勤務時間外に行います。また、その新電力は自分の自治体の出資先なので、面接でその出資の個別の内容——審査の経緯、未公表の経営状況、追加の出資や関与の見直しの検討——を話すことは、秘密を守る義務(第34条)に触れます。話してよいのは「自治体の内側では出資と経営状況の報告をこう見る」という型です。接点があることは隠さず、応募先にも伝えておくと、会社の側も自治体との関係の切り分けを考えられます。

出典

  1. 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 第2条(定義)/第3条(調達価格等)/第9条(再生可能エネルギー発電事業計画の認定)|e-Gov法令検索
  2. 地球温暖化対策の推進に関する法律 第21条(地方公共団体実行計画等)/第22条の2(地域脱炭素化促進事業計画の認定)|e-Gov法令検索
  3. 電気事業法 第2条(定義)|e-Gov法令検索
  4. 地方財政法 第5条(地方債の制限)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第234条(契約の締結)/第238条(公有財産の範囲及び分類)/第238条の4(行政財産の管理及び処分)|e-Gov法令検索
  6. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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