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制度とお金 / 服務と法令上の制限

引き継ぎの義務

退職時の引き継ぎは、後任に仕事を口頭で教えるだけではなく、所属の服務・文書管理の規程と指示に沿って、事務を組織へ渡す作業です。担当する案件の状態、残る期限、判断事項、資料の所在を示し、誰が受け取るかを上司と確認します。

本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。引継ぎの義務の具体的な対象、様式、期限、報告先は所属ごとに確認します。引継ぎが終わらなければ無期限に勤務しなければならない、反対に退職予定を伝えれば何も渡さなくてよい、という一律の説明はしません。

服務の法律と所属の引継規程を分ける

国家公務員法第98条、地方公務員法第32条は、職務遂行に際して法令等と上司の職務上の命令に従う義務を定めています。国家公務員法第101条、地方公務員法第35条には職務専念義務もあります。引継ぎを含む勤務上の対応は、こうした服務の枠組みと関係します。

ただし、これらの条文だけから、全公務員に共通する引継書の様式や日数が決まるわけではありません。具体的な事務引継ぎは、所属の服務規程、事務引継規程、文書管理規程、上司からの職務上の指示を確認します。制度上の根拠と職場での作業指示を混同しないことが大切です。

地方の例として、横浜市職員服務規程第7条は、退職・休職・転任等の際、事務引継書を作成し、担当事務を速やかに後任者又は上司が指定する者へ引き継ぎ、結果を報告することを定めています。適用される職員や報告先も同市の規程によるもので、全国一律の期限を示すものではありません。

自分の所属では、何を提出すればよいかだけでなく、説明の相手、未了事項の扱い、受領の確認、最終報告が必要かを聞きます。過去の担当者のやり方と現行規程が違う場合は、正式な担当へ確認してください。

受取担当と優先順位は組織で決める

後任者が決まっていない場合も、組織への引継ぎを止める理由にせず、上司へ受取担当の指定を求めます。自分で他の職員に引受けを約束させたり、後任が来るまで本人だけが業務を保持したりすることは避けます。

まず業務を一覧にし、直近の期限、安全や住民対応に関わる事項、決裁待ちの案件、定例業務を区分します。全部を同じ深さで一度に説明しようとせず、残りの勤務日と説明時間を踏まえ、何を先に渡すかを上司と決めます。

確認する場面本人が整理すること上司等に求める判断
後任が未定業務一覧、期限、必要な資料暫定の受取担当と担当割
時間が不足説明できた範囲、残る項目優先順位と説明時間の確保
結論が未決定判断の経緯、確認済みの事実決裁者と今後の対応
資料が個人領域にある正式資料の所在と権限組織内の保存先・権限移管
相手からの回答待ち照会日、回答期限、次の行動退職後に対応する担当者

業務を完了させることと、未完了の状態を適切に渡すことは異なります。本人の権限で決められない事項は、無理に結論を作らず、判断者と残る確認を明示します。未了であることを隠して「完了」と報告しないようにしましょう。

正式な退職日と引継ぎの日程を別に管理する

国の人事院規則8-12第51条は、書面による辞職申出について、任命権者は特に支障のない限り承認するとしています。引継ぎの予定を立てることと、辞職が正式に承認されることは別です。地方についても、本人の任命権者と所属規程による辞職手続きを確認します。

「引継ぎが残っているから退職は永久に認められない」「退職希望日を書いたから以後の指示はすべて無関係」と記事から断定することはできません。正式退職日の確定状況、勤務予定、引継ぎの残りをそろえ、人事担当と上司へ確認してください。

最終登庁日が退職日より前の場合は、その間の年休等と引継ぎ日程を別にします。国の勤務時間法第17条は年休の時期について承認を必要とし、公務の運営に支障がある場合を除き承認する枠組みです。引継ぎがあるという一言だけで年休の可否が一律に決まる、と説明するものではありません。

残日数をすべて使う予定を先に確定させるのではなく、必要な説明・返却・手続きの日を一覧にして相談します。一方で、後任の習熟が終わるまで無期限に勤務する約束をする必要があるとも考えません。調整が難しい場合は、適用規程と具体的な支障を人事担当へ照会します。

資料は組織に残し、権限を正式に引き継ぐ

国の公文書管理法第4条から第6条には、文書の作成、整理、保存に関する規定があります。同法第34条は、地方公共団体に適正な文書管理の施策を策定・実施する努力義務を定めています。国の細かな手順をそのまま自治体へ当てはめず、所属の文書管理規程等に従います。

引継資料は、受取担当が組織内で参照できる保存先に置きます。本人の退職とともに使えなくなる個人領域へ残したままにせず、文書管理担当や情報システム担当に移管の方法を確認します。後任が閲覧できるかも実際に確かめてください。

パスワードを一覧に書いて渡すこと、自分のアカウントを後任に利用させること、資料を私用クラウドへ複製して共有することは、正式な権限移管の代わりにしません。権限の申請と承認、端末の返却、アカウント終了の手続きは所管の担当に依頼します。

退職に合わせて個人用のファイルを整理する場合も、業務記録を自分の判断で消しません。正式な保存対象か、重複資料や一時ファイルとして処理できるかを、所属のルールに沿って確認します。整理と廃棄、持出しは別の判断です。

秘密や個人情報は必要な担当者へ渡す

国家公務員法第100条、地方公務員法第34条の守秘義務は、退職後も続きます。引継ぎのためという目的だけで、関係のない人へ秘密情報を広く配ってよいわけではありません。

住民の情報、事業者の内部情報、職員の健康に関する情報などは、必要な権限を持つ担当者へ、認められた方法で渡します。全体の業務一覧には機微な内容を詰め込まず、適切な管理下にある原資料の所在を示す方法を検討します。

職務経歴書の作成を兼ねて、引継資料を自宅へ持ち帰ることはしません。業務の引継ぎ用資料と、本人が外部へ説明できる職歴のメモは別です。公開できる経験の整理は資料の持ち出しと職務経歴書で説明します。

実際の引継書の項目や記入例は引き継ぎ書の作り方を参照できます。記事の例よりも所属の指定様式と管理方法を優先し、実案件の情報を外部のサービスへ入力しないようにします。

渡した内容と残る事項を報告して終える

書類を保存しただけでは、説明が終わり、受け手が資料を確認したことまで分かりません。説明日、相手、渡した資料、質問への回答、未了事項を記録し、所属の定める経路で報告します。

仮の確認例なら、「定例業務の一覧と資料所在は説明済み。更新契約の判断は未決定で、担当課への回答期限が残る。次の担当は上司の指定待ち」と記します。実在の案件の例ではなく、完了と未決定を分ける書き方です。後任の理解度や人員配置を本人だけで保証する表現にはしません。

返却物については、端末、職員証、鍵、貸与物等の所管と返却方法を照合します。引継資料の受領と物品の返却を別に記録し、本人に交付してよい受領確認などがあれば安全に保管します。

退職後の照会が想定される場合は、連絡窓口と扱える範囲を退職前に確認します。無償・無期限の対応を約束したり、旧アカウントを残してもらったりすることを前提にしません。不足が判明したときは、現職の担当者が組織の記録へアクセスする形を基本に、正式な窓口で対応を相談します。

仕事の内容を比較したい方は求人情報を情報収集に利用できます。現職を続ける場合の希望と並べて、本人の条件を整理してください。

よくある質問

後任が決まらないと引継ぎはできませんか?

後任未定でも業務一覧や未了事項の整理は進められます。所属の規程に沿い、上司へ受取担当の指定と優先順位を相談します。本人だけで引受け先を決めず、組織の判断を受けてください。

引継ぎが終わるまで無期限に勤務する義務がありますか?

引継ぎ未了だけから無期限の勤務義務とは説明できません。正式な辞職手続き、退職日の確定、残る業務と勤務予定を分けて人事・上司へ確認します。個別の承認可否は記事では判断しません。

退職後の質問に備えて資料を自宅へ保存してよいですか?

私的な保存を前提にしません。資料は所属の管理下に残し、受取担当の権限を整えます。退職後の連絡は正式な窓口と範囲を確認し、守秘義務と情報管理に従って対応します。

希望する働き方の整理には相談フォームをご利用ください。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担)。短い連絡はLINEでも受け付けています。引継ぎの正式な扱いは所属の担当へ確認してください。

出典

  1. 国家公務員法 第98条・第100条・第101条
  2. 地方公務員法 第32条・第34条・第35条
  3. 横浜市職員服務規程 第1条・第7条
  4. 人事院規則8-12 職員の任免 第51条
  5. 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律 第17条
  6. 公文書等の管理に関する法律 第4条・第5条・第6条・第34条

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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