制度とお金 / 服務と法令上の制限
講演・執筆の報酬は許可が要るか
講演や執筆を頼まれたときは、報酬があるかだけで許可の要否を決めません。単発の依頼か、継続的な事業・事務か、自ら営む事業かを整理し、倫理上の事前承認や受領後の報告も別に確認します。「一度だけだから何の手続きも要らない」「謝礼が出るので必ず同じ兼業許可が必要」という一律の説明は避けます。
本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。国の一般職を中心とする制度と地方の具体例を分けて説明します。本人の任用区分、契約内容、所属の基準による判断は、服務・兼業・倫理の担当へ確認してください。
依頼を受けたら活動の実態を整理する
最初に、依頼者、活動内容、回数、期間、報酬、勤務との関係を確認します。講演という名前でも、一回の登壇、毎月の講座、講師契約による継続業務では同じとは限りません。執筆も、一回の寄稿、連載、継続する有料発信等を分けます。
| 依頼書等で確認する項目 | 具体的な確認点 |
|---|---|
| 相手方 | 企業、団体、個人、本人の業務との関係 |
| 内容 | 講演、原稿、監修、研修指導、販売等 |
| 継続性 | 一回限りか、複数回や一定期間の従事か |
| 対価 | 謝礼、原稿料、旅費、物品、支払時期 |
| 時間 | 準備、移動、登壇や納品、修正対応 |
| 情報の利用 | 職名、資料、録画、再配信、二次利用 |
相談前に参加や契約を確約せず、依頼書や契約案を受け取ります。相手が「公務員の登壇実績がある」「少額だから大丈夫」と説明しても、本人に適用される手続きが済むわけではありません。
条件が不明な場合は、未定の項目を残したまま担当へ事前相談し、正式に確定するまでの進め方を確認します。報酬の名称を謝礼に変えることで、実態が別の活動になるわけでもありません。
国の103条と104条を分ける
国家公務員法第103条は、営利企業の役員等との兼業や自営を制限し、承認に関する規定を置いています。同法第104条は、それ以外の報酬を得る事業・事務への関与について許可を定めています。
内閣人事局の兼業概要は、第104条の対象について、労働の対価として報酬を得て、継続的又は定期的に事業・事務に従事する場合と説明しています。単発の講演や雑誌等への執筆は、この継続・定期の従事に当たらないとされています。
ただし、単発なら所属への確認を省けるという意味ではありません。倫理上の承認、届出、勤務時間、原稿内容、職名使用等を別に確認します。形式上は一つの依頼でも、契約期間中に複数回の業務を行うなど実態が継続する場合は、その条件を担当へ示します。
2026年3月更新の人事院Q&Aも、同一団体から報酬を得て継続・定期的に従事する場合は、雇用契約がなくても第104条の兼業に当たると説明しています。業務委託という名称だけで許可不要にはなりません。
倫理上の事前承認は別に確認する
国の倫理規程第9条は、利害関係者から依頼を受け、報酬を得て講演等を行う場合について、倫理監督官の事前承認を定めています。講演だけでなく、指導、著述、監修等も条文の対象に含まれます。
同条の「講演等」には、国家公務員法第104条の許可を得て行うものを除く定義があります。「兼業許可と倫理承認はどんな場合も必ず二重に必要」と一括せず、自分の依頼に必要な手続きと担当を確認します。
相手が利害関係者に該当するかは、契約、許認可、補助金、検査等の本人の担当事務に照らして確認します。国の規程上の取扱いを地方職員へそのまま当てはめず、所属自治体の倫理規則も読みます。
講演の後に接待や贈り物が予定されている場合は、報酬とは別の提供として相談します。講演の承認から懇親会や宿泊の無償提供まで認められると判断しないようにします。相手との関係の整理は利害関係者との付き合いの線引きを参照してください。
経験の呼び方を調べたい場合は、公務員経験に対応する求人情報を参照できます。講演の受託やSNSでの発信を、情報収集の前提にする必要はありません。
2026年の自営兼業見直しで何が変わったか
人事院は2026年4月1日から、職員の知識・技能をいかした事業や社会貢献に資する事業を承認可能とする自営兼業の見直しを施行しています。第103条に基づく自営の承認基準に関する見直しであり、講演・執筆を含むすべての活動が一律に自由になったものではありません。
人事院Q&Aは、自営の判断で営利目的、継続・反復性、規模、営業設備等を考慮することを説明しています。広く相手方を募って自分の名義で講座や販売等を営む場合は、個別の依頼への従事とは別に事業の実態を確認します。
また、自営の承認を得ていても、団体から報酬を得て継続的・定期的に事業や事務を受託する場合には、第104条の許可が必要になることがあります。第103条の承認を、どのような受託にも使える包括的な許可と考えないでください。
見直し前の資料は、その後の制度改正があるかを併せて確認します。本記事では単発・継続の説明に内閣人事局資料を参照し、自営については2026年の施行案内と更新後Q&Aを確認しています。
地方は38条と本人の自治体の基準で確認する
地方公務員法第38条は、営利企業の役員等、自営、報酬を得る事業・事務について任命権者の許可を定めています。同条には一定の非常勤職員への適用除外もありますが、短時間勤務の職やフルタイムの会計年度任用職員等は除外から除かれています。本人の任用区分を確認します。
国の第104条に関する説明を、そのまま全国の自治体の申請手順に置き換えないようにします。単発の講演・執筆の扱い、届出の有無、許可基準、対象職員等は所属の担当へ照会します。
具体例として千葉県は、2026年4月1日以後に開始する兼業について許可基準を見直し、職務上の専門性をいかした大学での講演や学術誌への執筆等を活動例として示しています。新たな活動区分も案内されていますが、許可された条件と活動の実態を照合する必要があります。
国の時間の目安も、地方の時間基準も、全公務員に一律の法定枠とは扱いません。複数の活動がある場合の合算、準備や移動の扱い、実績報告は本人の基準で確認します。時間管理の具体的な項目は許可を得た副業と勤務時間で整理しています。
原稿と勤務時間、職名の使い方も相談する
国の国家公務員法第100条、地方の地方公務員法第34条は守秘義務を定めています。外部の編集者や主催者から資料を求められても、非公開の案件や個人情報を渡す理由にはなりません。資料作成の段階から、公表済みの根拠と私的利用できる範囲を確認します。
勤務中の登壇や原稿作成は、国の第101条、地方の第35条の職務専念義務と関係します。業務命令による活動か私的活動か、勤務の扱い、休暇や職務専念義務免除等が必要かを確認します。年休を取れば兼業の承認が不要になるわけではありません。
主催者が職名や所属を広告に使う、録画を販売する、原稿を別の媒体へ転載するといった条件も事前に伝えます。本人が公的な立場で保証しているように見える表現がないか、所属と主催者双方へ確認します。
依頼を承諾するまでに、必要な申請の種類、提出先、添付資料、回答予定、受託条件を整理します。法令上の全国共通の日数を根拠なく作らず、所属の審査に必要な期間を確認して主催者へ返答します。
受領後の報告と条件変更を確認する
国の倫理法第6条と倫理規程第11条には、一定の職員が事業者等から受ける講演等の報酬について報告する規定があります。兼業許可、倫理上の承認、報告対象の関係は担当に確認し、単発だから報告も不要と判断しません。
報告の職員区分、内容、価額、受領日を確認します。税務上の申告と服務・倫理上の報告も別の手続きです。詳細は贈与等の報告の仕組みを参照してください。
一回の予定が連載になった、講座が追加された、報酬や契約相手が変わった場合は、変更後の活動を始める前に担当へ照会します。以前の承認や「申請不要」という回答は、そのとき確認した条件に基づくものです。
働き方の比較は無料相談の案内から相談できます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担)。兼業や倫理の許可判断は、所属の正式な担当へ確認します。
よくある質問
国の職員は単発の講演なら確認不要ですか
第104条の継続・定期の兼業に当たらない場合でも、倫理上の事前承認、勤務、情報の取扱い等の確認は別です。依頼内容を示して所属へ照会してください。
原稿料が少額なら許可は要りませんか
金額だけで判断しません。活動の実態、継続性、相手との関係、本人の適用区分を確認します。税務上の申告基準を兼業許可の基準へ流用しないようにします。
2026年の改正で地方職員も自由に自営できますか
国の自営兼業の見直しが、全国の地方職員へそのまま適用されるわけではありません。地方公務員法第38条と所属の現行基準で確認します。
相談の進め方はLINEの案内でも確認できます。依頼書の機密情報や非公開の原稿を送らず、まず公開可能な経歴と希望から整理してください。