制度とお金 / 休暇
介護休暇・介護時間
親の介護が始まる時期は、財政課で経験を積んで責任のある仕事を任される時期と重なることが多く、介護と仕事の両立が見えなくなって転職を考える方がいます。地元に戻るための転職、時間の融通が利く働き方への転職。どちらも、介護が転機になっています。
地方公務員には、介護休暇、介護時間、短期の介護休暇の3つの制度があり、共済の介護休業手当金が所得を支えます。制度の期間と回数を知ると、介護の始まりで慌てて辞める必要がないことが分かり、転職を考えるにしても、時期を選べます。
この記事では、3つの制度の仕組み、給与と手当金、民間の介護休業との違い、介護と転職の時期の考え方を整理します。自治体の制度は条例で定められ、多くが国の例に準じていますが、期間と回数は人事の担当課で確かめてください。
3つの制度を並べる(国の例)
| 制度 | 根拠 | 内容 | 給与 |
|---|---|---|---|
| 介護休暇 | 勤務時間法第20条 | 要介護者の介護のため、要介護者ごとに、介護を必要とする一の継続する状態ごとに、3回を超えず、通算して6月を超えない範囲内で指定する期間(指定期間)内に勤務しない | 勤務しない時間の分を減額(第3項)。共済の介護休業手当金の対象 |
| 介護時間 | 勤務時間法第20条の2 | 要介護者の介護のため、連続する3年の期間内に、1日につき2時間を超えない範囲で勤務しない | 勤務しない1時間につき減額(第3項) |
| 短期の介護休暇 | 特別休暇(人事院規則一五―一四第22条) | 要介護者の介護その他の世話のため、1年に5日(要介護者が2人以上なら10日) | 国の例では有給 |
「要介護者」は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母などで、負傷、疾病または老齢により一定の期間にわたり日常生活を営むのに支障がある者です(第20条第1項)。
介護休暇——第20条
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰のため | 要介護者(配偶者、父母、子、配偶者の父母、人事院規則で定める者) |
| 回数 | 要介護者ごと、介護を必要とする一の継続する状態ごとに、3回まで |
| 期間 | 通算して6月まで(指定期間) |
| 単位 | 日または時間(1日の一部) |
| 給与 | 勤務しない時間の分を減額 |
| 所得の補てん | 共済の介護休業手当金 |
介護休暇は無給ではなく減額で、休んだ分の給与が支給されません。その分を、共済の介護休業手当金が補います。3回に分けられるので、介護の始まりに1回、状態の変化に1回、看取りの時期に1回、といった使い方ができます。
介護時間——第20条の2
介護時間は、連続する3年の期間内で、1日につき2時間を超えない範囲で勤務しない制度です(介護休暇の指定期間と重複する期間を除く)。育児の部分休業と同じ形で、朝夕の1時間ずつ、または夕方の2時間を介護に充てる使い方ができます。給与は、勤務しない1時間につき減額です。
介護休暇(まとめて休む)と介護時間(毎日少しずつ)を、状態に応じて使い分けるのが、この2つの制度の設計です。
短期の介護休暇——特別休暇
人事院規則一五―一四第22条は、要介護者の介護その他の世話を行う職員が、その世話のため勤務しないことが相当である場合に、1年に5日(要介護者が2人以上なら10日)の特別休暇を定めています。通院の付添い、ケアマネジャーとの面談、施設の手続きなど、1日単位で要る用事に使います。国の例では有給で、自治体は条例で定めています。
共済の介護休業手当金——第70条の4
地方公務員等共済組合法第70条の4は、組合員が任命権者の承認を受けた介護休業(介護休暇)をした場合、勤務に服さなかった期間1日につき、標準報酬の日額を基礎とする額を介護休業手当金として支給すると定めています。支給の期間は、要介護者ごとに、介護を必要とする一の継続する状態ごとに、通算して66日を超えないとされています(第2項)。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 介護休暇(任命権者の承認を受けた介護休業)の期間 |
| 額 | 標準報酬の日額を基礎とする一定の割合(法律の本則と附則の特例があるので、率は共済組合で確かめる) |
| 期間 | 通算66日まで |
| 介護時間 | 対象外(介護休暇のみ) |
介護休暇の6月と、手当金の66日は別の期間です。6月の介護休暇を全部取っても、手当金が出るのは66日分で、残りは減額された給与のまま無収入の期間になります。介護休暇の期間と手当金の期間を並べて、資金の見込みを立ててください。
民間の介護休業との違い
| 項目 | 地方公務員(国の例) | 民間(育児・介護休業法の最低基準) |
|---|---|---|
| まとめて休む | 介護休暇:3回まで、通算6月 | 介護休業:3回まで、通算93日(第11条) |
| 所得 | 共済の介護休業手当金(通算66日) | 雇用保険の介護休業給付(通算93日) |
| 毎日少しずつ | 介護時間:3年の間、1日2時間まで | 所定労働時間の短縮等の措置(3年の間に2回以上利用可) |
| 短期の休暇 | 短期の介護休暇:年5日(2人以上10日) | 介護休暇:年5日(2人以上10日)(第16条の5) |
まとめて休める期間は、公務員のほうが長い(6月と93日)のが最大の違いです。転職先の制度が最低基準に近い場合、介護のためにまとめて休める期間が短くなります。転職先の就業規則で、介護休業の期間と、介護のための短時間勤務や在宅勤務の制度を確かめてください。
介護と転職の時期——考え方
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 介護が始まったばかり | 辞める前に、3つの制度で対応できないかを確かめる。介護休暇で状態を見極める時間を作る |
| 介護が長期になりそう | 介護時間で毎日の時間を確保しつつ、働き方を考える。転職するなら、転職先の介護の制度を先に確かめる |
| 地元に戻る必要がある | 転職先の介護の制度と、地元での勤務地の両方を条件にする。介護休暇で地元にいる期間に、介護の合間に転職活動を進める形もある |
| 看取りの時期 | 介護休暇の残りの回数を看取りに残しておく |
介護は、育児と違って先が見えません。制度の回数と期間を最初に使い切らず、状態の変化に合わせて残しておくことが、制度の設計の趣旨に沿った使い方です。
転職するとどうなるか
介護と転職を考えている方にとって、効いてくる点は3つです。
1. 辞める前に、3つの制度で対応できないかを確かめる
介護休暇は3回・6月、介護時間は3年・1日2時間、短期の介護休暇は年5日です。状態を見極める時間が作れます。
2. 転職先の介護休業は、最低基準で通算93日
公務員の6月より短いので、転職先の就業規則で期間と、短時間勤務・在宅勤務の制度を確かめてください。
3. 手当金は66日まで。介護休暇の6月とは別
資金の見込みは、手当金の期間で立ててください。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 介護が始まったら | 3つの制度の要件と期間を確かめる。要介護者の状態を示す書類を用意 | すぐ | 人事の担当課 |
| 短期の介護休暇 | 特別休暇の請求 | そのつど | 職場 |
| 介護時間 | 請求(期間、時間帯) | 使う前 | 任命権者 |
| 介護休暇 | 申出(指定期間の指定を受ける)。介護休業手当金の請求 | 使う前 | 任命権者、共済組合 |
| 転職を考えたら | 転職先の介護休業の期間、短時間勤務、在宅勤務、勤務地を確かめる | 内定の前 | 転職先 |
| 退職する場合 | 介護休暇の残りと手当金の扱いを確かめる。退職後は雇用保険がないので、介護休業給付は転職先での加入後 | 退職前 | 人事の担当課、共済組合 |
誤解されやすい点
「介護休暇は1回しか取れない」と思い込む
国の例で3回まで、通算6月です(第20条)。状態の変化に合わせて分けて使えます。
「介護休暇は無給」と思い込む
勤務しない時間の分を減額で、共済の介護休業手当金(通算66日)が補います。
「民間のほうが介護の制度が充実している」と思い込む
まとめて休める期間は、公務員の6月に対し、民間の最低基準は93日です。転職先の就業規則で確かめてください。
「介護が始まったらすぐ辞めるしかない」と思い込む
制度で状態を見極める時間が作れます。残しながら判断してください。
まとめ
- 地方公務員の介護の制度は、介護休暇(国の例で3回まで・通算6月、勤務時間法第20条)、介護時間(連続する3年の間に1日2時間まで、第20条の2)、短期の介護休暇(年5日、2人以上10日、人事院規則一五―一四第22条)の3つで、自治体は条例で定めています
- 介護休暇と介護時間は勤務しない分を減額で、介護休暇には共済の介護休業手当金(通算66日まで、標準報酬の日額を基礎とする額)があります(地方公務員等共済組合法第70条の4)
- 介護休暇の6月と手当金の66日は別の期間です。資金の見込みは手当金の期間で立ててください
- 民間の介護休業は最低基準で3回まで・通算93日(育児・介護休業法第11条)で、公務員の6月より短いです。転職先の就業規則で期間と短時間勤務・在宅勤務の制度を確かめてください
- 介護は先が見えないので、制度の回数と期間を最初に使い切らず、状態の変化に合わせて残しておくのが設計の趣旨に沿った使い方です
- 辞める前に3つの制度で対応できないかを確かめると、転職を考えるにしても時期を選べます
よくある質問
親が倒れました。まず何を使えばよいですか
まず短期の介護休暇(年5日)で、入院の手続きや医師の説明、ケアマネジャーとの面談に対応し、状態が見えてきたら介護時間か介護休暇を選びます。倒れた直後は、状態が定まらず、退院後の介護の形も見えません。この時期に介護休暇の指定期間を長く取ると、後で状態が変わったときに残りの回数が減ります。短期の介護休暇は1日単位で使え、国の例では有給なので、最初の対応に向いています。年次有給休暇も併用できます。退院の見込みと介護の形が見えたら、毎日少しずつ時間が要るなら介護時間(3年の間に1日2時間まで)、まとまった期間が要るなら介護休暇(3回まで・通算6月)を、人事の担当課に相談して請求してください。介護休暇を使う場合は、共済組合に介護休業手当金(通算66日まで)の請求をします。要介護者の状態を示す書類(診断書、要介護認定の通知など)が求められることが多いので、早めに用意してください。この段階で退職を考える必要はありません。制度で状態を見極める時間を作ってから、働き方を考えれば足ります。
地元に戻って親の介護をしながら働きたいです。転職の時期はどう考えればよいですか
介護の状態が見えてから、転職先の介護の制度と勤務地を条件にして、時期を選んでください。地元に戻る転職は、勤務地と介護の制度の両方が条件になります。転職先の介護休業は最低基準で通算93日、公務員の6月より短いので、転職先の就業規則で介護休業の期間、短時間勤務や在宅勤務の制度、勤務地を確かめます。転職活動の時期は、介護休暇で地元にいる期間に介護の合間で進める形が現実的で、介護休暇は介護のための制度なので、面接は介護に支障のない日程で組みます。転職先の内定が出たら、入社日を退職日の翌日にして健康保険と年金の空白を作らず、退職までに介護休暇の残りと手当金の扱いを人事の担当課と共済組合で確かめてください。退職後は雇用保険の被保険者になるまで介護休業給付は受けられず、転職先での介護休業も入社直後は労使協定で除外されることがあるので、転職の直後に介護休業が要る見込みなら、転職の時期をずらすか、転職先に事前に伝えて条件を確かめるのが安全です。
介護休暇を取ると、退職手当や昇給に影響しますか
介護休暇は休職ではなく休暇なので、退職手当の在職期間の除算の対象にはならないのが国の例です。昇給と期末手当・勤勉手当は条例によります。国家公務員退職手当法第7条第4項の除算は、休職・停職とそれに準ずる事由により現実に職務をとることを要しない期間のある月が対象で、介護休暇は勤務時間法上の休暇として、これに当たらない扱いが一般的です。ただし、自治体の退職手当条例で介護休暇の期間の扱いをどう定めているかは、人事の担当課で確かめてください。昇給は、多くの自治体で勤務成績と勤務した期間に基づいて判定され、介護休暇の期間が長いと昇給の号数に影響することがあります。期末手当・勤勉手当も、在職期間や勤務した期間に応じた支給の割合が条例で定められています。介護休暇を取ったことを理由とする不利益な取扱いは許されませんが、勤務しなかった期間に応じた給与・手当の減額は不利益取扱いではなく、制度の定める計算です。転職を考えている方は、介護休暇の期間中の給与の減額、手当金、期末手当・勤勉手当への影響を合わせて、資金の見込みを立ててください。