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制度とお金 / 休暇

メンタル不調で休んだ経歴の扱い

財政課の繁忙期に体調を崩し、メンタル不調で休職し、復職して、それから転職を考える——この経緯を持つ方が、面談で最初に聞くのは「休職の経歴は転職で不利になりますか」「申告しなければなりませんか」の2つです。

結論から書くと、休職の経歴を転職先に必ず申告する義務は、法律上はありません。病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報で、求人者が本人の同意なく取得することは原則として禁じられ、職業安定法も求人者による個人情報の収集を業務の目的の達成に必要な範囲に限っています。一方で、入社後の業務に支障がある事情を隠して入社することは、双方にとって不利益で、線引きが要ります。

この記事では、休職の経歴に関する法律の線、申告の要否の考え方、履歴書と面接での説明の仕方、復職の実績の示し方を整理します。復職の仕組みは休職からの復職と、そのあとの選択に、休職の制度は病気休暇と病気休職に書いています。

法律の線——病歴は要配慮個人情報

規定内容転職での意味
個人情報保護法第2条第3項病歴は、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないように取扱いに配慮を要する要配慮個人情報休職の原因である病気は要配慮個人情報
個人情報保護法第20条第2項個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない転職先は、本人の同意なく病歴を取得できない
職業安定法第5条の5求人者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして求職者の個人情報を収集し、その範囲内で保管・使用しなければならない転職先が病歴を収集できるのは、業務の目的の達成に必要な範囲に限られる

転職先は、本人の同意なく病歴を集めることができず、集められるのは業務の目的に必要な範囲です。休職の経歴を、応募者が自ら申告する義務を定めた法律はありません。

申告の要否——3つの考え方

考え方内容
法律上の申告の義務はない休職の経歴を自発的に申告する義務を定めた法律はない。履歴書の職歴に「休職」を書く義務もない
聞かれた場合に虚偽を述べるのは別面接で健康状態を聞かれて「問題ない」と虚偽を述べ、入社後に業務に支障が出た場合、経歴詐称や信義則の問題になり得る。聞かれたら、事実を、必要な範囲で
業務に支障がある場合は、伝えるのが双方のため入社後の勤務に影響する事情(通院、業務の負荷の制限)があるなら、伝えたうえで条件を確かめる。隠して入社し、入社後に支障が出るほうが、本人にも転職先にも不利益

「申告しなくてよい」と「隠してよい」は違います。聞かれなければ言わなくてよく、聞かれたら事実を必要な範囲で述べ、業務に支障がある事情は自分から伝える。この3つが、法律の線と実務の線の両方に沿った形です。

履歴書・職務経歴書での扱い

項目扱い
職歴自治体の在職期間を書く。休職の期間を分けて書く義務はない
休職の期間の空白在職中なので、職歴に空白は生じない。転職先から見ても、在職期間の中に休職があったことは分からない
健康状態の欄「良好」と書くかどうかは、現在の状態で判断する。復職して安定して勤務しているなら「良好」で虚偽ではない
退職の理由「一身上の都合」で足りる。休職を理由に書く必要はない

公務員の休職は在職中の出来事で、職歴の空白にはなりません。民間の退職と再就職の間の空白とは、ここが違います。

面接で聞かれた場合の答え方

質問答え方の考え方
「健康状態に問題はありませんか」現在の状態で答える。復職して安定していれば「問題ありません」。通院が続いていて業務に影響し得るなら「通院していますが、業務に支障はありません」など、必要な範囲で事実を
「休職の経験はありますか」聞かれたら事実を述べる。「体調を崩して○か月休職し、復職して○か月勤務しています」と、休職と復職の両方を、期間と事実で。原因の詳細まで述べる義務はない
「前職を辞める理由は」休職を理由にする必要はない。転職先で何をしたいかを軸に
聞かれない場合自分から述べる義務はない。業務に支障がある事情がある場合だけ、自分から伝える

「復職して○か月勤務している」という事実が、最も確かな回復の証明です。休職の経歴を聞かれたら、休職だけでなく復職と勤務の実績を必ず添えてください。

転職先の選び方——同じ原因を避ける

点内容
休職の原因を整理する業務量、人間関係、業務の性質(責任の重さ、他律性)、勤務時間のどれが主な原因だったか
転職先に同じ原因がないかを確かめる業務量なら36協定と繁忙期の実績、人間関係なら配属部署の体制、業務の性質なら職務の内容と裁量
回復の程度と転職の時期復職後の一定の期間の安定した勤務の後に活動を始める。主治医の判断を優先
転職支援の担当者への相談休職の経歴を担当者に伝えておくと、転職先の選定と、聞かれた場合の答え方を一緒に組み立てられる。担当者は守秘の義務を負う

同じ原因の転職先に移れば、再発の可能性があります。休職の経歴の扱いより、転職先の選び方のほうが、転職後の安定には効きます。

転職するとどうなるか

休職の経歴がある方にとって、効いてくる点は3つです。

1. 申告の義務はない。聞かれたら事実を必要な範囲で

病歴は要配慮個人情報で、転職先は本人の同意なく取得できません。履歴書に休職を分けて書く義務もありません。

2. 業務に支障がある事情は、自分から伝える

隠して入社し、入社後に支障が出るほうが、本人にも転職先にも不利益です。

3. 復職と勤務の実績を、休職の事実と対で示す

「復職して○か月勤務している」が回復の証明です。休職だけを話さないでください。

手続きと期限

順序すること時期
転職を考えたら主治医に、転職活動と転職先での勤務に耐えられるかを相談最初に
同時に休職の原因を整理し、転職先に同じ原因がないかを確かめる基準を作る最初に
履歴書・職務経歴書在職期間を書く。休職を分けて書かない。健康状態は現在の状態で応募のとき
面接の前「聞かれなければ言わない、聞かれたら事実を必要な範囲で、支障がある事情は自分から」を決める面接の前
面接聞かれたら、休職と復職・勤務の実績を対で述べる面接
内定の段階業務に支障がある事情があれば伝え、条件(通院の配慮、業務の負荷)を確かめる内定後
入社時雇入時の健康診断がある場合、事実を記入する入社時

誤解されやすい点

「休職の経歴は必ず申告しなければならない」と思い込む

法律上の申告の義務はありません。病歴は要配慮個人情報で、転職先は本人の同意なく取得できません。

「履歴書に休職の期間を書かないと経歴詐称になる」と思い込む

休職は在職中の出来事で、職歴に分けて書く義務はありません。在職期間を書けば事実です。

「聞かれても隠してよい」と思い込む

聞かれて虚偽を述べることは、経歴詐称や信義則の問題になり得ます。事実を必要な範囲で述べてください。

「休職の経歴があると転職できない」と思い込む

復職して勤務している事実が回復の証明です。事実で説明すれば、一般的な事情として理解されます。

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まとめ

よくある質問

履歴書の職歴に、休職していた期間を書かなければなりませんか

書く義務はありません。在職期間を書けば事実で、休職は在職中の出来事です。休職は職員の身分を保有したまま職務に従事しない状態で、退職ではないので、職歴は「○年○月 ○○市役所入庁、○年○月 退職」で足ります。休職の期間を分けて書かなくても、経歴詐称にはなりません。健康状態の欄がある場合は、現在の状態で記入し、復職して安定して勤務しているなら「良好」で虚偽ではありません。通院が続いていて業務に影響し得る場合は、「通院中だが業務に支障なし」のように必要な範囲で事実を書くか、面接で伝える形にします。病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報で、転職先は本人の同意なく取得できず、職業安定法第5条の5により収集は業務の目的の達成に必要な範囲に限られるので、応募者の側から進んで詳細を書く必要はありません。転職支援のサービスを使っている場合は、担当者に休職の経歴を伝えておくと、応募書類の書き方と、面接で聞かれた場合の答え方を一緒に組み立てられます。

面接で「休職したことはありますか」と聞かれました。正直に答えると不採用になりませんか

事実を、休職と復職・勤務の実績を対で、必要な範囲で述べてください。虚偽を述べるほうが、後の不利益が大きいです。聞かれた場合に「ありません」と虚偽を述べ、入社後に業務に支障が出て休職の経歴が分かれば、経歴詐称や信義則の問題になり得ます。答え方は、「体調を崩して○か月休職し、復職して○か月、財政課で通常の業務に従事しています」のように、休職の事実と復職の実績を対で、期間と事実で述べる形です。原因の詳細(診断名など)まで述べる義務はなく、聞かれた範囲で足ります。転職先が休職の経歴を理由に不採用にするかどうかは転職先の判断ですが、復職して安定して勤務している事実は回復の証明として受け取られ、休職の経歴だけで不採用になることは、財政・会計の経験が評価される転職先では多くありません。仮に休職の経歴だけで不採用にする転職先なら、入社後に体調を崩した場合の対応も同じ姿勢である可能性が高く、入社しないほうが結果として安全です。

通院が続いています。転職先に伝えるべきですか

入社後の勤務に影響する事情(通院の頻度、業務の負荷の制限)があるなら、内定の段階で伝え、条件を確かめるのが双方のためです。法律上、通院の事実を申告する義務はなく、病歴は要配慮個人情報です。ただし、通院のために月に何日か休む必要がある、主治医から業務の負荷や勤務時間に制限の意見が出ている、といった事情を隠して入社し、入社後に支障が出れば、本人の体調と転職先の信頼の両方を損ないます。内定の段階で「通院が続いているので、月に○日、半日の休暇が必要になる。業務に支障はないが、配慮をお願いしたい」のように、必要な範囲で伝え、転職先の対応(休暇の取りやすさ、業務の調整)を確かめてください。転職先がこの事情を受け入れられないなら、入社後の勤務も難しい可能性が高く、内定の段階で分かるほうが双方にとって損失が小さいです。伝える時期は、面接の段階ではなく、内定が出て条件を確かめる段階が適切で、転職支援の担当者を通じて伝えると、直接より楽です。主治医の意見書があれば、転職先が対応を判断しやすくなります。

出典

  1. 個人情報の保護に関する法律 第2条第3項(要配慮個人情報)/第20条第2項(要配慮個人情報の取得)|e-Gov法令検索
  2. 職業安定法 第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)|e-Gov法令検索
  3. 地方公務員法 第28条(降任、免職、休職等)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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