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昇格と昇給の違い|級が上がるとき
「昇給」と「昇格」は、庁内では当たり前に使い分けられていますが、外から見ると違いが分かりにくい言葉です。さらに人事の場面では「昇任」という言葉も出てきます。3つは似ていますが、指しているものが違います。
昇給は、同じ級の中で号給が進むこと。昇格は、給料表の級が上がること。昇任は、係長や課長補佐のように、より上の職に任命されることです。昇給は毎年の勤務成績で動き、昇格は職務と勤務成績で動きます。
この記事では、3つの言葉の違い、昇格の条件、昇格したときの号給の決まり方、転職を考えるときの見方を、地方公務員法と国の人事院規則で整理します。級の数や昇格の基準、昇任試験の有無は自治体ごとに違うので、自分の扱いは給与条例・規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
昇給・昇格・昇任の違い
| 言葉 | 何が変わるか | 根拠の考え方 |
|---|---|---|
| 昇給 | 同じ級の中で号給が進む | 勤務成績に応じて毎年など定期に行う。昇給の基準は給与条例で定める(地方公務員法第25条第3項第3号) |
| 昇格 | 給料表の級が上がる | 職務の複雑、困難及び責任の度に応じて級を決める(第25条第4項・第5項、等級別基準職務表) |
| 昇任 | 職が上の段階に変わる(主事→主任→係長など) | 「職員をその職員が現に任命されている職より上位の職制上の段階に属する職員の職に任命すること」(第15条の2第1項第2号) |
昇任は任用の言葉、昇格と昇給は給与の言葉です。係長に昇任すれば、係長の職に当たる級へ昇格するのが通常の流れで、多くの場合は同時に起きます。ただし、国の規則では昇任していなくても、一定の評価が続けば昇格できる道もあります(後述)。
昇任は「能力の実証」で決まる——地方公務員法第21条の3・第21条の4
地方公務員法第21条の3は、昇任を、任命権者が受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づき、その職の段階の標準職務遂行能力と適性を有すると認められる者の中から行うと定めています。
第21条の4は、人事委員会規則で定める職(人事委員会を置かない自治体では任命権者が定める職)に昇任させる場合には、昇任試験または選考を行わなければならないとしています。係長試験や管理職試験を設けている自治体もあれば、選考で決める自治体もあります。
級は等級別基準職務表で決まる
どの職がどの級に当たるかは、給与条例の等級別基準職務表に書かれています(第25条第3項第2号・第5項)。国では、行政職俸給表(一)の標準職務表で、1級は定型的な業務、2級は主任、3級は係長、5級は本省の課長補佐、などと示されています(人事院規則9-8別表第一)。
国の給与法は、職務の級を級ごとの定数の範囲内で、人事院規則の基準に従って決定するとしています(第8条第3項)。上の級に上げられる人数には枠がある、ということです。地方でも、職員の数は等級と職の段階ごとに毎年まとめて公表することになっています(地方公務員法第58条の3)。
昇格の条件——人事院規則9-8第20条
国の昇格の基準は、人事院規則9-8第20条に書かれています。
| 項・号 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 昇格させる場合には、その職務に応じ、かつ、勤務成績に従い、級を決定する。行政職俸給表(一)7級以上などは人事院が定める要件も満たす |
| 第2項第1号 | 昇格させる日に昇任したこと |
| 第2項第2号 | 第1号に準ずるものとして人事院の定める要件 |
| 第2項第3号 | 昇格させる日以前2年間、今の級の職務に従事し、直近の連続した2回の能力評価と4回の業績評価のうち2つが「優良」以上、他が「良好」以上で、上の級の職務を遂行できると認められること(行政職俸給表(一)の2級・3級への昇格などは人事院の定める要件) |
| 第2項第4号 | 昇格させる日以前1年以内に懲戒処分を受けていないこと、処分相当の行為をしていないこと |
第1号〜第3号のいずれかと、第4号を満たす必要があります。昇任と同時の昇格が基本で、昇任がなくても評価が続けば昇格の道がある、という作りです。
また、学歴免許等の上位の資格を取得したなどの場合には、その資格に応じた級に昇格させることができる、という規定もあります(第21条)。
昇格したときの号給——人事院規則9-8第23条
昇格すると、号給も決め直されます。国では、昇格した日の前日に受けていた号俸に対応する「昇格時号俸対応表」(別表第七)の号俸に決まります(第23条第1項)。2級以上一度に上がる場合は、1級ずつ順に昇格したものとして扱います(同条第2項)。
ポイントは2つです。
- 昇格後の号給は、本人の希望や交渉ではなく、表で機械的に決まる
- 昇格した級にも最高の号給があり、そこから再び昇給で号給が進む
昇給がその級の最高号給で止まる(給与法第8条第9項)ことを考えると、長い目で給料月額を伸ばすのは昇格です。
転職するとどうなるか
1. 級と職の段階は、応募書類では「職」で書く
民間の採用担当には「4級」と書いても伝わりません。「係長として◯名の係を統括」「課長補佐として課の予算と議会対応を担当」のように、職と担っていた範囲で書きます。昇任試験に合格した経験は、選考を通った事実として書けます。
2. 昇格の直後に辞める判断
昇格すると給料月額が上がり、退職手当の基礎になる給料月額も変わります。退職手当の計算は基本額の計算の考え方を参照してください。昇格の内示が出ている時期の退職は、見込みを人事担当課で確かめてから判断します。
3. 民間の「昇格」は会社ごとに違う
民間では、等級(グレード)が上がることを昇格と呼ぶ会社がありますが、要件、時期、給与への効き方は会社ごとに違います。内定の段階で、入社時の等級と、次の等級に上がる条件を確かめてください。
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誤解されやすい点
「昇格と昇給は同じ」と思い込む
昇給は同じ級の中で号給が進むこと、昇格は級が上がることです。昇格は職務と勤務成績で決まり、毎年起きるものではありません。
「昇格と昇任は同じ」と思い込む
昇任は職が上がる任用、昇格は給料表の級が上がることです。多くは同時ですが、国の規則では昇任なしの昇格の道もあります(人事院規則9-8第20条第2項第3号)。
「昇格すれば号給は1号給から」と思い込む
国では、昇格前の号給に対応する昇格時号俸対応表で決まります(第23条第1項)。
「年数がたてば自動的に昇格する」と思い込む
級ごとの定数の範囲内で、職務と勤務成績にもとづいて決まります(給与法第8条第3項、人事院規則9-8第20条)。
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まとめ
- 昇給は号給が進むこと、昇格は級が上がること、昇任は上の職に任命されること(地方公務員法第15条の2第1項第2号)
- 昇任は受験成績・人事評価などの能力の実証に基づき(第21条の3)、条例・規則で定める職には昇任試験または選考を行う(第21条の4)
- どの職がどの級に当たるかは等級別基準職務表で決まる(第25条)。国では級ごとの定数の範囲内で級を決める(給与法第8条第3項)
- 国の昇格は、昇任したこと、または2年間の評価が一定以上などの要件と、1年以内に懲戒処分がないことが条件(人事院規則9-8第20条)
- 昇格後の号給は昇格時号俸対応表で決まる(第23条)。級の最高号給で止まった昇給は、昇格で再び進む
- 応募書類では級ではなく職と担当範囲で書く。昇格の前後で辞めるかは、見込みを確かめてから判断する
よくある質問
昇任試験に受からないと、ずっと同じ級のままですか
自治体の規則によりますが、国の規則では昇任がなくても、評価が続けば昇格できる道があります。人事院規則9-8第20条第2項第3号は、昇格させる日以前2年間に今の級の職務に従事し、直近の能力評価2回と業績評価4回の評語が一定以上で、上の級の職務を遂行できると認められる職員を、昇格の要件の1つとしています。自治体では、昇任試験の合格を係長への昇任の前提にしているところもあれば、選考で昇任させるところもあり、昇任と昇格の関係も規則で違います。自分の自治体で、昇任しない場合に昇格の道があるか、どの級まで上がりうるかは、人事担当課や給与規則で確かめてください。
昇格したのに、給料月額があまり上がらないのはなぜですか
昇格後の号給は昇格時号俸対応表で決まり、級の幅が隣の級とつながっているためです。国では、昇格した日の前日の号俸に対応する号俸に決まります(人事院規則9-8第23条第1項)。給料表は級ごとに給料額の幅を持たせた表なので、下の級の上のほうと、上の級の下のほうの額が近いことがあり、昇格直後の差は大きくないことがあります。そのかわり、上の級には昇給の余地が新しく生まれ、最高号給も高くなります。昇格の効果は、直後の差額ではなく、その後の数年の昇給と合わせて見てください。自治体の対応表と額は、給与規則と給料表で確かめられます。
民間に転職したら、公務員の級はどう評価されますか
級そのものではなく、その級で担っていた職務の中身が評価されます。民間の採用担当は給料表の級から職責を読み取れないため、応募書類や面接では職と担当範囲、決めたこと、動かした人数や予算の規模で説明するのが一般的です。級を書くなら「係長級(行政職給料表◯級)」のように職と並べると誤解が生まれにくくなります。昇任試験に合格した、上位の職の業務を代行した、といった事実も、選考で評価された経験として書けます。民間の等級は会社ごとに作られているので、入社時の等級は経験の中身と面接の評価で決まります。どの経験がどの等級に当たりそうかは、求人票の要件と照らし合わせて整理してください。