制度とお金 / 給与・手当
扶養手当の仕組み|対象と手続き
子どもが生まれた、親と同居して生活を支えるようになった。家族の状況が変わると、給与明細の「扶養手当」の欄も変わることがあります。ただ、届け出ないと手当は付かず、届け出が遅れると、その分の手当を受けられないことがあります。
扶養手当は、他に生計の途がなく、主として職員の扶養を受けている家族がいる職員に支給する手当です。国では、対象になる家族の範囲、1人あたりの月額、所得の基準、届出と支給の始期が、法律と人事院規則に書かれています。この記事では、扶養手当の条文、対象になる家族、2024年の見直し、届出の期限、転職との関係を整理します。
地方公務員の扶養手当は、各自治体が条例で対象と額を定めます。この記事では特定の自治体の額を示しません。国の額は法律の条文で確かめたものだけを書いています。自分の扱いは、所属の給与条例と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
扶養手当の根拠——地方自治法第204条と給与条例
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当の1つに扶養手当を挙げ、第3項で手当の額と支給方法を条例で定めるとしています。自治体の給与条例では、一般に次のようなことが定められています。
| 定めること | 内容 |
|---|---|
| 扶養親族の範囲 | どの続柄の、どの年齢の家族を対象にするか |
| 扶養の基準 | 主として職員の扶養を受けているとみなす所得の目安など |
| 月額 | 扶養親族1人あたりの額、加算の有無 |
| 届出と支給の始期・終期 | いつまでに届け出れば、いつから支給するか |
国の扶養手当——給与法第11条
国家公務員の扶養手当は、給与法第11条に定められています。多くの自治体の制度はこれを参考にしているので、国の形を知っておくと自分の条例も読みやすくなります。
第2項は、他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているもののうち、次の者を扶養親族としています。
| 号 | 扶養親族 |
|---|---|
| 第1号 | 満22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子 |
| 第2号 | 同じく満22歳年度末までの間にある孫 |
| 第3号 | 満60歳以上の父母と祖父母 |
| 第4号 | 同じく満22歳年度末までの間にある弟妹 |
| 第5号 | 重度心身障害者 |
第3項と第4項は、月額を次のように定めています。
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 扶養親族たる子 | 1人につき13,000円 |
| 扶養親族たる父母等(第2号〜第5号) | 1人につき6,500円(行政職俸給表(一)8級の職員などは3,500円) |
| 満15歳に達する日後の最初の4月1日から満22歳年度末までの子がいる場合 | 該当する子1人につき5,000円を加算 |
また第1項ただし書は、扶養親族たる父母等に係る扶養手当を、行政職俸給表(一)の9級以上の職員などには支給しないとしています。役職の高い職員ほど、子以外の家族に係る手当が小さくなる、または支給されない仕組みです。
配偶者は対象から外れた——令和6年の見直し
人事院の令和6年の勧告・報告の概要では、給与制度のアップデートの1つとして、配偶者に係る扶養手当を廃止し、子に係る手当を増額することが示されています。
いまの給与法第11条第2項の扶養親族の列挙には、配偶者が入っていません。子、孫、父母・祖父母、弟妹、重度心身障害者の5つです。以前、配偶者に係る扶養手当を受けていた方は、明細の扶養手当の額が見直しの前後で変わっていることがあります。
自治体がこの見直しをどう取り入れるかは、条例改正によります。国と同じ内容・同じ時期で改正した自治体もあれば、段階的に移行している自治体、内容が違う自治体もあると考えられます。自分の自治体で配偶者が対象かどうかは、条例と人事担当課で確かめてください。
「主として扶養を受けている」の基準——人事院規則9-80第2条
給与法の「他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けている」がどういう状態かは、人事院規則9-80第2条が補っています。次の者は扶養親族に含まれないとされています。
| 号 | 含まれない者 |
|---|---|
| 第1号 | 職員の配偶者や兄弟姉妹等が受ける扶養手当、または民間事業所などの同様の手当の支給の基礎になっている者 |
| 第2号 | 年額130万円以上の恒常的な所得があると見込まれる者(満18歳に達する日後の最初の4月1日から満22歳年度末までの者は年額150万円以上) |
ポイントは2つです。1つは、同じ家族について二重に手当を受けられないこと。共働きで、配偶者の勤務先からすでに子の家族手当が出ている場合、その子は職員の扶養親族になりません。もう1つは、所得の基準が「恒常的な所得の年間の見込額」で見られることです。過去の実績だけでなく、これからの見込みで判断されます。
この所得の基準は、税の扶養控除や、共済組合の被扶養者の基準とは別のものです。同じ「扶養」という言葉でも、制度ごとに基準と手続きが違います。税の扱いは税務署、共済の被扶養者は所属の共済組合で確かめてください。
手続きと期限——届出から15日
国では、扶養手当の手続きが人事院規則9-80第3条から第5条に定められています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 届出(第3条第1項) | 新たに扶養親族ができたときは、扶養親族届で速やかに届け出る。扶養親族の所得の見込額などに変更があったときも同じ |
| 認定(第4条) | 届出を受けて、その事実と扶養手当の月額を認定する。必要なら扶養の事実を証明する書類の提出を求める |
| 支給の始期(第5条第1項) | 要件を満たした日の属する月の翌月から(その日が月の初日なら、その月から) |
| 届出が遅れたとき(同項ただし書) | 事実が生じた日から15日を経過した後に届け出たときは、届出を受理した日の属する月の翌月から |
| 支給の終期(同項) | 要件を欠くに至った日の属する月まで |
| 額の改定(第5条第2項) | 月額を変更すべき事実が生じた日の属する月の翌月から。増額の場合は、15日の規定が準用される |
いちばん気をつけたいのは15日の期限です。子が生まれてから16日目以降に届け出ると、支給の始まりが届出の受理日を基準にずれ、その間の手当は受けられません。反対に、家族が就職して所得の見込みが基準を超えたときなどは、届け出ないまま受け続けると、後から返納を求められることがあります。
扶養手当は、俸給の支給方法に準じて支給されます(人事院規則9-7第8条)。自治体の届出の期限と様式は、規則や人事担当課の案内で確かめてください。
扶養手当が連動するもの
扶養手当は、ほかの給与の計算にも入ります。国では、地域手当の月額は俸給と扶養手当などの合計に割合を掛けて計算し(給与法第11条の3第2項)、期末手当の基礎額にも扶養手当とこれに対する地域手当が含まれます(第19条の4)。扶養手当が増えると、地域手当と期末手当もわずかに増えます。給料と手当の関係は給料表の読み方にもまとめています。
転職するとどうなるか
1. 民間の家族手当は会社ごとに違う
民間企業の家族手当は、法律で決まったものではなく、会社の賃金規程で決まります。置いていない会社もあれば、配偶者を対象にしている会社、子だけを対象にしている会社もあります。内定の段階で、家族手当の有無、対象、額を確かめると、月々の差が見えます。
2. 共働きなら、どちらで受けるかを決め直す
人事院規則9-80第2条第1号のとおり、同じ家族について両方の勤務先から手当を受けることはできません。転職で勤務先が変わるときは、子の家族手当をどちらで受けるかを夫婦で決め直す必要が出てきます。
3. 税や社会保険の扶養も手続きし直す
扶養手当とは別に、転職先では年末調整のための扶養控除等の申告や、健康保険の被扶養者の届出をします。共済組合の被扶養者だった家族は、転職先の健康保険で改めて認定を受けます。手続きの流れは家族の扶養に入る場合や年末調整は誰がやるかも合わせてご覧ください。
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誤解されやすい点
「税の扶養に入っていれば扶養手当も付く」と思い込む
扶養手当の所得の基準は、国では人事院規則9-80第2条で定められていて、税の扶養控除や共済の被扶養者の基準とは別です。どれか1つに入っていても、ほかが自動的に決まるわけではありません。
「届け出ればさかのぼって支給される」と思い込む
国では、事実が生じた日から15日を経過した後の届出は、届出を受理した日の属する月の翌月から支給が始まります(人事院規則9-80第5条第1項ただし書)。
「配偶者にも必ず付く」と思い込む
国の現行の給与法第11条では、配偶者は扶養親族に入っていません。自治体の扱いは条例で確かめてください。
「家族の所得は前年の実績で見る」と思い込む
国の基準は、恒常的な所得の年間の見込額です(人事院規則9-80第2条第2号)。家族の働き方が変わったら、その時点で見込みを考え直します。
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まとめ
- 扶養手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当の1つ。対象と額は自治体の条例で決まる
- 国では、他に生計の途がなく主として職員の扶養を受けている子・孫・60歳以上の父母祖父母・弟妹・重度心身障害者が扶養親族(給与法第11条第2項)
- 国の月額は、子1人13,000円、父母等1人6,500円。15歳年度始めから22歳年度末の子には5,000円の加算(第11条第3項・第4項)
- 令和6年の勧告を受けた見直しで、配偶者に係る手当は廃止、子に係る手当は増額。自治体の扱いは条例で確かめる
- 年額130万円以上(18〜22歳年度末は150万円以上)の恒常的な所得の見込みがある者や、他の手当の基礎になっている者は含まれない(人事院規則9-80第2条)
- 事実が生じてから15日を過ぎて届け出ると、支給の始まりが届出の受理日の翌月にずれる(同規則第5条)
よくある質問
子どもが生まれたら、いつまでに何をすればよいですか
国の場合、事実が生じた日から15日以内に扶養親族届を出すのが目安です。人事院規則9-80第3条は、新たに扶養親族ができたときは速やかに届け出るとし、第5条第1項ただし書は、15日を経過した後の届出は受理した日の属する月の翌月から支給を始めるとしています。15日以内なら、生まれた日の属する月の翌月から支給されます。届出には、続柄や生年月日が分かる書類の提出を求められることがあります。自治体では届出の期限と様式が規則で定められているので、出産の予定が分かった段階で人事担当課に確かめておくと安心です。共済組合の被扶養者の届出や、税の扶養の申告は別の手続きなので、あわせて確認してください。
配偶者がパートで働いている場合、子の扶養手当はどちらで受けますか
国では、同じ子について二重に手当を受けることはできません。人事院規則9-80第2条第1号は、職員の配偶者などが受ける扶養手当や、民間事業所の同様の手当の支給の基礎になっている者は扶養親族に含まれないとしています。配偶者の勤務先に子の家族手当がない場合や、受けていない場合は、職員の側で扶養手当を受けられることがあります。どちらで受けるかは夫婦の勤務先の制度と、子を主として扶養しているのはどちらかによって変わります。配偶者が転職したり、勤務先の手当の制度が変わったりしたときも、届出が必要になることがあります。迷うときは、配偶者の勤務先の規程を確かめたうえで、人事担当課に相談してください。
退職した月の扶養手当はどうなりますか
国では、要件を欠くに至った日の属する月までが支給の終期とされています。人事院規則9-80第5条第1項は、扶養手当の支給は職員が要件を欠くに至った日の属する月で終わると定めています。退職すれば職員ではなくなるので、退職月までが一般的な扱いですが、月の途中で退職したときの日割りの有無は、条例と規則で確かめてください。転職先に家族手当があるときは、転職先の規程にしたがって改めて申請します。共済組合の被扶養者だった家族は、転職先の健康保険で被扶養者の手続きをする必要があります。手続きの漏れがないよう、退職前に人事担当課と共済組合で確かめておくと確実です。