制度とお金 / 退職手当
調整額とは何か
退職手当の記事を読むと、必ず「基本額と調整額の2階建て」と書いてあります。基本額の説明はどこにでもあるのに、調整額のほうは「職の区分に応じて加算される額」で終わっていることがほとんどです。
ところが、転職を考えている方にとって、調整額は無視できません。理由は2つあります。自己都合退職だと、勤続年数によって調整額が半分になるか、ゼロになること。そして、役職に就いていた期間が長い方ほど、調整額の比重が大きいことです。
この記事では、調整額がどう計算されるのかを、国家公務員退職手当法第6条の4の条文で整理します。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条)が、条例は国の法律に沿った構成を採るのが一般的で、調整額の仕組みを持つ自治体も多くあります。基本額の側は基本額の計算の考え方で扱っています。
調整額は「在職した各月」に区分ごとの額を付けて積み上げる
第6条の4第1項の骨は、こうです。
> 退職した者に対する退職手当の調整額は、その者の基礎在職期間(中略)の初日の属する月からその者の基礎在職期間の末日の属する月までの各月(中略)ごとに当該各月にその者が属していた次の各号に掲げる職員の区分に応じて当該各号に定める額(以下この項及び第五項において「調整月額」という。)のうちその額が最も多いものから順次その順位を付し、その第一順位から第六十順位までの調整月額(当該各月の月数が六十月に満たない場合には、(後略)
3つの要素でできています。
1. 在職した各月に「調整月額」が付く
在職期間の各月について、その月に自分がどの職員の区分にいたかで、額が決まります。
2. 区分ごとの額は、法律に列挙されている
| 区分 | 調整月額 |
|---|---|
| 第1号区分 | 95,400円 |
| 第2号区分 | 78,750円 |
| 第3号区分 | 70,400円 |
| 第4号区分 | 65,000円 |
| 第5号区分 | 59,550円 |
| 第6号区分 | 54,150円 |
| 第7号区分 | 43,350円 |
| 第8号区分 | 32,500円 |
| 第9号区分 | 27,100円 |
| 第10号区分 | 21,700円 |
| 第11号区分 | 0円 |
区分そのものは、第3項が「官職の職制上の段階、職務の級、階級その他職員の職務の複雑、困難及び責任の度に関する事項を考慮して、政令で定める」としています。職務の級が上がるほど、上の区分に入る形です。第11号区分は0円なので、この区分にいた月は積み上がりません。
3. 額が多い順に60か月分を合計する
ここが、いちばん誤解されている部分です。直近の60か月ではありません。在職した全期間の調整月額を「額が最も多いものから順次その順位を付し」、第1順位から第60順位までを合計します。つまり、在職中で最も上の区分にいた月から数えて60か月分が、調整額になります。
役職に就いてから5年以上あれば、その60か月がそのまま調整額です。役職に就いて3年なら、その36か月と、その前の区分の24か月の合計です。
自己都合退職だと、半分かゼロになる
第6条の4第4項は、調整額を減らす、または支給しない場合を定めています。転職を考える方に直接関わるのは、次の2つです。
> 三 自己都合等退職者でその勤続期間が十年以上二十四年以下のもの 第一項の規定により計算した額の二分の一に相当する額> 四 自己都合等退職者でその勤続期間が九年以下のもの 零
| 退職の区分 | 勤続期間 | 調整額 |
|---|---|---|
| 自己都合等 | 9年以下 | 0円 |
| 自己都合等 | 10年以上24年以下 | 第1項で計算した額の2分の1 |
| 自己都合等 | 25年以上 | 第1項で計算した額(減額なし) |
| 自己都合等以外 | 1年以上4年以下 | 第1項で計算した額の2分の1 |
| 自己都合等以外 | 5年以上 | 第1項で計算した額 |
転職による退職は「自己都合等」です。勤続9年以下なら調整額はゼロ、10年以上24年以下なら半分、25年以上で初めて全額になります。基本額の乗率(20年未満に100分の60〜90)とは、境目が違います。基本額の乗率は20年で消えますが、調整額の減額は25年まで続きます。
自分の調整額の桁を見る
正確な額は人事の担当課の計算になりますが、桁は自分で見当を付けられます。
- 自治体の条例の別表で、区分と調整月額を確かめる。国の額を採っている自治体もあれば、独自の額の自治体もあります
- 自分の職務の級の履歴を、月単位で書き出す。いつからいつまで、どの級にいたか
- 級を区分に当てはめ、調整月額を付ける
- 額が多い順に60か月分を合計する
- 自己都合等で勤続24年以下なら、2分の1にする。9年以下ならゼロ
たとえば、国の額で、直近の60か月がすべて第7号区分(43,350円)なら、第1項の額は43,350円×60か月=2,601,000円です。自己都合等で勤続24年以下なら、その2分の1になります。役職に就いていた期間が長いほど、この額の比重は基本額に対して大きくなります。
転職するとどうなるか
転職による退職で、調整額に関して効いてくる点は3つです。
1. 勤続9年以下・10〜24年・25年以上のどこにいるか
この3つで、調整額がゼロか、半分か、全額かが決まります。基本額の乗率の境目(20年)とは別に、25年という境目があります。
2. 役職に就いていた月数
額が多い順に60か月です。役職に就いて日が浅い方は、上の区分の月数が少なく、その前の区分の月で埋まります。役職に就いてから5年(60か月)が、調整額が上の区分で満たされる目安です。
3. 60か月の「順位」は、直近ではない
過去に上の区分にいて、その後に下の区分に移った場合でも、上の区分の月が先に数えられます。降任があった方は、この点で基本額の特例(第5条の2)と併せて確認してください。
手続きと期限
調整額の計算に使う職務の級の履歴は、人事の記録にあります。本人が申告するものではありません。ただし、条例の別表の区分と、自分の級の対応は、自治体によって当てはめ方が違うので、見込みを聞くときは「調整額の区分は何号で、何か月分か」まで聞くと、答えの意味が分かります。
退職の意思を伝えずに確認できることは、次の2つです。
- 自治体の条例と規則で、調整額の条と別表を読む(国の第6条の4に当たる部分)
- 自分の職務の級の履歴を月単位で書き出す
調整額の仕組みを採っていない自治体、あるいは区分や額が国と違う自治体もあります。「調整額」という言葉が条例にない場合は、その自治体では別の形で職の区分が反映されているか、反映されていないかのどちらかです。あるかないかから確かめてください。
誤解されやすい点
「調整額は管理職だけのもの」と思い込む
区分は職務の級で決まります。第10号区分まで額が付いているので、管理職でなくても積み上がる自治体があります。第11号区分だけが0円です。
「直近5年分」と思い込む
額が多い順に60か月です。直近ではありません。
「20年を超えれば減額はない」と思い込む
基本額の乗率は20年で消えますが、調整額は自己都合等で24年以下なら2分の1です。境目が違います。
「国の額がそのまま自分に当てはまる」と思い込む
上の表は国の法律です。自治体の条例の別表を必ず確かめてください。
まとめ
- 調整額は、在職した各月に職員の区分ごとの「調整月額」を付け、額が多い順に60か月分を合計した額です(第6条の4第1項)。直近60か月ではありません
- 区分は第1号から第11号まであり、国の額は第1号95,400円から第10号21,700円、第11号は0円です。区分は職務の級などを考慮して政令で定められます(第3項)
- 自己都合等退職者は、勤続9年以下でゼロ、10年以上24年以下で2分の1です(第4項第3号・第4号)。25年以上で全額になります
- 基本額の乗率の境目(20年)と、調整額の減額の境目(25年)は別です
- 役職に就いていた期間が長いほど、調整額の比重は大きくなります。自治体の条例の別表と、自分の級の履歴を月単位で確かめてください
よくある質問
係長になって3年です。調整額はどのくらい積み上がっていますか
国の形で言えば、額が多い順に60か月分です。係長に当たる区分の36か月と、その前の区分の24か月の合計が、第1項の額になります。そのうえで、自己都合等で勤続24年以下なら2分の1、9年以下ならゼロです。実際の区分と額は、自治体の条例の別表と、自分の職務の級の対応で決まるので、条例の調整額の条を読んで、級を当てはめてください。区分が国と同じとは限りません。人事の担当課に、制度の照会として「自分の級は何号区分か」を聞くこともできます。
一度課長になって、その後に係長に戻りました。調整額はどうなりますか
額が多い順に順位を付けるので、課長に当たる区分の月が先に数えられます。直近が係長でも、過去の課長の月が60か月の中に入ります。降任で不利になる形にはなっていません。ただし、基本額のほうは退職日の俸給月額が基準なので、降任で俸給月額が下がった場合は、第5条の2の特例(減額前の俸給月額を基礎にする仕組み)が関わります。調整額と基本額で、扱いが違う点に注意してください。詳しくは基本額の計算の考え方で扱っています。
自治体の条例に「調整額」という言葉がありません
その自治体では、調整額の仕組みを採っていないか、別の名前で職の区分を反映しているかのどちらかです。国の第6条の4に当たる条が条例にない場合、退職手当は基本額だけで計算される形になっている可能性があります。逆に、「退職手当の調整額」ではなく別の名称で、職務の級に応じた加算を定めている自治体もあります。「調整額があるかないか」から、条例の目次で確かめてください。ないなら、見込みは基本額だけで立てて足ります。あるなら、別表の区分と額を国の形と比べてください。条例の読み方は退職手当条例の読み方に整理しています。