財政課転職PUBLIC → PRIVATE 無料で相談する

制度とお金 / 退職手当

自己都合退職と定年退職で何が変わるか

「自己都合だと退職手当が減る」。これは、ほぼ全員が知っています。ところが、どの式でどれだけ減るのかを条文で確かめた方は、ほとんどいません。

減り方は、1つの割合を掛けるだけではありません。自己都合と定年では、そもそも使う表が違います。そのうえで、自己都合には勤続年数に応じた乗率がかかる。2段階で差が付く仕組みです。

この記事では、国家公務員退職手当法の3つの表を並べて、どこがどう違うのかを整理します。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条)が、条例は国の法律に沿った構成を採っているのが一般的なので、国の形を知っておくと自分の条例が読めます。条例の読み方は退職手当条例の読み方に書いています。

退職の理由で、使う表が3つに分かれる

国家公務員退職手当法は、退職手当の基本額を退職日の俸給月額に、勤続期間の区分ごとの割合を乗じた額の合計として計算します。そして、退職の理由と勤続年数によって、使う表を3つに分けています。

条誰に適用されるか
第3条第4条・第5条に当たらない退職。転職による退職は、ここ
第4条勤続11年以上25年未満で、定年、本人の事情によらない退職、早期退職の募集に応じた退職など
第5条勤続25年以上で、定年、本人の事情によらない退職、早期退職の募集に応じた退職、公務上の傷病・死亡など

「定年」は、国家公務員法第81条の6の規定による退職です。「早期退職の募集」は、第8条の2に定める定年前に退職する意思を有する職員の募集に応じ、認定を受けて退職した場合を指します。

つまり、転職は第3条、定年は第4条か第5条です。まず、ここで表が分かれます。

3つの表を並べる

第3条(自己都合等)の表

勤続期間の区分1年あたりの割合
1年以上10年以下100分の100
11年以上15年以下100分の110
16年以上20年以下100分の160
21年以上25年以下100分の200
26年以上30年以下100分の160
31年以上100分の120

第4条(11年以上25年未満・定年等)の表

勤続期間の区分1年あたりの割合
1年以上10年以下100分の125
11年以上15年以下100分の137.5
16年以上24年以下100分の200

第5条(25年以上・定年等)の表

勤続期間の区分1年あたりの割合
1年以上10年以下100分の150
11年以上25年以下100分の165
26年以上34年以下100分の180
35年以上100分の105

同じ「1年以上10年以下」の期間でも、第3条は100分の100、第4条は100分の125、第5条は100分の150です。同じ勤続年数、同じ俸給月額でも、退職の理由で1年あたりの積み上がりが違う。これが、1段目の差です。

そのうえで、自己都合には乗率がかかる

第3条第2項は、傷病や死亡によらず、その者の都合により退職した者(自己都合等退職者)について、第1項の表で計算した額に、さらに次の割合を乗じると定めています。

勤続期間乗じる割合
1年以上10年以下100分の60
11年以上15年以下100分の80
16年以上19年以下100分の90
20年以上(乗率なし)

これが、2段目の差です。表が違ううえに、20年未満なら乗率がかかる。「自己都合だと減る」の中身は、この2段階です。

勤続年数ごとに、どれだけ差が開くか

3つの表と乗率から、退職日の俸給月額を1としたときの基本額(何か月分に当たるか)を計算します。国の法律の数字をそのまま当てはめた試算で、調整額は含みません。自治体の条例は数字が違うことがあるので、差の付き方の形を見るための表として読んでください。

勤続年数自己都合(第3条×乗率)定年等(第4条・第5条)差
10年6.0か月分(第4条は11年以上から)—
15年12.4か月分19.4か月分約7.0か月分
19年19.7か月分27.4か月分約7.7か月分
20年23.5か月分29.4か月分約5.9か月分
24年31.5か月分37.4か月分約5.9か月分
25年33.5か月分39.8か月分約6.3か月分
30年41.5か月分48.8か月分約7.3か月分
35年47.5か月分57.0か月分約9.5か月分

※自己都合15年=(10×1.00+5×1.10)×0.8、19年=(10×1.00+5×1.10+4×1.60)×0.9、20年=10×1.00+5×1.10+5×1.60。定年等15年=10×1.25+5×1.375、25年=10×1.50+15×1.65。小数第2位を四捨五入。

この表で見えることが3つあります。

1. 差は、常に数か月分ある

勤続15年でも35年でも、定年等のほうが6〜9か月分ほど厚い。自己都合で辞めることの重みは、この幅です。

2. 19年と20年の間に、自己都合の側だけ段差がある

19年で19.7か月分、20年で23.5か月分。乗率100分の90が消えるからです。「20年の節目」と言われるものの実体は、この乗率の消滅です。ただし、定年等の側にはこの段差がありません。節目の詳しい話は勤続20年・25年という節目の意味に書いています。

3. 差は、35年に近づくほど開く

第5条の表は26年以上34年以下が100分の180で、第3条の同じ期間は100分の160から120に下がります。長く勤めるほど、定年等との差は広がる形です。

「定年等」に入る退職は、定年だけではない

第4条と第5条の対象には、定年のほかに、本人の事情によらないで引き続いて勤続することを困難とする理由による退職(政令で定めるもの)と、早期退職の募集に応じた退職が含まれています。

とくに後者は、転職を考える方に関係します。第8条の2は、各省各庁の長等が定年前に退職する意思を有する職員の募集を行うことができると定めています。年齢別の構成の適正化を目的とする募集と、組織の改廃等に伴う募集の2種類です。この募集に応じて認定を受けて退職すると、第3条ではなく第4条・第5条の表が適用されます。

自治体の条例にも、同様の早期退職の募集や勧奨退職の仕組みを置いているところがあります。対象の年齢、募集の時期、認定の手続きは自治体ごとに違います。該当する年齢に近い方は、自分の自治体にこの制度があるか、あるなら対象の年齢は何歳からかを、条例と人事の担当課で確認してください。自己都合で辞めるか、募集を待つかで、使う表が変わります。

転職するとどうなるか

転職による退職は、第3条の表に、勤続年数に応じた乗率です。実務で効く点は3つです。

1. 勤続20年未満なら、乗率の区分の境目を確認する

10年と11年、15年と16年、19年と20年で乗率が変わります。月数で数えるので、退職日を数か月動かすと区分が変わることがあります。ただし、変わるのは乗率であって、総額が跳ねるわけではありません。

2. 勤続20年以上なら、乗率はかからない

差は表の違いだけです。「自己都合だから大きく減る」という前提は、20年以上には当てはまりません。

3. 早期退職の募集の対象年齢に近いなら、その制度を先に確かめる

募集に応じられるなら、第4条・第5条の表になります。自己都合で辞める前に、対象かどうかを確認する価値があります。

手続きと期限

退職の理由の区分は、退職の辞令と、退職手当の請求の書類で確定します。自己都合か、定年か、募集に応じた退職か。この区分は、本人が申告するものではなく、任命権者の側の処理で決まります。ただし、早期退職の募集に応じる場合は、募集の期間内に応募し、認定を受ける手続きが要ります。期限を過ぎると、自己都合の扱いになります。

なお、支給の時期と、退職所得としての税の扱いは、退職の理由にかかわらず共通の事項です。所属の人事の担当課と、共済組合や税務署で個別に確認してください。

誤解されやすい点

「自己都合=一律◯割減」と思い込む

乗率は勤続年数で違い、20年以上にはかかりません。

表が同じで乗率だけ違う、と思い込む

表そのものが違います。乗率がかからない20年以上でも、定年等との差は残ります。

「定年等」は定年だけ、と思い込む

早期退職の募集に応じた退職や、本人の事情によらない退職も、定年等の表です。

国の数字が自分にそのまま当てはまる、と思い込む

上の表は国の法律です。自分の条例の数字を必ず確かめてください。

財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

勤続12年で転職を考えています。どのくらい減りますか

国の法律の形で言えば、2段階で差が付きます。第3条の表(1〜10年は100分の100、11年以上は100分の110)で計算した額に、勤続11年以上15年以下の乗率100分の80を乗じます。試算では約9.8か月分((10×1.00+2×1.10)×0.8)です。定年等の第4条の表なら約15.3か月分(10×1.25+2×1.375)なので、差は約5.5か月分です。ただし、これは国の数字で、調整額を含みません。自分の自治体の条例の支給率と乗率を当てはめ直してください。

勧奨退職の制度があると聞きました。自己都合より有利ですか

国の法律では、早期退職の募集に応じて認定を受けた退職は、第4条・第5条の表が適用されます。第3条の表と乗率ではなく、定年等と同じ扱いです。自治体の条例にも、早期退職の募集や勧奨退職の仕組みを置いているところがあります。ただし、対象の年齢や募集の時期、認定の要件は自治体ごとに違い、募集の期間内に応募して認定を受ける手続きが要ります。該当する年齢に近い方は、自己都合で退職の意思を伝える前に、自分の自治体にこの制度があるか、対象かどうかを条例と人事の担当課で確かめてください。順序を誤ると、自己都合の扱いになります。

20年以上なので乗率はかからないと分かりました。それでも差はありますか

あります。表そのものが違うからです。勤続25年で比べると、第3条の表では33.5か月分、第5条の表では39.75か月分で、約6か月分の差が残ります。乗率がかからないことと、表が同じであることは別です。「20年を超えれば自己都合でも定年と同じ」ではありません。ただし、この差をどう受け取るかは、残りの在職の年数と、自分の経験に値が付く業界があるかどうかを並べて決める事項です。差の中身だけを見て決めるより、両方を並べたほうが判断しやすくなります。仕組みの全体は退職手当の仕組み|何で金額が決まるのかに戻って確認できます。

出典

  1. 国家公務員退職手当法 第3条(自己の都合による退職等の場合の退職手当の基本額)/第4条(十一年以上二十五年未満勤続後の定年退職等)/第5条(二十五年以上勤続後の定年退職等)/第8条の2(定年前に退職する意思を有する職員の募集等)|e-Gov法令検索
  2. 地方自治法 第204条(給与その他の給付)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

「自分の経験に、どこで値段が付くのか」から相談できます

在職中でも、情報収集だけでも構いません。応募する求人が決まっていない段階のほうが、むしろ整理する意味があります。ご利用はすべて無料です。