制度とお金 / 退職手当
勤続年数が支給率に与える影響
「勤続年数が長いほど、退職手当は増える」。これは正しい。ただし、増え方は一定ではなく、しかも「年数」の数え方そのものに決まりがあります。
多くの方が、勤続年数を「入庁した年から今年まで」で数えています。ところが、法律は月で数え、端数の切り捨てと休職の除算を定めています。自分が思っている年数と、退職手当の計算に使われる年数は、ずれることがある。
この記事では、1年延びると何が増えるのか、勤続期間はどう数えるのかを、国家公務員退職手当法の条文で整理します。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条)が、条例は国の法律に沿った構成を採るのが一般的です。仕組みの全体は退職手当の仕組み|何で金額が決まるのかで扱っています。
支給率は「区分ごとの積み上げ」で、1年の価値が区分で変わる
国家公務員退職手当法第3条は、基本額を退職日の俸給月額に、勤続期間を区分して、区分ごとの割合を乗じた額の合計と定めています。合計額です。勤続22年の人は、22年分すべてに同じ割合がかかるのではなく、1〜10年目、11〜15年目、16〜20年目、21〜22年目にそれぞれの割合がかかり、その合計になります。
| 勤続期間の区分 | 1年あたりの割合 | この区分で1年延びると増える額 |
|---|---|---|
| 1年以上10年以下 | 100分の100 | 俸給月額の1.0か月分 |
| 11年以上15年以下 | 100分の110 | 1.1か月分 |
| 16年以上20年以下 | 100分の160 | 1.6か月分 |
| 21年以上25年以下 | 100分の200 | 2.0か月分 |
| 26年以上30年以下 | 100分の160 | 1.6か月分 |
| 31年以上 | 100分の120 | 1.2か月分 |
右の列が、この記事の中心です。「あと1年勤めると、いくら増えるか」は、自分が今どの区分にいるかで決まります。21〜25年目の1年は俸給月額の2.0か月分ですが、31年目以降の1年は1.2か月分です。同じ1年でも、価値が違います。
なお、これは自己都合等の場合の第3条の表です。定年等の場合は第4条・第5条の別の表があり、自己都合には20年未満に乗率がかかります。その違いは自己都合退職と定年退職で何が変わるかに整理しています。
また、第6条は、基本額の最高限度を退職日俸給月額の60倍と定めています。積み上げがどれだけ続いても、基本額は60か月分を超えません。
勤続期間は「月」で数える
ここからが、多くの方が見落としている部分です。第7条は、勤続期間の計算をこう定めています。
> 退職手当の算定の基礎となる勤続期間の計算は、職員としての引き続いた在職期間による。> 2 前項の規定による在職期間の計算は、職員となつた日の属する月から退職した日の属する月までの月数による。
「職員となった日の属する月から、退職した日の属する月までの月数」です。
日ではなく、月です。4月1日に採用され、3月31日に退職すれば12か月。4月1日に退職すれば、その4月も1か月と数えて13か月になります。退職した日の属する月が丸ごと1か月に数えられる、という形です。
そのうえで、第6項が端数の扱いを定めています。
> 前各項の規定により計算した在職期間に一年未満の端数がある場合には、その端数は、切り捨てる。ただし、その在職期間が六月以上一年未満(中略)の場合には、これを一年とする。
1年未満の端数は切り捨て。ただし、在職期間の全体が6か月以上1年未満なら1年とみなす(自己都合の場合。定年等や傷病・死亡の場合は1年未満で1年)。つまり、勤続19年11か月は、19年として計算されます。あと1か月で20年になる方が、その1か月を待たずに退職すると、区分は19年のままです。
休職と、途切れと、地方公務員からの引き続き
第7条には、あと3つ、実務で効く定めがあります。
休職の期間は、月数の2分の1を除く(第4項)
> 前三項の規定による在職期間のうちに休職月等が一以上あつたときは、その月数の二分の一に相当する月数(中略)を前三項の規定により計算した在職期間から除算する。
休職していた期間は、丸ごと引かれるのではなく、その2分の1が引かれます。ただし、公務上の傷病による休職など、除算されない休職の種類が括弧書きで定められています。育児休業や自己啓発等休業の扱いは、この条と、自治体の条例・規則で確認してください。見込みがずれるのは、たいていここです。
退職の翌日に再び職員になれば、引き続き在職したものとみなす(第3項)
> 職員が退職した場合(中略)において、その者が退職の日又はその翌日に再び職員となつたときは、前二項の規定による在職期間の計算については、引き続いて在職したものとみなす。
任期の切り替えや、組織の改編で一度退職の形を取っても、翌日に再び職員になれば、勤続は途切れません。
地方公務員からの引き続きも含む(第5項)
機構の改廃や施設の移譲などで地方公務員から引き続いて国の職員になった場合、地方公務員としての在職期間も含めると定めています。自治体の条例にも、他の自治体や国からの引き続きの扱いが定められているのが通常です。
転職するとどうなるか
転職による退職で、勤続年数に関して効いてくる点は3つです。
1. 月数の境目を確認する
区分は年で区切られていますが、数えるのは月です。採用の月から退職の月までを数え、端数を切り捨てた年数が、計算に使われます。区分の境目の手前にいる方は、退職の月を動かすだけで区分が変わることがあります。
2. 休職・育児休業の期間を確認する
休職の月数の2分の1が除かれます。育児休業を長く取った方は、自分が思っている勤続年数より短く計算される可能性があります。条例と規則で、どの休業がどう扱われるかを確認してください。
3. 「あと1年」の価値を区分で見る
自分が今いる区分の「1年あたりの割合」が、あと1年待ったときに増える額です。21〜25年目なら2.0か月分、31年目以降なら1.2か月分。待つ価値は、区分によって違います。
手続きと期限
勤続期間は、人事の記録から任命権者の側が計算します。本人が申告するものではありません。ただし、休職や休業の期間の扱い、他の自治体や国からの引き続きの期間は、記録の持ち方によっては照会が必要になることがあります。
転職を考えている段階で、退職の意思を伝えずに確認できることは、次の2つです。
- 自分の採用の辞令の日付と、休職・休業の期間を、月単位で整理する
- 自治体の条例と規則で、勤続期間の計算の条(国の第7条に当たる部分)を読む
見込額の照会は、人事の担当課に制度の照会として聞ける自治体が多くあります。そのときに、月単位の整理を持っていくと、答えの意味が分かります。
誤解されやすい点
「年数に比例して増える」と思い込む
区分ごとに割合が違い、21〜25年が最も厚く、その後は下がります。比例ではありません。
「端数は切り捨てだから、月は関係ない」と思い込む
切り捨てられる前の月数で、区分が決まります。19年11か月と20年0か月では、区分が違います。
「休職は丸ごと引かれる」と思い込む
国の形では2分の1です。しかも、除算されない休職の種類があります。
「一度退職の形を取ったから、勤続はリセットされた」と思い込む
退職の日か翌日に再び職員になっていれば、引き続いて在職したものとみなされます。
まとめ
- 基本額は区分ごとの割合の合計です(第3条)。1年延びたときに増える額は、今いる区分の割合で決まります。21〜25年が2.0か月分で最も厚く、31年以降は1.2か月分です
- 基本額の最高限度は退職日俸給月額の60倍です(第6条)
- 勤続期間は「職員となった日の属する月から退職した日の属する月まで」の月数で数え、1年未満の端数は切り捨てです(第7条第2項・第6項)
- 休職の期間は月数の2分の1を除算します。除算されない休職の種類もあります(第7条第4項)
- 退職の日か翌日に再び職員になれば、勤続は途切れません(第7条第3項)
- 自分の採用の月と休職・休業の期間を月単位で書き出すと、区分の境目までの距離が分かります
よくある質問
育児休業を2年取りました。勤続年数はどうなりますか
国の第7条第4項は、休職月等の月数の2分の1を除算すると定めています。育児休業がこの「休職月等」に当たるかどうか、当たる場合に除算の割合がどうなるかは、自治体の条例と規則で定められています。自治体によって扱いが異なるため、「2年取ったから1年引かれる」と決めつけず、必ず条例の勤続期間の計算の条を確認してください。人事の担当課に、制度の照会として聞くこともできます。自分が思っている勤続年数と計算上の年数がずれるのは、たいていこの部分です。
3月31日に退職するのと、4月1日に退職するのとで、違いはありますか
国の形では、退職した日の属する月が1か月と数えられます。3月31日退職なら3月まで、4月1日退職なら4月までが在職期間です。1か月の差です。この1か月が、端数を切り捨てた年数の区分を変える位置にあるなら、区分が変わります。そうでなければ、切り捨てられて変わりません。自分の採用の月から数えて、その1か月が境目に当たるかどうかを確かめてください。なお、4月1日に在職していると、その年度の他の給与や手当の扱いにも関わることがあるので、退職日の設定は退職手当だけでなく全体で見る必要があります。自治体によって条例の定めが違う点も、併せて確認してください。
民間から中途で入庁しました。民間の勤続は含まれますか
含まれません。第7条第1項は、勤続期間を「職員としての引き続いた在職期間」と定めています。民間の在職期間は、職員としての在職ではないので、算入されません。含まれるのは、退職の日か翌日に再び職員になった場合の前の在職期間(第3項)と、地方公務員から引き続いて職員になった場合の地方公務員としての在職期間(第5項)です。中途で入庁した方の勤続年数は、入庁の月から数えます。自分の年齢ではなく、入庁からの月数で区分を見てください。年齢が高くても勤続が短ければ、区分は手前です。