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業界研究 / 地方銀行・信用金庫

地方銀行・信用金庫の年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

地方銀行・信用金庫への転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、地域金融機関の年収の相場やレンジは書いていません。地方銀行と信用金庫、規模の大小、職種で差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、地域金融機関に固有の働き方の構造(支店の異動と転勤、営業の目標、外務員登録などの資格、自治体と金融機関の年度周期)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価は地方銀行・信用金庫は公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

銀行業(銀行法第4条第1項)と信用金庫の事業(信用金庫法第4条)は免許制で、事業の大半は預金と融資と営業で成り立ちます。処遇の観点で押さえておきたいのは、金融機関は等級と手当の体系が整っていて公務員の給料表に近い読み方ができる一方、支店の異動を軸にした人事の型と、営業の目標が処遇と評価に組み込まれていることです。財政課の方が応募する公務・地方公共団体担当の枠が、この人事の型の中でどう扱われるか(支店の営業を経るのか、本部の部門に特定されるのか)で、確かめるべき点が変わります。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(地域金融機関を含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の会社は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項(労働基準法施行規則第5条第5号)。金融機関では業績と評価に連動する設計が一般的
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項(労働基準法第89条第3号の2)。金融機関では制度がある会社が多いが、就業規則で確かめる
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

地域金融機関に固有の働き方——法律の側から読む

1つ目は、支店の異動と転勤。地域金融機関は、営業区域の中に支店を持ち、数年ごとの異動が人事の型になっていることが多いです。公務・地方公共団体担当は本部の部門ですが、その部門に入る前に支店の営業を経る型や、本部と支店を行き来する型があります。労働基準法施行規則第5条第1号の3により、就業場所と業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、配属が本部の公務の部門に特定されているか、営業区域内の異動の範囲、業務の変更の範囲に支店の営業が含まれるかを通知書で確かめます。

2つ目は、営業の目標。金融機関では、預金、融資、金融商品の販売などの目標が支店と個人に設定され、評価と賞与に連動する設計が一般的です。公務・地方公共団体担当は支店の営業とは別の指標(自治体との取引の維持、地方債の引受、公金の取引の拡大)で評価されることが多いですが、自分が入る枠の評価の指標と、賞与への連動を確かめてください。財政課の方は、数字を「査定して抑える」側にいたので、「目標として追う」側への転換を理解しておく必要があります。

3つ目は、資格。金融機関で有価証券の勧誘などを行う者は、外務員として登録を受ける必要があります(金融商品取引法第64条)。地域金融機関では、入行・入庫後に証券外務員などの資格の取得を求める仕組みが一般的で、公務の部門でも取得を求められることがあります。資格の取得が昇格や配属の要件になっているかを確かめてください。

4つ目は、自治体と金融機関の年度周期。自治体の会計年度は4月から翌年3月で、金融機関の決算も3月期が一般的なので、年度末に自治体側の起債・基金の運用の判断と、金融機関側の決算が重なる構造があります。指定金融機関(地方自治法第235条)としての公金の取引は、自治体の出納の周期(納期、出納整理期間)に合わせて動きます。財政課の方は、この周期を自治体側で知っています。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。——配属が本部の公務の部門に特定されているか、営業区域内の異動の範囲、業務の変更の範囲に支店の営業が含まれるか。公務の枠で入ることを前提にしている場合、この範囲は交渉の対象です。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。年度末の繁忙の実態を面接で聞いておきます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。等級と昇給の仕組み、賞与が業績と評価にどう連動するか、資格手当の対象。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。金融機関では制度がある会社が多いですが、書かれていなければ就業規則を見せてもらい、制度の有無と勤続年数の要件を確認してください。

条件の読み方や、どこまで交渉できるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。金融機関ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

金融機関は公務員に近い安定した処遇だと聞きました。何を確かめればよいですか

等級と手当の体系が整っている点は公務員の給料表に近いですが、確かめるべきは体系ではなく、配属と評価の仕組みです。支店の異動を軸にした人事の型では、公務の部門に特定されない枠で入ると支店の営業を経ることがあり、営業の目標が評価と賞与に連動します。労働条件通知書の就業場所と業務の変更の範囲(労働基準法施行規則第5条第1号の3)、賞与の決定の方法(第5号)を確かめ、面接で「公務の部門への配属の見通し」「自分が入る枠の評価の指標」を聞いてください。

証券外務員などの資格は必ず取らなければなりませんか

金融機関で有価証券の勧誘などを行う者は外務員として登録を受ける必要があり(金融商品取引法第64条)、地域金融機関では入行・入庫後に資格の取得を求める仕組みが一般的です。公務の部門でも取得を求められることがあり、昇格や配属の要件になっている金融機関もあります。オファーの段階で「取得は必須か」「取得の期限と支援」「取得しない場合の処遇への影響」を確かめてください。財政課の経験を示す材料としては資格より公金と資金調達の実務が重く見られますが、入行後の要件は別の問題です。

公務の部門に入っても、支店に異動することはありますか

金融機関の人事の型によります。本部の公務の部門と支店を行き来する型の金融機関では、公務の部門に配属された後も支店への異動がありえます。労働基準法施行規則第5条第1号の3により、就業場所と業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、通知書に書かれている範囲を確かめ、公務の部門に限定したい場合は交渉の対象にしてください。口頭で「基本は本部」と言われても、変更の範囲が営業区域内の全支店であれば、契約上は異動がありえます。

出典

  1. 銀行法 第4条(営業の免許)|e-Gov法令検索
  2. 信用金庫法 第4条(事業免許)|e-Gov法令検索
  3. 金融商品取引法 第64条(外務員の登録)|e-Gov法令検索
  4. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第235条(金融機関の指定)|e-Gov法令検索
  6. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  7. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索
  8. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  9. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  10. 厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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