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業界研究 / 電力・ガス

電力・ガスの選考フローと、面接で見られている観点

電力・ガスの選考は、公務員の採用試験とも、コンサルの選考とも違う点があります。大手の電力・ガス会社は新卒中心の採用と全社共通の人事の型を持っており、中途の事務系の枠(官公庁営業、自治体向け事業開発、地域新電力の経営・管理)は、その型の中で「電力の仕組みが分からない人」と「電力の仕組みは分からないが自治体の調達と財源を分かっている人」を分ける形で進みます。財政課の経験を持つ方がこの選考で戸惑うのは、面接で電力の料金や需給の話に合わせようとして崩れる点と、大手の場合は配属が全社の人事で決まり、自治体向けの部門に入れる保証がない点です。

もう1つの特徴は、電力調達の入札や出資に関わった経歴が、調達を扱う領域として確認される点です。応募者が在職中にその会社が関わる入札や出資の審査に関与していなかったか、退職後に元の職場へ働きかける立場にならないかを、選考の中で確かめられます。

この記事では、電力・ガスの選考の一般的な流れ、技術職と官公庁営業・事業開発で見られる観点の違い、財政課の経験に固有の質問の型、電力調達に関わった経歴の確認事項、服務の線を整理します。業界の構造と職種ごとの評価は電力・ガスは公務員のどの経験を評価するかに書いています。選考の流れと回数は会社ごとに違うので、この記事は一般的な形の説明です。

業界構造の要点——選考で前提になること

小売電気事業は経済産業大臣の登録制で(電気事業法第2条の2)、自治体との取引は、公共施設の電力・ガスの調達(地方自治法第234条の契約方法、複数年度は債務負担行為——第214条)、自治体出資の地域新電力(出資金の財源は地方財政法第5条第2号)、公営の電気・ガス事業(地方公営企業法第2条第1項第6号・第7号、経費の負担——第17条の2)、脱炭素の実行計画(温対法第21条)の4つの形で現れます。

選考で前提になるのは、「会社の事業は技術と民間の顧客で成り立ち、自治体向けはその一部」という構造です。大手では自治体向けの部門が小さく、中途の採用枠が部門を特定していないことがあります。地域新電力や自治体向けに特化した会社では、部門が明確です。財政課の方は、自分が入る枠が自治体向けの部門に特定されているかを、応募の段階で確かめる必要があります。

選考の流れ——一般的な形

段階内容位置づけ
1. 書類選考履歴書、職務経歴書財政課の経験を「調達と財源」の軸で書けているかで通過が決まる
2. 適性検査・筆記大手では全社共通の適性検査。会社によっては筆記大手では足切りに使われることがある
3. 一次面接(部門・人事)大手では人事と部門、地域新電力では経営層。業務の理解と、一緒に働けるか財政課の経験の具体性と、電力の仕組みを学ぶ姿勢が最も問われる段階
4. 二次面接(役員・部門長)会社の方向性との一致、長く働けるか、人物「なぜ発注者側から供給者側へ」の説明が固まっているか
5. オファー面談労働条件と配属の提示労働基準法第15条により条件は書面などで明示される。配属が自治体向けの部門か、業務の変更の範囲を確認する
6. リファレンス会社による在職中の応募では時期を企業側と調整する

大手では、オファーの段階で配属が自治体向けの部門に特定されているかを確かめることが、他の業界より重要です。地域新電力や特化した会社では、応募の段階で部門が明確なことが多いです。

技術職と官公庁営業・事業開発で、見られる観点が違う

観点技術職(発電・送配電・ガス製造)官公庁営業・自治体向け事業開発・地域新電力
中心の評価軸資格と、設備の運転・保守の実績自治体の調達と財源の理解、出資会社の財政の理解、電力の仕組みを学ぶ姿勢
財政課の経験の扱い補助的中心。光熱費の予算と契約の形、債務負担行為、出資と貸付、公営企業の繰出、脱炭素の財源、査定と議会の視点
典型的な質問「どの設備で何を担当したか」「自治体は電力をどの契約の形で調達するか」「地域新電力の収支を自治体はどう見るか」
落ちやすい答え実績が曖昧「光熱費を査定していたので電力が分かる」の一般化。料金や需給の話に合わせようとして崩れる

財政課の方が応募するのは右の列なので、左の列の観点で自分を売り込もうとしないことが第一です。「電力の知識はありますか」と聞かれたら、「ありません。自治体側で調達と財源を担当していました。電力の仕組みは御社で学びます」と線を引いて答えるのが型です。

面接で問われる質問の型——財政課の経験に固有のもの

1. 「自治体は、公共施設の電力をどの契約の形で調達するか」。官公庁営業で最も多い質問です。「施設をまとめて一般競争入札にかける自治体と、施設ごとに随意契約する自治体がある。単年度の契約が多いが、債務負担行為で複数年度にする自治体もある。財政課は光熱費の予算と契約の形を査定し、契約担当が入札を執行する」と、契約の形と予算の見え方を1つの答えにまとめます。

2. 「地域新電力の収支を、自治体はどう見るか」。「発注者の内側」であることを示す質問です。「出資金と貸付金の回収の見通し、公共施設への供給の契約の安定性、収支が悪化した場合の追加出資の可能性が財政課の関心で、議会は出資の目的(地域の再エネ、電力の地産地消)と収支の両方を聞く」と、自分が査定で実際に見ていた点を具体的に話します。

3. 「脱炭素の投資(PPA、自己所有の太陽光)を、自治体はどの理屈で決めるか」。「財源の側」を示す質問です。「実行計画に沿っているか、補助金と起債と単独費の組み合わせ、PPAなら初期投資なしで電気料金として支払う形の年度ごとの財政負担、自己所有なら起債と補助金の財政負担——財政課はこの比較を見て、議会は将来負担を聞く」と答えます。

4. 「供給者側に回ると、入札で選ばれ、契約の範囲で供給する立場になる。どう考えるか」。発注者視点への過信を確かめる質問です。「決める側から、提案して選ばれる側に変わる。財政課が予算のどこを見るかを知っているので、その視点で提案の時期と形を組む」と、転換の理解と経験の使い方を1つの答えにまとめます。

5. 「自分の自治体と、他の自治体で、運用はどう違うと思うか」。複数の自治体を相手にする視点の有無を見ています。共通する制度(地方自治法の契約の章、温対法、地方公営企業法)と、自治体ごとの運用(調達の形、出資の有無、実行計画の進み方)を分けて答えます。

自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

電力調達に関わった経歴の確認事項

在職中に、応募先の会社が関わる電力調達の入札や出資の審査に関与していたか。予定価格の積算の確認、入札の執行、地域新電力への出資の審査——これらに該当する場合、選考の中で正直に伝え、応募の時期と入社後の担当の切り分けを会社側と相談します。財政課は光熱費の予算と出資を査定する側なので、該当する可能性は低くありません。

退職後、元の職場に働きかける立場にならないか。地方公務員法第38条の2は、再就職者が離職前の職務に関して元の職場に働きかけることを規制しています。官公庁営業で元の自治体を担当すると、この規制との関係が問題になりうるので、元の自治体を担当から外す、一定期間は接触しないといった配慮を会社側が求めることがあります。再就職者による働きかけの規制に、規制の内容を整理しています。

守秘義務。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続きます。面接で、自分の自治体の未公表の情報(電力調達の予定価格、他社の提案、出資の検討の内部の判断、実行計画の未公表の方針)を使ってはいけません。守秘義務は退職後も続くかに線引きを整理しています。

在職中の選考活動。面接は勤務時間外か年次有給休暇で。地方公務員法第35条の職務専念義務との関係は退職前に転職先と条件を詰めてよいかに整理しています。

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まとめ

よくある質問

一次面接で電力の料金の仕組みを聞かれました。答えられなかったのですが、落ちますか

官公庁営業・自治体向け事業開発・地域新電力の枠であれば、料金の仕組みに答えられないこと自体で落ちることは一般的ではありません。見られているのは、答えられないときの対応です。分からないことを分かったふりで答えると、業界の面接官は見抜き、信頼を失います。「その点は分かりません。自治体側では、こういう調達と財源の判断をしていました」と、自分の側に話を戻せれば、協働の相手として評価されます。技術職や民間向けの営業の枠に応募していた場合は、枠の選び方を見直す必要があります。

大手の電力会社で、自治体向けの部門に入れる保証がないと言われました

大手の電力・ガス会社では、中途の採用枠が部門を特定しておらず、配属が全社の人事で決まることがあります。その場合、財政課の経験が評価されて内定が出ても、自治体向けの部門に配属される保証はありません。労働基準法施行規則第5条第1号の3により業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、オファーの段階で配属と変更の範囲を確かめ、自治体向けに限定したい場合は交渉の対象にしてください。地域新電力や自治体向けに特化した会社では、応募の段階で部門が明確なことが多いです。

在職中に、応募先の会社が落札した電力調達の入札を担当しました。応募できますか

応募そのものが禁じられているわけではありませんが、選考の中で必ず伝え、会社側と応募の時期・入社後の担当の切り分けを相談してください。その契約が継続中であれば、元の自治体を一定期間担当しないなどの配慮を会社が求めることがあります。退職後に元の職場へ働きかけることは地方公務員法第38条の2で規制されており、官公庁営業では特に確認されます。入札の予定価格や他社の提案は地方公務員法第34条の守秘義務により退職後も話せません。隠して入社することは避けてください。

出典

  1. 電気事業法 第2条の2(事業の登録)|e-Gov法令検索
  2. 地方公営企業法 第2条(この法律の適用を受ける企業の範囲)/第17条の2(経費の負担の原則)|e-Gov法令検索
  3. 地球温暖化対策の推進に関する法律 第21条(地方公共団体実行計画等)|e-Gov法令検索
  4. 地方自治法 第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索
  5. 地方財政法 第5条(地方債の制限)|e-Gov法令検索
  6. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第35条(職務に専念する義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索
  7. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)|e-Gov法令検索
  8. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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