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業界研究 / 電力・ガス

電力・ガスの年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

電力・ガスへの転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、電力・ガス業界の年収の相場やレンジは書いていません。大手の電力・ガス会社と自治体出資の地域新電力では処遇の体系がまったく違い、職種でも差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、電力・ガスに固有の働き方の構造(大手と地域新電力で違う処遇の体系、自治体の年度周期、転勤と配属、地域新電力の事業の規模)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価は電力・ガスは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

小売電気事業は経済産業大臣の登録制で(電気事業法第2条の2)、大手の電力・ガス会社から自治体出資の地域新電力まで、事業の規模は大きく違います。処遇の観点で押さえておきたいのは、大手は全社共通の処遇の体系(等級、手当、福利厚生)が整っていて配属が全社の人事で決まり、地域新電力は少人数で、処遇の体系が会社ごとに独自で、事業の収支が処遇に直結しやすいという違いです。財政課の方が応募する自治体向けの枠が、どちらの型の会社にあるかで、確かめるべき点が変わります。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(電力・ガスを含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の会社は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項。制度がない会社もありうる(労働基準法施行規則第5条第5号)。地域新電力では事業の収支に連動する会社がある
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項。制度がない会社もありうる(労働基準法第89条第3号の2)。地域新電力では制度がない会社が珍しくない
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

電力・ガスに固有の働き方——法律の側から読む

1つ目は、大手と地域新電力で違う処遇の体系。大手の電力・ガス会社は、等級、手当、福利厚生の体系が全社で整っていることが多く、公務員の給料表に近い読み方ができます。一方、自治体出資の地域新電力は少人数で、処遇の体系が会社ごとに独自で、賞与や退職金の制度がない会社が珍しくなく、事業の収支(電力の調達価格と販売価格の関係)が処遇に直結しやすい構造です。財政課の方は、出資会社の収支を査定する側で見てきたので、地域新電力の収支の構造は理解しやすいはずですが、それが自分の処遇に連動することは別の問題です。

2つ目は、大手の配属と転勤。大手では中途の枠が自治体向けの部門に特定されていないことがあり、配属が全社の人事で決まります。全国や広域に拠点があり、就業場所の変更の範囲(転勤)が広い契約になっていることが多いです。労働基準法施行規則第5条第1号の3により、就業場所と業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、配属が自治体向けの部門に特定されているか、転勤の範囲を通知書で確かめ、限定したい場合は交渉の対象にします。

3つ目は、自治体の年度周期。公共施設の電力・ガスの調達は、4月からの供給開始に合わせて年度末に入札や契約が集中しやすく(地方自治法第234条の契約方法、複数年度は債務負担行為——第214条)、自治体向けの営業と事業開発は、年度末から年度初めに提案と契約の繁忙が集中します。地域新電力への出資(出資金の財源は地方財政法第5条第2号)や脱炭素の投資も、自治体の予算の周期(要求→査定→議会)に合わせて動きます。財政課の方は、この周期を予算の側で知っています。

4つ目は、地域新電力の事業の規模。自治体出資の地域新電力は、供給先が公共施設と地域の需要家に限られ、事業の規模が小さいことが多いです。会社の存続が自治体の出資の継続と収支に依存する構造なので、面接で「主な供給先と契約の期間」「収支が悪化した場合の自治体の対応(追加出資か、撤退か)」を聞いておきます。財政課の方は、出資会社の経営状況の報告を査定する側でこの構造を見てきました。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。大手なら配属が自治体向けの部門に特定されているか、転勤の範囲。地域新電力なら無期か有期か、契約期間が自治体の出資の期間に連動していないか。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。年度末の繁忙の実態を面接で聞いておきます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。大手なら等級と昇給の仕組み。地域新電力なら賞与が事業の収支に連動するか、その基準。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。第4号の2と第5号は「定めをする場合」の事項なので、書かれていなければ制度がない可能性があります。地域新電力では特に、就業規則を見せてもらい、制度の有無を確認してください。

条件の読み方や、どこまで交渉できるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。自治体が出資している地域新電力でも、会社は民間の法人なので同じです。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。会社ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

自治体が出資している地域新電力なら、処遇は公務員に近いですか

違います。自治体が出資していても、会社は民間の法人で、処遇は就業規則と労働契約で決まります(地方公務員法や給与条例は適用されません)。少人数の地域新電力では、賞与や退職金の制度がなく、事業の収支が処遇に直結する設計も珍しくありません。労働条件通知書と就業規則で、賞与と退職金の制度の有無(労働基準法施行規則第5条第4号の2・第5号)、契約期間が出資の期間に連動していないか(第1号)を確かめてください。社会保険も、共済ではなく厚生年金と協会けんぽ・健康保険組合に切り替わります。

大手の電力会社で内定が出ましたが、配属が決まっていません。どう確かめればよいですか

大手では中途の枠が部門を特定しておらず、配属が全社の人事で決まることがあります。労働基準法施行規則第5条第1号の3により、就業場所と業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、オファーの段階で通知書に書かれている範囲を確かめ、自治体向けの部門に限定したい場合は交渉の対象にしてください。「基本は自治体向け」と口頭で言われても、変更の範囲が全社であれば契約上は別の部門への配属もありえます。転勤の範囲も同じ項目で確かめます。

地域新電力の収支が悪化したら、雇用はどうなりますか

会社と自治体の対応によります。自治体が追加出資して事業を続ける場合と、事業を縮小・撤退する場合があり、後者では配置の変更や雇用の終了になる設計の会社があります。労働条件通知書の契約期間と更新の基準(労働基準法施行規則第5条第1号・第1号の2)を確かめ、面接で「収支が悪化した場合の自治体の対応の見通し」「主な供給先と契約の期間」を聞いてください。財政課で出資会社の経営状況の報告を査定していた方なら、この構造は読めるはずです。解雇については労働契約法第16条により客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要ります。

出典

  1. 電気事業法 第2条の2(事業の登録)|e-Gov法令検索
  2. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  3. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索
  4. 地方財政法 第5条(地方債の制限)|e-Gov法令検索
  5. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  6. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索
  7. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  8. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  9. 厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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