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業界研究 / 保険

保険の志望動機|公務員からの転職でどう組み立てるか

保険への志望動機で、財政課の方が最も陥りやすい失敗は、「人の安心を支えたい」「地域の備えに貢献したい」という大きな言葉で、財政課の具体的な経験と会社の事業がつながっていないことです。保険会社の面接官は、備えと補償を毎日の仕事にしている人たちなので、応募者から聞いても評価の材料になりません。聞きたいのは、「この人は、自分たちが外から学んでも手に入らない何を持ち込むのか」と、「営業の目標を持って自治体に働きかける仕事を理解しているか」です。

財政課の経験を持つ方がこの業界に持ち込めるのは、自治体がどの契約の形で保険を調達し、共済とどう比べ、厚生制度の予算をどう査定し、公務員の補償と共済で何がカバーされているか——保険の調達と厚生制度の仕組みを、自治体の内側から知っていることです。志望動機は、この「持ち込めるもの」を軸に組み立てます。

この記事では、保険の志望動機を「なぜ発注者側から供給者側へ」「なぜ保険か」「なぜこの会社か」の3層で組み立てる方法、財政課の経験から素材を取り出す手順、効く言い方と効かない言い方、服務の線を整理します。志望動機の一般論は公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかと自治体向け事業の会社への志望動機に、業界の構造と職種ごとの評価は保険は公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——志望動機の土台になる事実

保険業は内閣総理大臣の免許を受けた者が営み(保険業法第3条第1項)、自治体との取引は、公有財産の損害保険と賠償責任保険の調達(地方自治法第234条の契約方法、複数年度は債務負担行為——第214条)、職員向けの団体保険と厚生制度(地方公務員法第42条)、地域連携・防災の協定の形で現れます。公務員の補償は地方公務員災害補償法、年金と医療は共済(地方公務員等共済組合法)で、民間の労災と社会保険とは制度が違います。

志望動機に効くのはこの構造の裏側です。保険会社の官公庁・団体営業の担当者の多くは、自治体の調達と公務員の制度を「外から学んだ」側で、「内側で査定し、自分が制度の対象だった」側は少数です。志望動機は「保険の仕事がしたい」ではなく、「自治体の調達と厚生制度の内側を、供給者側の会社に持ち込む」を軸にします。応募先の会社に官公庁・団体営業の枠があるかを、先に確かめる必要があります。

志望動機の3層——「なぜ発注者側から供給者側へ」「なぜ保険か」「なぜこの会社か」

層問われていること財政課の経験からの答え方
① なぜ発注者側から供給者側へ決める立場を捨て、提案して選ばれ、目標を持って働きかける立場に移る理由「1つの自治体の査定で変えられる範囲」の限界を、具体的な保険の調達や厚生制度で語る。目標への姿勢をここで示す。辞める理由を無理に前向きに変換しない
② なぜ保険か民間の中で、なぜ備えと補償を提供する側か。なぜ地方銀行・信用金庫(資金を動かす側)ではなく、保険か財政課で見た「保険の調達と厚生制度が、財政の側と噛み合っていなかった」場面を、供給者側で埋めたい対象として語る
③ なぜこの会社か同業他社ではなく、なぜここかその会社の官公庁・団体営業の実績(自治体の損害保険、団体保険、連携協定)と自分の担当業務の重なり。実績の中で自分が担える部分

①だけの志望動機(「発注者側にいて限界を感じた」)は、②③がないので通りません。②③だけの志望動機(「御社の地域への姿勢に共感した」)は、①がないので「なぜ決める側を辞めるのか」「営業の目標は大丈夫か」の質問で崩れます。3層すべてを、財政課の具体的な業務で埋めるのが型です。

①で注意したいのは、営業の目標への姿勢を、志望動機の中で先に示しておくことです。官公庁・団体営業も営業の職種なので、面接では必ず聞かれます。志望動機で「成果を数字で測ることは財政課で慣れている。目標は、自分の提案が届いたかを測る指標だと考える」と先回りして書いておくと、面接での質問が確認になります。

財政課の経験から動機の素材を取り出す手順

素材は、財政課で「保険の調達と厚生制度が財政の側と噛み合っていなかった」場面と、「財政の側から調達や制度の形を変えた」場面にあります。次の順で棚卸しをしてください。

1. 保険の調達と厚生制度に関わった場面を書き出す。公有財産の損害保険と賠償責任保険の保険料の査定、共済との比較、契約の形(入札か随意契約か、単年度か複数年度か)、公用車の自動車保険、厚生制度の予算の査定、団体保険の導入の判断、公務災害補償と共済の給付の理解(自分が組合員として)、連携協定に伴う事業の予算、議会での説明。自分が「何を判断し、何を作ったか」を添える。

2. それぞれで「財政の側と噛み合っていなかった」場面を書き出す。施設ごとに保険をかけていて、まとめれば保険料が下がるのに担当課が動かなかった。共済と保険の補償の範囲を比べずに、長年同じ契約が続いていた。厚生制度の予算が毎年同じで、職員の利用の実績と合っていなかった。団体保険が共済の給付と重なる部分を含み、職員の負担が無駄になっていた。この「噛み合わなさ」が、供給者側の提案の中で、財政課の経験が埋められる部分です。

3. 自分がどう直したかを添える。施設をまとめて入札する形に組み替えた、共済と保険の補償の範囲を比較表にして契約を見直した、厚生制度の予算を利用の実績に合わせて組み替えた、団体保険の内容を共済の給付と重ならない形に整理した。「噛み合っていなかった」だけでなく「直した」まで書けると、供給者側で何ができるかが伝わります。

4. 応募先の実績と重ねる。その会社の官公庁・団体営業の実績(自治体の損害保険、団体保険、連携協定)を確かめ、自分の「直した場面」がどの業務に当たるかを見る。重なる部分が③の素材、重ならないが自分が困っていた部分が「入社後にやりたいこと」の素材になります。

地方自治法第2条第14項は、地方公共団体が事務を処理するに当たって「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求めています。財政課はこの条文を、保険料と厚生制度の予算の査定でも使っています。「最少の経費で最大の効果」を、査定する側ではなく、自治体に補償と備えの形を提案する側から実現したい——この言い方は、財政課の経験と保険の業務を1本でつなぐ軸になります。

効く言い方・効かない言い方

効かない言い方なぜ効かないか効く言い方
「人の安心を支えたい」「地域の備えに貢献したい」面接官が毎日持っている思いで、応募者から聞いても材料にならない「施設ごとにかけていた保険をまとめて入札する形に組み替えた。この視点を供給者側で使いたい」
「保険料を査定していたので保険が分かります」予算と契約の形は分かるが、商品と引受は別「自治体側の調達と厚生制度の仕組みを知っている。商品と引受は御社で学ぶ」
「御社の地域への姿勢に共感しました」実績のどこに自分が関われるかがない「御社の団体保険の提案で、共済と公務災害補償がカバーしない部分を、自治体側で見ていた視点から組みたい」
「営業は苦手ですが、頑張ります」目標への姿勢がない。この一言で先を聞いてもらえない「保険料と厚生制度の予算を毎年数字で査定していた。目標は自分の提案が届いたかを測る指標だと考える」
「自治体のことなら何でも分かります」自分の自治体の運用を一般化している「私の自治体では共済を使っていたが、保険を使う自治体もある。共通の制度と自治体ごとの運用を分けて提案に反映したい」

共通するのは、効く言い方はすべて「調達と厚生制度の具体」と「自治体の内側であること」と「目標への姿勢」のいずれかを含んでいることです。効かない言い方は、どれも欠けています。

自分の「直した場面」が、どの会社のどの業務に当たるのかは、一人で調べるより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

会社のタイプ別——「なぜこの会社か」の作り分け

保険と一口に言っても、会社の形は分かれます。③の層は、タイプごとに作り分けが要ります。

損害保険会社で、官公庁・団体営業の部門を持つ会社。公有財産の損害保険、賠償責任保険、公用車の自動車保険、地域連携・防災の協定が中心のタイプです。③は「損害保険の調達の仕組みと共済との比較を、自治体側で見ていた視点から提案の側で組みたい」を軸にしますが、部門の規模と、配属が特定されるかを確かめてから書くことが前提です。

生命保険会社で、団体保険と職域の営業を持つ会社。職員向けの団体保険と厚生制度が中心のタイプです。③は「共済と公務災害補償がカバーしない部分を、制度の内側にいた視点から組みたい」を軸にします。

共済の団体や、自治体向けの保険を専門に扱う組織。自治体の共済制度そのものや、自治体向けに特化した保険を扱うタイプです。③は「自治体が共済と保険を比べるときの視点を、内側から知っている」を軸にできます。自分の自治体が加入している場合は服務の線(後述)を先に確かめます。

どのタイプでも共通するのは、「その会社に官公庁・団体営業の枠があるか」を事業の説明で確かめてから書くことです。タイプを取り違えた志望動機は、一次面接の最初の質問で分かります。

服務の線——志望動機に書いてよいこと、書けないこと

志望動機は「噛み合わなさ」と「直した場面」を書く文章なので、自治体の内部情報を書き込みやすいという落とし穴があります。保険の業界では、事故や賠償の個別の情報と、職員の個人情報の扱いが特に厳しく見られます。

地方公務員法第34条の秘密を守る義務は、退職後も続きます。志望動機に、未公表の内部情報(保険の見直しの検討、他社の提案の内容、事故や賠償の個別の情報、職員の個人情報や健康の情報、団体保険の加入者の情報)を書いてはいけません。「施設ごとにかけていた保険をまとめて入札にした」という業務の性質は、公表された契約の結果の範囲であれば書けますが、「○○施設で○○の事故があって」「○○社の提案は○○が劣っていて」「職員の○割が○○の保険に」のような内容は、事実であっても書けません。守秘義務は退職後も続くかに線引きを整理しています。

もう1つは、在職中に応募先の会社が関わる保険の調達や団体保険の導入に関わっている場合です。入札の執行、契約の条件の判断、共済との比較の検討、団体保険の導入の判断に該当する場合、選考の中で隠さず伝え、応募の時期と入社後の担当の切り分けを会社側と相談してください。退職後に元の職場へ働きかけることは地方公務員法第38条の2で規制されており、官公庁営業では元の自治体を担当から外す配慮を会社が求めることがあります。再就職者による働きかけの規制に整理しています。

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まとめ

よくある質問

財政課で保険の調達や厚生制度に直接関わったことがなく、一般会計の査定が中心でした。素材はありますか

あります。一般会計の査定で、施設の保険料、公用車の保険、厚生制度の予算を見ていれば、「調達と制度が財政の側と噛み合っていなかった」場面は経験しているはずです。保険料が施設ごとにばらばらだった理由を担当課に確かめて契約の形を見直させた、厚生制度の予算を利用の実績に合わせて組み替えた——こうした場面を「直した場面」として書き出してください。加えて、自分が共済の組合員として制度の対象だった経験は、調達に関わっていなくても素材になります。団体保険の導入に直接関わっていないことは正直に示し、自分の自治体の契約の結果と厚生制度の計画を読んで理解した内容を添えるほうが、面接で崩れません。

「なぜ銀行ではなく保険なのか」と聞かれたら、どう答えればよいですか

地方銀行・信用金庫は公金と地方債と融資という資金を動かす側、保険は備えと補償を提供する側です。「公金と資金調達より、公有財産の保険と職員の厚生制度という、補償と備えの側で自治体と関わりたい」「自分が共済の組合員として制度の内側にいた経験を、団体保険の提案で使いたい」など、保険を選ぶ理由を、財政課で見た具体的な調達と制度の場面と結びつけて答えてください。「どちらでもよい」は、②の答えがないと見られます。

自分の自治体の保険を引き受けている会社に応募します。志望動機で自治体の名前を出してよいですか

自治体の名前を出すこと自体は問題ありませんが、2つの点に注意してください。1つは、未公表の情報(保険の見直しの検討、その会社の提案の審査の内容、事故や賠償の個別の情報、職員の個人情報)を書かないこと(地方公務員法第34条)。保険の業界では、事故と個人情報の扱いは特に厳しく見られます。もう1つは、在職中にその会社が関わる調達や団体保険の導入に関わっていた場合、志望動機に書く前に選考の中で伝え、応募の時期と担当の切り分けを相談することです。志望動機は「元の自治体を担当しない前提で、調達と厚生制度の内側を知っている点を活かしたい」という形で書くのが安全です。

出典

  1. 保険業法 第3条(免許)|e-Gov法令検索
  2. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)/第42条(厚生制度)|e-Gov法令検索
  3. 地方公務員災害補償法 第1条(この法律の目的)|e-Gov法令検索
  4. 地方公務員等共済組合法 第1条(この法律の目的)|e-Gov法令検索
  5. 地方自治法 第2条第14項(最少の経費で最大の効果)/第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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