選考対策 / 志望動機
公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるか
志望動機は、転職活動でいちばん書き直しの多い部分です。
経歴は変わりません。変わるのは、応募先ごとの接点です。その接点を、毎回作り直すことになります。
公務員からの転職では、もう1つ難しさが加わります。「誰のために働くか」が変わるという点です。
この記事では、その転換を踏まえた組み立て方を扱います。職務経歴書との役割分担は志望動機欄と職務経歴書の役割分担にあります。
「全体の奉仕者」から、特定の相手へ
公務員の立ち位置は、憲法に定められています。
日本国憲法第15条第2項です。
> すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
この条文の下で、役所の仕事は組み立てられています。相手を選ばず、同じ条件で扱い、特定の誰かの利益のために動かない。
民間では、これが変わります。
特定の顧客のために働くことが、そのまま仕事になります。顧客を選ぶこともできますし、選ばれることもあります。
志望動機では、この転換をどう位置づけるかが問われます。
「全体のために働いてきたが、これからは特定の顧客のために働きたい」と言い切る必要はありません。多くの場合、つながりは見つかります。
自治体を顧客とする会社であれば、顧客の先に住民がいます。インフラや医療、福祉の事業でも同じです。
その接続を、自分の言葉で説明できるかどうかが、この質問の芯です。
志望動機の3要素
| 要素 | 内容 | 分量 |
|---|---|---|
| ① 転換の位置づけ | 誰のために働くことになるかを理解している | 2〜3行 |
| ② 経験との接点 | 自分の経験の、どの部分がそこに対応するか | 4〜6行 |
| ③ 入社後の行動 | 最初に何をするか | 2〜3行 |
全体で300〜400字です。
②がいちばん長くなります。ここが具体的であれば、①と③は短くて構いません。
材料の集め方
①と③を書くには、応募先を調べる必要があります。
| 調べる場所 | 分かること |
|---|---|
| 公式サイトの事業の説明 | 誰に何を提供している会社か |
| 採用の情報 | 求めている人物像、職種の区分 |
| 公表されている資料 | 事業の構成、今後の方向 |
| 求人票の仕事内容 | 入社後に担当する業務 |
| 同業他社との比較 | その会社の特徴 |
5つ目が、いちばん効きます。
同じ業種の2社を並べて読むと、書いてあることの違いが見えます。片方は実績の件数を前に出し、もう片方は支援の体制を前に出している。
その違いが、①に書く材料です。
1社しか見ていないと、「自治体向けのシステムの会社」という業種の説明までしか書けません。
3つの型
志望動機の組み立て方には、いくつかの型があります。
| 型 | 内容 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 翻訳型 | 同じ機能を、別の場所でやる(債権管理→債権管理) | 職種が近い |
| 課題起点型 | 役所で見えた課題を、別の側から解決する | 自治体向けの事業 |
| 顧客起点型 | これまでの相手と、これからの相手をつなぐ | 住民・事業者と関わってきた |
2つ目が、公務員からの転職でいちばん自然に書ける型です。
> 制度を運用する側にいて、導入した後の定着まで手が回らない場面を見てきました。御社は、導入後の支援に比重を置かれていると理解しています。自分が課題だと感じていた部分に、別の側から関われると考えました。
役所での経験が、そのまま動機の根拠になります。
悪い例と良い例
悪い例
> 公務員として培った調整力を活かし、貴社の発展に貢献したいと考えております。民間企業で自分の力を試したいという思いもあります。
①②③のどれもありません。どの会社にも出せる文章です。
良い例
> 御社は、自治体の業務システムの導入から運用の定着までを支援されていると理解しています。顧客は自治体ですが、その先には制度を利用する住民がいる点で、これまで自分が向き合ってきた相手と変わらないと受け止めました。(①)>> 私は、基幹システムの更改にあたり、業務側の担当として現行の帳票◯種類と例外の処理◯類型を棚卸しし、要件の一覧を作成しました。稼働後は職員向けの手順書を作成し、問い合わせ約◯件に対応しています。導入の前より、稼働した後のほうが手がかかることを、実務として経験しています。(②)>> 入社後は、まず御社の進め方を覚えることが優先だと考えています。そのうえで、職員がどこで詰まるかを事前に想定する部分で、早い段階から貢献できると考えています。(③)
①で転換を位置づけ、②で具体を出し、③で足元に戻しています。
なお、①で「転換」に触れるのは、最初の1〜2行で足ります。長く書くと、これからの話ばかりになり、②の具体が入る余地が減ります。
読む側が知りたいのは、「この人は、うちで何ができるのか」です。転換の説明は、その前置きにすぎません。
書けない求人は、見送る
②の接点が思い浮かばない求人があります。
その場合、応募を見送る判断もあります。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| ②が3行以上書ける | 応募する価値がある |
| ②が1〜2行しか書けない | 書き方を工夫すれば書けることもある |
| ②が思い浮かばない | 経験が対応していない可能性 |
②が書けない求人は、入社後に自分の経験が使えない可能性が高いです。
志望動機は、応募先を選ぶ物差しとしても使えます。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 理念への共感から書く
誰にでも書けます。転換の位置づけから始めてください。
2. 「民間で力を試したい」と書く
どの会社にも当てはまります。
3. 無理に利益の話をする
「誰の役に立つ仕事か」で書いてください。
4. ②が抽象的
数字を入れた具体を書いてください。
5. ③が無い
足元に戻して締めてください。
6. 全社に同じ文章を出す
①と②は、応募先ごとに変わります。
まとめ
- 日本国憲法第15条第2項は、すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではないとしています。民間では、特定の顧客のために働くことになります
- 志望動機は、①転換の位置づけ ②経験との接点 ③入社後の行動の3要素、300〜400字です
- ②がいちばん長くなります。ここが具体的であれば、①と③は短くて構いません
- 材料は、同業の2社を並べて読むと見つかります
- 型は、翻訳型・課題起点型・顧客起点型の3つ。課題起点型が、いちばん自然に書けます
- 無理に利益の話をしない。「誰の役に立つ仕事か」で書いてください
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よくある質問
業界が決まっていない段階でも、書けますか
②だけなら書けます。自分の経験のうち、どの機能を、どの規模で担ってきたかを3つ書き出してください。これは、応募先が決まっていなくても作れます。①と③は、応募先が決まってから足せば足ります。むしろ、②を先に作っておくと、求人を見たときに「接点があるか」を判断できます。接点がある求人を選んで応募する、という進め方になります。応募先を決めてから志望動機を考えるより、②を持った状態で応募先を選ぶほうが早いです。
応募先が自治体と関係のない業界です
その場合も、②は書けます。関係するのは業界ではなく、機能です。債権の管理、審査、調達、制度の設計、顧客への説明。どれも民間に対応する仕事があります。①については、その会社が誰に何を提供しているかを確認して、自分の経験との共通点を探してください。共通点が「相手を選べない状況での対応」「制度や基準に沿った判断」といった形になることもあります。業界が違っても、仕事の構造が近ければ接点は作れます。行政と関係のない業界への志望動機の作り方は、別の記事に整理します。
「安定を求めて公務員になった」経緯と、矛盾しませんか
矛盾しません。入庁の理由と、いまの判断は、別の時点の別の判断です。志望動機で入庁の経緯に触れる必要はありませんが、面接で聞かれた場合は、当時の判断を否定せずに答えてください。「入庁の時点では地域の仕事に関わりたいと考えていました。実際に◯年担当してきて、その中で◯◯の部分に関心が移りました」という形です。当時の判断を否定すると、いまの判断の信頼性も下がります。答え方は面接で「なぜ民間へ」と聞かれたときにも整理しています。