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業界研究 / 通信

通信の選考フローと、面接で見られている観点

通信の選考は、公務員の採用試験とも、コンサルの選考とも違う点があります。大手の通信会社は新卒中心の採用と全社共通の人事の型を持っており、中途の事務系の枠(官公庁営業、自治体向け事業開発、地域・スマートシティの企画)は、その型の中で「通信の技術が分からない人」と「技術は分からないが自治体の契約と財源を分かっている人」を分ける形で進みます。財政課の経験を持つ方がこの選考で戸惑うのは、面接でネットワークやセキュリティの話に合わせようとして崩れる点と、大手の場合は配属が全社の人事で決まり、自治体向けの部門に入れる保証がない点です。

もう1つの特徴は、回線の調達や情報化投資に関わった経歴が、通信の業界として厳しく確認される点です。ネットワークの構成やセキュリティに関わる情報は、自治体側でも受注者側でも厳格に扱われるので、応募者が在職中にその会社が関わる調達に関与していなかったか、退職後に元の職場へ働きかける立場にならないか、未公表の情報を守れるかを、選考の中で必ず確かめられます。

この記事では、通信の選考の一般的な流れ、技術職と官公庁営業・事業開発で見られる観点の違い、財政課の経験に固有の質問の型、通信の調達に関わった経歴の確認事項、服務の線を整理します。業界の構造と職種ごとの評価は通信は公務員のどの経験を評価するかに書いています。選考の流れと回数は会社ごとに違うので、この記事は一般的な形の説明です。

業界構造の要点——選考で前提になること

電気通信事業は総務大臣の登録(電気通信事業法第9条)または届出(第16条)制で、自治体との取引は、庁内ネットワークと回線の調達(地方自治法第234条の契約方法、複数年度は債務負担行為——第214条)、情報化投資と標準化・移行(標準化法第8条第1項、第10条)、地域の通信基盤整備、防災と住民サービスの通信(個人情報の委託は個情法第66条第2項の準用)の4つの形で現れます。

選考で前提になるのは、「会社の事業は技術と民間の顧客で成り立ち、自治体向けはその一部」という構造です。大手では自治体向けの部門が全社の中では小さく、中途の採用枠が部門を特定していないことがあります。財政課の方は、自分が入る枠が自治体向けの部門に特定されているかを、応募の段階で確かめる必要があります。

選考の流れ——一般的な形

段階内容位置づけ
1. 書類選考履歴書、職務経歴書財政課の経験を「契約と財源」の軸で書けているかで通過が決まる
2. 適性検査・筆記大手では全社共通の適性検査大手では足切りに使われることがある
3. 一次面接(部門・人事)人事と部門のマネージャー。技術者が同席することも。業務の理解と、一緒に働けるか財政課の経験の具体性と、技術を学ぶ姿勢が最も問われる段階
4. 二次面接(役員・部門長)会社の方向性との一致、長く働けるか、人物「なぜ発注者側から供給者側へ」の説明が固まっているか
5. オファー面談労働条件と配属の提示労働基準法第15条により条件は書面などで明示される。配属が自治体向けの部門か、業務の変更の範囲を確認する
6. リファレンス会社による在職中の応募では時期を企業側と調整する

大手では、オファーの段階で配属が自治体向けの部門に特定されているかを確かめることが、他の業界より重要です。

技術職と官公庁営業・事業開発で、見られる観点が違う

観点技術職(ネットワーク設計・保守)官公庁営業・自治体向け事業開発・地域の企画
中心の評価軸資格と、設計・構築・保守の実績自治体の契約と財源の理解、提案の組み立て、技術を学ぶ姿勢
財政課の経験の扱い補助的中心。通信費の契約の形、情報化投資の財源、補助事業と自治体の負担、債務負担行為、査定と議会の視点
典型的な質問「どの規模のネットワークを設計したか」「自治体は回線をどの契約の形で調達するか」「標準化・移行に伴う投資を財政課はどう見るか」
落ちやすい答え実績が曖昧「通信費を査定していたので通信が分かる」の一般化。技術の話に合わせようとして崩れる

財政課の方が応募するのは右の列なので、左の列の観点で自分を売り込もうとしないことが第一です。「ネットワークの知識はありますか」と聞かれたら、「ありません。自治体側で契約と財源を担当していました。技術は御社の技術者に学びます」と線を引いて答えるのが型です。

面接で問われる質問の型——財政課の経験に固有のもの

1. 「自治体は、庁内のネットワークと回線をどの契約の形で調達するか」。官公庁営業で最も多い質問です。「庁舎・出先・学校をまとめて入札する自治体と、施設ごとに随意契約する自治体がある。回線は複数年度の債務負担行為で組むことが多く、更改の時期に合わせて入札にかける。財政課は通信費の予算と契約の形を査定し、契約担当が入札を執行する」と、契約の形と予算の見え方を1つの答えにまとめます。

2. 「標準化・ガバメントクラウド移行に伴う情報化投資を、財政課はどう見るか」。「発注者の内側」であることを示す質問です。「移行に伴うネットワークの見直しとセキュリティの強化は、国の補助と単独費の組み合わせで、複数年度の予算になる。財政課は補助の対象範囲と単独分の圧縮、債務負担行為の年度割を見て、議会は将来負担を聞く」と、自分が査定で実際に見ていた点を具体的に話します。

3. 「地域の通信基盤整備で、自治体の負担はどう決まるか」。「財源の側」を示す質問です。「国の補助率と裏負担、起債の対象になるか、単独費の圧縮——財政課はこの組み合わせを査定し、議会は住民への効果と将来負担を聞く」と答えます。

4. 「供給者側に回ると、入札で選ばれ、契約の範囲で供給する立場になる。どう考えるか」。発注者視点への過信を確かめる質問です。「決める側から、提案して選ばれる側に変わる。財政課が予算のどこを見るかを知っているので、その視点で提案の時期と形を組む」と、転換の理解と経験の使い方を1つの答えにまとめます。

5. 「ネットワークの構成やセキュリティについて、どこまで話せるか」。守秘義務の理解を確かめる質問です。「制度の仕組み(契約の形、財源の組み方)は話せる。自分の自治体のネットワークの構成、セキュリティの設定、予定価格、他社の提案は、地方公務員法第34条の守秘義務により退職後も話せない」と、制度と個別を分けて線を引くのが型です。ここで個別の構成に触れると、その場で評価が下がります。

自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

通信の調達に関わった経歴の確認事項——他の業界より厳しく

ネットワークの構成とセキュリティは、自治体側でも受注者側でも厳格に扱われる情報なので、応募者が発注者側にいたことは、評価される一方で、他の業界より厳しく確認されます。

在職中に、応募先の会社が関わる回線の調達や情報化投資の審査に関与していたか。予定価格の積算の確認、入札の執行、補助事業の申請、情報化投資の査定——これらに該当する場合、選考の中で正直に伝え、応募の時期と入社後の担当の切り分けを会社側と相談します。財政課は通信費と情報化投資を査定する側なので、該当する可能性は低くありません。

退職後、元の職場に働きかける立場にならないか。地方公務員法第38条の2は、再就職者が離職前の職務に関して元の職場に働きかけることを規制しています。官公庁営業で元の自治体を担当すると、この規制との関係が問題になりうるので、元の自治体を担当から外す、一定期間は接触しないといった配慮を会社側が求めることがあります。再就職者による働きかけの規制に、規制の内容を整理しています。

守秘義務。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は退職後も続きます。面接で、自分の自治体の未公表の情報(ネットワークの構成、セキュリティの設定、予定価格、他社の提案、情報化投資の未公表の計画)を使ってはいけません。通信の業界では、この線は特に厳しく見られます。守秘義務は退職後も続くかに線引きを整理しています。

在職中の選考活動。面接は勤務時間外か年次有給休暇で。地方公務員法第35条の職務専念義務との関係は退職前に転職先と条件を詰めてよいかに整理しています。

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まとめ

よくある質問

一次面接で技術者からネットワークの専門的な質問をされました。答えられなかったのですが、落ちますか

官公庁営業・自治体向け事業開発の枠であれば、技術の質問に答えられないこと自体で落ちることは一般的ではありません。見られているのは、答えられないときの対応です。分からないことを分かったふりで答えると、技術者は見抜き、信頼を失います。「その点は分かりません。自治体側では、こういう契約と財源の判断をしていました」と、自分の側に話を戻せれば、協働の相手として評価されます。技術職の枠に応募していた場合は、資格と実績が前提なので、枠の選び方を見直す必要があります。

面接で「あの自治体のネットワークはどういう構成か」と聞かれました。答えてよいですか

答えてはいけません。自治体のネットワークの構成、セキュリティの設定、予定価格、他社の提案は、地方公務員法第34条の守秘義務により退職後も話せない情報で、通信の業界では特に厳しく扱われます。公表されている入札結果(落札者、契約金額)の範囲であれば話せますが、構成や設定は話せません。「制度の仕組みは説明できるが、個別の構成は守秘義務の対象なので話せない」と線を引いて答えることが、この業界の面接では評価につながります。逆に、その場で構成に触れる応募者は、入社後も情報の扱いが信頼できないと見られます。

大手の通信会社で、自治体向けの部門に入れる保証がないと言われました

大手の通信会社では、中途の採用枠が部門を特定しておらず、配属が全社の人事で決まることがあります。その場合、財政課の経験が評価されて内定が出ても、自治体向けの部門に配属される保証はありません。労働基準法施行規則第5条第1号の3により業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、オファーの段階で配属と変更の範囲を確かめ、自治体向けに限定したい場合は交渉の対象にしてください。地域の通信会社や自治体向けに特化した部門を持つ会社では、応募の段階で部門が明確なことが多いです。

出典

  1. 電気通信事業法 第9条(電気通信事業の登録)/第16条(電気通信事業の届出)|e-Gov法令検索
  2. 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律 第8条(標準化基準に適合する地方公共団体情報システムの利用)/第10条(クラウド・コンピューティング・サービス関連技術の活用)|e-Gov法令検索
  3. 個人情報の保護に関する法律 第66条(安全管理措置)|e-Gov法令検索
  4. 地方自治法 第214条(債務負担行為)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索
  5. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第35条(職務に専念する義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索
  6. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)|e-Gov法令検索
  7. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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