制度とお金 / 休暇
修学部分休業
転職を考える公務員から、「辞める前に、大学院で学び直したい」「資格の勉強に時間を使いたい」という相談を受けます。財政課の実務で得た経験を、会計や公共政策の体系的な知識で補いたい——そう考えたとき、辞めずに学ぶ制度が、地方公務員法にあります。
その1つが、修学部分休業です。職を保ったまま、1週間の勤務時間の一部を勤務しないで、大学などで学ぶ制度で、給与はその分が減額されます。休業ではなく「部分休業」なので、働きながら学ぶ形です。
この記事では、修学部分休業の要件、期間、給与、自己啓発等休業との違い、転職前の学び直しにどう使えるかを、地方公務員法第26条の2で整理します。期間、対象の教育施設、減額の方法は条例で定めるので、自分の自治体に条例があるか、内容はどうかを人事の担当課で確かめてください。条例を定めていない自治体では使えません。
条文——第26条の2
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 任命権者は、職員が申請した場合において、公務の運営に支障がなく、かつ、当該職員の公務に関する能力の向上に資すると認めるときは、条例で定めるところにより、大学その他の条例で定める教育施設における修学のため、修学に必要と認められる期間として条例で定める期間中、1週間の勤務時間の一部について勤務しないことを承認することができる |
| 第2項 | 承認は、修学部分休業をしている職員が休職または停職の処分を受けた場合には、その効力を失う |
| 第3項 | 承認を受けて勤務しない場合には、条例で定めるところにより、減額して給与を支給する |
| 第4項 | そのほか必要な事項は条例で定める |
臨時的任用の職員、任期を定めて任用される職員、非常勤職員は対象外です(第1項かっこ書)。
要件——2つの「認める」
修学部分休業の承認には、任命権者が2つのことを認める必要があります。
| 要件 | 内容 | 転職前の学び直しとの関係 |
|---|---|---|
| 公務の運営に支障がない | 勤務しない時間の分を、課の体制で吸収できること | 財政課の繁忙期と授業の時間が重なると、支障があると判断されることがある |
| 公務に関する能力の向上に資する | 修学の内容が、職員の公務の能力を高めるものであること | 転職のための学び直しであっても、内容が公務の能力の向上に資すれば要件を満たす。会計、公共政策、法律、データ分析などは該当しやすい |
「転職のため」と申請書に書く必要はなく、書くべきでもありません。要件は修学の内容が公務の能力の向上に資するかどうかで、本人の将来の進路は要件ではありません。ただし、承認を受けて学んだ後に、すぐに退職すれば、制度の趣旨との関係で職場との関係が難しくなることは頭に置いてください。
期間・対象・給与——条例で決まる
| 項目 | 法律の定め | 条例で決まること |
|---|---|---|
| 期間 | 修学に必要と認められる期間として条例で定める期間 | 上限(大学院の修業年限に合わせて2年など) |
| 対象の教育施設 | 大学その他の条例で定める教育施設 | 大学、大学院、専門職大学院、専修学校など |
| 勤務しない時間 | 1週間の勤務時間の一部 | 上限(1週間の勤務時間の一定割合など) |
| 給与 | 減額して支給(第3項) | 減額の方法(勤務しない1時間につき減額など) |
育児の部分休業(1日2時間まで)と違い、修学部分休業は「1週間の」勤務時間の一部です。週に1日を丸ごと勤務しない形も、条例の範囲で取れます。大学院の授業が平日の昼間にある場合、この形が使えます。
自己啓発等休業との違い
学ぶための制度には、もう1つ、自己啓発等休業(第26条の5)があります。
| 項目 | 修学部分休業(第26条の2) | 自己啓発等休業(第26条の5) |
|---|---|---|
| 形 | 働きながら、勤務時間の一部を勤務しない | 休業(職は保有、職務に従事しない) |
| 期間 | 条例で定める期間 | 3年を超えない範囲内で条例で定める期間 |
| 対象 | 大学その他の教育施設における修学 | 大学等課程の履修、国際貢献活動 |
| 給与 | 減額して支給 | 支給しない |
| 向いている | 夜間・週末の大学院、平日の授業が週1〜2日 | 全日制の大学院、留学、海外での活動 |
働きながら学べるなら修学部分休業、学ぶことに専念するなら自己啓発等休業という使い分けです。自己啓発等休業は自己啓発等休業に書いています。
転職前の学び直しに使うとき
| 点 | 内容 |
|---|---|
| 条例の有無 | 制度を条例で定めていない自治体では使えない。最初に確かめる |
| 申請の内容 | 修学の内容が公務の能力の向上に資することを説明する。転職の意図は要件ではなく、書かない |
| 給与の減額 | 勤務しない時間の分が減る。学費と合わせて資金を見込む |
| 退職手当 | 部分休業は休職ではなく、在職期間の除算の対象にはならないのが一般的。条例で確認 |
| 共済・年金 | 組合員の資格は続く。標準報酬が減額後の給与で改定されることがある |
| 修学中の転職活動 | 禁じる規定はないが、修学の時間を転職活動に充てることは制度の趣旨に反する。転職活動は勤務時間外・修学時間外に |
| 修学後の退職 | 法律上の制限はない。承認を受けた修学の直後の退職は、職場との関係で慎重に |
修学部分休業は、転職の準備ではなく、公務の能力の向上のための制度です。学んだ結果として転職を選ぶことは自由ですが、制度を転職の準備の道具として申請することは、要件の面でも、職場との信頼の面でも避けるべきです。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、修学部分休業で効いてくる点は3つです。
1. 辞めずに学べる制度がある
条例があれば、働きながら大学院に通えます。学んだ後に転職するかどうかを決められます。
2. 要件は「公務の能力の向上」で、転職の意図は要件ではない
会計、公共政策、法律などの修学は要件を満たしやすいですが、申請は修学の内容で行い、転職の意図は書きません。
3. 修了直後の退職は、法律上は自由でも、職場との関係で慎重に
学びを公務で生かす期間を置いてからというのが、制度の趣旨に沿った形です。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 学び直しを考えたら | 修学部分休業・自己啓発等休業の条例の有無と内容を確かめる | 最初に | 人事の担当課、例規集 |
| 入学の前 | 教育施設が条例の対象か、期間と勤務しない時間の上限を確かめる | 出願の前 | 人事の担当課 |
| 申請 | 修学の内容、期間、勤務しない時間を記載して申請 | 条例の定める期限まで | 任命権者 |
| 承認後 | 減額後の給与で資金を見込む。共済の標準報酬の改定の有無を確かめる | 承認後 | 給与の担当課、共済組合 |
| 修学中 | 修学の時間は修学に。転職活動は勤務時間外・修学時間外に | 継続 | ── |
| 修了後 | 学びを公務で生かす。転職を考えるなら、一定の期間を置いてから | 修了後 | ── |
誤解されやすい点
「修学部分休業はどの自治体でも使える」と思い込む
条例で定めた自治体でのみ使えます。条例がなければ制度がありません。
「転職のための勉強では承認されない」と思い込む
要件は修学の内容が公務の能力の向上に資するかどうかで、本人の進路は要件ではありません。
「修学部分休業は無給」と思い込む
減額して支給です(第3項)。無給は自己啓発等休業です。
「修了したらすぐ辞めてよい」と思い込む
法律上の制限はありませんが、制度の趣旨と職場との関係で慎重に。
まとめ
- 修学部分休業は、地方公務員法第26条の2により、大学その他の条例で定める教育施設における修学のため、1週間の勤務時間の一部を勤務しない制度で、条例を定めた自治体でのみ使えます
- 要件は、公務の運営に支障がなく、かつ、職員の公務に関する能力の向上に資することの2つです。転職の意図は要件ではありません
- 給与は減額して支給され(第3項)、期間、対象の教育施設、勤務しない時間の上限、減額の方法は条例で定めます
- 働きながら学ぶなら修学部分休業、学ぶことに専念するなら自己啓発等休業(第26条の5、3年以内、無給)という使い分けです
- 修学中の転職活動を禁じる規定はありませんが、修学の時間は修学に。修了直後の退職は、法律上は自由でも職場との関係で慎重に
- 辞めずに学べれば、学んだ後に公務で生かす道と転職で生かす道の両方が残ります
よくある質問
私の自治体に修学部分休業の条例があるか、どう確かめればよいですか
例規集で「修学部分休業」を検索するか、人事の担当課に聞いてください。地方公務員法第26条の2は、条例で定めるところにより承認できると定めており、条例を制定していない自治体では制度がありません。制定している自治体では「職員の修学部分休業に関する条例」などの名称で、対象の教育施設、期間の上限、勤務しない時間の上限、減額の方法、申請の手続きが定められています。条例がない場合は、自己啓発等休業(第26条の5)の条例があるかも確かめてください。こちらも条例が要ります。どちらもなければ、年次有給休暇と勤務時間外での修学になり、その場合は勤務時間外の修学に制限はありません(報酬を得る活動でなければ第38条の対象でもありません)。人事の担当課に聞く際は、「学び直しを考えているので、修学部分休業と自己啓発等休業の制度の有無を知りたい」で足り、転職の意思を伝える必要はありません。
修学部分休業を使って大学院を修了した後、転職しても問題ありませんか
法律上の制限はありません。ただし、制度の趣旨は公務の能力の向上なので、職場との関係では慎重に考えてください。第26条の2には、修学後の勤務を義務づける規定も、修了後の退職を制限する規定もなく、給与は減額されているので返還の問題も生じません(大学院派遣などの研修で自治体が費用を負担した場合は、条例により費用の返還の定めがあることがあり、これは別の制度です)。一方で、任命権者は「公務に関する能力の向上に資する」と認めて承認しているので、修了の直後に退職すれば、制度を転職の準備に使ったと受け取られ、職場の信頼と、後に続く職員への制度の運用に影響します。修了後に一定の期間、学んだことを公務で生かしてから転職を考えるのが、制度の趣旨に沿い、経歴としても「学んで、生かして、次へ」という筋の通った形になります。転職の面接でも、修学の内容を公務でどう生かしたかを話せるほうが、評価は高くなります。
修学部分休業の期間中、給与はどのくらい減りますか
勤務しない時間の分を減額する形が一般的で、具体的な計算は条例によります。第26条の2第3項は、条例で定めるところにより減額して給与を支給すると定めており、多くの自治体が、勤務しない1時間につき勤務1時間当たりの給与額を減額する方法を採っています。週の勤務時間のうち何時間を勤務しないかで減額の額が決まり、期末手当・勤勉手当や昇給への影響は、条例で別に定められていることがあります。学費と合わせて、修学の期間の資金を見込んでください。共済の掛金は、標準報酬が減額後の給与で改定される場合があり、その場合は掛金も変わります。退職手当は、部分休業は休職ではなく、在職期間の除算の対象にならないのが一般的ですが、自治体の退職手当条例で確かめてください。人事の担当課に「週○時間の修学部分休業を○年取った場合の、給与、手当、共済、退職手当への影響」を1枚にまとめてもらうと、学費との合計で判断できます。