制度とお金 / 休暇
短時間勤務の制度
「フルタイムで財政課を続けるのは難しい。でも、辞めるほどではない」——育児、介護、修学、体調、そして定年の前後。働く時間を減らして続ける選択肢があるかは、転職を考える前に確かめる価値のある問いです。
地方公務員には、フルタイム以外で働く制度が5つあります。育児短時間勤務、修学部分休業、高齢者部分休業、定年前再任用短時間勤務、そしてパートタイムの会計年度任用職員。それぞれ、根拠、身分、給与、使える時期が違い、「辞めて時間を作る」以外の道が、人生の時期ごとに用意されています。
この記事では、5つの制度の根拠と仕組みを並べ、転職の代わりに働く時間を減らす選択肢として整理します。期間、時間、給与の細目は条例によるので、人事の担当課で確かめてください。個々の制度の詳しい中身は、育児は育児部分休業・部分休暇に、修学は修学部分休業に書いています。
5つの制度を並べる
| 制度 | 根拠 | 誰が・いつ | 形 | 身分 | 給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| 育児短時間勤務 | 地方公務員の育児休業等に関する法律第10条 | 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員 | 法律の定める勤務の形態(1日を短く、週の勤務日を減らすなど) | 常時勤務を要する職を占めたまま | 勤務時間に応じた額 |
| 修学部分休業 | 地方公務員法第26条の2 | 大学などで修学する職員(条例の期間) | 1週間の勤務時間の一部を勤務しない | 職員のまま | 減額して支給 |
| 高齢者部分休業 | 地方公務員法第26条の3 | 条例で定める高年齢に達した職員、定年退職日まで | 1週間の勤務時間の一部を勤務しない | 職員のまま | 減額して支給(第26条の2第3項を準用) |
| 定年前再任用短時間勤務 | 地方公務員法第22条の4 | 条例で定める年齢以上で退職した者を、定年退職日相当日まで | 短時間勤務の職に採用 | いったん退職し、短時間勤務の職に採用 | 短時間勤務の職の給与 |
| パートタイムの会計年度任用職員 | 地方公務員法第22条の2 | 会計年度ごとに任用される非常勤の職員 | 1週間の勤務時間がフルタイムより短い職 | 非常勤職員(退職して応募) | 報酬(条例) |
上の3つは職員の身分を保ったまま時間を減らす制度、下の2つはいったん退職して短時間の職に就く制度です。この違いが、共済、退職手当、身分保障に効きます。
身分を保ったまま時間を減らす3つ
| 項目 | 育児短時間勤務 | 修学部分休業 | 高齢者部分休業 |
|---|---|---|---|
| 要件 | 小学校就学前の子の養育。任命権者の承認 | 公務の運営に支障がなく、能力の向上に資すること。条例の教育施設 | 条例で定める年齢に達していること。公務の運営に支障がないこと |
| 期間 | 子が小学校就学の始期に達するまで | 条例で定める期間 | 条例の年齢に達した日以後の申請の日から定年退職日まで |
| 時間 | 法律の定める形態(1日の時間を短く、週の勤務日を減らすなど) | 1週間の勤務時間の一部 | 1週間の勤務時間の一部 |
| 共済 | 組合員のまま | 組合員のまま | 組合員のまま |
| 退職手当 | 条例による(勤務時間に応じた扱いがあることも) | 部分休業は除算の対象にならないのが一般的 | 同左 |
高齢者部分休業(第26条の3)は、定年の前に段階的に働く時間を減らす制度で、条例で定める年齢(国の例に準じる)に達した職員が、定年退職日までの期間、1週間の勤務時間の一部を勤務しないことを申請できます。定年前後の働き方を考える方にとって、転職の代わりの選択肢の1つです。
いったん退職して短時間の職に就く2つ
| 項目 | 定年前再任用短時間勤務 | パートタイムの会計年度任用職員 |
|---|---|---|
| 根拠 | 第22条の4 | 第22条の2 |
| 入口 | 条例で定める年齢以上で退職した者を、選考により短時間勤務の職に採用 | 退職後、会計年度任用職員の募集に応募して採用 |
| 期間 | 定年退職日相当日まで | 会計年度ごと(再度の任用はあり得る) |
| 身分 | 短時間勤務の職員(常時勤務ではない) | 非常勤職員 |
| 共済 | 短時間勤務の職員としての扱い(勤務時間により組合員の資格が変わる) | 勤務時間により、共済ではなく健康保険・厚生年金または国民健康保険・国民年金 |
| 退職手当 | 退職の時点で支給。再任用後の期間は別 | 会計年度任用職員の退職手当は勤務時間と期間による |
| 向いている | 定年の前に、身分を変えて時間を減らしたい | 退職後に、自治体の仕事を短時間で続けたい |
定年前再任用短時間勤務は、条例で定める年齢(国の例に準じる)以降に退職した職員が、定年退職日相当日まで短時間で働く制度です。60歳前後で転職を考える方にとって、「辞めて転職する」「定年まで続ける」に加えて、「いったん退職して短時間で続ける」という道です。
転職の代わりに、時間を減らす——場面ごとの選択肢
| 場面 | 使える制度 | 転職と比べて |
|---|---|---|
| 育児 | 育児短時間勤務、部分休業 | 身分と共済を保ったまま時間を減らせる。転職先の短時間勤務は3歳までが義務の最低基準 |
| 修学 | 修学部分休業、自己啓発等休業 | 辞めずに学べる。学んだ後に転職するかどうかを決められる |
| 介護 | 介護時間(1日2時間まで)、介護休暇 | 身分を保ったまま。転職先の介護休業は通算93日が最低基準 |
| 体調 | 病気休暇、病気休職、復職後の段階的な勤務(自治体の制度による) | 回復の時間を制度で作れる |
| 定年の前 | 高齢者部分休業、定年前再任用短時間勤務 | 段階的に減らせる。転職なら転職先の60歳以降の処遇を確かめる |
「フルタイムが難しい」の理由ごとに、制度があります。制度で解決するなら転職は要らず、制度を使っても解決しないなら、転職の理由が明確になります。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、短時間勤務の制度で効いてくる点は3つです。
1. 「フルタイムが難しい」には、理由ごとに制度がある
育児、修学、介護、体調、定年の前。制度で解決するかを先に確かめてください。
2. 身分を保つ制度と、退職して就く制度がある
共済、退職手当、身分保障が違います。どちらが自分の場面に合うかを確かめてください。
3. 転職先の短時間勤務は、法律の最低基準を確かめる
育児の短時間勤務は3歳まで、介護休業は93日が最低基準です。公務員の制度のほうが長いことが多いので、転職先の就業規則を確かめてください。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| フルタイムが難しいと感じたら | 理由を1つに絞り、使える制度を確かめる | 最初に | 人事の担当課 |
| 育児 | 育児短時間勤務または部分休業の承認の請求 | 条例の期限 | 任命権者 |
| 修学 | 修学部分休業の申請(条例の有無を確かめる) | 条例の期限 | 任命権者 |
| 定年の前 | 高齢者部分休業の申請、または定年前再任用短時間勤務の選考への申出 | 条例の年齢に達した後 | 任命権者 |
| 退職後に短時間で続けたい | 会計年度任用職員の募集に応募 | 募集の時期 | 任命権者 |
| 転職を考えるなら | 転職先の短時間勤務、介護休業、60歳以降の処遇を確かめる | 内定の段階 | 転職先 |
誤解されやすい点
「公務員はフルタイムか辞めるかの二択」と思い込む
理由ごとに、時間を減らす制度が5つあります。
「定年前再任用短時間勤務は定年後の制度」と思い込む
条例で定める年齢(国の例に準じる)以上で退職した者を、定年退職日相当日まで採用する制度です(第22条の4)。定年の前の段階的な働き方です。
「短時間にすると身分が変わる」と思い込む
育児短時間勤務、修学部分休業、高齢者部分休業は職員の身分のままです。身分が変わるのは、定年前再任用短時間勤務と会計年度任用職員です。
「転職先の短時間勤務のほうが手厚い」と思い込む
民間の最低基準は、育児の短時間勤務が3歳まで、介護休業が93日です。転職先の就業規則で確かめてください。
まとめ
- 地方公務員がフルタイム以外で働く制度は、育児短時間勤務(育児休業法第10条)、修学部分休業(地方公務員法第26条の2)、高齢者部分休業(第26条の3)、定年前再任用短時間勤務(第22条の4)、パートタイムの会計年度任用職員(第22条の2)の5つです
- 育児短時間勤務、修学部分休業、高齢者部分休業は職員の身分を保ったまま時間を減らす制度で、共済の組合員のままです
- 定年前再任用短時間勤務と会計年度任用職員は、いったん退職して短時間の職に就く制度で、身分、共済、退職手当の扱いが変わります
- 高齢者部分休業は条例で定める年齢から定年退職日まで、定年前再任用短時間勤務は条例で定める年齢以上で退職した者を定年退職日相当日までという、定年の前の段階的な働き方です
- 「フルタイムが難しい」の理由(育児、修学、介護、体調、定年の前)ごとに制度があり、制度で解決するかを転職の前に確かめてください
- 転職先の短時間勤務は、育児は3歳まで、介護休業は93日が法律の最低基準です。公務員の制度のほうが長いことが多いです
よくある質問
58歳です。定年まで財政課をフルタイムで続ける自信がありません。転職以外の道はありますか
高齢者部分休業と定年前再任用短時間勤務の2つが、定年の前に働く時間を減らす制度です。高齢者部分休業(地方公務員法第26条の3)は、条例で定める年齢に達した職員が、定年退職日までの期間、1週間の勤務時間の一部を勤務しないことを申請できる制度で、職員の身分と共済の組合員資格を保ったまま、給与を減額して時間を減らします。定年前再任用短時間勤務(第22条の4)は、条例で定める年齢(国の例に準じる)以上で退職した者を、選考により、定年退職日相当日まで短時間勤務の職に採用する制度で、いったん退職して退職手当を受け、身分を短時間勤務の職員に変えて続けます。どちらも条例で年齢と要件が定められているので、人事の担当課に「高齢者部分休業の対象年齢と、定年前再任用短時間勤務の年齢と選考」を確かめてください。転職を考える場合は、転職先の60歳以降の処遇(定年、再雇用の条件)を内定の段階で確かめ、公務員の制度と並べて判断します。58歳からの転職は、財政・会計の経験が評価される業界では現実的な選択肢ですが、時間を減らして続ける道と並べてから決めるのが、後悔の少ない形です。
育児短時間勤務と、転職先の短時間勤務は、どちらが長く使えますか
公務員の育児短時間勤務は小学校就学の始期まで、民間の所定労働時間の短縮措置は3歳に達するまでが法律の最低基準で、公務員のほうが長いです。地方公務員の育児休業等に関する法律第10条の育児短時間勤務は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が対象で、部分休業(第19条)も同じ期間です。民間の育児・介護休業法では、3歳に達するまでの子を養育する労働者について所定労働時間の短縮措置を講じることが事業主の義務で、3歳から小学校就学までは、始業時刻の変更、在宅勤務、短時間勤務などから事業主が2つ以上の措置を講じる義務です(育児部分休業・部分休暇)。転職先が3歳以降に短時間勤務以外の措置を選んでいれば、3歳を過ぎた時点で短時間勤務は使えません。企業によっては小学校就学や小学校3年生まで拡大していますが、就業規則で確かめる必要があります。子が3歳未満で転職を考える方は、転職先の3歳以降の措置を内定の段階で聞き、公務員の制度と並べて時期を判断してください。
退職した後、会計年度任用職員として財政課で短時間で働けますか
募集があれば応募でき、採用されれば働けますが、身分は非常勤職員で、共済・退職手当の扱いは在職中と変わります。会計年度任用職員(地方公務員法第22条の2)は、会計年度ごとに任用される非常勤の職員で、パートタイムの職は1週間の勤務時間がフルタイムより短い職です。退職した職員が財政課の会計年度任用職員に応募することを禁じる規定はなく、経験者として採用されることもありますが、募集の有無と職の内容は自治体の判断です。給与は報酬(条例)で、フルタイムの職員の給与とは体系が違い、共済の組合員にはならず(勤務時間により健康保険・厚生年金または国民健康保険・国民年金)、退職手当は勤務時間と期間により支給の有無が決まります。任用は会計年度ごとで、再度の任用はあり得ますが保証はありません。「時間を減らして自治体の仕事を続ける」という目的なら、退職前に高齢者部分休業や育児短時間勤務などの身分を保つ制度を使うほうが、共済と退職手当の面で有利です。退職後の選択肢としては、会計年度任用職員と、民間で財政・会計の経験を生かす転職を並べて、報酬、勤務時間、任用の安定性で比べてください。